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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



[section heading="ゲストスピーカー"]

瀬田一郎(せた いちろう)
東京モード学園卒業後、渡仏。ジャン・ポール・ゴルティエ社にて研鑽を積む。帰国後ワイズ、ヨウジヤマモト企画チーフを経て 1999年独立。2000年よりレディースファッションブランド、セタイチロウをスタート。2003 年ミラノコレクションにてデビューを飾り、ドイツの繊維メーカー、エンカ社が主催するエンカマニアプロジェクトの最優秀デザイナー賞に選出され世界的に高い評価を受ける。以降、イタリアのジボ社オリジナルブランド、ジボのクリエイティブディレクターやニューヨークブランド、トッカのブランドデザイナーなどを歴任。

[section heading="モデレーター"]

樋口真一(ひぐち しんいち)
ファッションジャーナリスト。業界紙記者として国内外のショーや展示会を中心に、アパレル、スポーツ、素材、行政などの分野を兼任し、ファッションジャーナリストに。コレクションを中心に、スポーツブランド、アートや美術展など様々な分野を手掛けている。コレクションなどの撮影も行っており、NHK BSプレミアム渡辺直美のナオミーツ、森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」カタログなど、メディアや出版物にも写真も提供している。



──ファッションデザイナーを志したきっかけから

「実家は東京の下町で祖父の代から寿司屋をしているのですが、僕は小さい頃から魚をさばくのを見ていたせいか、刺身が食べられない。近所の子供たちはみんな家業を継ぐのが当たり前のような環境の中で、"お前、何するの。寿司食えないんだったら、寿司屋を継げないじゃん"と言われて、"僕は何になるんだろう"と考えていました。その頃から、漠然とデザインに関わる仕事をしたいと思っていました。初めは建築家を考えましたが、洋服に興味があったので、小学生のときに将来はファッションデザイナーになろうと決めていました」

──それはその後もずっと変わらなかったのですか

「高校の頃には学校のサーフィンやダンスチームのトレーナーやTシャツを作ったりしていて、高校を卒業して東京モード学園に入りました。最初はメンズコレクションを作りたかったんです。菊池武夫さんがすごく好きで"傷だらけの天使"の頃から憧れていました。研修もワールドに行きました。その後ジャンポールゴルチエが好きになって、卒業するときにはオンワード樫山の海外事業部を受けようと思っていたのですが、募集していない。そこでゴルチエっぽい服のデザイン画をたくさん描いて連絡しました。最初は門前払いでしたが、3回目ぐらいに担当のデザイナーに会ってもらえました。描きためていたデザイン画を見せたら、"いつから来られるの"と言われ、"明日からでも"と答えると翌週から働くことになりました。そうして6ヶ月ぐらい働いたのですが、その頃、ゴルチエがバッグのイベントのために来日しました。パーティーで本人に"あなたのパリのアトリエで働きたい"と言うと、"じゃあ来れば"と。1ヶ月後にはパリに行きました。でも、住所しかわからない。直接、玄関をコンコンと叩いて"ジュマペル・セタ"と自己紹介しました。それでアトリエでのあだ名はジュマペルになりました(笑)」

──パーティーでゴルチエに話しかける人もたくさんいますし、売り込む人もたくさんいます。ゴルチエは本気で言ったのでしょうか

「ゴルチエから"あなたのアトリエで働きたいと何十人もの人に言われたけど、本当に来たのはお前が初めてだ"と言われました。"でも、来ちゃったんだからしょうがない"と。それで スタージュ(研修生)になることができました。もちろん、給料はもらえません」

──瀬田さんは見た目と違いますね。すごく慎重に見えるんですが。あの頃は、格安航空券もありませんでしたし、インターネットの情報もなかった

「南回りで36時間くらいかけて行ったので格安といえば格安なのですが。直行便ではなく3回ぐらい乗り換えました。しかも当時はフランで、物価も高かった。帰りの飛行機の予約もしていませんでした。初日はホテルの予約もしていなくてオペラ座の前で寝ました。ゴルチエでは半年ぐらい働きました。その頃はマルタンマルジェラもアシスタントとして働いていたので、面倒を見てもらいましたが、僕は日本人女性のメインパタンナーのアシスタントとして毎日トワレを縫ったり雑用をしたりしていました」

──半年の間にはファッションショーもあったと思います

「コレクション会場のバックステージで裏がガラス貼りになったところでアイロンをかけていたら、たまたま山本耀司さんと田山淳朗さん歩いてきて、"君、日本人?何してるの?"と言われました。"アトリエで働かせていただいています"と、二言三言話をする中で"大好きな2人の日本人デザイナーのうちの1人です"と言ったら"もう1人は誰"と聞かれて"川久保玲さんです"と答えたら、"だよな"と。日本に戻ってきて、働きたいという手紙を書いたら、じゃあ4月からという返事が来ました。帰国したのが2月だったので今すぐに働きたいと書くと、"すぐ来い"と言われて、コレクションの時期だったので手伝うことになりました」

──ドラマのような話ですね

「運だと思います。普通は山本さんたちの方から声をかけないですから。ただ、後で"インパクトがあった"とは言われました。ゴルチエのスパッツを穿いて、髪はリーゼント、長いドクターマーチンを履いていたから。だから山本さんも覚えていたのだと思います」

──ヨウジヤマモトで働きたいと言う人はたくさんいます。普通はコンテストで大賞を取っても、試験を受けてやっと入ることができるのに

「僕の場合、試験はありませんでした。ただ、面接は6回もしましたし、入社初日に全身ゴルチエの服で行ったら、着替えさせられました。異色だったと思います。最初はメンズの生産担当で、検品や出荷、発注などをしていましたが、半年ぐらいでメンズコレクションのためにパリに行くことができました。普通は2、3年しないと行くことができないのですが」

──何が良かったのでしょうか

「面白いやつだと思われたみたいです。ただ、企画をやりたかったので、生産の仕事が終わった後、毎日、会社でデザイン画やテキスタイルの柄は描いていました。あの頃は本当にがむしゃらに働きました。それが認められて"レディスもやってみないか"ということになりました。メンズの生産と企画をやりながらレディスの企画とパターンをやってみるということになったので、毎日夜中の2時ぐらいまで仕事をすることになってしまいましたが」

──それがすべて入社1年目の話ですか

「1年半でレディス専門になって、"ワイズ"と"ヨウジヤマモト"を掛け持ちでやるようになりました。すごくトントン拍子。相当ツキがなければ出来ないことだと思います。ヨウジヤマモトでは、売り上げを伸ばすことではなく、今までにない服を作ることだけを求められました」

──1999年には独立しました。当時は空気を入れた服を作ったりしていましたね

「最初の1年は本当に大変でした。風船を入れた黒いドレスなどを作っていましたが、ビジネスとしてはどうしたらいいのかわからない。その後、エンカマニアの日本代表になり、優秀賞に選ばれ、バスストップと契約を結び、ミラノコレクションにも3年間参加しましたが、造形的に美しいものを追求してもビジネスにはならないということを学びました。今は、売れるものがあって初めて挑戦できると考えていますが、ああいう経験を経て今の自分の服作りがあると思っています」

──最近は

「僕が女性に着てほしいというコレクションと女性が欲しい服で揺れることもありましたが、結局、僕は品のいいエレガンスが好きなんだ、これならぶれない、だからエレガントな服を作ろうということでオケージョン のドレスをメインにしています」

──今後の展開については

「9月には渋谷西武にフルラインナップを展開する売場ができます。また、セタイチロウブランドについてはビジネスの規模をある程度抑えながら着る人の満足度を追求していくつもりですが、今後はワークウェアなど新しい仕事もやってみたい。メンズもやりたいと思っています」

──メンズについて具体的には

「これからスタートするメンズでは自分の価値観や好きなもの、自分が着たい服を作りたい。だから、ブランド名も違います。ターゲットはエイジレス、コレクションはイヤーレス。色は黒か白で、ベージュが少し入るぐらい。アイテムは、ジャケットとシャツ、パンツ。素材は天然素材で、オリジナルのハンガーやロゴはもう出来ています。シリアルナンバー入りの服を作りたいとも思っています。展示会などは予定していませんが、年内には販売を開始できると思います。メガネなども作りたい」

──活動はかなり広がりそうですね

「今レディスでは、女性と対話しながら、今の時代背景、スカート丈やウエスト位置の微妙な変化、着やすさやリーズナブルな価格設定など、全てを考えながら作っていますし、ティー バイ セタイチロウではホールガーメントの技術者との新しいものづくりなどに挑戦していますが、自分が欲しいもの、好きなものは変わらない。ファッション以外のことをやるつもりはありませんが、メンズでは、自分の価値観を伝えるようなものも作っていきたいし、それを少しずつでも進めていければと思っています」





(おわり)

取材・写真・文/樋口真一(ファッションジャーナリスト)





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