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――最近、どのアーティストさんにも時効の挨拶のように聞いてしまうんですけど、コロナ禍に突入して1年以上が経ちましたが、曲作りや活動にはどんな影響がありましたか?

「今の新曲の「アヤメ」を書く前までは結構、窮屈だなと思いながらやってたところはあったんですよね。で、「アヤメ」の前に「Flowers」って曲を出したんですけど、その時点ではやっぱまだ葛藤というか、もがきながらやってるような感じだったので、曲も自ずとそういう曲風になったんです。で、この「アヤメ」を作ってる時に、そんな悲観的になってちゃダメだなって思ったっていうか、「アヤメ」ができた時に全然こういう窮屈な生活の中でも、たくさん曲はできるじゃないかと。素敵なこととかも掴まえようとすれば掴まえられるし、見つけようとすれば見つかるし。ただ、どっか自分で、窮屈だってことを決めつけちゃってる部分も、社会とか生活に流されて、そういう風に決めつけちゃってる部分もあったんだなって思ったんですよね。「アヤメ」を作ったタイミングで。心の移り変わりはそんな感じでしたね」

――確かに1年前は状況が全く見えなかったし、ライブができなくなったこともそう。ミュージシャンに限らず“この先どうなっていくんだろう?”っていう不安感は大きかったですよね。

「うん、そうですね。はじめは不安ばっかりだったのかもしれないです。ただ、自分の性格とか人間性的にもあんまりこう、なんていうんだろう……なんか楽観的な部分もあって。いろんな人が関わることだからしっかり考えなくちゃいけないんだけど、どっかの部分で、正直、“まあいいや”みたいな(笑)。ちょっと最初っからそういうのはあったんだよな。“そうなったらそれに順応していくしかないじゃん”というか……」

――そういう中でどう楽しむか?ってことですよね。

「そうですね。あんまり重たく考えすぎずに行こうと思ってましたけど。でも、まわりの声を聞いたりするのが辛かったかもしんないです。こう、知り合いのライブハウスが潰れたりとか、自分がツアーに行って、好きだったライブハウスがとか、お店やってるやつが、もう従業員に給料払えないとか、友達からそういうのを直接聞くのが結構、食らいましたかね」

――去年は、みんなそういうダメージを食らいながらも応援する気持ちは強かった気はして。ライブハウスへのドネーションとかも、だんだん自力で応援するのとは違うベクトルになってくるというか、しんどくなってきますよね。

「そうなんですよ。何がルールで何がモラルなのか?みたいなのは考え続けなくちゃいけないと思うので。そこら辺はまあ、難しいですよ」

――石崎さんは実際にしんどい思いをしてる人のことは食らっちゃったとしても、制作に没頭できるという部分ではそんなに変わらないですか?

「そう、思うようになりましたね。なんか、去年、コロナ禍に見舞われた3月に比べたら、全然、曲も作れる状況だなと今は思ってるし」

――曲作り、全然できなくなっちゃった人の話も聞くんです。

「それもすごくわかるんですよね。やっぱ、僕もヤバいかなと思ってたから。やっぱり人に会えないと、人から吸収して、それをアウトプットしてるところがあって。ソングライティングのアプローチがそうだから。どうしても人に会わないとインプットが足りなさすぎて出てこないっていう人はすごいいっぱいいるだろうなと思います。ただ、人以外にも、なんかふとした瞬間――実は「アヤメ」もそうだったんですけど――あまり開けない部屋の窓のカーテンをこう、開けてみるとか……なんかそういったことからモチーフを見つけていくっていう、だんだんその感覚に慣れてきたっていう感じですかね」

――確かにありますよね。植物とかに励まされたり(笑)。人間のこのカオスに全然関係ないベクトルで、季節が変わったら新緑がわさわさしてるし。

「そうですよね。逆に、結構そういうものからインスピレーションを沸かせるようにしてるかもしれないですね」

――今回の「アヤメ」に関しては人気ドラマシリーズ「警視庁・捜査一課長」の主題歌ということで。サスペンスだけど、ちょっと素朴で人間臭さもあって。

「たぶん、僕がデビューした年と同じぐらいから始まってて……そんなに長くやってるドラマって、なかなかないじゃないですか。だから単純に嬉しかったってのと、10年目なんですよね「警視庁・捜査一課長」が。そういうメモリアルなので、嬉しかったですし、そういう大事な時を共有できるのはありがたいことだなという風に思いました」

――内容はほぼお任せだったんですか?

「そうですね。最初に、“少し希望が見えるもの”っていうワードだけはいただいて。ミステリーではあるんですけど、やっぱ最終的に犯人だったり加害者も、被害者も、みんなに事件が明けた後、人間模様みたいなものが脚本に入ってたりするドラマなので、なんかいつも通り、人間らしいものを書いていけばいいかなとは思いつつ、作ってましたね」

――それぞれの登場人物に事情があるっていうニュアンスがありますよね。

「現場の人たちにお会いして、プロデューサーさん含め、演者さんも会わせてもらったんですけど、なんかめちゃくちゃ優しい方々ばっかりで(笑)。なんだろ?いろいろな現場を今まで見させてもらってきましたけど、独特の朗らかさみたいなものがあるんですよね、「警視庁・捜査一課長」独特の。“あ、この優しさとか朗らかさが作品に現れてるんだな”っていう風に思ったんです」

石崎ひゅーい

6月3日OAの「警視庁・捜査一課長season5」第8話に、アルバイト書店員/ミュージシャンの日向石雄(ひゅうが いしお)役で出演



――内藤剛志さんを筆頭に10年もやってるチームだし、そういう人たちからの影響も受けながらというところなんですかね。ところで、この曲はどの部分からできあがっていったんですか?

「えーと……この曲どうやってできたかな(笑)。でも一気にできたかもしれませんね。最近、ピアノで曲を作ってて。ふわーっと浮かんできました。ワンコーラスぐらいの言葉とメロディが。で、いつもそういうのを録っといて、自分で後から聴いて何て歌ってるか書き起こすんですけど。そんな感じで今回も作りましたね」

――結構Aメロの入りとかが懐かしい感じがします。

「そうですね。他にも何曲か並列で作ってて、年末ぐらいからかな?その中でスタッフとやりとりして、どれがいいか決めていったんですけどね」

――日本人のDNAにある感じのメロディで、AメロからBメロ、サビに積み上がっていく感じがすごく自然ですね。

「ああ、それはそうかも。それは意識したかもしれません。とにかく最初からシンプルなものにしたいとは思ってて、人が聴いてくれた時に深いところに行けたらいいなというのは目標としてあって。耳にスッと入ってくる言葉選びをすごく意識して今回やってみましたね」

――メロディに対するアレンジも最小限って感じがしますし、言葉が入ってきやすいですね。

「アレンジャーのトウミヨウさんは、デビューからずっと一緒にやってもらってるんですけど、トウミさんとも、そんな話をして。たぶん、僕の出してきた音源のなかで一番音数が少ないかもしれないです」

――他のインタビューで、石崎さんは歌詞を書くのはそんなに得意じゃないと言っていて。本当ですか?

「あー、得意じゃないです(笑)」

――最近の石崎さんが書くスロー/ミディアムナンバーは架空の物語じゃなくて、人の人生だなと思うんですけど、今回の「アヤメ」に関してはどこのピースがハマって“完成だ!”という手ごたえを感じましたか?

「ずーっとこの曲のスケッチみたいなのがあって、何かが足りないなって思いながら生活してて……朝3時とか4時とかかな?そのぐらいの時間に窓の外見たら、紫とピンクの間みたいな、こう、見たこともないような空の色で。“これだ!”と思ったんですよ。これはなんていう色なんだろう?って調べたんですよ。そしたらアヤメって出てきて、すごいいい響きの言葉だなと思って、そこからわー!って一気に書けて、何かがハマった感じがしたんですよね」

――確かにこう、一瞬、花の名前かなとかも思いますし、アヤメってなんだっけ?と思わせる力があるというか。

「うん、うん(笑)」

――夜明けっていろんな気持ちの変化があるじゃないですか。昼夜逆転してる人には普通なのかもしれませんが、夜ちゃんと寝て、朝起きなきゃいけないのに眠れない人にとっては夜明け前の黒いような青いような空って怖いし、明るくなるとほっとしますけど。

「そうそうそう。ちょっと、みんな今、こんな気持ちなんじゃないかなと思ったんですよね、気持ちを色で表現するとしたら。ちょっと何にもなりきれないというか。そうやって、考えたり、もがいたり、抗ったりしてる姿って、僕は綺麗だなとか、思うんですね。美しいなって。そんな色だなっていう風に自分の中で解釈をしてってことなんです」

――その瞬間を色でとらえた段階で勝負あったという曲だと思います。

「ああ、良かった(笑)」

――この曲のミュージックビデオは、リリックビデオ、弾き語り、そしてバンドが入ったバージョンが順番に公開されましたが、これもいままでなかった見せかたですね。

「今回、ミュージックビデオにバンドを初めて入れてみたんです。単純に自分ばっかり映ってるの嫌だなと思ってたので(笑)。僕を見て聴いてもらうっていうのももちろんいいことだと思うんですけど、それ以外の世界観ていうか……僕と切り離したところで聴いてもらっても面白いなと。ちょっと今回チャレンジしてみたんですけど。あれ、茨城の採石場なんですけど、全くどこだかよくわからないような“何だここは?”っていうところでバンドが演奏してるっていう、あの違和感が今回のミュージックビデオの面白いところだと思ってるんです。曲を聴いて、没頭してもらえるっていうか……僕は曲を含めMVの世界に入ってもらえれば嬉しいなって考えでいたんですけど」

――恐ろしく動かないミュージックビデオですもんね(笑)。

「そうそうそう!結構、僕、本来、恐ろしく動きますから(笑)。結構意識してやったんですよね。最近思うことがあって、自分が伝える時に、泣いちゃダメだなと思うんですよ。先に泣いちゃダメ、人よりも。聴いてくれてる人よりも先に泣いてしまうとなんか何かを伝えようとした時に、モゴモゴしてあんまりうまく伝わらないというか、そんな感覚が最近あって。ちゃんと人に届けてから、届けた人が泣いてくれたり、笑ってくれたりしたあとに、自分の中になんかそういう感情が芽生えれば、と思ってて。ちょっとMVの作り方もそういうのに倣ってるという感じです」



――なるほど。話が変わりますが、石崎さんのそもそもの資質でもあると思うんですが、昨年の「THE FIRST TAKE」の、弾き語りの一発撮りという経験はどういうものでしたか?

「こう、普通のライブと違って、「THE FIRST TAKE」のチームの方々がめちゃくちゃ気合入ってるなっていうのがわかるんですよ。カメラの角度とかも、これしかないって角度を入念に探してたりとか、あと、スタイリストさんも入れて、どんな感じで見せよう、とか、とにかく一発に賭けるためにまわりのスタッフの方々がすごく努力してる現場なんですね。だからこそ、僕らもあそこで一回きりのパフォーマンスをする時に、この一発で決めなければいけないって気持ちにさせてくれる場所なんですよね。だから、演者ももちろんそうなんですけど、まわりのチームもすごいなと思ってますね、僕は」

――編集も、カット割もない中で、いちばん刺さる部分を捉えるという、まわりの緊張感も伝わってきます。

「そうですね。僕、ピック落としてますからね。びっくりしましたけどね、“あら?ピックがないぞ!”っていう……でも、ピックがないことなんていつでもありますからね。ライブとかで“やっちまった!”って」

――映画出演だったり、一発撮りライブだったり、そういう活動を経て今後はどういう道を歩んで行きますか?

「ライブやりたいなって思ってます!今、イベントと決まってきているんですけど、ライブハウスでお客さんと会うっていうのがひとつの目標なので。それに向かって、チームで常に考えて動くって感じです。あと、アルバムを作れたらいいなと思ってますね。曲は色々できてるので」

――次のアルバムはコンセプチュアルなものになるのか、近年の楽曲をまとめたものになるのか、まるで想像できないんですが……みんなもすごく待望してると思います。

「そうですね、僕も待望してます(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香





「billboard classics Symphonic Concert "Grand Duo" 2021 石崎ひゅーい×尾崎裕哉 ~双発機~」東京公演(振替開催)
2021年6月26日(土)@東京文化会館





石崎ひゅーい
石崎ひゅーい「アヤメ」
2021年5月7日(水)配信
Epic




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