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2019.01.23

スカート「君がいるなら」インタビュー――諦めたり、なにかをしなかったことで手に入れたもの

2017年のメジャーデビューアルバム『20/20』リリース以降、軽やかに切ないサウンドで一気にポップスシーンに浸透した澤部 渡のソロプロジェクト、スカート。自主レーベルであるカチュカ・サウンズ立ち上げからカクバリズムを経てメジャーに至るキャリアを辿るインタビュー。

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――リード曲の「君がいるなら」は、映画『そらのレストラン』の書き下ろし主題歌ということですが、そうしたお題ありきの楽曲への向き合い方というか、アプローチの仕方というのはそうでない曲との違いはあるものですか?

「ありますあります。それがすごく楽しい部分で。主題歌の「君がいるなら」に関しては作品の世界観に寄せていますし、逆に挿入歌の「花束にかえて」は、映画の内容というよりも使っていただくシーンのイメージと尺に合わせて書かせてもらいました。本当はもうちょっと映画の内容に寄せた曲を書いていたんですけど」

――ここ数年に限ってみても、映画では『恋は雨上がりのように』、『高崎グラフィティ。』、『PARKS パークス』。TVでは「忘却のサチコ」、「山田孝之のカンヌ映画祭」にも劇伴や主題歌といったかたちで関わっているわけですが、そういう作品やクリエイターにスカートの音楽が求められる理由って何なんでしょう?

「何でなんでしょうね。僕もそれがすごい不思議で(笑)。そもそもスカートを聴いてるのって誰?ってところがあります。何でなんだろうっていうのはずっと考えてるんですよ」

――プロデューサーさんとか、監督さんとか制作サイドとそういったお話はしないですか?

「あ、しますよ。よく“あのアルバムのあの曲が好きで”みたいなことを言われたり。そういうことが増えてきました」

――なるほど、その作品に関わっている当事者がスカートファンだったっていう?

「だといいんですけどね(笑)」

――個人的な感想ですが、「君がいるなら」も「花束にかえて」も「すみか」もこんなにほっこりしたサウンドなのにどうしてこんなに悲しいんだろうって思ったんですね。たとえば「君がいるなら」は、歌詞を目で追ってみてもそんなに悲しくないんです。直接的に悲しいワードがあったりしないので。でも耳から入ってくるととても悲しい。

「この曲が悲しいって言われたのは初めてですよ。いや、いままでのスカートだったらわりとそういう感じで作ってますけど。狙ってるっていうか、そういうものが地にある。でも、今回の「君がいるなら」で自分的にはそこから脱却できたと思ってたので、悲しいって言われるとちょっとショックですね(笑)」

――「君がいるなら」は、ハッピーエンドなのか、そうじゃないのか結末が示されていないんですね。それは聴き手に委ねられている部分だと思うんですけど。「二人で重ねてゆきたい」、「今がこのまま続いて行くならば」と想っていた未来はやって来たのだろうか?って。

「ああ、なるほど。J-POPって順を追って起承転結が描かれる曲が多いんですよね。それがセオリーというか。でもスカートって起か、承か、転か、結か、そのどれかにフォーカスする詞の書き方をするので、それが悲しい結末を想像させちゃったのかな」

――だとしても、澤部さん的にはそんなに悲しい曲を書いたつもりはないぞ!と。

「はい(笑)」

――意図して悲しいトーンの曲を書くというのは、楽曲制作するようになってから一貫したスタンスですか?

「うーん、わりとそうかもしれないですね。楽しくて楽しくてしょうがないっていう人生を送ってきたわけでもないですし――まあ、どちらかというと恵まれた人生だとは思いますけど――でも楽しかったことを音楽で表現するっていうものは、自分の中にはないんですよね。なんだろうな、難しいですね……一貫しているのは、どういうふうにものを見たり聞いたりしてきたかってことで、僕自身はそんなにいつも悲しいわけじゃないんです。でもハッピーな歌を歌うのは僕じゃなくてもいいんじゃないかってことは常々思っていますね」

――そういう音楽がスカートに求められていると感じる?

「いや、それはないですね。さっきも言いましたけど、誰が聴いているんだろう?って思ってるくらいですし。むしろ僕が歌いたいと思って提示しているものを皆さんが喜んで聴いてくださるといいな、という感覚ですね。自分の中から出てくるものを素直に出したほうがいいんじゃないかってってことはここ何年か活動してきて気付いたことではあります。そうやるしかないっていうことでもありますが」

――「すみか」は自主盤時代の作品の再録ということですが、なぜこのタイミングで?

「前作の「遠い春」では「返信」をリテイクしたんですが、それはベースプレイヤーがオリジナル当時と変わったのとパーカッションが加わったので、そのふたりが映える曲を録りたいと思ったんです。で、今回の「すみか」も似たような話なんですけど、ライブで「すみか」をやったときにシマダボーイのパーカッションがすごくよくて、「サイダーの庭」のころはシマダボーイがまだいなかったので、そういう変化が見えやすい曲をやりたいなと思ったんですね」

――なるほど、現在のスカートのフォーマットにあわせて書き直してみたくなった?

「正直そこまで変わってないと思うんですよ。でもオリジナルはアナログテープの一発録りですし、歌入れもそんなに凝ってなかったし。それをいつかもうちょっと丁寧にやれたらいいなっていうのはずっと思っていたので、それが今回だったってことですね」

――メジャーデビューからまだ1年ちょっとしか経っていませんが、スカートとしてすでに膨大なアーカイブあるわけですからね。

「そうですね。いつのまにか。オリジナルアルバムだけでもう……6枚ですからね」

――インディー期から数えるとすでに10年近いキャリアがあるわけですが、なにか転機になるような出来事や出会いがありましたか?あるいはずっと変わらない?

「どっちもですね。わーっと振り返ってみたとき、変わらない部分もあるし、あのときああいうことがあったから、この曲はこうなった、活動がこう変わった、みたいなこともあります。よく言われるんですけど、たぶん僕は他のバンドの人よりもがっつり自分の過去を振り返るほうだと思うんです」

――あ、恥ずかしくて過去の音源なんか聴けないってアーティストさん、めずらしくないですね。

「ですよね。そういう人あんまりいないって言われますから。僕はそんな意識が全然なくて。全部好きで作った曲ですし」

――澤部さんはシンガー、プレイヤーであり、ソングライターであり、プロデューサーでもあるわけですが、ご自身では音楽家としての軸足はどこにあると思いますか?

「その意識が稀薄なんですよね。僕はシンガー・ソングライターだって自覚していますけど、どれも片足突っ込んで、中途半端になっちゃってるっていうコンプレックスもあって。プレイヤー、シンガーにしてはヘタだし、ソングライターにしては知識も語彙も少ないし」

――ではライブとスタジオワークのどちらに居心地のよさを感じますか?

「それも曖昧な気がしていて。僕としてはスタジオの作業がいちばん好きなんですけど、一方でライブも好きですし……なんだろうな、スカートっていうバンドは本当にぼんやりとした存在で、それをどう捉えるかって自分でも難しいんですよね」

――そのぼんやりとした曖昧な存在感がスカートの魅力とも言えますよね。

「なんというか、たとえばひたすら技術を磨いてメタルのギタリストとかコアなアーティストができあがるわけじゃないですか。たぶん、自分はそういう戦いを最初から放棄してるんじゃないかって思うことはあります。いや、もちろん人には見えづらい努力はしているんですけどね。“早く宿題やりなさい!”、“いまやってるよ!”みたいな」

――ははは!なるほどね。じゃあ、プロデューサー澤部 渡の目にはシンガー澤部 渡はどう映っていますか?

「いやー、やっぱピッチも不安定だし、スタジオで録ったクオリティをライブで再現できないし、プロデューサー澤部としては、もっと腹筋とかしたほうがいいんじゃねえの?って言いたいですね。そしてそれをシンガー澤部が跳ねのけるというね(笑)。基本的には怠惰の連続ですよ。それが重なって、ふわっとして、ぼんやりとしたいまのスカートっていう存在ができあがったんじゃないかなって思いますね。後ろ向きな言葉に聞こえるかもしれませんけど、そうやって諦めたり、なにかをしなかったことで手に入れたものがあるっていう自負もあるんです」

――そんな澤部 渡をかたち作った音楽というと

「そうですね、中1くらいにはもうずーっとNUMBER GIRLばっかり聴いてました。あとは椎名林檎さんとか。僕、小学校の後半くらいに、はっぴいえんどがすごい好きで、当時CMで「あしたてんきになあれ」が使われていたんですよ。こんなかっこいい曲、聴かなきゃ!って、当時マキシシングルでそれを聴いてて。その後、NUMBER GIRLを初めて聴いたとき、「透明少女」に「風をあつめて」の松本 隆さんのあの歌詞の感じに通じるものがあるなって思うようになって。それが自分のなかではすごい衝撃だったんですよね」

――へえ!なんだか「透明少女」聴き直したくなってきた。

「なんかね、場面のカットアップというか、ある種、編集されたブツ切りのフィルムのような、ありもしない風景の描写とかね。すごくかっこいいなと。僕、NUMBER GIRLは『SAPPUKEI』くらいまでは文学性だと思ってました。『NUM-HEAVYMETALLIC』からは違う方向に行ったなって思いつつそれも楽しく聴いていましたけど」

――リスナーとしての原体験にはロックがあったけれど、自分でやる音楽はロックじゃないって思ったんですか?

「むしろ中学生のころは、ロックをやるんだって気持ちはかなりあったと思います。吹奏楽部に入ってたんですけど、“ロックをやりたいので辞めます”って言ってバンドを始めたくらいですから。コピーバンドから始まって、だんだんオリジナルをやるようになって高1になったくらいで、やりたかったのはロックじゃなかったってだんだんわかってくるんですよ。こんなこと言ったら当時のメンバーに失礼ですけど、中高校生のロックなんて、子どもの言い訳としてのロックに流れてっちゃうもんなんですよ。先輩なんかがね、“先公なんてマジ、ファ○クだぜ!”とか言ってるのを見て、“ああ、スゲェ恥ずかしいな”って感じちゃったんです。ロックって反抗のための音楽なんだ?そんなつもりなかったんだけどな……って」

――俺、そんな不幸じゃないし……って?

「そうなんですよね(笑)。表現としてそこまで主張したいことがなかったんですよ。もちろん、怒りだったり、苛立ってることもあったんですけど、それを言い訳に音楽を作るほどのものではなかったんです」

――そういう感情を音楽としてアウトプットする必然性がなかった?

「そう、なかったんです」

――まあ、スカートの音にもロックの気配を感じる瞬間がありますけどね。

「もちろんもちろん。フォーマットとしてはロックのそれを借りたりもしていますからね」

――でも澤部さんはスカートのフロントマンとして、人前に立って“俺が自分で歌うんだ”っていう立場を選んだわけじゃないですか。そういう精神性ってロックの初期衝動と同じだと思いませんか?別に無理繰りロックに寄せたいわけじゃないですけど(笑)。

「いや、もっと切実なんですよ。スカートを始めた当時、音楽の趣味が同じ仲間がいなかっただけ(笑)。だからひとりで多重録音で作り始めて、その流れでいまでも自分で歌っているっていう」

――それがいまでは、藤井 隆さん、ムーンライダース、川本真琴さん、南波志帆さん、スピッツといったアーティストの作品にも参加されています。こういうコラボって、オーガニックな交友関係から実現するものですか?それとももっとビジネス然とした取り組み?

「ビジネスめいた話なんてほぼないですよ。ありがたいことに縁があって――というか、みなさんがたまたまスカートっていう存在を見つけてくださって――ということばっかりです。僕、運だけはいいんですよ。昔から自分が好きなアーティストさんとお仕事させていただくことが本当に多くて。アルバム1枚出したくらいのころに曽我部恵一さんに声を掛けていただいて、ライブに出させてもらって、そのライブでカーネーションの直枝政広さんとも共演したという。スピッツの「みなと」に参加したときも、僕が自分のライブで口笛を吹いていたのを見ていたスピッツのディレクターの竹内 修さんが声を掛けてくれて。Mステでも共演させていただいて。何のアクションが次に繋がるかわかんないなってそのとき思いましたもん。なんでしょうね、本当に運がいいとしか言いようがない」

――まあ、好きなものは好きってきちんと言葉にして伝えることが重要なんじゃないですか。だからこそ縁が繋がってゆくというか。

「そう思います」

――あのMステ、もはや伝説になりかけてますよね。“誰だ?あのタンバリン!”って。あのバズり方は尋常じゃない。

「語り草になってますね。僕もびっくりしてますから。タンバリンと口笛の分際で生意気なこと言いますけど、あの本番の演奏がいちばんよかったと思います。何度かリハやって、当日も通しリハやりましたけど本番がとんでもなくよかった。すごくいい流れがあって、演奏してる最中からそれを感じましたね。あ、いい演奏ができたときってこういう気持ちになるんだ!って」

――NUMBER GIRLの話題でふと思ったんですが、一連のスカート作品ってイラストレーションへのこだわりが見てとれるんです。それで初期のNUMBER GIRLのジャケを思い出しちゃって。

「ああ、なるほど。向井さんもそのへんこだわってたと思いますし、たとえばあがた森魚さんもそういうジャケの作り方をしてらっしゃるじゃないですか。鈴木翁二さんとか林 静一さんにイラストを描いてもらっていて。かっこいいな、うらやましいなって憧れてて。はっぴいえんどもそうですけど、音楽とマンガの親和性って日本はかなり高いと思うので、僕もそういうことをやりたいなと」

――今回の「君がいるなら」のジャケは?

「韓国のByun Young Geunというイラストレーターなんですけど、アートディレクションをやっていただいている森 敬太さん(飛ぶ教室)に“かっこいいから見てみてよ”って薦められて、この人にお願いしましょうよって感じでしたね。ひとつ前のシングル「遠い春」の山崎由紀子さんも気鋭のイラストレーターさんです。僕がマンガ好きでもあるので、ずっと漫画家さんにジャケットを描いてもらってたんですよ。『CALL』は久野遥子さんに描いていただいてとても気に入っていますけど、なんか自分の好きな漫画家さんにジャケットを描いてもらって綺麗に成立するのってあたりまえのように思えてきたころで。だから「遠い春」からあえてイラストレーターさんにジャケットをお願いしているんですよ。僕はやっぱりパッケージ文化を守ってゆきたいと考えている人間なので、そこはこだわりたいなと思いますね」

――『CALL』の話がでたところで――偉そうに言うわけじゃないですけど――僕はあのアルバムが傑作だと思っていて。

「そうですね、僕も傑作だと思います(笑)」

――ですよね(笑)。この作品は“澤部 渡全部入り”だと。でも、だからこそ次はどうするんだろう?この次が難しいぞ!って思ったわけです。

「ああ、確かに」

――でも『20/20』でびっくりした。こんなふうに、ぱっと視界が開けるようなきらきらしたポップなアルバムが出てこようとは!

「それはうれしいですね」

――すごくポップでとっつきやすいサウンドだし、ちゃんとメジャー感がある!って。ご自身はそういったことを意識して『20/20』を制作しましたか?

「その意識は間違いなくなかったと言い切れますね。なぜならメジャーリリースのお話は、『20/20』の全部の曲を書き終わったタイミングでいただいたので。いや、でも確かに『CALL』はすべてやり切るつもりで作ったアルバムなので、だからこそ『20/20』を作るときに、やってなかったことが見えてきたとも言えるんですよ」

――さて、スカートの2019年は「君がいるなら」で最高のスタートを切ったと言えますが、今年の目標は?

「アルバムを早く作りたいですね。今年の目標はいいアルバムを作ること」

――いつも作っていたいタイプじゃないですか?澤部さんは。

「いやいや!そんなことないですよ。本当はもっと休みたいです(笑)。スカートはみんなが思っているよりも全然寡作です。だって月に1曲書くか書かないかくらいのペースなので。でもアルバムは絶対出したい。それでツアーもやりたい。もっといろんな人にスカートを知ってもらって、ライブを見に来て欲しいです。「君がいるなら」の予約・購入特典に「PAST SHOW #1」というライブ音源を付けたんですけど、それを聴いてライブを見に行きたいと思ってもらえるといいな」

(おわり)

取材・文/encore編集部



■LIVE INFO
2月2日(土) スカート Major 2nd Single「君がいるなら」インストアライブ@タワーレコード新宿店(東京)
2月2日(土) mitsume presents “WWMM”@ LIQUID ROOM(東京)
3月21日(木) 御影ロマンス 2019@蘇州園(兵庫)
3月22日(金)Output 7th ANNIVERSARY 「Analogfish20th×Output」@Output(沖縄)
3月31日(日) CHOICE Vol.18@味園ユニバース(大阪)





スカート「君がいるなら」
2019年1月23日(水)発売
PCCA-04753/1,200円(税別)
ポニーキャニオン




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