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2019.06.21

スカート『トワイライト』インタビュー――もっとパーソナルに一瞬を切り取って

メジャーデビュー作『20/20』から約1年8ヵ月ぶりにリリースされたスカートのニューアルバム『トワイライト』。大泉 洋主演映画『そらのレストラン』主題歌の「君がいるなら」や、NeggicoのKaedeへの提供曲をセルフカバーしたりとトピックスも多い。そして素朴でありながら洗練された3分間ポップスを鳴らす澤部 渡の本質が伺える作品に仕上がった。

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――『トワイライト』は、前作『20/20』の開かれた感じから、内省的になった印象を受けました。

「はいはい、ありがとうございます(笑)」

――このアルバムまでの期間も映画主題歌などクライアントワークがあったりと、タイアップ曲とアルバム曲が同居する形になりましたが、どうバランスをとったんでしょう?

「結構、最後の最後までアルバムの全体像が見えなかったんですね。実際、曲作りもすごい苦労して、恥ずかしい話なんですけど(笑)。でもあるとき、既発のシングル曲がどっちも4分超えてるって気づいて。“ああ、そうか。じゃ3分の曲を書いて、その3分の曲を次のアルバムのリードにしなきゃ”って思ったんですよね。そうしたらこう、うまい具合に収まるところに収まった感じは、自分の中ではしました」

――えーと、リード曲は?

「「ずっとつづく」です」

――内省に向かった印象があるというのは間違ってないですか?

「そうだと思います。「ずっとつづく」は外向きな曲ですけどね。やっぱりクライアントワークで必要以上に外を向いた分、その揺り戻しがきた感じもちょっとありますね。既発曲があるからこそ内側をやってもいいんだ、っていう自信にもなったかもしれません。だから今回はもっとパーソナルであったり、何かの一瞬だったりを歌詞で切り取るような感じにはなりましたね」

――NeggicoのKaedeさんへの提供曲「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」のセルフカバーから始まるのが面白いなと思いました。

「結構最初は悩んだんですよね。どこに置くべきかとかね。でも、一回置いたら自分の中ですんなり曲順として出来上がって。毎回、11曲目から1曲目に戻った時の気持ちよさみたいなのも考えて曲順は考えてるつもりなので、それがいちばんマッチングが良かったんじゃないかなと思います」

――Kaedeさんのバージョンとほとんどオケが変わらない印象です。

「そうですそうです。ほとんどいっしょです。1曲で、アレンジがたくさんあるのは好きじゃなくて。ま、ベーシストが違うっていうのはあるんですけど、それ以外はほとんど変わってないと思います。でもKaedeさんのときより、演奏面ではちょっと饒舌になったな、とは思ってます」

――KaedeさんのバージョンはMVで見た印象も手伝って、ほんとにバスに乗って遠くへ行く印象が強いのですが、澤部さんバージョンを聴くと何かをやめて帰る人みたいな印象もありました。

「割とそれに近いですね。ここじゃないところへ向かう人というか」

――心情としてはどこか遠くへ行こうとしてる人だと。それをセルフカバーとして澤部さんが歌うときはどんな心情で?

「自分の曲でもそうなんですけど、やっぱりどっかで常に“自分じゃないものになりたい”気持ちが常にあるので。誰かに書いた曲を自分で歌うっていうのは、すごくいいんですよね、自分からすると。より自分じゃなくなる感じがして。それはね、歌ってて気持ちいいですよ」

――悲壮感がない逃避というか。

「あくまで前向きな、希望のある逃亡というかね」

――「あの娘が暮らす街」の次に「ずっとつづく」が来ると物語が続いている感じで。バスなのか電車なのかわかりませんが「最初のカーブで栞を挟んだ」というフレーズで乗り物に乗ってる時のタイム感を思い出すというか。

「一応、電車のつもりではあったんですけど、なんていうか、たとえば文庫を読むぞとカバンから出して電車に座るんだけど、何かが邪魔して今は本を読んでる気分じゃなくて、こう、パン!と本を閉じる、みたいなのを書いたつもりです(笑)」

――でもちゃんと本を用意して出かけちゃう?

「そうそう、何かをね(笑)。気にかかってて、もともとそんな本なんか読む気になれないだろうと思っていたんだけど、ついつい広げて、やっぱりだめだった!みたいなね」





――「ずっとつづく」には矢部浩志さんが参加してらっしゃるんですね。

「ラップスチールを弾いてもらってます。もともと入れたいとは思ってたんですけど、ベーシックを録った時に割と満足してて、これならこれでもいいかなと思ってたんですけど。あるとき、最初から最後まで全部並べて、聴いてた時に、“あ、やっぱりラップスチールいるな”と思って、それで矢部さんに連絡したって感じです」

――矢部さんがスチールギターを弾いてらっしゃるところをあまり見たことはないんですが。

「でも実はカーネーションのアルバムでも何曲か弾いてて。前にカーネーションのトリビュートを作ったときがあって、そのときにラップスチール入れてもらったんですよ。自分の曲に。それが素晴らしかったんですよね。それに矢部さんほどのドラムとソングライティング・スキルだったら、絶対いいものを添えてくれるに違いないと。だからあんまりリクエストも出さずに、“矢部さんの歌心を添えてください”ってオファーをしましたね」

――私も矢部さん在籍時のカーネーションの矢部曲が好きです。

「最高ですよね!」

――直枝政広さんの曲も好きですけど、よりねじれているというか……

「ね?直枝さんが割とストレートな曲をガン!と出してきたときに、より矢部さんがねじれた曲を出してくると、こう、ぐっ!ときちゃうのはありますよね。XTCで言うと、ちょっとアンディー・パートリッジとコリン・モールディングみたいな関係ですよね」

――確かに(笑)。そして「沈黙」の気まずいだけではないこの雰囲気、非常に良い曲ですね。

「なんかうまいこと閉塞感のある歌詞にならないかな?と思って、萩尾望都さんの『トーマの心臓』を読み返したりしました(笑)。金網って言葉が出てくるのは完全に「トーマの心臓」ですね」

――「独りでもなく 二人でもない」って、ひとりより寂しいってやつですもんね。名曲だと思います。

「うれしい。ありがとうございます」

――1曲1曲が派手ではなく、でも存在感がある。澤部さんのソングライターのキャリアにおいて、そういう時期ってことなんですかね?

「そうなんですかね?かと言って必要以上に地味に仕上げたつもりもないんですけど(笑)」 ――確かに派手、地味では語れないかもしれません。

「でも割と自分の中では、いいバランスが取れてる感じがします。内省と外向きのね。たぶん、前作があるので、それがどうしても聴き手の頭を掠めると思うんですけど、割と自分の中ではうまい具合に外向き/内向きが同居できるようになってきたなというかね……ひとつの楽曲でも割と外向き/内向きみたいな揺らぎもはあったりしたんですけど」

――1曲の中でもできるということは、主人公が動いていくということですか?

「とかね。「花束にかえて」とかは割とそういうのはうまく表現できたなと」

――しかもそれがこんなにコンパクトな尺のなかで起こることが驚きです(笑)。

「そう、やっぱコンパクトには絶対したいんで(笑)」

――3分に収めるみたいなところでいうとタイトルチューンの「トワイライト」はすごいことになってて。3分の中でこれだけ感情を揺らしちゃうんだ?って。

「ああ、そうですね。確かに。アルバムの中でもかなり手ごたえのある曲ですね、「トワイライト」は。ま、でもポップソングは3分あればいいんだなっていうのは、これで改めて実感した部分でもあります」

――どういうアプローチで楽曲が出来上がっていったんでしょう?

「ほんとに曲ができない時期があって。その日までに3曲仕上げてリハスタ入って、みんなで合わせてアレンジしていこうみたいな日があったんですよ。で、そこまでに曲が仕上がらなくて、1.5曲できてるみたいな。その1.5も0.7曲、0.8曲ぐらいの完成度で、“どうしよう……”みたいな。で、メンバーの佐久間裕太さんが、“よし、わかった。俺たち、ちょっと外に行きます”」と。“30分外に出てくるから、その30分の間で、Aメロだけでもいいから作ってみたら?それでそれを膨らましていこうよ”って言ってくれて、“わかりました。すいません!”つって。そのときに「トワイライト」のサビが出来上がって。で、みんなが戻ってきて、逆算するようにAメロ、Bメロ作ってった。だから割と瞬発力で作ったんですけど(笑)、その割には結構複雑な感じの曲にも聴こえるし、割と力強い曲にも聴こえるし。そのさっきの話じゃないですけど、外向き/内向きを同居させることができたなって手ごたえがかなりありましたね」

――「トワイライト」というワードのチョイスはどこから?

「日常では使われないけど、割と芸術の分野では使われる言葉じゃないですか。なんかそれも面白いなと思って。タイトルは毎回悩むんですけど、今回は特に悩みましたね。「ずっとつづく」がリード候補だったんで、じゃあもうそれでいいんじゃないか?と思ったんですけど、“ちょっとそれだと違うよなあ……”って話になって。で、だんだん「トワイライト」っていうのはすごいいいんじゃないか?――その、僕らみたいな架空のバンドがありふれた言葉をアルバムのタイトルに使う(笑)――っていうのは、とても自分の中で納得がいったんで」

――「トワイライト」って言葉自体にはどんなイメージがありますか?

「いろいろありますけど、割といい感じで使いやすい言葉のひとつじゃないですか。なんていうか、芸術っぽくじゃないけど(笑)。表現として、さっき言った日常では使わないけれども、たとえば歌詞とかでは見ないこともないし……みたいなね。ちょっとキザな言い方っぽくも見えるんで」

――これが「夕暮れ」ってタイトルだったら全然聴こえ方が違うんでしょうね。

「そうそう。だから夕暮れなんだけど、黄昏でもないしなあ……みたいな。その間の絶妙なところに置けたかなとは思っています」

――夕暮れが「私たちを等しく染めない」という情景と、「振り返ってなんになる!」という強い言葉の両方があるのも面白くて(笑)。

「なんだろう……その「トワイライト」って曲は自分の中ではすごい漫画的だと思っていて(笑)。いろんなコマ割りとかがあって、何かの状況を描いているんだけど、それはあくまで、その何かの一瞬であって、前後はわかんないんですよね。だから歌詞書き終わった後に、“君とここにいないだなんて!”みたいな、“あ、なんか振られた人の曲みたいに見えちゃったかな”と思ったんですけど、たまたまいっしょにいられないときとかあるじゃないですか。見逃しちゃうみたいな、なんかそういうものを書いたつもりだったんです」

――ああ、なるほど。

「それがそういうふうに、たとえば振られちゃった女の子の話にも見えるのは面白いなと、自分でも書き終わった後に思いましたね。だから一瞬を切り取るっていう意味では、そのジャケットの話にも繋がるなと思って」





――そして今回、ゲストの演奏もいいですよね。ゴンドウトモヒコさんのあれはホルンですかね?

「ユーフォニウムです。すごくいいんですよ。ゲストのチョイスも毎回なんですけど、今回もまた絶妙なところに落ち着いたなっていうのはありますね。「遠い春」でRopesのAchicoさんが参加されてて。Achicoさんも空気公団のライブに参加してた時があるし、矢部さんも空気公団でドラム叩いてたんです。それを山崎ゆかりさんのレコーディングのときに気づいて、“これはカルマだな!”と思って(笑)」

――空気公団で繋がりましたね(笑)。徳澤青弦さんのストリングスもあえて華やかな弦ではなくて。

「そうですね。わーっと広げるためではないというか、佐藤優介くんが、ちゃんと楽曲に寄り添ったスコアを書いてくれたので、それはもう素晴らしかったですね。いいレコーディングでした」

――ゲストが多数参加してらっしゃるのに豪華というよりも素朴な質感があります。

「これだけ人が参加して内省的なものが作れるっていうのは、自信になったなと思ったんですよね。『20/20』ときは割とそれを外向きの要素として僕は捉えてたんで。それをまた改めてあくまで楽曲に必要な要素として捉えたって感じはしますね」

――バンドメンバーのシマダボーイさんのパーカッションが元気なんだけど、それでも素朴に聴こえるのは何故なんだろう?と思ったり。

「そうそう。曲によっては、シマダボーイは外向き要員だったんですけど、「それぞれの悪路」のパーカッションとかは、いままでとは真逆で、“ボーイのパーカッションで内に向かせたい”みたいな話をして録音してましたね」

――パーカッションで内を向くって面白いですよね。彼はトリプルファイヤーもやってますが。

「そうそうそう(笑)。どんどん場数を踏んで、どんどん器用になっているんで、それも見てて楽しいですよ。「高田馬場で乗り換えて」はリロイ・アンダーソンの吹奏楽とか聴いてもらって、ちょっとこういうクラシック・パーカッションの組み合わせで聴かせたいみたいな話はしました」

――「高田馬場で乗り換えて」ということは、山手線で渋谷に行くってことですか?

「そうです。そういう歌です。これも提供で書いたというか、トルマルコメみそのタイアップなんですよ。マルコメみそと関係のあることで歌詞を書いてくれみたいなオーダーで。それで変にひねくれてる部分があるんです。実は高田馬場にマルコメさんの本部があるんですよ(笑)」

――なんとまあ、ピンポイントな(笑)。

「でね、西武新宿線の高田馬場駅の発車ベルがマルコメみそのCMソングなんですよね。僕、西武線ユーザーなんで(笑)。それに着目して歌詞を書いたという感じです」

――すごいとこ突いてきたなとマルコメの担当者の方は思ったんじゃないでしょうか。

「だといいですね。ソングライターとしては「高田馬場で乗り換えて」は相当いい曲できたなというか。ひねくれた部分を気持ちよく出せたのはこの曲かなあと思っています」

――高田馬場が終着点じゃないのが面白いです。

「ああ、ありがとうございます。“シュガーベイブの「ダウンタウン」もそうだしな”と思って。あれもたぶん成増から池袋に向かっただろうし……みたいな。そういうものを考えて書きました(笑)」

――でも渋谷に繰り出そうって明るい感じでもなく。友達と会うのか、ライブハウスがあるからなのか、それぐらいのテンションですね。

「そうですね。街っぽさは前作よりもおとなしくなったかなって、ちょっと思いましたね」

――前作の街っぽさは割と東京が思い浮かぶ歌詞とか音だったかと思うんですが。

「うん、今回、架空の街の感じがしますもんね。それがうまくいったなと。「トワイライト」の街感も知らない街って感じがして、自分的にはいいですね」

――架空の街、知らない街だと聴いてる人に委ねる部分も多いですし。

「漫画とか映画とかの見たことない街みたいなね」

――なのでジャケットがイラストじゃなくて、鶴谷香央理さんの漫画の一場面なのはしっくりきます。

「ね?そこはもうデザイナーの森 敬太さんの采配なんですけどばっちりだと思いましたね、そのコンセプトを聞いた時。最初、森さんも“ちょっと極端なんだけど、そういうことをやってもいいかもね”って感じだったんですけど、僕も“や、めちゃくちゃいいと思います!”って。そのまま進みました」





――アルバム単位で聴きたい作品だなって思いましたよ。

「そういうものになってよかった!って感じがします。やっぱりアルバムが好きなんでね、そういうものが作れたんなら本望です。まわりの友達がいま、いいアルバムたくさん作ってるんですよ。ミツメもそうだったし、柴田聡子さんもそうだったし。だからなんとかそこに続ければいいなと」

――そして今年はフジロックへの本格的に出演が決まりましたね。

「人、来てくれるかなあ……たぶん、早い時間なんですよね。それが心配」

――澤部さんは個人的に見たいアーティストもいるのでは?

「ああ、僕は3日目のRED MARQUEEなんですけど、平沢進+会人(EJIN) を見たいです。フジロックの平沢さん(笑)。どういう光景になるのかが見たい!」

――澤部さんはフジロックにどういうイメージを持ってらっしゃいますか?

「洋楽のイメージが強かったし、日本人は以前はしっかりとした音楽のカルチャーの王道の、それも上の方の人たちがたくさん出るイメージもあったんですけど、最近は若い我々みたいなのも拾ってくれるみたいな(笑)」

――洋楽、邦楽関係なく、今年もお客さんが見たいはずのアーティストが多いし、良いラインナップだと思いますよ。

「ですよね?フジは洋楽みたいなイメージがあったんですけど、それが意外といい感じに崩れてきてて。自分たちにとっても大きいステージになると思うので楽しみです。アルバムのツアーもいらしてください。もしお暇でしたらぜひ(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/桜井有里





■スカート Major 2nd Album『トワイライト』インストアライブ
6月19日(水) ココナッツディスク吉祥寺店(東京)
6月22日(土) タワーレコード新宿店(東京)
6月27日(木) タワーレコードピヴォ札幌店(北海道)
7月3日(水) HMV&BOOKS SHINSAIBASHI(大阪)
7月4日(木) HMV栄(愛知)
7月8日(月) New Cultural Experience with スカート@manucoffee roasters クジラ店(福岡) w/EDANI(DJ)、WCKMNN(DJ)

■スカート Major 2nd Albumリリースツアー“トワイライト”
6月28日(金) 札幌BESSIE HALL(北海道) w/台風クラブ
7月5日(金) 名古屋CLUB QUATTRO(愛知) w/グッドラックヘイワ
7月6日(土) 梅田CLUB QUATTRO(大阪) w/グッドラックヘイワ
7月19日(金) 渋谷CLUB QUATTRO(東京) w/Helsinki Lambda Club



スカート『トワイライト』
2019年6月19日(水)発売
初回限定盤(2CD)/PCCA-04799/3,200円(税別)
通常盤(CD)/PCCA-04800/2,600円(税別)
ポニーキャニオン


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