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――「エンドレス・ジャーニー」は、ナイアガラ・サウンドへのオマージュといえる仕上がりですね。

「きたやまおさむさんが詞を書いてくれたことで、とても大切な作品になったと思います。大滝さんが生前、きたやまさんの詞の世界を歌ってみたいと言っていたことも頭のなかにあったので、今回のコラボレーションが実現したことは大きかった。作曲は大滝さんと縁の深い平井夏美さんだけど、彼はシャネルズの〈禁煙音頭〉や、ラッツ&スターが再集結した96年の〈夢で逢えたら〉などでスタジオに立ち会っていた人でもあるし。デモテープを聴いた瞬間から、アレンジャーは井上鑑さんしかいないと思いました。ちょうど〈エンドレス・ジャーニー〉の少し前に、NHK『SONGS』の大滝さん特集の収録があって、あのときとほぼ同じミュージシャン達でこの曲もレコーディングすることができたんです。最近はコンピュータ中心なので、ああいう大人数で、いわゆる“一発録り”、自然のエコーを活かした録音ってなかなか出来ないし、こういうシステムでの音は残していきたいじゃない? だから僕としては、大滝さんから受けたバトンを、次の世代にまた渡していきたいという立ち位置でいることも大切なんだろうなと」

――「哀のマリアージュ」は谷村新司さんの作品ですけど、マーチンさんはいつも、既存のカテゴリーとかにとらわれず、良い楽曲をチョイスされますよね。

「僕は、大滝/ナイアガラ・ファミリーのなかで、唯一フォーク・ソングを否定しない人なんですよ(笑)。僕が中学2年ぐらいのときに、岡林信康さんのバックにはっぴいえんどがついて、中津川フォーク・ジャンボリーに出演していて、その後、そのはっぴいえんどがアルバムを出すらしいと音楽雑誌で知ったわけ。そういった経緯ではっぴいえんどを聴きはじめたら、なかでも大滝さんの書く曲にすごく惹かれたんです。それから、ソロになった大滝さんを聴くと、エルヴィス・プレスリーやアメリカン・ポップスに傾倒した曲をやりはじめて、“これは僕のストライクゾーンだ”と思った。ほかにも、フォーク・クルセダーズだったり、GAROだったり、井上陽水さんだったり、中学のときに組んだバンドで、そういったフォーク・ロック系の楽曲をカバーしたりもしたんだよね。それもあって、大滝さんからは“君はフォークにも手を出しているんだよな。そこは俺には無い部分だよ”って、よく言われていた。なので、僕自身のルーツという意味でいうと、フォークも、ソウルやドゥーワップと同じ位置にあると思っていて。ただ、フォークのなかでも、RCサクセションや古井戸といった、ちょっとブルージーなものに徐々に傾倒していったのはあるよね。日比谷野音で観た、陽水さんがアンドレ・カンドレとしてステージに登場して〈断絶〉を歌うときのカッコよさとか。東京で生まれ育ったおかげで、東京から発信されたレコードやコンサート、ラジオ番組とか、すべてが僕の引出しになっているという、そういう幸運はあったと思う。だから、当時の鈴木雅之のなかには、古井戸、井上陽水とともに、マーヴィン・ゲイが存在していたわけ(笑)。〈断絶〉を聴きつつ、かたや〈ホワッツ・ゴーイン・オン〉も聴いていたという。意外にごった煮的なところがあるんですよ」

――そのスタンスには共感します。僕もナイアガラの大ファンであるいっぽうで、谷村さんの「昴」やアリスの「遠くで汽笛を聞きながら」も好きだったりするので。

「アリスにしても、僕のなかではフォークというよりもフォーク・ロック的な印象が強いよね。〈遠くで汽笛を聞きながら〉にしても、ちょっとブルースを感じさせる部分があって、ほかのフォーク系のグループとは違う感じがしたんだ。ドラムの矢沢透さんなんて、もともとソウル系のバンドをやっていた人だし、谷村新司さんもかつて、ジェームス・ブラウンを日本に招聘した事務所に所属していた人で、ウッドストックの翌年に渡米して、ジャニス・ジョプリンや、僕の大好きなシャ・ナ・ナのステージを観ていたりして、意外と音楽的な接点があるんだなと、会って話をするとよく分かるんだよね」

――ソウルやフォークのほかにも興味があった音楽はあるんですか?

「僕のなかには色々な要素があってね。中学3年から高校にかけては、3ピースのハード・ロック・バンドを組んで、クリームとかグランド・ファンク・レイルロードとかマウンテンとかをカバーしたりして。僕はドラム&ボーカルだったから、その流れでつのだ☆ひろさんを知り、〈メリー・ジェーン〉に結構魅せられちゃって、“第二のつのひろ”になろうと思って、自分でもドラムを叩きながら〈メリー・ジェーン〉を歌っていた。なんでハードロックを演ったかというと、当時はソウルをプレイする仲間はほとんどいなかったんだよね。当時、ユーライア・ヒープというバンドの来日公演を観に行ったときに、つのださんを見かけてサインを貰ったりもしていたから、それもあって、ラッツ&スター時代に大滝さんとアルバム『SOUL VACATION』を作ったときに、つのださんとサム&デイヴみたいなデュエットをしたいと思ったのは、そういう歴史があったからなんだ」

――こうしてお話をうかがうと、マーチンさんはアマチュア時代から“縁”とか“ルーツ”をとても大切にされてきたのがよく分かります。

「こういうことすべてが縁で、それは音楽の神様からのギフトだと僕は思っているんだ。大事なのは、それをどうキャッチするかというアンテナだと思うし、それはいつも磨いていようと思い続けてきたのが、ソロでの30年だと思う。縁というのは宝物だし、長く活動を続けていくなかの節目節目で、その宝箱みたいなものを開けてみることが、この先に進んでいく上での確認事項にもなるし、それが言えるうちはキチンと言ってゆこうと、どこかのタイミングで思うようになったんだよね」

――9月からは全国ツアーもはじまりますね。こちらはどんな感じになりそうですか?

「30周年、そして60歳になってはじめてのコンサート・ツアーなので、ずっと言い続けてきた〈還暦ソウルを届ける〉ということを、本当の意味で実現させる場になればいいなと思っています」

――では最後に、ファンに向けたメッセージを。

「40代、50代、60代と、いわゆる洋楽世代といわれた人たちのなかには、結婚して親になり、子育てもひと段落した頃に、もう一度音楽を楽しみたいと思っている人がたくさんいるんですよね。そういう人たちが僕のコンサートにも足を運んでくれるので、その人たちに対して、いつでも“音楽ってやっぱりいいよね”と思える作品をこれからも作り続けていきたいし、そんななかで、この『dolce』はいかがでしょうかと。そんな気持ちで届けられたらと思います」
(おわり)

文/木村ユタカ

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