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――ちなみにミニアルバムのタイトルはなぜ血液型なんですか?

平沢あくび「『ニガミ17才a』をリリースする時に、なんかシンプルなタイトルをつけたいって岩さんが言ったので、それなら“a”ってシンプルに行くかってなって。そうなるとずっと続くじゃないですか、yまで」

岩下優介「ん?yまで(笑)」

平沢「あ、zです。惜しい(笑)。まあ1年に1作づつアルバムを出すとしたら、4年後までに完結できるものとして、a、bまで出して次がcかと思いきや、血液型にしてabとoを同時に出す!みたいなのをやりたいねって話をしてたんですよね」

岩下「そうね。やっぱこう、根底に驚かしたいとか、違和感を与えたいみたいなのがあるので、そこかな。で、4作ぐらいがマンネリも起こさず終われるかな……みたいなところかもしれないですね」

平沢「今回、数量限定盤にDVDがついてくるんですけど、そのDVDのタイトルを「ニガミ17才ab」にしました」

岩下「これにて完結です」

――今回、前作から2年半ほど空きましたが、何があったんですか?

平沢「2019年はリリースもしてないのにメディアに出る機会が増えた不思議な年だったんですよね(笑)。まだマネジメントもなくて私たちだけでやってて、メール対応とかしてた時期に何でメディアのお仕事が来るんだろう?って私たちも分からないままにお仕事いただけるようになって。お客さんも増えて、じゃあライブを打とうかってなったら何故かキャパが上がったり」

岩下「“リリースしてないのにハコのキャパが上がったね”って(笑)。不思議」

平沢「よくわかんない動きというか。メディアに出たこともなかったので、どういう印象になっちゃうのかとか、メリットやその逆に感じる部分も話し合いながら、“どう見られたいんだろうね”って話をする機会がすごく増えたました。YouTubeにも挑戦してみたり」

岩下「音楽活動はしっかりしてましたし、やっぱ『ニガミ17才b』はもっと評価されていいと思ってましたから、このぐらい期間を開けたとしても飽きられる筋合いはないというか、そんな感覚ではありました」

――ちなみに“おしゃれかつ変態な音楽の表現を標榜する”というテーマはわかるんですけど、実際はそれだけじゃないってところがありますね。あくびさんもこのバンドから楽器を始めたとは思えないですし。

岩下「そうなんですよね。あくびはまだ“生まれたて”なんで、技術はないですけど、天性のポテンシャルみたいなものをメンバーの中でいちばん備えているので、そこはニガミの強みでもありますね」

――大きなメディアに出ても、あくびさんが変に狙ってないからいいように作用している気がします。

岩下「あくびの芯のブレなさ、男気って言うと時代錯誤ですけど、芯がしっかり通ってるのは僕もめちゃくちゃそう思います。あくびがメディアに出るのはニガミ17才のためで、自分が注目されたいという欲がある娘ではないので、すごく頑張ってくれてるなって感じです」

平沢「ニガミを何きっかけでもいいというか、“女の子いるなあ”みたいな目的で聴き始めてもらってもいいと思うんです。ニガミ17才の音楽はかっこいいという自信があるので、もうそこはどんな手段でも引きずり込めたら。そうすれば、ここに曲作りの天才がいるので。こっちはどうやって看板として店の中にお客さんを取り込むか?という思いもありました。メディアに出始めた時はニガミだけじゃなくて、バンドマンというか、音楽界全体にもっとスポットが当たって欲しいって思いがあって。バンドマンでも他にもっと個性的な人がいっぱいいるし。私は、バンドがテレビに出るのは媚び売っててダサいみたいな風潮を感じていたので、そうじゃない道を作れないかなという思いもちょっとあったりしました」

――それが自然にやれてるからいいんでしょうね。ちなみに『ニガミ17才o』の制作自体はいつ頃からやってたんですか?

岩下「しっかりやり始めたのは……6月末に17時間の生放送をやったんですけど、そのエンディングの時にサプライズで発表されたんですよ。ニガミのメンバーとスタッフが画策して、いついつリリースっていうことを配信ライブ中に先にWEB上で発表したんですよね」

平沢「11月17日にはリリースしますってニュース出した後で岩さんに報告して。なのでこれから曲を作りましょう!みたいな(笑)」

――岩下さんはポカーンですね(笑)。

岩下「ポカーンというか怒りですね(笑)。めっちゃ怒ったんですよ、内心。だけどあくびの思いというか、メンバーから岩さんはこれで燃え尽きて欲しくないと」

平沢「17時間生配信という企画をしたのは、ツアーも全部飛んでしまって、それに替わるものはないか?ということでライブ配信をやろうってなったんです。でも、配信っていっても、ライブに大事なのって一体感なんじゃない?ということになって、そうしたら配信ライブだけでは一体感が出にくいよねということで、じゃあ早朝6時から17時間ぶっ続けで生配信をするのはどうかと」

岩下「グルーヴを出そうと(笑)」

平沢「視聴者の皆さんもライブまでの10何時間を通じて、メンバーがどんどん疲れてく様子とか、岩さんがどんどん声が枯れてく様子を実際に見て、最後にライブっていうそこまでの過程も含めて見てもらう方が、より一体感が出るんじゃないかみたいな趣旨でやったんです。で、岩さんが――まあツアーが飛んだという思いもあったんでしょうね――がっつり集中したんですよ。でも性格的に、燃え尽き症候群タイプなんです。終わったら何もしなくなる。“ただでさえリリースできてないのにそれはまずいな”と(笑)。“あ、先にリリースを発表すればいいんだ!”と思って」

岩下「発表しちゃったらもう変えられないという状況まで追い込んでくれたって思ってます」

――岩下さんの性格をうまく汲んだと。ところでニガミのデモってどれぐらい作り込むんですか?

岩下「それがこの『ニガミ17 才o』からだいぶ変わった部分というか、今まではデモっていうかほぼ完成版みたいな」

平沢「岩さんがドラムも鍵盤もギターも、ベース以外全部完璧にして曲が送られて来るみたいな状況でしたもんね」

岩下「と、いう状況だったんですが、今回はほんとに4人で、たぶんゼロから10までみんな付き添ってくれました。春から作業部屋を借りたんですけど、そこにみんな朝から集まって、俺が帰るちょい前まで自分の作業もないのにソファに座って俺の作業見てるみたいな……そんなことをやったんですよ」

――ちなみに今回の収録曲ではどの曲がいちばんはじめにかたちになりました?

岩下「「& Billboad」です。タツルボーイ(イザキタツル)がゼロイチで持ってくるみたいなこともあるんですけど、今回はまさしくそれで。タツルボーイが持ってきた「& Billboad」の最初の演奏を初めに聴いたとき、僕の琴線に引っかかってなかったんですが、グルーヴとか全部変えたのかな……で、それをレコスタでやってて、僕はそこにいなくてメンバー3人とエンジニアさんでこの「& Billboad」を詰めて“こんなんどうですか?”って提出されたやつが“あ、めっちゃかっこいいかも!”、“これだったらこういう歌付けたらどう?”と思えたんで、最終的にすごくいい曲ができた」

――岩下さんが曲を完全に作り込んでくるのをやめたっていうのは音像に出てる気がします。音数が少ないし、入ってる音の意味が明確だし。

岩下「今までも入ってる音の意味は明確なんですが、メンバーと話し合う時間が格段に増えたというのはあるかもしれませんね」

――とは言え、当たり前のように4ピースバンドの曲とは思えないというか、生音なんだけど切り貼りしたビートもあるじゃないですか。

岩下「うんうん、それめっちゃわざとやってますね」

平沢「1回音全部録って、それを岩さんが切って“こんなのもあるんだよ”みたいに作ってるの聴いて“うわ!それ面白い!”みたいになって……1曲目とかもね」

――「Jimmy Perkins」は、最高に謎な曲ですね。

岩下「あれはセッションしたものの、冒頭10秒くらい使って作りました。10秒くらいを分解したり、ピッチ変えたりで全部やりくりしてるので」

――仮歌なのかな?という。そしてこの何語かわからない歌詞はなぜなんですか?(笑)

岩下「これは僕的には実験というか、さっきも言ったように10秒くらいを――悪いようにいうと使い回してるんですけど(笑)――歌も1番と2番、同じ素材を使ってるんです。だけど、歌詞を見ながらこの曲を聴くと、違うことを歌ってるように聴こえる。そうすると歌詞をフィーチャーできるというか……」

平沢「より歌詞を見てもらえる」

岩下「歌詞の考え方をちょっと変えれないかな?と思って、やってみた曲ですね」

――“ジミー・パーキンス”はどんな存在ですか?

岩下「マジシャンで詐欺師というか……最後、なんかある理由で魔法がかかっちゃって世界が変わるんですけど、この人自体が僕は過去の人なのか未来の人なのかはわかんないなと思ってます。めちゃくちゃ過去の人か、めちゃくちゃ未来の人だと思うんですが……」

平沢「私の解釈と岩さんの解釈は違ったんですけど、私はいちばん最後、魔法が間違ってかかって、で、さっきまでは何言ってるのか聴き取れてなかったのに、私たちに魔法がかかったから“ヘイ、ようこそ新しい世界へ”から日本語としてちゃんと聴こえるようになった……って思ってます」

岩下「それはリスナーに?」

平沢「そうそう。リスナーに魔法がかかってしまったから、“ようこそ”って歌ってる日本語が聴こえるようになった……みたいな解釈をしたんです」

――あくびさんの解釈だとリスナーとしてアルバムに入りやすい気がしますね。

平沢「ですよね。魔法にかかって“ようこそ”からアルバムが始まっていくと思いきや、次は「こいつらあいてる」じゃないですか。“アイ!ツゥワイ!”ってまた違う国の言葉始まった!みたいな(笑)」

――「こいつらあいてる」ってどういう意味かわかりませんが(笑)、個人的には、最近、失恋ソングが多いことに対して“ケッ!”て思っていたりして。

岩下「ああ、でもまさにそうです(笑)」

――あとは承認欲求の塊みたいな人のことなのかな?とか。

岩下「うん、そうです。意味的にはもうひとつあって、結局、愛を説くっていうことは大人もやるし、子供もやるし、そういうもんだよねっていう、そういう“だよね”って気持ちもあります。“ケッ!”て気持ちがありつつも、当然だよねと思う気持ちもあるし。お金のために愛を説くのは簡単だし、いちばん手っ取り早いし(笑)。子供たちは“愛つらい、恋つらい”ってSNSで呟くことが楽しいんだろうし」

――リード曲の「オフィシャル・スポンサー」は映像が浮かぶような歌詞も特徴的で。

岩下「主人公の記憶なんですよね。幽霊のような目線の君が言ってるセリフ」

平沢「主人公の頭の中にある女の人のセリフを私が言ってる感じですね」

岩下「でも記憶っていうのは曖昧なものなので、はっきりは覚えてなくてもそういうふうに、言った言葉をアナグラムして記憶してるかもしれない……みたいなところかも」

平沢「「幽霊であるし」もそうですし、今回出てくる“幽霊”って言葉は岩さんは過去のあやふやな記憶のことを言うんだなって。発見ですよねこれ」

岩下「「幽霊であるし」は学生の頃の記憶をちょっと思い返したりしてる主人公みたいなことですかね。アルバム全体でいうと結構、時間旅行みたいなイメージがあって、未来と現在、過去。で、未来の過去は今で言うと何だ?、最新のものってなんだ?とか、結構ベタにみんなが思うことを改めて言いたいなと思って表現しました」

――その「幽霊であるし」はそれこそ楽器も打ち込みの音も、リズム隊と上物みたいなバランスじゃない感じがして。トラックメーカーじゃなくてバンドでやってるっていうのがかっこいいなと思いましたね。

平沢「岩さんがよく言うんですけど、リズムがかっこよくないと曲が進まないんですよ。曲を作るときに。だからドラムのスネアの位置とシンバルの位置とかの作業を大袈裟じゃなく、2、3ヵ月やるくらい。「幽霊であるし」は、もう岩さんの曲作りの画面がすごい緻密なことになってて。一個でも足りなかったら岩さんの中では崩壊するのかな……くらいすごい細かく作って、そこに対してベースのタツルボーイに“これでベースつけて”みたいな感じの作り方で、たぶんタツルボーイだけがその構図を見ただけでなかに入り込める作り方だったと思いますね。「幽霊であるし」に関しては。もう私とこっちゃん(小銭喜剛)で、どれがシンセの音で、どれがドラムの音なのか、“これはこっちゃんだよね?叩くの”みたいな(笑)。そういう話し合いが必要なぐらい、この音はなんの音なんだろう?って話もしてました」

岩下「「幽霊であるし」は緻密にやった最後かもな。逆に緻密ゆえに出ないものって結構あったりするんですよね。4人で作ることによって、緻密さみたいなものは「幽霊であるし」よりは劣ると思う。あそこまでがっつり時間をかけてやってないから。でもそれをやったところで良くなるかって言ったらそうじゃないような気がする。こいつらはこいつらで“これがいちばんかっこいい”って思うというか……今はそのブームなのかな。俺が」

平沢「そうなのかもですね。めちゃめちゃ緻密にやるブームが一回過ぎ去ったのかもしれないですね。前作に入ってる「化けるレコード」とか、全部、岩さんが細かくやってたので」

――ちなみに岩下さんの今の影響源って?

岩下「影響源……でもメンバーですかね。メンバーがいちばん。ニガミが正しい答えを持ってるっていう感じですかね。かっこいいか、かっこわるいか、もし迷った時はメンバーに聞いたら大丈夫って感じ」

――じゃあ岩下さんに音楽的なブームが到来してるというより、メンバーにこれをやってほしいって気持ちで作ってる状態ですか?

岩下「いや、もっと単純にメンバーが喜んでるのを見たい(笑)。テンション上がってるのを見たい」

――じゃあみんなが嬉々として演奏してるとか、夢中でアレンジしてるのが楽しいんですね。

岩下「そうですね。アーティストが“売れよう”って書いた曲なんていちばんダサいことになると思ってて。自分がかっこいいってものが根底にないと売れる曲は作れないって思ってます。4人がかっこいいって思えてるもの、それがあって、気持ちの乗った音源が売れるっていうのが売れるってことだと僕は思いますね」

――勝手にリリース日まで決められて無事完成したわけですが、音楽的な達成感は?

岩下「結果150パーセントくらい満足してます。めちゃくちゃいいアルバムができたなと」

平沢「私もそうですね。作る過程のゼロイチのところから見ていたし、話し合ってできた曲ばかりなので、その時のいろんな感情も乗っかるし。世界観みたいなものもちゃんとテーマがあってアルバムを作ったのも初めてだったので、なんかそういうのも含めて思い入れがあるアルバムでもありますね」

――そして今年ももう終わりますけど、この先のニガミ17才はどこへ行こうとしているんでしょうか?

平沢「明後日メンバーみんなでキャンプに行きます」

岩下「違う違う(笑)」

――やー、その話も聞きたいですけど(笑)。

岩下「まさかキャンプに行こうとしてる話がここで出るとは!違くって、目標というかそういう話」

平沢「あー!わかりました(笑)。キャンプ行く話じゃなくて、将来の話ですね?すいません!」

岩下「明後日キャンプに行きます。それは嘘じゃないです(笑)」

――ははは!

岩下「ま、でもさっき言った、自分たちがかっこいいっていうものでマスを取っていきたいですね」

(おわり)

取材・文/石角友香




ニガミ17才
ニガミ17才『ニガミ17 才o』
2020年11月17日(火)発売
完全数量限定盤(CD+DVD)/EXXREC-3003/5,200円(税別)
苦味興行/EXXENTRIC RECORDS


ニガミ17才
ニガミ17才『ニガミ17 才o』
2020年11月17日(火)発売
通常盤(CD)/EXXREC-26/2,000円(税別)
苦味興行/EXXENTRIC RECORDS




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