「ここに立つバンドを見て、俺もああなりたいって願って、This is LASTを立ち上げて、8年かけてここに来ました。何が起こるかわからないよ、人生っていうものは。終わったって思う瞬間、俺もあったよ。無理だって思う瞬間もあった。でも今日がある。一緒に、ここを“通過点”にして、先に行かないかい?」

ライブも終盤に差し掛かったころ、菊池陽報(Vo/Gt)はそうオーディエンスに語りかけた。そして鳴り響いた「ディアマイ」。2020年にリリースされたファーストフルアルバム『別に、どうでもいい、知らない』に収録されたナンバーが日本武道館を震わせ、空間を埋め尽くした人々の歌声を巻き起こす。それはThis is LASTというロックバンドがこれまでに積み上げてきた時間とそこにあった紆余曲折をすべて肯定するような、美しい光景だった。

初の日本武道館公演「This is LAST one man live at 日本武道館 “通過点”」。チケットは即日完売。ずっと憧れ、目標にしてきたステージに登場した菊池が力強く「武道館!」と叫んだ瞬間から、とんでもない熱狂とともにライブは展開されていった。1曲目から「恋愛凡人は踊らない」を繰り出し、さらに「もういいの?」「沼超えて湖」、そして「火の花」とアッパーチューンが畳み掛けられ、オーディエンスの手拍子が広がる。「今日、ギリギリまで曲詰め込んでるんだけど、やれるかい?」という菊池の声に上がる歓声が、ここにいる全員がいかにこの日を待ち望んでいたかを物語るようだ。

5曲目「ベイビー」を終えたところで訪れた最初のMC。菊池はパンパンに埋まった客席を見渡して「すげえ!」と本音を口に出す。「今日、初めてこのステージに立たせてもらってます。ここを通過してその先に行きたいなという、願いというより計画という気持ちを込めて“通過点”という名前を付けました。過去も伝わったらいいなと思うし、未来が見えるようにしたいなと思うし、何よりも今生きているThis is LASTを見せられたらなと思います」とこの晴れ舞台に込めた思いを言葉にすると、始まったのは「Strawberry」。ギターと歌のみで始まった曲に、やがて鹿又輝直(Dr)のドラムとサポートメンバー・芳井雅人(Ba)のベースが重なり、バンドサウンドが生まれる。そのドラマティックな展開は、武道館という舞台にふさわしい壮大さだ。

そして、その壮大さを受け継ぐように、ミラーボールが眩い光を放つ中披露された「結び」、今年リリースされた「アイリス」、さらには今やThis is LASTの代名詞ともいえる曲に成長した「#情とは」と、This is LASTのもうひとつの魅力であるバラードが続けて演奏される。武道館いっぱいに広がるサウンドと歌から、菊池がどれほどこの場所を思い描いて音楽を作り続けてきたのかが伝わってくる。

「すげえよな」と鹿又と言葉を交わし、バンドを支え続けているよっしーこと芳井を改めて紹介すると、菊池はオーディエンスを称えながら、「2018年に結成して、夢中になって走ってきましたけど、本当にいろんなことがありました」と、バンドが歩んできた歴史を振り返り始めた。もともとメタルコアバンドをやっていた菊池と鹿又だったが、菊池が当時の恋人に浮気されたことをきっかけにThis is LASTが始まったこと。最初は自分の失恋のことばかりを歌っていたが、いろいろな人に出会い、心の穴が少しずつ埋まっていったこと。自分の作る音楽が誰かにとっての支えになるんじゃないかと思い始めたとき、彼はひとつの曲を「封印」した。ずっと歌ってこなかった曲を「今日はあの日に戻って、自分のためだけに歌う」という言葉に客席からどよめきのような声が上がった。その曲とは「左耳にピアスをしない理由」。この曲で歌われる左耳に開いたままのピアスホールは、彼の心の穴の象徴だった。いつしか埋まったその穴をもう一度覗き込むようにエモーショナルに歌う菊池。今にして思えばとてもシンプルな3ピースの音像が、This is LASTの抱えていた衝動を今に甦らせる。

まるで過去にケリをつけるようなこの曲を終えると、あとは未来に向かって突き進んでいくのみ。「やるぞ、武道館!」という叫びとともに届けられた「愛憎」を経て、自らを奮い立たせるような「ヨーソロー」やホーンの音色が鳴り響く「向日葵」、菊池がハンドマイクで歌う「Any」、そして軽やかなリズムに手拍子が広がった「シェイプシフター」といった楽曲が続々と披露され、オーディエンスのボルテージを上げていく。菊池のボーカルはますます熱を帯び、鹿又のドラムも勢いを増す。そうしてライブは少しずつ、クライマックスへと上り詰めていくのだった。

「あなたも含めて、いろんな人に助けてもらって、今やっとここに立ってるなって本当に思うよ」。ここに来るまで、This is LASTにはさまざまなことがあった。どうしようもない事情で解散を考えたこともあったという。そんなときに彼らの「命を拾って」くれたのが今の事務所とマネージャーだった。それから4年。ときには思いをぶつけ合いながらも、一緒に成長してきた、と菊池。マネージャーだけではない。鹿又も、芳井も、いい曲を書くためにすべてを懸ける彼を受け入れ、支え続けてきた。この日もライブを作るためにスタッフは寝ないで準備してくれた。「この場を借りて感謝を伝えさせてください。本当にみんな、ありがとうございます」。その言葉に温かな拍手が送られる。

「人が動くバンドになったんだなと思うのと同時に、ぶっちゃけちょっと怖くなってくるんだよ」。そう本音を吐く菊池を見ながら、鹿又も感極まっている。「俺より武道館にふさわしい人がたくさんいると思うんです」とマネージャーにこぼしたとき、マネージャーは「本気で言ってる? 私は立つべき人が立つ場所だと思うよ」と言葉をかけてくれたという。「自信をもって言えはしないけど、ここにいるあなたの前で歌えていることが、1個の証明なのかなと思います」――悩み、苦しみながら歩んできた道のりをさらけ出す菊池。それは言い訳ではなく、「こんな俺でもできた。あなたにもできる」というメッセージだ。この武道館はThis is LASTにとってはもちろん、バンドを支えてきたすべての人にとっての“通過点”なのだ。

その“通過点”の先に行くべく、ここからライブは怒涛のクライマックスへと突入していった。「ディアマイ」「病んでるくらいがちょうどいいね」と代表曲を連打すると、「カスミソウ」では冒頭から大合唱が武道館を包み込む。そのとんでもない声量が、「俺たちは一緒にライブしてんじゃん」という菊池の言葉を正解にしていく。そして本編最後の曲は「オムライス」。ここでも全員の声が重なって、武道館には最高の一体感が生まれたのだった。

そのあとのアンコールでは、過去の写真をスクリーンに映し出しながら「拝啓、最低な君へ」を届けると、ラストはThis is LASTの始まりの曲。「これをやらないとって曲をやってない」と「殺文句」が歌われる。シンガロングに耳を傾け、それに負けじと声を張り上げる菊池。8年前の痛みを歌った曲が、ここから始まる新たな未来の幕開けを告げ、This is LAST初の武道館公演は幕を下ろしたのだった。

この日のライブ中には11月19日・20日の2日間、地元・柏のライブハウスDOMe Kashiwaで凱旋ワンマンライブを開催することも発表された。「千葉・柏から、This is LASTでした!」――ライブのたびに言い続けながらも武道館に立つまでは柏に帰らない、と決めていたという彼らにとって、この武道館と同じように節目となるライブだ。間違いなく特別なものになるこの2日間も、そしてその先で決まっている来年のZeppツアーも、今から楽しみにしていたい。


文:小川智宏

写真:日吉”JP”純平

LIVE INFO


自身最大規模となる5都市9公演 Zepp ワンマンライブツアー
「This is LAST one man live Zepp tour 2027」

2027年3月5日(金) 東京 Zepp Haneda (TOKYO)
2027年3月6日(土) 東京 Zepp Haneda (TOKYO)
2027年3月12日(金) 愛知 Zepp Nagoya
2027年3月13日(土) 愛知 Zepp Nagoya
2027年3月19日(金) 大阪 Zepp Osaka Bayside
2027年3月20日(土) 大阪 Zepp Osaka Bayside
2027年3月26日(金) 福岡 Zepp Fukuoka
2027年3月27日(土) 福岡 Zepp Fukuoka
2027年4月11日(日) 北海道 Zepp Sapporo

▼詳細 https://thisislast.jp/news/detail/75830


地元・柏での凱旋公演
「This is LAST one man live " Homecoming " at Live House DOMe Kashiwa?」

2026年11月19日(木) ライブハウスDOMe Kashiwa
2026年11月20日(金) ライブハウスDOMe Kashiwa

▼詳細 https://thisislast.jp/news/detail/75830

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