前田佳織里が新曲「常識外れヒューマン」初披露＆RABとコラボ！トーク＆ライブで笑顔を咲かせた初ファンミレポ―ト

声優アーティスト・前田佳織里のデビュー1周年を記念した初のファンイベント「前田佳織里 1st fan meeting talk & mini live 2024」が、3月31日、東京・duo MUSIC EXCHANGEで開催された。

『ウマ娘 プリティーダービー』のナイスネイチャ役、『ラブライブ！虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の桜坂しずく役など、声優として多方面で活躍するなか、2023年1月クール放送のTVアニメ『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』のオープニング主題歌「光ったコインが示す方」でアーティストデビュー。同年3月に自身初となるEP『未完成STAR』をリリースし、表現者としての新たな一歩を踏み出した彼女。1年越しでようやく実現したファンとの交流の機会、「晴れ女すぎる」という前田が好天を引き寄せたのか、晴れどころか3月にもかかわらず東京で25℃を超える夏日となったこの日は、スペシャルゲストを迎えた新曲のサプライズ披露を含め、会場に駆け付けた大勢のファンにとっても特別な時間となった。ここでは昼夜2部行われた公演のうち第1部の模様をお届けする。

ステージと客席の距離も近く、終始、親密な雰囲気で進行した今回のイベント。MCを務めた音楽評論家の冨田明宏の呼び込みで、鮮やかなライトグリーンと黒を合わせた衣装を着た前田がステージに登場すると、会場からは大きな歓声と拍手が沸き起こる。その温かな対応に開始早々「このアットホーム感は何だろう」と喜ぶ前田。そして、先日に情報解禁された2nd EP『Grab the World』のリリースを改めてファンに報告し、「みんなが楽しみに待ってくれた、その声があったからこそ、次に繋がったんだと思います」と感謝の言葉を伝える。また、同作に収録されるTVアニメ『月が導く異世界道中　第二幕』第2クールのエンディングテーマ「常識外れヒューマン」について、作品のコミカルさを意識した、懐かしくもキャッチーでクセになる楽曲に仕上がっていると明かし、ファンの期待を高める。アニメが始まったらハッシュタグ「#常識外れヒューマン」で感想をポストしてほしい、とその場のノリでハッシュタグまで決めてしまうところもまた彼女らしい（ステージ袖にいたスタッフに確認してOKが出た）。

トークコーナーでは、前田の音楽ルーツやパーソナルな一面を知ることができる企画を展開。まずは「発掘！前田史　＜前田の好きな音楽・アニソン＞」と題し、彼女が幼い頃に触れていた音楽やアニメ作品について、前田の父親から提供されたという彼女の幼少期の写真と共に紐解いていく。まだ赤ん坊だった1歳前後の愛らしい頃や、幼稚園時代の遠足や運動会の写真などが紹介され、微笑ましい空気に包まれる会場。その当時の前田は『美少女戦士セーラームーン』や『おジャ魔女どれみ』といった作品を好んで観ていたそうで、一人っ子だった彼女は『おジャ魔女どれみ』のキャラクターの声マネをして1人5役を演じる「声遊び」などをして遊んでいたそうだ。その頃から声優としての素養があったのだろう。また、当時の思い出の楽曲として「おジャ魔女カーニバル!!」を挙げていた。

続いてのコーナーは「前田クイズ！あなたはどこまで前田を知っているか！」。前田に関する3択クイズにファンがペンライトの色（もしくは指）で答えるファン参加型の企画で、全5問を正解した人の中から、前田とのじゃんけん大会に勝ち抜いたファン1名にプレゼントが贈られるというものだ。「寝起きのルーティーンは？」「好きな麺類は？」といった問題のほか、「初めて買ったCDは？」といった音楽にまつわる難問も飛び出し（ちなみに正解はUVERworldのシングル「激動」で、購入のきっかけはTVアニメ『D.Gray-man』のオープニングテーマだったからとのこと）、徐々に人数が絞られていく。そして最終問題は「次の漫画の名言の中で一番好きなものは？」というお題で、『ハイキュー!!』の日向翔陽や『ONE PIECE』のエンポリオ・イワンコフの名言が並ぶなか、正解は『はじめの一歩』の鴨川会長の名言「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし！成功した者は皆すべからく努力しておる!!」に。なんでも彼女は声優のオーディションになかなか受からなかった時代にこの言葉に出会って励まされたという。普段はあまり語られることのないエピソードの連続に、途中で脱落したファンも興味深げに耳を傾けていた。

お次の「教えて前田！前田に聞きたいこと！」は、事前に公式Xアカウントで募集した質問に前田が答えていくというシンプルなもの。「アーティスト活動で挑戦したいことは？」という質問に、作詞やワンマンライブと発言すると、会場からはこの日一番の歓声が上がる。また、「春から専門学校生になるので友達の作り方を教えてほしい」という質問には、自身も昔は人見知りで「会話が上手くなる本」を買って努力していたことを明かしつつ、相手が答えやすい質問を投げかけて相手を知ろうとする姿勢が大切と回答。さらに「人見知りを克服するためにしたほうがいいこと」という質問には「（自分は）人見知りです、と正直に言うこと」で、自然と周りの人が助けてくれるようになるはず、と助言する。「最近買ったベストバイ」には調味料のマキシマムと答え、ささみプロテインバーにマヨネーズとマキシマムをかけて食べるのがマイブーム（そうすることでマヨネーズの味が中和される？らしい）と語るところは、さすが「アミューズの狂犬」の通り名で知られる彼女らしいが、悩み相談にも親身になって答える姿からは、他人を思いやる気持ちや心根の優しさが伝わってきた。

そしてここからは、アーティスト・前田佳織里の魅力を存分に見せつけるライブパートの時間。ハンドマイクを手にした彼女は「みんな、これからガンガン盛り上がってくれますか？」と呼び掛け、まずは自身のデビュー曲「光ったコインが示す方」を披露。煌びやかなイントロに重なる凛とした歌い出しから、会場のボルテージは一気に最高潮まで跳ね上がる。人任せではなく、自分らしさを大切にしながら夢に向かって一直線に突き進む気持ちを描いたこの楽曲を、前田は真っ直ぐかつ芯のあるボーカルで表現。サビでの特徴的な高音のロングトーンを体ごと上を向きながら歌い上げる仕草、落ちサビの“夢を掴み取るんだ”のフレーズで右手を前に突き出してこぶしを力強く握る動きもエモーショナルで、観ているこちら側もグッと力が入ると同時に鼓舞されるような名演だった。

いて「この曲は初めて聴く人が多いんじゃないかな」と前置きして歌われたのは、1st EP『未完成STAR』収録の「花香リ春薫ル」。出会いや別れ、新しい環境への移り変わりが多い春という季節をテーマに、不安を感じながらも新たな一歩を踏み出す人の気持ちに寄り添い、そっと背中を押してくれるような優しさを、前田は先ほどよりもウェットだが確かな力強さを感じさせる歌声と共に届ける。そのメッセージ性は、彼女がトークパートで語っていた内容（好きな漫画の名言や悩み相談の回答など）ともリンクしているようにも感じられる。客席のペンライトはピンク一色に染まり、まるで満開の桜のように美しい景色の中で、前田は自分自身という華を優雅に咲かせて、やがてくるであろう春の訪れを表現した。

この季節にぴったりな楽曲の披露に、客席には感極まって涙していた人もいたようで、その様子を見て「嬉しい！」と喜ぶ前田。そして突然わざとらしく「あれ!?」と驚くと、『おジャ魔女どれみ』に登場するステッキ（のおもちゃ）をおもむろに取り出す。客席が大きく沸くなか、前田が変身時のセリフをもじって「プリティー・ウィッチー、前田っちー！」と叫ぶと「おジャ魔女カーニバル!!」のカバーに突入。世代を超えて今も愛され続けるアニソンの名曲だけあって、客席のコール＆レスポンスもバッチリで、前田もステップを踏んだりステッキを左右に振りながら楽しそうに思い出の楽曲を歌って会場を盛り上げた。

そしてここでさらなるサプライズプレゼント、なんと2nd EP『Grab the World』からの新曲「常識外れヒューマン」がアニメの放送およびリリースに先駆けて初披露されることに。しかも今回は、アニソン×ダンスパフォーマンス集団のREAL AKIBA BOYZ（以下、RAB）より、とぅーし、ゾマやかじゃない!、ネス、そしてREAL AKIBA JUNIORZよりAotoがスペシャルゲストとして参加。先日、アミューズの女性声優によるYouTubeチャンネル「AMUSE VOICE ACTORS CHANNEL」とRABのコラボ企画が行われた縁で実現したコラボレーションだ。冒頭で前田が「キャッチーでクセになる」「どこか懐かしい」と語っていた通り、往年のアニソンっぽさも感じさせるファンキーで中毒性の高い曲調、サビで繰り返される耳に残るフックで腕を振りながら地団駄を踏むような振付など、盛り上がる要素が満載。RABによる側宙・バク宙やブレイキンを含むアクロバティックなダンスがステージに色を添えて、客席は完全に初見の楽曲ながらも爆発的に熱狂する。いつも通りの張りや芯の強さだけでなく、艶やかさも加わったような前田の歌唱表現も絶妙で、今後、彼女にとっての新たなライブアンセムとなることが確信できるステージだった。

ミニライブを終えて、改めてMCの冨田と共に、現在制作中の新作について語る前田。2nd EPのタイトル『Grab the World』には「世界を掴む」という意味から転じて、「次のステップに行く」「挑戦していく」という想いが込められており、今まで応援してきたファンも「こんな前田見たことない！」と感じられる作品を目指しているという。また「常識外れヒューマン」のMVも撮影済みで、こちらも曲名通りの常識はずれな映像になっているとのこと。なんでもドラマ仕立てで、撮影ではプチアクションにも挑戦したらしく、こちらもかつてない前田佳織里を期待できそうだ。

最後は笑顔で「今日のファンミは、もちろんドキドキする気持ちや緊張もあったんだけど、みんなに感謝を届けよう、みんなに楽しんでもらおう、ということを一番に考えてきました。これからもアーティスト・前田佳織里としてもみんなに楽しんでもらえるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします！」と挨拶。さらに本人たっての希望で、来場したファン1人1人に目を合わせながらお見送りをして、初のファンイベントは大盛況のうちに幕を閉じた。アーティストとしての魅力もさることながら、気さくでファンとの距離を感じさせないところが彼女らしい、笑顔に溢れたイベントだったのではないだろうか。

photo by 鳥居洋介