どれだけこの瞬間を待ち侘びてきたことだろう。コロナ禍のもと、約3年半もの長きに渡って音楽業界をはじめエンターテインメントの現場に課されてきた数々の規制や制限がいよいよ解除され、ロックでラウドでアグレッシヴなHYDEのライヴがついに本領を取り戻した。617日、Zepp HanedaTOKYO)にてスタートを切ったツアー“HYDE LIVE 2023”、その初日のステージに立ち、オーディエンスをひとり残らず巻き込みながら縦横無尽に暴れ回るHYDEの雄姿はコロナ禍前と比してもまるで衰えず、むしろ過去最高レベルの勢いと輝きと放って観る者を圧倒。会場を埋め尽くした3000人のファンとともにライヴシーンの完全復活を喜び合った。

HYDEのライヴとしては今年初となることに加え、マスク着用は任意、歓声や合唱などの声出しも解禁とあって、開演前から華やいだざわめきに満ちる客席フロア。ステージを覆う黒幕にはデジタル表示の現在時刻が投映されて秒刻みで時を知らせる。加速度的に膨れ上がる期待感。そうして1706分、すなわちHYDEが好む悪魔の数字“666”を内包した1666分を迎えるや、凄まじい歓声の中、ゆっくりと幕が開いていく。真っ先に目に飛び込んできたのは屈強な4人のマスクマンが担ぐ輿の上、玉座に掛け、深くフードを被ったHYDEが不敵な歌声を轟かせる光景だった。儀式めいた厳かさとのっぴきならない予感を携えた実にHYDEらしいオープニング。天井からはHYDEを象徴する蛇十字のロゴマークが巨大なオブジェとなって吊り下げられ、ひときわただならぬムードを醸す。また、バンドもこれまでの編成にさらにもうひとりギタリストを加えたツインギター体制へと変容。分厚さを増し、よりパワーアップしたサウンドで、単にコロナ禍前に戻ったのではない、様々な壁を乗り越えてたどり着いた今だからこその進化をのっけからまざまざと見せつけた。

「このときを待っていた! Are you ready, Tokyo?」

玉座からステージに降り立ったHYDEは早くも興奮のピークに達しつつあるフロアに向かってそう呼びかけると、フードを脱ぎ、ハーフマスクを着けたその顔を露わに。沸き起こる嬌声を薙ぎ払うように演奏は「AFTER LIGHT」に突入、扇情的なHYDEの歌とアンサンブルがオーディエンスのシンガロングを誘う。狂騒の火に油を注ぐがごとく続けざまにドロップされたのは616日に配信リリースされたばかり新曲「TAKING THEM DOWN」。ライヴではこれが初披露にも関わらずオーディエンスは即座に反応、新機軸と呼びたいラップ調パートではマイクを拡声器に持ち替えてがなるHYDEに嬉々として拳を振り上げ、熱烈に応える光景も。ライヴの新たな起爆剤となるだろうポテンシャルを十二分に感じさせた。直後、HYDEは「3年ぶんの借りを返させてもらうぜ」と宣言するとハーフマスクも取り去って「DEFEAT」「PANDORA」と矢継ぎ早にライヴの鉄板ナンバーを畳み掛ける。当然ながらその動きもエスカレート。ステージ端に積み上げられたスピーカーによじ登っては飛び降り、かと思えば客席側へ大胆に身を乗り出して煽ったり、「頭振ってくれ!」と言うや否や自ら率先してヘッドバングしてみせたりと、とどまることを知らぬ暴れっぷりでオーディエンスを熱狂の坩堝に叩き込んでゆくのだから、たまらない。フロアはフロアでクラウドサーフが続出、ステージと一緒になって声を張り上げ、音楽に身を委ねながら心ゆくまで跳ね踊る様を見やるHYDEの笑顔のなんとも愉快そうで誇らしげなことか。

 

3年半、長かった! ウイルスも怖かったけど、人と人がいがみ合うのが怖かったよ。ライヴハウスは感染源みたいに言われていたけど、それでもいっぱいライヴをやってきた! それは君たちが協力してくれて成功を一つひとつ積み上げてこられたから。だから俺たちはライヴを続けられたんだよ。よくついてきてくれた。この場所は俺たちが取り戻したんだぜ!」

目の前の一人ひとりを称えて感謝を告げるHYDEの口調に熱が帯びる。不自由を余儀なくされた期間も歩みを止めず、状況を逆手に取った大胆な発想の転換でアコースティックライヴやオーケストラコンサートなど常に音楽表現の可能性を追求し続けてきたHYDE。それができたのは彼の意志を理解し、支え続けたファンの存在があればこそ。本人、バンド、スタッフ、ファンが一丸となって守り抜き、掴んだ勝利が今日という新たな旅の始まりに繋がったのだ。信頼を表明するかのように、続く「MAD QUALIA」でHYDEは客席へとダイヴ。たくさんの手が彼を受け止め、無事ステージに生還を果たしたひと幕は、彼とファンとの固い絆の証左のようでとても印象的に映った。

ステージとフロアでバチバチの肉弾戦を繰り広げつつも、それだけに終始しないところにHYDEの真骨頂がある。それはヘヴィネスをとことん極めたロックに特化しながらも豊かなバリエーションを有した音楽性や、どんなにこだわりを詰め込もうとポピュラリティをないがしろにしないアーティストとしての彼の姿勢にも通じる特性だろう。徹頭徹尾、アグレッシヴなアティテュードを保ったうえでエンターテインメント性をも寄り添わせるのがHYDEHYDEたる所以。彼のサービス精神と言い換えてもいいかもしれない。それが存分に発揮されたのは後半戦もたけなわとなった「ANOTHER MOMENT」になだれ込んでのこと。やにわにステージから姿を消したと思いきや、2階のキャットウォークに出現。1階のスタンディングフロアを見下ろしつつ、全員をその場に座らせ「321!」の合図で一斉にジャンプするという恒例のムーブをキメさせたあと、なんとそのまま指定席となっている2階席に現れたのだ。通路をゆっくりと往復しながらエモーショナルな世界観を艶やかに歌い上げるHYDE、思わぬ至近距離のサプライズにファンの絶叫がやまない。

再びステージに戻ってからもスリップノットのカヴァー「DUALITY」でスチールのバレル(樽)を金属バットでめったうちにするパフォーマンスでオーディエンスを沸かせ、また、HYDEがヴォーカリストを務める大型新人バンド・THE LAST ROCKSTARSのライヴでも演奏したことで話題を呼んだ「6or9」では本人手ずからの指導で客席との見事なコール&レスポンスを成功させるなど誰ひとり置いてきぼりにすることなく極上の一体感をZepp HanedaTOKYO)に築き上げてゆくその手腕に舌を巻かずにはいられなかった。

「ホント帰ってきた感じがするよ。ヤバいね、アガる! その調子で全力でかかってきてください。俺も明日のことなんか気にしてないから、おまえらも日和るんじゃねーぞ! よし、新しい曲、いってみようか」

 

残すところ2曲と迫ったところでまっさらな未発表の新曲を叩きつけてくるとは、なんという豪胆か。「I GOT 666(仮)」とタイトルコールされたその曲はしかも攻めの楽曲揃いだったこの日のセットリストのなかでも指折りのヘヴィな1曲だ。きっとツアーを通して鍛え上げられ、さらに殺傷力を増した文字通りのキラーチューンに育っていくのだろう。ラストはもはやカオスの極みとしか言いようがなかった。シンバルをスタンドごと振り回しただけでは飽き足らずドラムセットまで破壊しにかかり、メンバーも一緒になって猛りに猛った。最後の最後はドラム台に上がり、えいやっとばかりに高々とジャンプ。いくつもの投げキスを残して揚々とHYDEはそのステージを降りた。初日にしてクライマックスにも匹敵する昂揚、この先に待つそれ以上を想像するだにそら恐ろしくなる。

8月まで全国6都市18公演に及ぶ“HYDE LIVE 2023”、加えて99日、10日には千葉県・幕張メッセイベントホールにて追加公演“HYDE LIVE 2023 Presented by Rakuten NFT”も発表された。まだHYDEの熱に触れたことのないあなたにこそぜひ、その真髄を味わってほしい。なお、今回のツアーでは2階席に限りスマートフォンおよびタブレットでの撮影が許可されており、現在SNSでは続々と投稿がなされている。まずは熱狂の一端を覗いてみてはいかがだろうか。

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