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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN
30歳を過ぎた頃、これから先いかに「老けないか」を頭の隅っこで考えるようになった私は、ヨガを始めた。「ファッションはファンタジーだ!」と昔も今も変わらず信じ続け、自分の外観を整えるための洋服への依存度は、相当なものだと思っている。一方で、加齢という不可抗力にどう対処していくべきかをぼんやりと思った瞬間に、何かを始めなくてはならないという衝動に駆られた。
出会ったのはずいぶんと特殊なスタジオで、40年も前に日本で最初にホットヨガを始めた場所でもあった。温度40℃、湿度40%以上に保たれたその空間で90分間、26のポーズと2つの呼吸法を2回ずつ、決められたシークエンスで行うというものだ。インストラクターは見本のポーズをとったりはしない。全て口頭のダイアログによってクラスが構成される。当時はロサンゼルスに本部を置き、世界最大規模でチェーン展開されていた。
私はこのヨガにすっかりのめり込んだ。一番の醍醐味は、インストラクターの言葉を頼りに自分で自分の身体を動かしていくことである。身体のどこをどのように使うかという点にフォーカスすることには、たくさんの気づきがあり、何より集中の極みである。いわゆる「瞑想」というものは集中の先にあると言われており、まさにそういった現象が自分の中に起こっているのだ。マインドフルネスの状態である。
ファッションに求める価値観も人それぞれだけれど、それがどういったかたちであっても「心地が良い」と思える服を着る、そして気持ちが豊かになることこそが、ファッションの役割であると思う。自分にとってそのポイントがどこにあるのかを探っていく過程は、ヨガで身体を動かし感じることに少し似ている気がする。そこには心地良さと満たされる感覚、そしてファッションのパワーが宿る。
「装う」だけではなく、自分との真の調和を大切にしたマインドフルネス的な服選びも楽しいものだ。
(おわり)
文/成瀬涼子(シップス)