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――公開から約1年経過して映像化ということで、改めて作品から受ける印象の変化はありますか?

澤部 渡「僕はそんな変化はないんじゃないかなと。でもそれって作品の強度だったりするのかなと。状況とか環境に左右されない芯の強さみたいなものは最初見た時から感じてますね」

――岩井澤監督は映画が公開されて以降の反響を訊いていかがですか?

岩井澤健治「そこはいろいろイメージしていたので。生意気なんですけど、イメージどおりなところもありつつ、結構海外に広がったのは意外だったなというのはありましたね」

――いわゆるジャパニメーション的なものではないところで映画賞を受賞していると思うんですが。

岩井澤「そうですね。海外での一般公開はこれからなんでわからないですけど、国内は『音楽』ってタイトルのどおり、音楽好き、特にそれこそフジロックとかに毎年行く層に届かないかな……っていうのはありましたね。実際、音楽方面にアプローチできたのか、見事にギターケース抱えた若いミュージシャンの方々が見にきてたりしてたんで(笑)」

澤部「ああ、いいですねえ」





――マンガ原作であるというところで澤部さんの思い入れはありますか?

澤部「ありますよ。やっぱり大橋裕之さんは好きで、それこそ『音楽』も、太田出版から単行本で出る前の自主出版ので読んでたので、それがまずアニメになるって時点で“最高だな”とは思いましたね。だって、大橋さんのマンガってマンガでしかありえないものじゃないですか。それを敢えてアニメーションにしようっていうのはほんとにすごい挑戦をされるんだなと思いましたね。逆を言えば僕もずっと大橋さんの作品はマンガじゃないと、とか思ってたんですけど、決してそんなことはなかったんだみたいなことは改めて考えさせられた部分ではありましたね」

――これはネタバレにならない範囲で、アニメとして澤部さんが驚いたたところはどこですか?

澤部「どこだろうなあ……でもいちばん最後に研二がシャウトするシーンとかっていうのは、あれこそ音楽とマンガの関係値としては、相当いいと思うんですよ。原作の描き方がね、それをどう飛び越えるか?っていうのをずっと気にしながら見てたんですけど、まさかああいう形になるとはと思ってなくて。しかも最高じゃないですか(笑)。あれはやっぱ驚きました。あそこは好きですね」

――全てにおいてリズムや間が特徴的なアニメーションで。

澤部「音楽的ですよね」

岩井澤「アニメだと珍しいというのがね。実写はいろんなタイプの作品があるので、結構やり尽くされてることなんですけど、アニメーションってなった瞬間にすごく珍しかったり目を引いたりっていうのはあるんで。そこはすごく意識してたんですけど」

澤部「しかもロトスコープですもんね」

――さらっと見ちゃいますけど、そこには執念が?

岩井澤「僕はもう何も知らずに見てもらって、面白かったっていうのがいちばんいいですけどね」

――知らずに見ると最初はいろいろ戸惑います(笑)。

澤部/岩井澤「ははは!」

――ちなみに岩井澤監督が澤部さんに劇伴を音楽をオファーされた理由は?

岩井澤「どうしてもこういうインディペンデントな映画なので、まわりのミュージシャンの方にお声がけさせていただいて。ま、大橋さんがミュージシャンとすごく交流があったので、そういうところで相談しつつ、座組みを考えていく中で、澤部さんとGellersはわりとタイミングがあいまして。それで澤部さんにお願いできるとなって、もうぜひお願いしたい!と。フェスのいちばん最後、みんなでセッションするところのイメージを僕なりにお伝えして、たぶん澤部さんの中のイメージっていうのもあって」

澤部「イメージありましたね。やっぱりもともとマンガが好きだったんで」

岩井澤「で、じゃあ試しで作ってみますって感じで作ってもらったのが、すごい良くて。だから僕としては何度もやりとりしてやっと形になったっていうわけではなくて、ほんとに一回の打ち合わせで上げてきた曲で、じゃあスタジオ入ってちょっと音合わせてやりましょうみたいな感じで形になったんで。なんかすごいそこはあっという間というか。澤部さんは相当苦労されたのかわかんないですけど(笑)」

澤部「いやいや(笑)。逆にイメージがしっかりあったんで、楽でしたよ。しかもそのイメージが合ってるぽかったので。そういう意味では楽って言うと変ですけど、見えてるものに向かって行けばよかったので、そういう意味では楽しい作業でしたよ。マンガの“せーの!”って言ってみんなが始めるでしょ?とにかくあれだ!と(笑)。じゃあ楽器を初めて持った人が何をするんだ?みたいなことは考えて。開放弦を弾くのか弾かないのかみたいなことはかなり考えました」

――ははは!

澤部「たぶん、押さえるだろうなと思って。でもやっぱパンク的なものでなきゃダメだからAの音にしようとか、なんとかそういうことは考えましたね」

――リアルの世界でもああいうことをやりますよね。

澤部「そうそうそう(笑)。そういうものにはしたい。やっぱそういうマンガだったし、そういう作品だったので。やっぱりそこに向けて行きたいなとは思いましたね」





――監督の中にはプログレッシブなイメージがあったそうで。

岩井澤「そうですね(笑)。プログレでっていう漠然としたものがあって……」

澤部「オマージュもありましたよね」

岩井澤「プログレって僕のイメージでは即興性もありつつ、セッションに近い部分もあるのかなあと思って。もっと言えばジャズとかの方がセッションに近いんでしょうけど。ベースとドラムだとたぶんプログレっぽくなるかなと」

――CANみたいな?

澤部「ああ、でもCANとかクラウトロックのイメージはどっかであったと思いますよ。やっぱりああいうハンマービートじゃないですけど、トランシーにならないといけないから、“ループだ!”とか」

岩井澤「そこにリコーダーが入るからジェスロ・タルの雰囲気も出て……っていう(笑)」

――それをすでにポップな音楽を作ってる人が再解釈するっていうのが面白いですね。

澤部「そう思ってもらったんだったらうれしいです」

――でもちゃんとアンプとかもあるんだ?とか、いろいろ驚きましたけど。

澤部「最後の最後まで響き線を上げるか下げるか迷ったんです。初めて楽器を触って響き線を上げないだろうなと思ったんですけど、監督が“そこはちょっとファンタジーにしちゃってもいいんじゃないか”っていう提案をしてくれて、それで、よし、じゃあ上げよう!と思いましたね(笑)。音楽的にはやっぱりロック的なものではあるので、スネアの響き線をあげた方がカッコよく響くんですけど、たぶんあの3人だったらそんなこと知らないで下げたまんまドンドンってやっちゃうだろうなと。そこは最初一回悩んだところですね」

――ちなみに音楽と劇伴の関係で理想的なものってありますか?

岩井澤「劇伴は気分が高揚するのがいいと思うんですけど、例えばハリウッド映画だと昔の名曲をいっぱい使うじゃないですか。それが羨ましいなと思って。完全に劇伴というか、この曲使いたいからここに入れる、たぶん、脚本書いてるうちからイメージがあってだと思うんですけど、それを入れてるから、それがやりたいなと思います。でも分かりやすいのはタランティーノとかですかね」

――確かに。一音鳴ると思い出す感じで。

岩井澤「あとはウェス・アンダーソンとかも、めちゃくちゃ、その辺昔の名曲使ってるんでね(笑)」 ――名曲の空気感とともに映画も思い出しますし。

岩井澤「だから僕も今回の『音楽』の劇伴はこのミュージシャンぽいなというのは楽しんで提示してたりしてたので。結構、露骨にそれっぽいのとか、元ネタがちょこちょこあったりするんですよ。過去の名曲のイメージを引っ張り出してきてはめ込むっていうのはやっぱやりたいんで」

澤部「ちなみに僕は音楽と映画だと『東京上空いらっしゃいませ』で「帰れない二人」を歌うシーンがあるんですよ。それがすごい好きだったなっていうのは今、フィルムワークス見て思い出しました」

岩井澤「古いですね」

澤部「最近ようやく見たんですよ。友達が“いや、見た方がいいよ”って言ってたんで。ずっと「帰れない二人」の音源は別の友達がよくDJとかでかけてて最高!と思ってたんですけど、実際、映像でみると“うわあ!”と思いましたね」





――音楽的なバックボーンは何か共通するものは感じますか?

澤部「そういう話をする前に、って感じだったと思うんですよね」

――じゃあ、今、お聞きしてもいいですか?

澤部「僕は……なんだろう?何がバックボーンなんだろう?っていうのは前からあるんですよね(笑)。でも、ほんとに小さい頃、幼稚園の頃に光GENJIとかが好きで、その頃は人気という意味では下火だったと思うんですけど、なぜか好きで。その後、小学校あがってプリンセス プリンセスだとかリンドバーグだとかいう時期を経て、小学5、6年のころにYMOに行くんですよ。なんかYMOに行ったら、それまで見えてなかった世界もパーって開けてっていうタイプですかね」

岩井澤「澤部さんの曲、めちゃめちゃポップじゃないですか」

澤部「はいはい」

岩井澤「結構、意識してポップになっているのか、それはどうしてなんですか?」

澤部「僕はyes, mama ok?っていうバンドがすごい好きなんですよね。日本のバンドなんですけど、渋谷系の時代の。そのバンドに出会ったのが第二、第三のショックだったんですよね。それがものすごくポップで、でも分かりづらくて、みたいな。分かりづらいことがこんなにポップになり得るんだ、みたいな風に思ったんですよ。それで自分が音楽をやるときのテーマはポップなんじゃないか、と思って、それからポップとはなんぞや?みたいにやってるって感じはしますね」

――監督の背景は?

岩井澤「僕は作るわけじゃないんでね(笑)。リスナーとしてはチャゲアスとか聴いて」

――澤部さんもすごく聴いてた時期があるんでは?

澤部「めちゃくちゃ聴いてます。この5年ぐらいでめちゃくちゃファンになって」

岩井澤「あー(笑)。チャゲアスはなんだかんだ一時期、いろんな洋楽とか聴くようになって聴かなくなった期間が長くなって、改めて聴いてみるとめちゃくちゃいいよな、って(笑)」

澤部「とんでもなくいいですよ!」

岩井澤「当時はただ流行ってるから聴いてたっていうところはあるけど、いろいろ聴いてまた戻ってみると、すごいんだなっていうのが」

澤部「「SAY YES」が300万枚近く売れるってすごいことですよ。音楽的にはもはや不気味の域まで行ってますからね」

岩井澤「ははは!最近、また実家で聴いてみたら、すごいと思って。その後、ミスチルにハマって。ミスチルはずーっと。今でも聴いてるんですけど」

――いつ頃ハマったんですか?

岩井澤「いやそれも流行ってたんで(笑)。高校生の頃とかたぶん、流行ってるだけなんで。で、二十歳過ぎてから、昔の70年代のロックにハマって。単純に僕は仕事でパソコン作業とかしてたので、音を聴きたいと思って、タワレコ行ったら1000円で20曲のT-REXのベストがあって。T-REXは何曲か知ってたから“1000円で20曲も入ってたら得じゃん!”と思って。それで聴いたらハマって。70年代ロックいいなと思って、そこから他のミュージシャンの1000円で聴けるベストを買い漁って」

――それはちょっと今のニュアンスにつながっているのかもしれないですね。

岩井澤「そうですね。そこからどんどんハマってプログレとかなんか。それを今回『音楽』をやるときに、こういうのこういうの!って(笑)」

――なるほど。今回、原作がありますし、その音楽がどうあるべきか?っていうのは悩んだんじゃないですか?

澤部「そう、迷いましたよ。だから“いや、ぴったりだよ”っていう人もいたし、“いや、もっと速いパンクっぽいものだと思ってたわ”っていう人もいました」

――そこは坂本慎太郎さんとかのセリフとか全部入った時にしっくりくるというか。

岩井澤「そこら辺は全部、固めたんです。坂本さんが主役だからもう、説得力があるでしょうっていう(笑)」

澤部「うんうん。もうちょっと甲高い声の人が声をやってたら、もしかしたらちょっとパンクっぽい方が映えてたのかもしれないですけど、個人的には坂本さんのあの調子の声だし、坂本さんの音楽性もあるので、意外と僕はマッチしたんじゃないかなって、完成版を見て僕は安心したんですよ。手法的にロトスコープだし。ある程度見せてもらってはいたんだけど、どういうシーンで流れるとか、そういうことは原作の方が先にあったので、それが実際、アニメにどう仕上がっていくのかっていうのは結構、出たとこ勝負だったのかな」

岩井澤「ま、言ってしまえば計画性なくずっとやってたので(笑)。偶然性みたいなところがすごくあって。たまたまこうなったという」





――澤部さんが監督に聞きたいこの映画の秘話はありますか?

澤部「えー、どうだろう……でも2015年でしたっけ?フェスのシーン撮った時、“出来た”って言われた時はびっくりしたんですよ(笑)。実際、僕もクラウドファンディングとか、お金出したぐらいだったんですけど、ほんとに出来たんだ!と思いましたね。よく気が狂わずに、制作できたなとは思っちゃいましたよ」

岩井澤「でも別にね、特別すごい執念で、っていうのはなかったんですけどね」

澤部「僕らは結構“執念だな!”と思って見たんですけど、意外とちゃんと距離を適切にとって制作をされてたって感じなんですね」

岩井澤「まあ、いろいろ考えようというか、描いてても描いてなくても時間は経つから、じゃあ描いとくかとか(笑)。そういう考え方のもとで。なんか趣味の延長みたいな、根つめて、ガー!っていうのは後半はやってなかったんで。まあ、クラウドファンディングやって、それでお金がガッて集まって、スタッフをまた集められた時は集中するようにやりましたけど」

――それでモチベーションが上がって?

岩井澤「そうですね。フェスもそうですけど、モチベーションが上がるようなことが合間合間にあったんで、そこでがんばれたっていうのは常にありましたね」

――まだリアクションはわからないですけど、海外でも受賞してますし、北米やヨーロッパでの上映も決まっていますね。

岩井澤「アジアもそうですね。北米、フランス、イギリス、韓国、台湾、中国が、今、決まってて。たぶん今後の状況で賞レースとかが年末から来年にかけてあるんで、そういうのでいろいろ変わると思うんで。ま、北米とかはね、すごい大きいですね」

――北米で評価してる人たちの感想はどういうものなんですか?

岩井澤「カナダで上映させてもらって、わりとコメディ映画として受け入れられてる感じがしましたというか。笑えるアニメみたいな。で、最後、ちょっとエモいみたいな。そこら辺のバランスもアニメ作品だと珍しいんだろうと思います。日本のアニメは海外だとすごいマニアックなジャンルで、ある程度需要があるんですけど、海外だとアニメファンに向けて、もうほとんど日本のアニメ買うところは決まってるんです。ジブリも『音楽』も北米では同じ配給会社で、日本アニメっていう括りの中に入ってるので、日本のアニメ好きな人たちに向けてアピールするみたいなんですけど」

澤部「日本国内のマーケットと全然違うところじゃないですか(笑)。そういう人が間違って見ちゃって、グッときちゃうみたいなのは最高ですよね。なんかそういうことが日本でも起きて欲しいですね。『君の名は』見た人がなんかの間違いで『音楽』見て、わー!ってなっちゃうみたいなのはいい話ですね。北米の人、羨ましいな(笑)。どうしてもカルチャーって背景があるじゃないですか、日本でやると。それがフラットになるのっていいですねえ」

岩井澤「そうなんですよ。有名無名も関係ないので」

――逆に日本では、『アメリ』がホラー映画の買い付けだったっていう有名な話がありますよね。

澤部「そうなんだ」

岩井澤「たぶん、監督の名前だけで買ったんですよね。カルト映画をずっと撮ってた監督だからカルト映画だろうと思って買ったら“あれっ!?”っていう」

――でもヒット作になったという。そういう偶然性というか、まっさらな状態で見てくださいっていうのは日本では難しいかもしれないですね。

澤部「かもしれない。ていうか、そのまっさらになり得る作品だとは思いましたけどね、『音楽』は」





――澤部さんは『音楽』に関わってみていかがでしたか。

澤部「完成したって言われるまで、正直忘れていた部分がすごい大きかったんですよ。僕、TwitterだかYouTubeの予告の動画があって、その後ろでボボボボの音楽のデモがかかってたんですよ。自分が作ったってこと忘れてましたね(笑)」

――ははは!それって幸せなことかもしれない。

澤部「で、バンドのメンバーに“予告見ましたよ。予告の音楽かっこいいですね。誰が作ったんですかね?”、“誰が作ったんだろうね”って言ってたんですよ。そしたら自分だったという」

岩井澤「ははは!」

澤部「それぐらい忘れてた部分もあるんだけど、僕にとっては2015年の夏の記録が残ってるっていうのが、まずうれしいんですよ。作品っていうのも大事だったんですけど、出来上がってみたら、“2015年の夏ってこんなんだったな”っていうのが作品に残ってしまったんだっていうのが、すごい個人的ですけど、それがうれしかった」

――『音楽』が生み出したものは次に何につながっていきそうですか?

岩井澤「それこそ世界で勝負できるなっていう手応えはあったので、次は海外のマーケットを意識した感じの作りをしないとなっていうのはありますけど。ま、意識しすぎるのも良くないので、あくまでも自分のやりたいことをやりつつ。こう見えていろいろ計算してるので(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/中村 功





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