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――阿部真央さんにとって、2019年はデビュー10周年という節目になりましたが、どんな気持ちで迎えられましたか?
「5周年の時に比べると、やっぱり大きな節目という感じはしました。思い返すと5周年まではそれほど大きな挫折もなく、恵まれた状況だったんですよね。でも、そこから10周年までの5年はプライベートでも結婚、出産、離婚といろいろあったり、音楽活動のほうも決して順風満帆ではなくて、正直苦しい時期も多かったんです。ただ、だからこそいろんな人への感謝も大きくなりましたし、自分でも“この10年、よくやった!”と思えるというか……10周年を通過点にしたいと思いつつ、頑張ってきた自分を認めてあげられるひとつの節目でもあるのかなと思いますね」
――10周年イヤーとなった昨年は、1月の日本武道館ライブに始まり、ベストアルバム『阿部真央ベスト』のリリース、東阪の野音公演や弾き語りツアーのほか、アニメ「消滅都市」、映画『チア男子!!』、ドラマ「それは経費で落ちません!」の主題歌など、充実した1年といえるのではないでしょうか。
「そうですね。特に主題歌になった楽曲はどれも書き下ろしの作品だったんですけど、ありがたいことに“阿部真央に書いてもらいたい”と言っていただくものばかりで。10周年だからとこちらから仕掛けたわけではなく、先方からオファーをいただくほうが、やっぱりうれしいじゃないですか。そういった意味では、周年の駆け抜け方としてはもちろん、自分が今までやってきた10年の活動が認められた気がすごくしました」
――今回リリースされる『まだいけます』はおよそ2年ぶりのオリジナルアルバムですが、構想を練り始めたのは周年イヤーの時期ですか?
「オリジナルアルバムを出すことは10周年を記念したベストアルバムの段階で決まっていて。その前後にリリースした作品が比較的明るい曲ばかりだったこともあって、その当時からずっと、次のアルバムはそのイメージをちょっと壊したいなと思っていたんです」
――それは明暗のバランスを取りたかったということでしょうか?
「んー……癖ですね(笑)。私、“阿部真央はこういうもの”って決めつけられるのがすごくイヤなんですよね。いままでいろんなタイプの曲を歌ってきて、アルバムの中でもテイストがバラバラなものが多かったんですけど、まさにそれが私のやり方を象徴してるというか。決めつけられたくないし、決めつけられたものを壊しにいきたい。そういうことをついついやっちゃうんです(笑)」
――今回、1曲目から「dark side」ですもんね(笑)。
「そうなんです(笑)。でも、最初は、ちょっとダークな色にしたいなっていう、ふわっとした気持ちだけ決まっていたので、敢えてそこに寄せて曲を書いたわけではなく。たまたま出揃った曲が激しい曲だったり、情念系が多かったので、ちょうどいいなと思ったんですよね」
――アルバムを通して聴いた印象は、最初からこうしようと決めていたのかと思うくらいストーリー性を感じました。楽曲が生まれるきっかけはどんな感じなんですか?
「結構ランダムだなあ。たとえば、2曲目の「お前が求める私なんか全部壊してやる」なんかは、その“お前が求める私なんか全部壊してやる”ってフレーズとリズムが……何をしてる時だったろう?たぶん、家でお皿を洗ってる時とか(笑)。そういう時にふと出てきて。そこから“私が壊したいものって何かな?”って考える。で、私だったら、やっぱりシンガー・ソングライターとして自分のイメージを決めつけられるのがイヤだから、その気持ちを掘り下げていこうと思って書きましたね。いつもそんな感じなんですよ。もちろん書き下ろしの曲は題材がありますけど、それ以外はわりと、お皿を洗ったり、お風呂に入っていたり、車を運転していたり……ひとりで何も考えずに何かしている時に浮かぶことが多いですね」
――そうなんですね。ちなみに、あとから見返してみて、なんでこんなことを思い付いたんだろう?と思うこともありますか?
「いっぱいあります(笑)。なんで?っていうより、よく思い付いたな!っていうほうが近いかな。自画自賛じゃないですけど(笑)」
――では、『まだいけます』のなかで自画自賛したくなる楽曲は?
「そうだなあ……それこそ「お前が求める私なんか全部壊してやる」もそうですし、あとは5曲目の「pharmacy」。歌詞の中に“旅に出なよ魂 君の腕の中はpharmacy”というフレーズが出てくるんですけど、これもお風呂に入ってる時にこの歌詞だけ思い付いて。個人的にはすごく気に入っているフレーズです。それから、8曲目の「テンション」は、“私の売りは孤独”って歌詞で始まって、最後もこれで終わるんですけど、これもよく思い付いたなって思います」
――“私の売りは孤独”って詞は、阿部真央さんが歌うからこそ意味があるという印象です。
「わー、うれしい!でも、私もそう思います(笑)。この曲は自分が考えていることから辿り着いた答えなんですけど、やっぱり私って、こういう寂しさみたいなものを歌うのにぴったりなイメージなんだろうなとずっと思っていたんですよ。それは自虐とかではなく、ある種の強みみたいな。いままでいろんな経験をして、いろんな歌を書いてきているから、“私の売りは孤独”って私のためにあるような言葉だなって。これ、すごく気に入っているフレーズです」
――そのフレーズを、ちょっと前でも、ちょっと先でもなく、“いま”思い付いたことにも意味がありそう……やっぱり歌うべき時に歌うべきものが降りてくるんでしょうね。
「それは、かっこよすぎる言い方ですけど……あると思います(笑)。というのも、私、今回のアルバムを作って、ひとつ思っていることがあるんですよ」
――どういったことでしょう?
「10周年を迎えた昨年はライブもたくさんさせてもらったんですけど、そのなかで“自分のあらゆるリミッターを外す”ってことをずっとテーマにしていたんです。この10年、自分の中には反骨精神であったり、いつも煮えたぎっている不満が常にあって。でも、それを表に出せるのは曲の中だけだったんです。そういう自分の気持ちを、たとえばライブとか、こうやってインタビューしてもらうっていう時に説明しようとすると、いい子でいたい自分も出てきちゃうんですよ。でも、そうやっていい子でいたいと思う自分が、ずっといやだったんですね。そんな自分を壊したい、変えたいと思って、これまでいろんな曲を書いていたんですけど……でも、10年経ってもやっぱりいい子でいたい自分は消えなくて。どうしたらいいんだろうって思った時に、いい子でいたい自分も自分の一部として受け入れちゃおうって決めたんです」
――それはいつ頃ですか?
「10周年の始めだから、2018年の終わりから2019年の始めにかけてですね。その時にすごく強く思いました。で、実際に受け入れた瞬間、すごく楽になったんです。しかも、不思議なことに、いい子でありたいと思う自分を受け入れたら、逆にいい子じゃなくなれるというか。よく、ありのままの自分を受け入れろって言うじゃないですか。何言ってるんだろう?ってずっと思ってたんですけど(笑)、その時初めて、こういうことか!と思いました。10周年の幕開けでそういう経験をして、その心持ちで臨むライブがすごく楽しかったんですね。いい子でいたい自分もいるけど、やる時はやり切っちゃえ!みたいな変な話、喉が壊れてもいいや!くらいの気持ち。そういうリミッターを外せないんだったら私が歌う意味はないっていうくらいのことを、ライブ中もずっと考えていたんです。もちろん、最初はうまくできないことも多いですよ。でも、それを続けていくとできるようになるし、できなかったとしても自分へのジャッジが優しくなっていくというか。“今日はここまでできたからいいじゃん!次はもっとできるようにやろうね”って認めてあげられる。すごくいい作用がどんどん生まれていったんです」
――そういうモチベーションで制作されたのが『まだいけます』なんですね。
「そうなんです。アルバムの中だと「答」と「君の唄(キミノウタ)」以外は全部、昨年10周年イヤーに入ってから書いた曲なので。で、ここでやっと話が戻るんですけど(笑)、“私の売りは孤独”はやっぱり歌うべくして出てきた言葉だと思うし、裏を返せば、リミッターを外す練習をあらゆる場面でしてきた1年だから書けた歌詞であり、歌えたテイクだと思うんですよね。だから本当、タイミングってあるし、実はそういうタイミングに持っていってるのは自分自身なのかなって思いました」
――それにしても、阿部真央さんが“いい子でいたい”と思っていることや、そんな自分を“変えたい”と思っていたことが少し意外でした。
「私、本当に人に嫌われたくないので。悪口とか言われるの、すごくイヤなんで(笑)。でも、強い人っているじゃないですか。平気って言ってるだけかもしれないけど、それでもやっぱり強い人だと思う。私は嫌われたくない。そこが自分でもイヤなんですけど。でも、“私は人に嫌われたくないんです”と正直に言えるようになったことも、私の中では成長なんですよね」
――そして改めて思ったのが、やっぱり阿部真央さんの声の素晴らしさでした。1曲目から11曲目まで、ひとつとして同じ声がないと感じたんです。
「うれしい!自分としては、昔と比べると声質の差はそんなになくなってきたんじゃないかと思っていたので、そう言っていただけると自信になります。ちゃんと違って聴こえるんだなって(笑)」
――全然違いましたよ(笑)。「dark side」や「お前が求める私なんか全部壊してやる」の強い歌声があったかと思えば、「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」の甘い声、最後の「おもしろい彼氏」ではナチュラルな歌声……声によって作品に厚みが出るんだなあと感じさせられました。
「ありがとうございます。声が変わると、曲の色も大きく変わりますよね。声のことで思い出したんですけど、それこそ10年前は、今と同じことをしてても、ブレてるだの、方向性が定まらないだの、すごい言われたんですよ。でも10年経って、逆にそれが強みなんだよと言ってくださるファンの方や、そこをちゃんと評価してくれる視点もいっぱいあったりして。そういう面でも、やっぱり続けてきてよかったなと思います」
――本当にいろいろな歌い方、声を持っていますけど、自分が歌っていて気持ちいいポイントってあるんですか?
「あります!あります!私の場合、この旋律やサウンドに対して乗っかる言葉はこうじゃないといけないっていうのが、すごく明確にあるんですよ。もっと言えば、この部分はちょっと音を外してないといけないとか、ちょっと走ってなきゃいけないっていうのもあるんです。そういう細かいこだわりが、毎回たくさんあって。その意味では、今回のアルバムの歌唱、特にアルバム用に録音したものは全部納得しています」
――そういうこだわりは、昔から持っていたんですか?
「そうですね。自分でボーカルのジャッジをするようになったのが4枚目の『戦いは終わらない』からなんですけど、そこからさらにこだわりが強くなったかもしれません。それまではディレクターさんが何本か録ったテイクの中からいいものを繋ぎ合わせてくれたり、ピッチを修正したりしてくれてたんですけど、私はそれがいやだったんです。“私、こんなに上手くないから!”みたいな。ライブで歌えないことを歌えるように修正してほしくなかったんですね。それは私じゃないからっていうのがあったので4枚目から自分でジャッジするようになったんですけど、そこからどんどんこだわりが強くなっていったかもしれないです」
――こだわりといえば、アルバムの曲順についてはいかがですか?
「今回はめちゃくちゃ悩みました。完成したものは「dark side」という弾き語りから始まっていますけど、本当は2曲目の「お前が求める私なんか全部壊してやる」が1曲目になる予定だったんですよ。で、「まだいけます」はリード曲にしたかったので、絶対に2曲目か3曲目には持ってこなきゃ!って思っていて。実際にそれで並べてみたら「dark side」の居場所がなくなっちゃって。どこに入れてもしっくりこないから、これはもう最初に置くしかないかなって。1曲目だったら、気に入らない人は飛ばせるし、いいかって(笑)」
――そんなところまで考えるんだ(笑)
「すごい考えます。やっぱりアルバムって、1回聴き始めて、気持ちいい流れが続けば続くほど意味があると思うので。途中で飛ばすのも手間じゃないですか(笑)。それで1曲目に持ってきたんですけど、結果よかったなと思います」
――5曲目から7曲目にかけての「pharmacy」、「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」、「今夜は眠るまで」で、ちょっと流れが変わります。
「そうそう、ひと休み感がありますよね(笑)。この3曲はアレンジャーさんが違うんです。その前後はakkinさんが編曲してくださった曲が続くんですけど、「pharmacy」と「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」は、私のライブでギターを弾いてくださっている和田建一郎さん。私、和田さんのアレンジがすごい好きなんですよ。あったかい感じで和田さんの人柄が出ているというか。なので、和田さんの2曲は揃えて、次に笹路正徳さんの「今夜は眠るまで」が来るっていう。そこから先は、またまくしたてていくのでakkinさん(笑)。確かに和田さん、笹路さんのアレンジはアルバムの中ではちょっと異質かもしれません」
――それは狙ってその並びにしたんですか?
「いや、なんとなくの感覚で決めたんですけど(笑)。でも、いま言っていただいたことで、やっぱりアレンジって意図せずとも伝わるんだなと思ってうれしくなりました」
――伝わりました(笑)。そして何と言ってもタイトル曲の「まだいけます」ですが、11年目に向けた意気込みのようにも取れます。
「この曲を書く時に、“まだいける”、“終わらせたくない”、“終わらないで”という、この3つのワードが、釘を打たれているように頭のなかに、ずーっとあったんです。と同時に、サビの部分で入っている“オーオーオーオーオーオーオーオー”っていうアンセムのイメージも浮かんでいて。3つの気持ちをテーマにした曲を、アンセムが鳴るサビで作るってところから始まりました。アンセムの部分は、ライブでファンの人に歌ってほしい。歌ってもらうにはファンの人たちに浸透しなきゃダメだからリード曲にしなきゃ!って」
――逆算するんですね(笑)。
「そうなんです(笑)。そういうことを考えながら作っていったんですけど、さらにそこに官能的な要素も混ぜたくて。“まだいける”っていうのは、“どういけるの?”、“何がいけるの?”って、際どいところまでいこう!みたいなところから始まって。でも、そこは敢えて書かず。溺れていくような男女の歌にすればいいと思ったんです。なので、書いてる時は、終わらせたくない!終わらないで!まだいける!――まだ先があるってことにしがみつこうとしてる――っていうイメージで。どちらかと言うと、ストーリーというより、言葉のはめ込み方やアンセムの後に何が来たら気持ちいいだろうみたいな、ワード重視で書いた曲です」
――それをアルバムタイトルにしたのはなぜ?
「最初、アルバムタイトルは『まだいけます』じゃなかったんです。実は『dark side』の予定でした」
――それはずいぶんと暗い印象に……
「あははは!でも本当、アルバムリリースの発表に向けた最終確認で“本当に『dark side』でいいですか?”と訊かれた時に、なんか二の足を踏んじゃって……たとえばSNSとかで“阿部真央9枚目のアルバム『dark side』”って流れてきた時に、もし私がリスナーだったら目で拾える気がしないなと思ったんですよね。なので、ボツにしたんですけど、今度は他のタイトルが思い付かなくて。何も思い付かなかったから、他の曲のタイトルにしよう、『まだいけます』は?いいじゃん!って、本当にそんな感じで決めました(笑)。『まだいけます』のほうが覚えやすいし、10周年以降も“まだいけます!”って思えるし、何より私らしいでしょ(笑)。ちょうどいま、ラジオのコメント録りとかをしてるんですけど、そこで“ニューアルバム『dark side』を発売します”って言うより、『まだいけます』って言うほうが前向きかなって思ってます」
――『まだいけます』は、阿部さんにとってどんな意味を持つ1枚になったと思いますか?
「いままでのアルバムのなかでいちばん満足している1枚ですね。私はふだん自分の曲をあまり聴き返さないんですよ。なぜなら“なんでもっとこういうふうに歌わなかったんだろう?”っていつも思っちゃうから。でも今回のアルバムはどの曲も“よくやったね!”って気持ちで聴けるんです。それに、リミッターを外して取り組んだ初めてのアルバムだから、表現する者として、やっとスタートラインに立てた気がするんです。間違いなく、今後“自分が表現者として腹を括って、さあやろう!って思った1枚なんだよね”って言える1枚になっていくと思います」
――3月には全国ツアー「阿部真央らいぶNo.9」がスタートしますが、いままで以上にパワーアップしたステージになりそうですね。
「本当にそうしたいです。このアルバムから感じ取ってもらった、私の攻めていきたいという姿勢を超えるくらいのライブをしたいな」
――それにしても『まだいけます』の楽曲はどれも歌うのにパワーを使いそうです。
「そうなんですよ(笑)。でもいいんです!いききっちゃうっていうのが、私の中のテーマなので。次のツアーでは、新しい阿部真央を必ずお見せします!」
(おわり)
取材・文/片貝久美子
写真/柴田ひろあき
■「C-43 MUSIC&TALK WAGON ~音バナ~ “VINTAGE MUSIC”」1月20日(月)~2月2日(日)のゲストは阿部真央!(music.usen.com)
■「A-54アーティスト特集 WEEKLY J-POP」1月27日(月)~2月2日(日)の特集は阿部真央!(music.usen.com)
阿部真央らいぶNo.9
3月14日(土) 札幌市教育文化会館 大ホール
3月20日(金) オリックス劇場(大阪)
3月21日(土) オリックス劇場(大阪)
3月29日(日) JMSアステールプラザ 大ホール(広島)
4月4日(土) 静岡市民文化会館 中ホール
4月18日(土) 仙台電力ホール
4月26日(日) 日本特殊陶業市民会館フォレストホール(愛知)
4月29日(水) 福岡市民会館
5月2日(土) サンポートホール高松 大ホール
5月8日(金) 岡山市民会館
5月9日(土) 神戸国際会館こくさいホール
5月15日(金) 金沢市文化ホール
5月17日(日) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場
5月22日(金) LINE CUBE SHIBUYA(東京)
5月23日(土) LINE CUBE SHIBUYA (東京)
5月30日(土) 大分iichikoグランシアタ
- 阿部真央『まだいけます』
-
2020年1月22日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/PCCA-04885/3,182円(税別)
ポニーキャニオン
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-
2020年1月22日(水)発売
通常盤(CD)/PCCA-04886/2,727円(税別)
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