──配信EP『交差点』を10月7日にリリースし、メジャーデビューを果たす大東さん。出身地の大阪を拠点に活動を開始し、2024年1月、新たな挑戦を求めて上京。翌月にはJ-WAVE主催『ギタージャンボリー』出演オーディションでグランプリを獲得して両国国技館のステージに立ち、翌年9月には、現在所属する事務所主催のフェス『Augusta Camp 2025 ~YAMAZAKI MASAYOSHI 30th Anniversary~』のオープニングアクトとして、ぴあアリーナのステージに立つなど、上京後はかなり激動の時間を過ごされてきたように思います。デビューを目前に控えた今、そうした出来事を振り返ってどんな心境ですか?

「2年半前に上京してからすごく色々なことが進んでいったように思っていて、正直、メジャーデビューはまだ他人事のように感じています…実感がないというか(笑)。でも、上京してから『ギタージャンボリー』とか『Augusta Camp』とか大きいステージでライブを観る機会が増えました」

──“出る機会”ではなくて“観る機会”なんですか?

「そうなんです。出演させていただけたことで、同じステージで名だたるアーティストさんたちのライブを観ることができて、客観的に自分をそこに並べて比較する機会をいただいたと思っています。そういう大きいステージでライブをやっている人たちは、何か一つ自分の武器…歌詞だったり、スコーンってどこまでも飛んでいくような歌声だったり、MCを含めてその人が作り出す空気だったりがあって、“私は何で戦っていくんだろう?”と考える機会になりました。作る曲がどうこうと言うより、“大東まみ”というアーティストについて考えさせてもらう時間だったように思います」

──EP『交差点』は5月からスタートした6ヶ月連続配信リリースのシリーズ最終章として、9月までの5曲に新曲1曲を加えた全6曲が収録されています。これらの楽曲はいつ頃に書いた曲になるんですか?

「6ヶ月連続配信リリースの楽曲は全て上京してから書いた曲です。上京してから1年くらいはひたすらスタジオにこもって曲を書いていたんですけど、その中からやっと6曲をリリースすることができたという感じです」

──EPのタイトルにもなっている新曲の「交差点」は、たくさんの人が行き交う交差点と、いろんな選択肢がある自分の人生を重ね合わせた楽曲ですね。この曲はどんなときに生まれたのでしょうか?

「この曲は渋谷のスクランブル交差点を歩いているときに浮かびました。なんだか、2年半前に東京に出て来たときより、人混みをうまいこと歩けるようになったと思って…。でもそれは前を歩く人の後ろについて歩いているからだということに気付いて、“これって、人生とか生活でも同じことが言えるのかも”と思いました。前を行く人のコースについて行くことは、その人が切り拓いた道しか歩けなくて、自分が本当に行きたい場所には行けない…そう思って。この曲を書いた当時の私は、今の事務所と出会って、いろんな人が私の音楽に関わってくれるようになった時期で、自分より知識もキャリアもある人たちがいろんな意見をくださる中で、自分の意見を主張したり信じたりすることが難しくて、でもそういう自分がすごく嫌で…。そんな想いがあったからこそ、交差点に立ったときにそれがリンクしてこの曲が生まれました」

──大東さんは、メロディも歌詞と一緒に浮かぶのでしょうか?

「そういうケースが多いです。「交差点」の場合は、歩いているときに浮かんだことをスマホにメモしておいて、それをスタジオで“こういうメッセージを伝えるならこういう曲調がいいかな?”という感じで作っていきました。でも、もっと気まぐれに、“最近こういう曲調にハマってるから”とか、“メロディを面白い感じにしよう”とか、そこから曲にしていくこともあります」

──いろんなアプローチで曲作りをされているんですね!

──その中でも大東さんが曲を作る上で大切にしていることは何ですか?

「上京してきてから目標にしているテーマがあります。それは、“出来るだけ自分の醜さとかカッコ悪いところを取り繕わずに曲に出す”っていうテーマで、手を加えたり、添削したりしていくうちに、そういう部分がどんどんなくなってしまうんですよ。それに、自分が“ヘンだな”と思って削った部分が、他人からしたらすごく面白い個性だったりすると思うので。今回のEPに収録している曲たちも、勢いでどわーっと書いてから、その大枠は変えずにちょこちょこ修正していくという制作スタイルでした」

──その結果、デモから予想がつかないくらい変貌を遂げた楽曲はあったりしますか?

「大きく変わったとかではないですけど、曲の終わり方はかなり変えました。なんだか、曲を書く度に毎回同じことを言われることに気付いた時期があったので…」

──どんなことを言われていたのでしょうか?

「“もう一歩、前向きになって終われるといいよね”みたいなことを言われていました。曲のアレンジをしてくださっているトオミ(ヨウ)さんもですし、ライブを観てくれた事務所の方にも言われました。だから、「ごみはごみ箱へ」や「モナリザ」、「交差点」は、そこを意識しながら書きました。最初に私がわーって書いたものって、曲調とか言葉とかはすごくポップスなんですけど、やっぱりどこか独りよがりというか…自分ごとの域を超えられていない感じがして。でも、トオミさんたちの言葉を聞いて、“聴いてくれる人が一歩前に進める”というのがポップスがポップスである所以なんだと思ったので、そこからは曲を書くときに最初の段階から“この曲はどういう風に終わらせようか?”ということを考えるようになりました」

──なるほど!

「例えば、「ごみはごみ箱へ」だったら、“あんなクズはごみ箱へ捨てます”で終わるのではなくて、傷ついて投げ捨てた恋心を拾い上げて、抱きしめて終わっています。“その痛みもいつか自分のためになるよ”という一歩進んだ結論が、聴いてくれた人にとってポジティブでポップスらしいと思って」

──確かに全然印象が変わりますね。

──ちなみにですけど、大東さん自身はポジティブ思考ですか? それともネガティブなタイプ?

「くっそネガティブです!(笑)」

──あははは! ただのネガティブではなくて、クソが付くほどに(笑)。

「本当にひどいネガティブです(苦笑)」

──最近のネガティブエピソードは何かありますか?

「え〜…いろいろあるんですけど。でも、今ホットなネガティブエピソードで言うと、10日間くらいすごくお腹を壊していて。さすがに壊しすぎだろうと思って今朝内科に行ったら、感染症とかではなくてストレス性ってお医者さんに言われました(苦笑)」

──冒頭で“メジャーデビューの実感はない”と話していましたけど、実は緊張しているのかも…。

「かもしれません(苦笑)。割と環境の変化にも弱くて、遠征とかが続くとお腹を下したり…。心配性なんですよ。うまく行ってたら行ってたで、“こんなうまく行ってるって大丈夫!?”ってなります(笑)。でも、ネガティブだから、それに対して自分で大丈夫になる術を探しているようなところがあって。「ごみはごみ箱へ」の“ごみ箱に捨てちゃえばいいんだよ”とか、「交差点」の“自分の道を信じて歩いていこう”とか、そういう言葉をわざわざ言うのは、自分がすごくそういう言葉を求めている人間だからなんだと思います」

──大東さんが曲の終わり方を意識して変えたという「ごみはごみ箱へ」と「モナリザ」、個人的にお気に入りです。聴いているとスカッとします(笑)。

「ありがとうございます! この2曲は女性からの人気がすごく高いです。私のお姉ちゃんも“「モナリザ」を聴いて仕事のモチベ上げて頑張ってる!”と言っていて、“どんな職場!?”と思ったんですけど(笑)。でも、“好き”って言ってもらえるのは嬉しいです」

──SNSなどでよく問題となる匿名での心ないコメントと、世界的名画のモナ・リザを結びつけた「モナリザ」は、メッセージ性もさることながらそのアイデアそのものにオリジナリティを感じました。これはどんなきっかけから誕生した曲ですか?

「「モナリザ」の場合は書いていく中で“モナ・リザっていい題材かも”って思い付いたパターンです。伝えたいメッセージがあると、それを何か一つのタイトルとしてワードを決めたいときに、頭の中でいろんな関連ワードを広げていく…自分の脳の網を広げるような作業をやっています。そのうちに、“あっちの端っこにあるあれが、今、私が言いたいことに繋がっている”と思ってこっちに引っ張ってくる…みたいに。「モナリザ」もそうやって浮かんだキーワードでした」

──そんな大東さんの頭の中を覗いてみたいです(笑)。

「自分でもどうなってるのかわかりません(笑)。不思議と毎回、“ここにこれがあった”みたいな感じで出来てしまうので…。“奇跡が起こるのを待っている”と言うか、なんとかして奇跡を探している感じなので、いつ出来なくなるかわからない不安のような気持ちはすごくあります。これが心配性のネガティブな思考なんですけど(苦笑)」

──奇跡は努力を重ねている人にしか生まれないものですから、きっと大丈夫です!

「ありがとうございます!」

──そういう不安を事務所の先輩に相談することもありますか? 大東さんが所属するオフィスオーガスタには個性豊かな先輩方がたくさんいらっしゃいますが、よく話す方とか、印象に残っている会話などがあれば教えてください。

「曲作りに関してすごく助けていただいたのは、スキマスイッチの(大橋)卓弥さんと長澤(知之)さんです。それこそさっきお話しした、自分の主張をただ書くだけではなくて何か一歩進んだ形にするというのは、以前卓弥さんからのアドバイスを聞いて感じたというか…。その後に改めてスキマスイッチさんの曲もいろいろ聴いて、“こういうところがグッとくるんだよなぁ”というところを照らし合わせたときに、“そういうことか!”と思って曲の最後は前向きにするようにしました。長澤さんは、本当に“楽しいから音楽をやっている”というのが伝わってくる方で。それが一番正しい音楽の形だと私は思うので、長澤さんみたいなアーティストになりたいです。理想の方です。それに、いつお会いしても“まみちゃんが楽しくないとダメだからね。楽しくなくなりそうになったら何でも相談してくれていいよ”って言ってくださるんです。本当にいい人で、大好きです。“本当にいい事務所に入ったな〜”って思っています(笑)」

──EP『交差点』のリリース後は、弾き語りワンマンシリーズ「交差点」の『vol.6 -Solo Series-』が大阪(10月16日/アメリカ村BEYOND)で、そして、『vol.7 -Solo Series & Series Final-』が東京(10月30日/渋谷eggman)で開催されます。メジャーデビュー後初のワンマンライブとなりますが、どんなステージにしたいと思っていますか?

「“6ヶ月連続弾き語りワンマンシリーズ”として5月からスタートしたライブですけどvol.1〜5までは毎回ゲストの方をお呼びしていました。そこで自分とはまた違う音楽哲学を持っている人たちと密に音楽をやらせていただいて、“自分の音楽はこうじゃないといけない”とか…そういう風に思っていることがすごくちっぽけなことなんだと感じたんです。“音楽はもっと自由なんだ”、“いろんな音楽があるんだ”ということをすごく感じて、音楽に対して柔軟になれたように思うので、このシリーズでゲスト参加していただいたアーティストさんからもらったものをちゃんと持ってステージに立ちたいです。今年は私が歌い始めてから10年くらい経つので、その集大成となるワンマンライブでもあります。これまでの道のり…この10年、全然うまくいってない時間のほうが長かったりしますけど、そういうカッコ悪さ、泥臭さもちゃんと見せられるようなライブにしたいです!」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/中田智章

RELEASE INFORMATION

大東まみ『交差点』

2026年10月7日(水)配信

大東まみ『交差点』

LIVE INFORMATION

大東まみ 弾き語りワンマンシリーズ「交差点」

vol.6 -Solo Series-
2026年10月16日(金) 大阪 アメリカ村 BEYOND

vol.7 -Solo Series & Series Final-
2026年10月30日(金) 東京 渋谷 eggman

大東まみ 関連リンク

一覧へ戻る