進化し続けるBBHFのプレミアムなステージ――Billboard Live presents BBHF "Neighborhood" ライブレポート

Galileo Galileiの尾崎雄貴と尾崎和樹、同バンドのサポートメンバーでもあるDAIKIにより結成された3人組バンドBBHFの初となるビルボードライブ公演が決定。その初日公演が12月11日（月）、ビルボードライブ横浜にて開催された。

Mk.geeことマイケル・ゴードンの「I Know How You Get」をBGMに、メンバー3人とサポートメンバーのYohey（Newspeak）、岡崎真輝（Galileo Galilei）がステージに登場すると、会場からは大きな拍手が巻き起こる。おもむろに楽器・機材のセッティングを行い、シンセサイザーによる重厚なドローンに導かれてまずはセカンドアルバム『BBHF1 -南下する青年-』（2020年）から1分半の小曲「月の靴」でこの日のライブをスタートした。微かに聞こえる鳥の鳴き声が、凍てつく冬の朝に朧げな月を見上げているような、少し心細くも清々し気持ちが胸に広がる。

間髪入れず、同じく『BBHF1 -南下する青年-』から「クレヨンミサイル」へとなだれ込む。DAIKIによるエッジの効いたエレキギターのカッティング、岡崎が奏でるシンセの幻想的なサウンドがエレクトロポップなバンドアンサンブルにコントラストを付け、その上を雄貴のボーカルが伸びやかに舞い踊る。和樹のタイトなドラミングと、Yoheyによるシンプルなベースラインもこの曲のメロディを鮮やかに引き立てていた。

その後も『BBHF1 -南下する青年-』の楽曲を中心に、EP『Mirror Mirror』（2019年）や『Family』（同年）などから人気曲を散りばめ、さらに他アーティストのカバー曲も加えた“ベスト・オブ・BBHF”とでもいうべきセットリストを展開する5人。以前のインタビューで雄貴は、「Galileo Galileiというのは僕がメンバーと作り上げている一つの世界、コミュニティ」であるのに対し、「BBHFは、外の世界で『個』として音楽を奏で、それを『個』としてそこにいる人たちに届けているような感じ」と語ってくれたが、ステージから比較的近い距離で、バンドの演奏をじっくりと聴き込むことの出来る“着席スタイル”のビルボードライブは、そんなBBHFの世界観に“没入”していくのに打ってつけの場所といえよう。

実際、こうやって改めてBBHFの楽曲と演奏に向き合ってみると、メロディラインの美しさや雄貴の「ボーカリスト」としての表現力、そして生楽器とエレクトロサウンドを融合させたハイブリッドなバンドサウンドに唸らされる。

例えば「メガフォン」（『Mirror Mirror』収録曲）では、YoheyのスラップベースとDAIKIのファンキーなカッティングギターが有機的に絡み合い、地声とファルセットを巧みに使い分ける雄貴のボーカルを彩る。かと思えばミドルチューン「真夜中のダンス」（『Family』収録）では、宙を駆け上がるような高揚感あふれるメロディに、雄貴が爪弾くアコギのきらびやかな音色と、セクションごとに景色を描き分けるような和樹のリズムフレーズが呼応する。1音たりとも過不足のない緻密なアレンジと、それを躍動させるグルーヴィーな演奏、そしてオーディエンス一人一人に語りかけるような雄貴のボーカルが、楽曲の持つストーリーをどこまでも増幅させているのだ。

「僕らも今回、初めてビルボードライブで演奏するし、こういう場所でライブを観るのは初めてという人もきっと多いと思います。みんな一緒なので、ゆったりと楽しんでいってください」そう雄貴が挨拶すると、あたたかな拍手が会場を包み込んだ。

力強い4つ打ちキックのリズムに体を委ねながら、まるでラップのようにフロウする雄貴のボーカルが印象的な「Torch」を経て、「Bird Bear Hare and Fish」名義でのファーストアルバム『Moon Boots』から「Work」を披露。和樹による歌心たっぷりのドラミングが自然と体を揺らす。さらに、5日前の12月6日にリリースされたばかりとなる新曲「エデンの花」を披露。切なくも透明感あふれるメロディが、心の中を優しく満たしていくのを感じた。

「今日はなんか、メンバーの顔を見ながら演奏できたのが良かったです。普段、僕らが集まってセッションしたり曲作りをしたりしている空間を、みんなに覗き見てもらっているような雰囲気があって。すごく楽しいひとときでした。来てくださってありがとうございます」

ライブの後半、そう話した雄貴。BBHFは来年1月9日にビルボードライブ大阪でライブを行い、3月にはGalileo Galileiと札幌・大阪・東京でスプリットツアーを開催する予定だ。そこではきっと、この2つのバンドが奏でるサウンド、世界観、そしてコンセプトの違いがより明確になるだろう。

（おわり）

取材・文／黒田隆憲
写真／Masanori Naruse

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