1964年2月12日、マイルス・デイビスはニューヨークのフィルハーモニック・ホールでコンサートを行った。そのライブ録音は、プロデューサーのテオ・マセロによって、アップテンポでアグレッシヴな楽曲を収録した『フォア&モア』、しっとりしたバラードを多く収めた『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』2枚のライヴ・アルバムとしてリリースされ大ヒットを記録し、マイルス・デイビスの数あるライヴ盤の中でも特に人気の高い名盤として親しまれてきた。
今作はこのライブ録音を当日演奏された通りの曲順で、コンサートの前半と後半の全曲を2枚のCDに分けて収録した完全録音盤(日本企画)。DISC-1にはどちらのアルバムにも収録されなかった「枯葉」も収録。
この音源は2004年に発売されたBOXセット『セヴン・ステップス:ザ・コンプリート・マイルス・デイビス 1963-1964』に収録されているが、独立した形でのリリース&SACD-Hybird化は世界初となる。
ライブ音源の録音は『カインド・オブ・ブルー』も手掛けたフレッド・プラウト。その3chマスターを基に2004年の上記BOXセットのリリースの際にソニー・ミュージック・スタジオ(NY)のマーク・ワイルダーがリミックスを行った。今回のリリースに当たり、マーク・ワイルダーのリミックスのアナログ・データを本国から取り寄せ、ソニー・ミュージック・スタジオ(東京)の鈴木浩二がDSDマスタリングを行っている。
この日の演奏について、マイルス・デイビスは自伝でこのように語っている。
その夜のオレ達の演奏は、まさに天井をぶっ飛ばしてしまいそうな勢いだった。本当に一人残らず全員が、ものすごい演奏をした。曲はほとんどがアップテンポだったが、ただの一度も狂わなかった。ジョージ・コールマンも、この夜が最高だった。それにバンドには創造的な緊張感が漲っていた。
『マイルス・デイヴィス自伝』マイルス・デイヴィス/クインシー・トゥループ著 中山康樹訳シンコーミュージック・エンタテイメント刊より
1963年にハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス3名の若手ミュージシャンがクインテットに加入、また実力派のジョージ・コールマンも加えて国内でのツアーを行う中で、2年ぶりとなるスタジオ・アルバム『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』を録音している。そのほかフランス・ツアー(『ライヴ・イン・ヨーロッパ』に収録)や、モンタレー・ジャズ・フェスに出演するなど、精力的な活動を行っている。
1964年2月に行われたフィルハーモニック・ホールでの公演では、前年に録音された『セヴン・ステップス~』から2曲を演奏しているほか、当時のライブの定番曲をあらかた総ざらいしているような豪華なセットリストである。超高速で演奏される「ソー・ホワット」、アグレッシヴな「フォア」「ウォーキン」、ハービー・ハンコックのリリカルなピアノが光る「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など、当時のマイルス・クインテットのライブのハイライト曲を中心に、「枯葉」「オール・オブ・ユー」などのスタンダード楽曲を散りばめていて、当日観た観客は満足したのではないだろうか。また両公演ともバラードと軽快な曲を交互に演奏する緩急のついた構成となっている。
この日のセットリストでバラードと軽快な曲を2枚のアルバムに分けるというアイディアは、プロデューサーのテオ・マセロの発案によるものだが、まさに慧眼と言うべきだろう。我々はずっとこの構成でこのライブの音源を聴いてきた訳で2枚のアルバムの曲順が染みついている。その一方で当日の公演がどのように演奏されたのか、というのもジャズ・ファンにとっては非常に興味深いことではないだろうか。
【アルバム情報】
マイルス・デイビス 『ライブ・アット・フィルハーモニック・ホール』
MILES DAVIS/RECORDED LIVE IN CONCERT AT PHILHERMONIC HALL
2026年11月25日(水)
SACD-Hybrid 紙ジャケット仕様
解説:村井康司
SICJ-10026/27(2枚組)
価格¥5,000(抜)¥5,500(込)
<収録曲>
<Dsic-1>
1.イントロダクション・バイ・モート・フェガ(未収録)
2.枯葉(未収録)
3.ソー・ホワット☆
4.星影のステラ★
5.ウォーキン☆
6.オール・オブ・ユー★
7.ゴー・ゴー(テーマ&アナウンスメント) ☆
<Disc-2>
1.イントロダクション・バイ・ビリー・テイラー(未収録)
2.オール・ブルース★
3.マイ・ファニー・ヴァレンタイン ★
4.ジョシュア☆
5.アイ・ソート・アバウト・ユー★
6.フォア☆
7.セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン☆
8.ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラヴ☆
9.ゴー・ゴー(テーマ&アナウンスメント) ☆
未収録:『フォア&モア』と『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』に収録されなかったトラック
☆:『フォア&モア』に収録
★:『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』に収録
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