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――結成13年、今のメンバーで10年。20代をバンドマンとして駆け抜けたわけで、端的に言ってこの10年ってどういう時間でしたか?

小川真司「20代にしかできない経験はいっぱいさせてもらったかなと思います。バンドをやってないとできないような経験ばかりだと思うので」

田中駿太「加入当時は大学生やったから、就活するのかバンドやるのかみたいなことで悩んでましたけど、結局こっちにきて良かったなと思いました。バンドでこうやって全国いろいろ行けて、海外まで行けて、アニメの曲とかもやらせてもらえて、こんなん普通の人生じゃできないことなんで。やっぱりこれを選んで良かったなって、後悔ないっていう感じですね」

白山治輝「僕は当たり前というか、そのまま進んできたらこうなったという感じなんで。バンドが止まることが初めてなんで、こっからの30代が逆にどうなるんだろう?俺はどんな気持ちになるんやろう?っていうのが楽しみではありますね。当たり前にあったものがないと、どんな気持ちになるんだろうかって。楽器を始めた15歳ぐらいから次のライブが決まってなかったことがないので」

――中学生ぐらいから感覚としてはずっと続いてきた?

白山「そうですね。それが濃かったからだと思うんですけど、やっぱり昔の記憶はどんどん飛んでいってるから」

森 良太「だから俺はこの10年のことを出来事としては思い出せるんですけど、感情としてほとんど思い出せてなくて。振り返ろうと思って、いろいろ思い出すんですけど、出来事は思い出せる、ただその時どういうことを考えてたかっていうと……」




――曲を聴いたら作った頃の感情を思い出しません?

森「景色とかはフラッシュバックするんですけど。それってなんでなんやろな?と思ったら、ただ必死なんですよ。10年、仕事として音楽を成り立たせるためにひたすらやってきたから、遊びって感覚では全然なくて、そういったことに気づいた時に、10年むちゃくちゃ濃いけど空白なんです、てことに気付いて、心底驚いて。こんなに充実した10年やのに、自分の感情は空っぽっていう不思議。だからこのバンド自体が活動を止めてしまって、こっからの10年、感情としても何かもっともっと貪欲に吸収していって、豊かな心でまたもう一回バンドができたら、もっともっと違う曲が書けそうやなって感じですね」

――活動休止に際しての皆さんのコメントが、一人の人間としてバンド以外にやりたいことがあるというもので。それと30代を迎えるこの先を見据えてのことなのが腑に落ちたというか……

森「はい。そうですね。ま、音楽やってなかったとしても30歳とかって、ふだんの生活を送ってるお客さんたちの生活も結構節目ではあると思うんですよね。このままどうなっていくのだろう感というか、そういうことをひとつひとつ腑に落ちるまで解決してから次に進みたいっていう。バンドやりながらなんとなく超えていくことはできると思うんです。でもそれで果たして面白い活動なのか?面白い音楽を作っていけるのだろうか?と思うと、それはちょっと違うと」

――今は音楽を兼業してる人も多いし、逆に濃度が上がっている人もいますしね。

森「うん。結構Brian the Sunというバンドのイメージ的に、貫くというか絶対に手を離さずにバンドを完遂するというイメージがあると思うんですけど、音楽を続けていきたいという思いだとか、そういうものは大前提としてあるにせよ、やっぱり人間なので各々の幸せみたいなものを見つめ直す時間は絶対必要で。それが空虚なままで音楽をやっても誰も感動させることはできないので」

――このコロナ禍の中で活動が制限される以前から休止を決めていたわけだから、ほんとはもっとガッ!と活動して今年を終わりたかったでしょ?

森「だから活動休止を年末に発表することは決まってたけど、“もう活動休止してね?”みたいな」

小川「僕は逆にメンタル的には整理された感はあるけど。急にバタッとなくなるより、これからのことを逆にいろいろ考えられた」

――これは続けていく人も同じですけど、ライブを主体にやってきた人は発表する場所が変わってくるのかなと思ったり。

森「これは僕の意見というか、感情なんですけど、みんな目的中毒になってるというか、常にゴール地点を見据えて一旦そこまで走るということを思考する以前に当然のことと思い過ぎるのかなって。フィールする間も無くじゃないけど、そういうものが著しく低下したってことに、コロナ禍に陥って一人の時間が増えて、なんのためにやってんねやっけ?みたいなことに向き合った時に初めてわかる。何のためにの理由なんて一個しかなくて、全部、幸せになるためにやってることなんで。でも、そうじゃなくて人は“何のために”っていう目的を作って、そこに走ることで何とか次につなげようとするけど、果たしてそれって音楽を演奏するってことの根本とは近いんだろうか?と思って」

――結果は大事だけど、音楽は成果主義じゃないですからね。

森「そうですよね。でもアーティストの立場の人間が目的を作ってそれを達成していくということに行ってしまう。それは別の人がやる仕事であって、自分はより純度の高いフィールというか、感情を届けることとか、自分が気持ちよくなることを忘れてたなと、それはこのコロナ禍の中で僕が思ったことです。だからライブがここ最近、何回かできてますけど、めちゃくちゃ楽しいし、スタジオ入ると全然楽しいし、そういう気持ちを思い出せた感じはあります」

――皮肉なもんですね。

森「そうなんです(笑)」

――また今、真冬に向けてちょっと危ういですけど、特に3月、4月は特に先が見えなくて、その頃、どんな気持ちになってました?

白山「活動休止は決まってて、お客さんには言えてなくて、だからコロナがしんどいというより、それを言えてない。みんなに元気を与えたい、俺たちがそれをできない、活休を決めてしまってる、どちらかというとそういう後ろめたさみたいなことの方が俺は大きかったですね」




――確かにそういう感情になりがちですよね。今回、18曲に絞られたベストアルバムを見渡して、Brian the Sunって森さんの歌詞の世界が言い切ってないというか、こんなに余白のある世界だったんだと改めて思いましたね。

森「そういう曲作りはモットーというか、大事にしてたんです」

――バンドを牽引してた人がパッと手を離す感じではないというか……リスナーやファンも自分なりの受け取り方をみんなしてるのかなという気はしてるんですけど」

白山「だとうれしいですね。むしろありがたいというか」

――ここで皆さんにとって節目になった曲とその理由を教えてもらっていいですか?

白山「僕は「Sister」かなあ。本格的なスタジオでレコーディングしたのも初めてで。割と自分たちの実力が過信してたものだったんだなと。演奏力とかですけど、打ちのめされた思い出もあるし。MVとかも初めて撮ったし。そういうのもいい思い出で。なんであの髪型してたんやろ?とか思うし」

全員「ははは!」

白山「全国流通の初めての曲で、初めてタワーレコードに並んでるところとか、お店回りをしてる時にラジオでたまたまかかっているのを聴いてテンション上がったりとか、結構な“初”をくれた曲だったんで。僕はこれかな」

小川「じゃあ僕は「彼女はゼロフィリア」にしようかな。初期ですね。この曲ができた時の無敵感をすごい覚えてるというか、自信というか、“かっこよくね?”っていう思い入れが強い時期だったと思います。今、自分たちがやってることって“かっこいいやろ!”っていう気概をすごい込めてできた曲やなあっていうのはすごい覚えてて」

田中「僕は「HEROES」かな。メジャーデビューのタイミングで森くんが持ってきてくれて。で、それ聴いた時に“すげえ!”と思って。ま、アニメとのタイアップだったんですけど、TVで流れる曲っていうのが感動したというか(笑)。“TVで流れとる!”と思って。すげえなって、長いことみんなで下積みじゃないけど、河川敷でキャンプしたり……そういうのを思いだして」

全員「ははは!」

田中「タイヤの上座って鍋したりしてたのに、なんかすげえと思って。一個、成果が出たんかなと思いましたね」

森「ツアー出て、マジで金なかったからな。みんなスーパーで値段下がった弁当買ってた」

――それ、どのタイミングのツアーですか?(笑)

森「もう、インディーもインディーの頃」

小川「いちばんやばかったん、新潟かなんかで閉店間際のスーパーにみんなで駆け込んで、値段の下がった弁当食いながら“どうしよか”ってなった」

白山「売れたら店行こな!って。めっちゃひもじい思いしながら食った弁当、未だに覚えてるわ。ありがたいことにツアーも増えて、なのでバイトにも入れんくて」

――逆にいちばんお金に困る時期ですね。

小川「ホテル泊まるお金なかったんで機材車にベッド作って、みんなそこで寝泊りして。スーパー銭湯すら行ってない時期やもんな。その後、スーパー銭湯になって、ホテルになって」

白山「その前に二人はネカフェ、二人は車っていう時期」

森「車だと流石に4人は足伸ばして寝れないんで。ほんまに若い頃しかできへん」

小川「もう今、できひんわな」




――えーと、なんで田中さんの「HEROES」の話からこんな話題になったんでしたっけ?(笑)

小川「これが出た時の感動が甦って(笑)」

――あー(笑)。「HEROES」は「僕のヒーローアカデミア」のエンドテーマのせいもあるんでしょうけど、逆にそれまでのシングルよりも若返ってるというか。

森「そうですね。これは若返らせましたね、曲を。ほっとくと潜っていくんで、こういう機会がないと浮上していかないという(笑)。僕は「Love and Hate」が好きですね、やっぱ節目という意味では。総括ですね、一旦の」

――難しいことをしようという力が入ってないかっこよさや、なにかひとつ真実があるというか。森さんの歌詞に諭されてる感じがするんですよ(笑)。

森「あはは!諭してます?」

――人生こういうものでしょうって諭されてる気持ちになってくる。めっちゃいい曲ですね。Brian the Sunらしさというか、微妙にジャンル感で括れない感じが出てるし。

森「悪くいうと中途半端、良く言うと柔軟性があるみたいな(笑)。なんかそういうところで葛藤しながら、自分のできる一生懸命やったらこうなりますよね、人って。って感じ。あんまブランディングとか考えてないし、こうやったら売れるんだよって感じではやらなかったので」




――節目であったり印象に残ったりっていうところでは今話してくれたような曲なんですね。

田中「でもベストアルバム出ると思ってなかったわ。このバンド始めた頃は」

白山「ぶっちゃけ、ベストアルバム否定派ではあったんですよ。割と。自分個人のあれですけど。でもいざできてみたらいいよねって思う」

――それはリスナー自身それぞれにベストがあるから敢えてベストアルバムはいらないと?

白山「コアファンやったら全部持ってるし、とか。一枚の作品でコンセプトがあってという方が個人のコレクターとしては好きだったので。でもいざ自分が当事者になって作ってみたらよかったなと思うし、今までベストを出してきたアーティストたちも同じような気持ちだったんかなと思って」




――新曲の「春風」は完全リモート制作なんですね。

白山「で、録り直してここに入ってる感じですね」

――リモートの時の制作は“意外とやれちゃうな”って感じ?

白山「全然できますね(笑)。この時代なんで」

森「スピード感も含めて、この時期的に出したかったので」

小川「作り始めて1、2週間ぐらいですぐ出したね」

森「やっぱ、全国ツアー中止になりました、じゃあどうしましょうっていうタイミングでのお話だったので、やらなければと」

――この曲のエンディングに向かっていくThis is UK!って感じも、Brianらしいなと思って。

森「あはは!うれしいです」

――あまり決め事もなく?

白山「や?土台というか骨組みはいつも作っちゃってるんで、それにどう肉付けしていくか、みたいなことを考えながらやっている感じ。出来上がって聴いてみて、結構ちゃんとなってきたなって。いい曲できたな、思ってたより全然いい曲になったなっていう」

――今年はいろんなことが飛んじゃった分、気持ちも入るのかもしれない。

森「そうですね。しんどいの自分らだけじゃないと思ってたし、まわりの人も、ふつうに仕事してる人とかって、イレギュラーにはやっぱり弱いと思うんですよ。僕らはイレギュラーに慣れてるから、ライブなんか飛んだことなかったけど、そんなこともあるんやろうなって思えるけど、定時で仕事行って定時で帰ってきてって人は急にそんなに生活変わったら辛いやろな、それはそれでめっちゃしんどいし、所在ないし」

――極端な話、そういう生活設計じゃない暮らしが突然変わったわけだし。

森「そうですね。それは心配というか」




――ところで、みなさんが歌っている「The Sun」。こういう曲も作ってて良かったのでは?

森「そうですね。この曲書いたのはもう何年も前ですけど、自分が結構限界で。これ最後にしようと思って書いたぐらいですね。で、その後、「Lonely Go!」を江口 亮さんといっしょにやって世界が開けたというか。だからある意味、一旦のBrian the Sunの形としては「The Sun」以前と以降では大きく変わってる。で、また「Lonely Go!」以降、希望を見させてもらって、で、続けることができた」

――「Tthe Sun」って、森さんの斉藤和義イズムが窺えて。

森「あー!フォークな部分がね」

――「歌うたいのバラッド」ならぬ、バンドのバラッドというか。

白山「いいですね、バンドのバラッド(笑)」

――こういう曲を作れる地点まで来たとも言えるし、でも森さん自身はギリギリだったと?

森「ギリギリっすよね。メジャーデビューして、「HEROES」とか出さしてもらって、死ぬほどでかいタイアップつけてもらって。でも思ってる結果には全然届かんくて。だからさっきの目的中毒じゃないけど、目的を達成できないということに、ただただ病んでいくというか。そんなに大事なことじゃないというか、歌ってますやん!ライブできてますやん!お客さん来てますやん!うれしいですやん!でいいってことを忘れるぐらい必死ですよね、この時期は」

――じゃあ今は、活動休止も発表したし、全曲ライブも配信したし、ベストも出るし、解き放たれた?

小川「ある意味、気は楽ではあるよね。そして12月にライブをやれるっていう」

――今また増えてるからちょっと悩ましいですが。でもライブハウスでのお客さんを見てると、マナーは結構しっかりしてると思います。

森「めちゃめちゃ偉いですよね、みんな。やっぱりそれは趣味の時間というか、心の栄養のためにほんとに好きで行ってる場所やから守れるんやと思う。仕事に行く時の満員電車とか、ストレスのために向かう空間ではああいうことはできない」

――自分たちが守らないといけない場所なんで。まだでもまだ有観客のライブにみんな行ってないと思うので緊張してるかもしれませんが。

白山「確かに、勇気はいるね、まだ」 森「でも、コロナになる前の、あんなにスシ詰め状態にしないと採算取られへんっていうシステムもちょっとあれですよね(笑)」

――ライブの在り方みたいなものも、一度見直すタイミングなんでしょうね。これまでも変化してきたわけだし。

森「その都度その都度何かは問題はありますからね。逆に僕らみたいにイケイケじゃないバンドはやりやすいですよ。拍手で十分やし。ノリノリで聴いてもらう必要がないというか」

――そして2021年は皆さんは何をしているのでしょうね。

田中「オーダーメイドの柔軟剤をプロデュースしてたり?」

一同「ははは!」

田中「2021年は株式会社Brian the Sun立ち上げるかもしれん(笑)」




――何が始まることやら(笑)。

森「俺は曲を書いとけよって思います(笑)。ちゃんと曲を書いてためて、揃えておきます」

――Brian the Sunの今回の決定には勇気づけられる部分が多いです。

森「うん。そうなれるように来年以降は我々が動いていかないとダメですね」

小川「生きてる限り音楽はできるからね」

――またどんな自由な音楽ができるか楽しみにしてます。

全員「ありがとうございました!」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/いのうえようへい





■Brian the Sun TOUR 2020 「LIVE PARADE -winter-」
2020年12月4日(金) 心斎橋 BIGCAT
2020年12月9日(水) 心斎橋 BIGCAT
2020年12月17日(木) 名古屋 Electric Lady Land
2020年12月18日(金) 新宿 LOFT
2020年12月22日(火) 心斎橋 JANUS
2020年12月23日(水) 心斎橋 JANUS

■Brian the Sun Presents「SUN! SUN! SUN!」Vol.4
2020年12月6日(日) 心斎橋 Live House Pangea
Brian the sunオフィシャルサイト





Brian the sun
Brian the Sun『BEST PARADE』
2020年12月2日(水)発売
初回生産限定盤(Blu-ray+CD)/ESCL-5457/5458/5,000円(税別)
通常盤(CD)/ESCL-5459/3,000円(税別)
ソニーミュージック




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