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選曲家の声
2017.12.15

野崎良太(Jazztronik)×Suppage――OTORAKUスペシャルインタビュー(後編)

USENの店舗用BGMサービス「OTORAKU」のキュレーター、野崎良太(Jazztronik)がBGM選びのメソッドと自身のミュージシャンシップについて語るインタビューの後編です。これまでのプレイリストを眺めつつ、選曲のディティールを解説してくれました。さらにJazztronikの最新情報もお伝えします。

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BGMアプリ「OTORAKU -音・楽-」 Curation by 野崎良太(Jazztronik)



——これまで野崎さんのプレイリストには「Spring〜in the daytime〜」、「Summer Vacation」、「Room Party in Autumn」といったタイトルがありますが、これらは先にテーマを決めて選曲していく手順ですか?

「そうですね。テーマありきです。それを拠りどころにして選曲していきます」

——たとえば、テーマに則したレファレンス的な曲やアーティストを置いて、前後を組み立ててゆくとか、プレイリストの全体感を俯瞰してイメージするといった感覚はありますか?

「いや、漠然と選曲してゆくうちに、ぼんやりと核になる曲が見えてくるというか……この2016年の「Summer〜in the morning〜」なんかすごくがんばって選曲した記憶があるんですが、選曲している最中と、こうして完成したプレイリストで見たときでは、結構印象が違いますね」

——このプレイリストの中盤あたりで、ディアンジェロからミシェル・ンデゲオチェロ、ロバート・グラスパーというネオソウル的な流れがあって、終盤にはジスモンチ、ベベート、ジョビンというブラジリアンの流れになっているんですが、全体を通して聴いてみると全然違和感がないんです。

「その間の時間帯にうまくペースチェンジしているんでしょうね。ジャイルス・ピーターソンなんかもそうですが、海外ではジャズの捉え方ってすごく幅広いじゃないですか。ど真ん中のジャズがあって、その周辺にあるファンク、ワールドミュージック、エレクトロニカ、ニュージャズまでひっくるめて全部ジャズなんだという。僕も同じ考え方なんですよね。そういう全体感のなかで選曲しているので、プレイリストとして見るとうまくグラデーションが描けているんじゃないですか」

——ああ、なるほど。モントルーにレディオヘッドやケミカル・ブラザーズがラインナップされているような?

「そうそう!あの曖昧でアグレッシブなジャズの捉え方(笑)。一方で、ジャズは70年代までのブルーノートしか認めないという硬派な人もいるでしょうし、逆にヨーロッパ系のECMが好きっていう人もいたりして……それはそれでありだと思いますし」

——同じく2016年の「Summer〜in the night〜」のスティーヴ・ライヒ、シャーデー、アイアン&ワインも夏の夜感があってよいですね。

「ボン・イヴェールとかね。あのプレイリストは僕も気に入ってます。確か、ライナーというかプレイリストの紹介文に“ジャンルは正直、何と言っていいかわかりません”て書いたんですよ。結局、僕のプレイリストは「野崎良太(Jazztronik)」というジャンルだし、沖野さんは「沖野修也(Kyoto Jazz Massive)」、大沢さんは「大沢伸一」っていうジャンルなんですよ。DJとか選曲家の場合はそれでいいんじゃないかなって思います」

——プレイリストを眺めているだけですごく楽しめますよ。想像力が刺激されるというか……“こんなところにNulbarichが入ってる!”とか“野崎さん、ディアンジェロ好きなのかな?”とか。

「そう、ディアンジェロ好きなんですよ。僕自身がやっている音楽にはディアンジェロっぽさはまるでないんですけど、それこそお店に行って、ディアンジェロが流れてたら聴いちゃいますから」

——「Spring〜in the daytime〜」はまた違った雰囲気ですね。ギャラクティック、トロ・イ・モア、Tycho、ウォッシュト・アウト、マイケル・キワヌカといったプレイリストですが、春らしく浮ついた感じがします。

「ちょっとミーハーというか、まあまあキャッチーな選曲ですね(笑)。お店のBGMという意味では、やっぱりそこで働いている店員さんが退屈しちゃうのはダメでしょうってことに気が付いたんですよ。これはDJ的な感覚に近いかもしれないですね。クラブで聴き手のことを考えずに好き勝手に回していると、みんなバースペースに逃げちゃうんですよ。だから店員さんが“あ、この曲聴いたことある!”っていう曲を多めに選びました」

——だからというわけではないですが、野崎さんのプレイリストのなかで、これがいちばんアパレル向けのBGMだなって思いました。

「確かに洋服屋さんぽい明るいプレイリストですよね。このシーズンくらいから店員さんのことを意識し始めたり、アパレルみたいなシチュエーションをイメージできるようになりましたから。タイトルは「Spring〜in the daytime〜」ですが、昼夜、季節問わず使っていただけるんじゃないですか」

——さて、2018年1月にリリースするプレイリストでは、この場所、Suppage(サページ)をモチーフに選曲するというアイデアがあるそうですが?

「Suppageはありきたりに言うとカフェ・バーなんですが、ランチタイムとバータイムでがらっと雰囲気が変わるんですよ。昼はキッチンも客席も賑やかですから、音楽がちゃんとお客さんの耳に届くのは夜だと思いますけどね。そこは変化を付けたいなと。あと、この広さというか狭さを意識しなくちゃいけない」

——と言うと?

「バーとか小さなカフェみたいな規模感のお店でキャッチー過ぎる曲が聴こえてくると鬱陶しくなっちゃうんですよ。たとえばジャミロクワイとかアース・ウインド&ファイアーが流れると、お店がBGMに負けちゃうから。クラブも同じですよ。小さなハコでキャッチーなエレクトロハウスとか気恥ずかしくて回せない。ライブだってそうでしょ?やっぱりライブハウスとホールではセットリストが変わりますし。BGMって、業種とか時制、季節も大事ですけど、使う場所のスケール感もすごく大事だと思いますよ」

——そういう意味では、SuppageのためのBGMは、同じスケール感のバーのベンチマークになるかもしれませんね。

「あと、あまりジャンルを詰め込み過ぎない方がいいでしょうね。小さなお店でいろんなジャンルの音楽が行ったり来たりすると落ち着かないから。一定のカラーで統一するっていうか……静かで綺麗めなエレクトロだったり、70年代あたりのジャズですかね」

——楽しみですね。さて、野崎さん自身も間もなくニューアルバム『BB1』をリリースします。

「前作『Keystone』から約1年半ぶりのリリースですが、アルバムタイトルの“BB”はビッグバンドという意味で、毎年年末に開催しているBig Band Live Tourを音源化したいなと思い立って制作しました。ミニアルバムですが、「Spotlight」、「Caprice」、「Dolphin Smile」と新曲も3曲書き下ろしています」

——Jazztronikでビッグバンドスタイルのアルバムとはめずらしいのでは?

「そうですね。スタジオライブを収録した『Jazztronik Studio Live Best』というアルバムをリリースしたことはありますけど、『BB1』は20名ものミュージシャンが参加していますから。12月28日からは、アルバムタイトルを冠した東名阪ツアーも行います。毎年やっていることではあるんですが、今年はアルバムの収録曲を中心にお届けしようと思っています。あとは12月16日、渋谷のTHE ROOMで久しぶりにDJをやります」

——THE ROOMということは「JAZZTRONICA!!」ですね?

「はい。OTORAKUユーザーのみなさんにはプレイリストとDJプレイの選曲の違いを感じてもらえるイベントだと思いますよ。THE ROOMでのJAZZTRONICA!!は約1年ぶりくらいなので、ぜひ遊びに来てください」



(おわり)

取材・文/encore編集部
写真/柴田ひろあき(撮影協力/Suppage)



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■LIVE INFO
12月28日 Big Band Live〜Album「BB1」Release Live〜@Billboard Live TOKYO
12月29日 Big Band Live〜Album「BB1」Release Live〜@NAGOYA BLUE NOTE
12月30日 Big Band Live〜Album「BB1」Release Live〜@Billboard Live OSAKA

■SHOP INFO
東京都渋谷区恵比寿西2-14-10 TWONE 2F
TEL.03-6452-3172
info@suppage.tokyo
ランチタイム:12:00〜16:00(土日祝日定休)
バータイム:19:00〜(日祝日定休)



デイタイムのSuppageの様子

変わって19時以降のバータイムはぐっと大人びた雰囲気。野崎良太いわく「音楽がちゃんとお客さんの耳に届く」シチュエーション

Suppageは、Surprise(驚き)、Page(ページ)に由来する新しいブランド。野崎良太のマネジメントを手掛ける音楽プロダクション、Styrismがプロデュースするカフェバーであり、レコードレーベルとしての機能も併せ持つ

Jazztronik『BB1』
2017年12月20日(水)発売
PCCA-04612/1,800円(税別)
ポニーキャニオン


BGMアプリ「OTORAKU -音・楽-」 Curation by 野崎良太(Jazztronik)