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――ニューアルバム『Home』には新型コロナの影響はありましたか?

「制作を始めたのはパンデミックになる以前だったし、完成したのは去年の夏頃だったから、それほど影響はなかったかな。合唱隊などのレコーディングも終わっていたし、僕が録音するボーカルなどが残っていただけで。ほとんどエンジニアと2人だけで進めていくから、あまり普段と変わらなかったと思うんだ。でもコロナ禍のおかげで家族に会えなかったり、私生活における変化は大きかったけど」

――自粛期間中にクリエイティブになれたというアーティストも多いようですが。

「うんうん、すごく分かるよ(笑)。僕もこの1年間に映画音楽を手掛けたり、ライのこのアルバムやセキュラー・サバス(Secular Sabbath)というプロジェクトの作品も手掛けたし、けっこう忙しくしていた。ツアーができない代わりに、じっくり音楽と向き合うことができたのも良かったし、こんな時期だからこそ自分をポジティブにしてくれる音楽や、幸せになれることを実践したいんだよね」

――アルバム『Home』にはどのようなテーマが?

「このアルバムに『Home』と付けたのは、僕が家庭=Homeを持ちたいと強く思っているからなんだ。この10年から15年ほど、僕の人生は波乱万丈だったけど、初めて家庭を持ちたいと思ったんだ。心の拠り所を築きたいと。恋人のジェヌヴィエーヴとの関係も良好だったし、自宅で音楽を創造したいと考えた。2人の新しい家にホームスタジオも移転したんだ。ロサンゼルスの郊外マリブの丘のてっぺんにある家で、雲の上って感じだよ。創造性を高めるにも最適だし、安らげる聖域のような場所なんだ」

――前作のEP「Spirit」はピアノをメインにした作品でしたが、今回は?

「新作ではシンセサイザーをいっぱい使ったよ。それも全てアナログをね。それにドラムやギター、コーラス、そして僕の歌などを載せている。あと弦楽器や60人から成るコーラス隊も起用した。ほとんどグレゴリオ聖歌のようなクラシカル調なんだ。あとクラシックロックやダンス的な要素も取り入れた。「Black Rain」なんてほとんどディスコ調だし、ソニック面における限界に挑戦したかったから、生ドラムもいっぱい導入した。前作は優しい作風だったけど、新作ではもっとエネルギーを感じさせたかったんだ。よりライブに近いサウンドってことかな」

――終盤には「Holy」という曲が登場したり、アルバム全体にとても神聖なムードが漂っています。

「うん、ただし、このアルバムは一筋縄ではいかないよ(笑)。3つくらい異なる解釈ができる感じなんだ。その「Holy」って曲も、じつは“神聖すぎないで、僕のために”と歌っているんだ。“少しくらい汚れてても大丈夫だよ”ってね。そう歌いながらも合唱団を使ったり、神聖で伝統的なサウンドを奏でている。オルガンなど伝統的な宗教サウンドを取り入れて。逆説的なんだ(笑)」

――ビジュアル面への拘りも随所に感じられます。ジャケット写真の撮影はご自身で?

「そうだよ。いつもジャケ写は僕が撮影している。ファーストアルバム『Woman』だけは僕が撮った写真ではなかったから、それがずっと引っかかっていたんだ。自分のアートなのだから、ジャケ写も自分で手掛けるべきだと思うんだ。じゃないと何だか中途半端な気がしてね。新しい家の浴室は屋外にあるんだけれど、そこから出てきたジェヌヴィエーヴを撮ったんだ。それが今回のジャケ写。EP『Spirit』では、ニュージーランドの湖で撮った彼女の写真を使ったし、どうやら水と関係した写真が多いようなんだ。普段から自然のなかで暮らして、海や湖、温泉などと接しているせいかな。僕たちの生活の一部という感じだね」

――ミュージックビデオにもいつも美しい女性が登場しますよね。女性を美の象徴として捉えていたり、崇めているわけですか?

 「“崇める”はいいね(笑)。うん、インスパイアを受けてる感じかな。彼女からインスパイアを受けることは多いし、お互いにそうありたいと願っている。彼女の写真を撮るのは、僕にとって大きな楽しみのひとつなんだ。写真を撮るのが大好きだし、ほとんどオタクと言えるかな。僕の表現欲を満たしてくれるし、ジャケ写は僕の音楽をビジュアル的に表現してくれるんだ」

――「Black Rain」のMVでは俳優のアーロン・テイラー=ジョンソンが上半身裸でひたすら踊っていますよね。

「パンデミック下のロサンゼルスでビデオ撮影するのは、とても大変なんだよね。4人以上で集まるとかって。元々アーロンとは親しい友人だったし、僕のビデオで踊ってほしいと頼んだら、二つ返事でOKしてくれた。それに彼のほうから“だったら妻のサム(・テイラー=ジョンソン。映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の監督として知られている)に監督も頼んでみる?”と提案もしてくれた。お互い近所に住んでるから、いっしょにディナーをしたり、よく会ってるんだ」

――あのビデオにはどのようなメッセージが込められていますか?

「アーロンは若い頃にバレエを習ってて、今でも毎日サーフィンをしているから、とても強靭な身体をしている。見れば分かるけど、内なるパワーも強靭なんだ。彼の演技もそうだけど、ある意味、天才的だと思うな。僕があのビデオで伝えたかったのは、2020年に起こった数々の苦難を乗り越え、打破しようってこと。「Black Rain」は、カリフォルニアなど西海岸一帯で起こった山火事をテーマにした曲で、自宅を天災で失ってしまう恐怖や、そんな試練や障害に立ち向かい、乗り越えようと歌っている。彼は踊ってそういった障害を跳ねのけてくれたんだ。単に踊ってるだけのビデオと映るかもしれないけれど、そういうメッセージも込められている。とはいえ、何となくでもいいんだ、そういう感じを受け止めてくれたら」

――ライの活動を通して、音楽で人々に癒しを届けたいと考えていますか?

「制作しているときは、そんなふうには考えないし、考えないようにしているけれど、ライの音楽を聴いて癒された、穏やかな気分になったとはよく言われる。音楽って重要なカルチャーじゃないかと思うんだ。世の中にある美しい行為って、じつはそれほど多くはない。鉱山を採掘したり、油田開発や森林破壊など、そうした行為には美しさは見出せない。人間性の素晴らしさが発揮されるのは、やはりアートじゃないかと思うんだ。アートを創造することは、人間がなせる最も美しい行為のひとつじゃないかと。なかでも音楽は、すぐさま人々に訴える力を持っている。知性ではなく、感情面に訴えかけることができる。すべての音楽が癒してくれるわけではないけれど、音楽による癒しは創造するクリエイター側と、そしてリスナー側にも作用する。ストレスが溜まりがちな今日この頃だけど、僕にできるのは、そういう穏やかな気持ちを届けることじゃないかと思うんだ。僕の役割は、メロウな音楽で人々を癒す。そういうことだと思うんだ」

(おわり)

取材・文/村上ひさし



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ライ
Rhye『Home』
2021年1月22日(金)発売
UWCD-1096/2,750円(税込)
Caroline International




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