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2018.08.29

mabanua『Blurred』インタビュー――いろんなポジションがあるがゆえの曖昧さ

2010年代サウンドのトレンドを作り上げたキーマンのひとり、mabanua。藤原さくら、iri、向井太一、米津玄師、LUCKY TAPESらのサウンドの基盤を作ったプロデューサーとして、またRHYMESTERやトロ・イ・モアら国内外のアーティストとのコラボや大手企業のCM、ドラマの劇伴も手がける“360°音楽家”。mabanua名義としては実に6年半ぶりのアルバム『Blurred』について、そして音楽家としての源泉を探るインタビュー。

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――mabanuaさんを構成している要素はすごくたくさんあると思うんですが、ソロアーティストでもあり、プロデューサー、インストゥメンタリスト、ドラマー、バンドメンバー、劇伴も書く。ご自分の中では住み分けはされているんですか?

「やりたいことをそのままやってきた結果がこれになってるというか。計画的にあれやろう、これやろうっていうのはそんなになかったんですよ。だから1stアルバム(『done already』2008年)を作り始めた時に、今のようなことをやってるとは想像もしてなかったですし。なんかひとつ進むと、次はこれやりたいなって、たぶんアーティストは出てくると思うんです。それが継続していくと自分の場合、たまたま広がっちゃったっていう感じですかね」

――広がったきっかけはなんだと思いますか?

「やっぱりCharaさんがいちばん大きかったですね。初めてお会いしたのは2009年、2010年あたりだったんです。自分が中学生、下手すると小学生ごろから聴いてきたアーティストだったので、まさかその人がフックアップして“アルバムいっしょに作ろう”って言ってくれるって、今後ないんじゃないかな?というぐらい夢のような瞬間というか。そこからインディーからメジャーの世界に足踏み入れて、ライブもやり、新しい人のプロデュースもやり……みたいになったんで、そこから広がって行った感はありますね」

――Charaさんとの仕事がもたらしたものというと?

「音にすごいこだわりを持ってそうだなっていうのはあったし、厳しいんだろうなっていうのは、小さい頃から考えていて。そこは予想どおりだったというか(笑)。でもすごい優しさも同時に持ち合わせてて。嵐のような制作の日々っていうんですかね。アーティストとして活動していくための縮図みたいなものを教わったって感じですね」

――今回のソロアルバムまでの間のプロデュースなどのサイドワークでmabanuaさんをで知った人が多いと思いますが、mabanuaさん自身は自分に何を求められてるんだなと思われますか?

「アーティストによって変わってくる部分があるので、自分でも確かにわからないんですよ。何を求めて自分に頼んできてるんだろうって。で、なんとなくなんですけど、傾向として2パターンぐらいあって、ひとつは今までのサウンドがワンパターンになりすぎて、今までの質感を打破したい。で、僕に依頼してくるってパターンがひとつと、あとは単純に僕のアルバムとか作品をチェックしてくれて、mabanuaっぽい要素をなんかうちでもやって欲しいというようなことですかね」

――藤原さくらさんの「green」は明らかにmabanuaさんらしさが出ていて。

「やりたいことをやるっていう意味での振り切り方なんですけど、やっちゃった方が――今の時代リスクは大きいんですけど――安全パイを狙うよりいいんじゃないかなと思ってて。さくらちゃんの時に思ったのは、2ndまでのアルバムのカラーで、すごくポップになった部分もあるし、ドラマとかに出ることで、ちょっと芸能寄りになるパターンって、きっとあったと思うんですよ。そこで彼女を知ったファンがどんなアルバムを聴きたいのか?ってふつう考えると思うんですけど、僕はそこはあんまり考えてないというか。「green」をトータルでやってほしいって言われた時に、自分がやれることを思いっきりやってやろうって振り切りは常に真ん中にあって。だから理想としては、さくらちゃんのファンから、なんか他のアルバムはすっごい好きなんだけど「green」だけ私あんまり好きじゃないって人か、「green」がすごい好きっていうか、どっちかになってほしいところがあって」

――確かにmabanuaさんがプロデュースする意義はそこですよね。米津さんみたいないわゆる今の音楽シーンのトップランカーと関わる時のmabanuaさんの意識はどういう感じなんですか?

「アーティスト個々のスケールみたいなのはそんなに気にしていないというか、インディーの全然予算がないんですって人が依頼してきてもカッコよければやるし、玄師くんみたいなすごい規模のでかいアーティストから来ても、やっぱり音楽を作る場っていうのは同じなので。いきなりビッグアーティストから依頼来たらでっかいスピーカー買わないと、とかないじゃないですか(笑)。いつもと変わんない環境で作るので、そこはあんまり意識してないというか、意識しない方が結果、いい音楽が作れると思ってますね」

――それはmabanuaさんがミュージシャンであることも大きいんでしょうか。

「地位とか名誉的なものがあんまり自分は興味がないというか。あと、下手すると今、J-POPのオリコンのチャートで何が流行ってるかっていうのは、僕、あまり知らないんですよね(笑)。むしろ自分のまわりとか、好きで付き合ってるミュージシャンとかクリエイターと“最近何聴いてんの?”、“これいいんだよ”っていうコミュニケーションから知るというか……そうするとほんとにいいものが聴けるわけじゃないですか。今のちゃんと耳の肥えてる人の流行を知ってるぐらいにとどめてる感じですかね」

――そうしたプロデュースワークと並行して、バンドにも参加していらっしゃいますが、Good New TimesはほんとにGotchさん(後藤正文)が楽しそうで。

「アジカンでもすごい熱意を持ってやってるのは当たり前なんですけど、なんかGotchではもうちょっとリラックスしてやってる感じもすごくあって。Gotchさんは自分は歌わなくてもいい、メンバーの誰かの曲やってもいいぐらいに言ってて。僕はサポートメンバーという立ち位置なんですが、もはやバンドメンバーの様で、その雰囲気はすごく気持ちがいいですね」

――たぶんGotchさんにとっても、mabanuaさんが音源を作ってることの影響はあると思ってて。Gotchさんもプロデュースやエンジニアリングもやってるし。

「機材もいろいろ調べるし、プロデュースもやるし、ミックスもやるし。すごいおこがましいですけど、Gotchさんのやってることと自分のやってることは近いのかなと思いますね」

――ふたりの存在というか、そういう自由なスタンスって他のミュージシャンに勇気というか元気を与えているんじゃないかなと思うんです。

「そうですよね。やっぱりやりたいことがわかるミュージシャンというか……ディレクターとかプロデューサーにいろいろ言われて音楽作ってるんだろうなっていう子は、音でなんかわかるんですね。だけど“自分はこういう音楽がやりたくて、サウンドはこういう風にしたいんです”、“こういうことを歌ってみたいんです”っていう子は、ライブ見ててもインタビュー読んでも、まあ、表情だけ見ててもすごいわかるんですよね。だからGotchさんはそういう若いアーティストの目標になってるんじゃないかと思います」

――さてmabanuaさんにとって6年ぶりのソロアルバム『Blurred』ですが、まずびっくりしたのは日本語詞です。

「単純に英語で散々やってきたんで、日本語でそろそろ歌ってみてもいいんじゃないかなっていう。なんていうんですかね、英語に飽きてしまったところが若干あって。あとは全開で音を出せる環境ばかりならいいんですけど、去年あたりから弾き語りのライブとかもちょこちょこやるようになって。で、ネイティブじゃない自分が地方のちっちゃい会場とかでライブをする時とかに、たとえば1時間ライブをやるって、聴いてる人にとってはいいはいいんですけど、なかなかハードルの高い体験になっていくというか(笑)。そうした時にミニマルな編成になればなるほど日本語って強いなと思ってしまって」

――歌に特化して聴きますからね。

「あとはCharaさんとかもそうなんですけど、Charaさんの歌詞を見てると意味はあんまりわかんないんですよ(笑)。なんだけど、ちょっとした言葉尻とか、“たぶんこういうこと言ってるんじゃないかな”みたいなそういう曖昧な部分っていうのが日本語詞は素敵だなと思って。だから逆に言うと、今回、そういう部分もちょっと日本語でやってみたかったんですよね。それでいちばん気をつけたのが、J-POPみたいな歌詞にならないように(笑)、ということはずっと気をつけてて」

――Gotchさん詞曲による「Heartbreak at Dawn」も印象的です。

「Gotchさんは最近、僕とは逆で、ソロアルバムでは英語で歌い出したんですよ。なんで、英語と日本語のそれぞれのメリット、デメリットを知ってると思うし、僕も逆に日本語ってどうやって書いたらいいんですかね?っていうのをGotchさんに教えてもらえると思ったので、それで頼んだ部分もあるので。もうこっちから言うまでもなく“なんかあれでしょ?洋楽っぽいオケに日本語っぽく聴こえないように日本語詞を書けばいいんでしょ?”ってメールしてきて、“おっしゃるとおりです”みたいな感じで(笑)」

――「Heartbreak at Dawn」の歌詞はこのアルバムの中では明快ですね。mabanuaさんに歌ってもらいたいGotchさんの心情みたいなものを感じました。

「ああ、そうですね。なんか結構あの人の歌詞も面白くて、ポジティブな歌詞でもない気がするんですよ。だけどネガティブでもないし、どちらでも取れるような歌詞を書いてて。それがアジカンもソロも含めて好きなところなんですよね。だから僕は、あの人みたいな歌詞のクオリティにはまだ全然、到達できてないですけど、あれと同じようなものを英語で書けって言われても僕はたぶん、書けないなと思って。だったらまず日本語でGotchさんの歌詞みたいな質感に少しでも近づけるようなチャレンジをしてみたいというのは少しあったかもしれないですね」

――『Blurred(ブラード)』ってタイトルは、曖昧とかぼんやりとして見えるものって意味ですもんね。

「そうですね。タイトル自体がもうそんな感じなんで。僕、移動中に映画を結構見るんですよ。で、バッドエンドかハッピーエンドかはっきりしてる映画って、確かに面白いし、スカっとして終われるんですけど、なんか逆にぼんやり“どっちなんだろ?これ”で終わって、お客さんに結末を想像させるような映画が結構好きで。最近だと『スリー・ビルボード』の終わり方がバッドエンドなのかハッピーエンドなのか、誘拐事件の話ですけど。あと同じ理由で『ブレードランナー2049』も好きです」

――それがmabanuaさんの最近の気分というか、傾向?

「物事がはっきりしている必要って果たしてあるのかな?みたいな部分で、結構考える部分が多くて。まあ、自分の活動のスタイルも含めてなんですけど……メジャーでバリバリやってるプロデューサーなのか、アングラに根を張ってる人なのか、ドラマーなのか、マルチプレーヤーなのか、Ovallとmabanuaはどう区別してんの?とか、自分がいろんなポジションがあるがゆえに、みんな持ってる印象が違うっていうのもあるんです。“mabanuaさんてどれが本職なんですか?”みたいな」

――どれが本職でもいいじゃないですかと(笑)。

「そう。どれでもよくないですか?みたいな(笑)。“はっきりしなくていいっすよ!”みたいなところで、結構“Blurred“でいたいっていうのもあるんですよね」

――そういうシンプルな希望って逆にみなさんないのかな?と思うんですけど。

「どうなんでしょうね……まわりが思いつかないようなことをやりたいって閃くのはアーティストとして素敵な形だと思うので。アルバムごとにカラーが変わってもいいというか、変わっていたとしても、それぞれがずっと評価され続けるっていうのがアーティストとしていちばん理想的なんじゃないかなと思っていて。ふつうのポップミュージックだったり、そうじゃないフィールドでもふつうの音楽をやってる人だったら……ビョークとかベックとか。あと、うちのベーシスト(OvallのShingo Suzuki)も好きだって言ってますけど、ミシェル・ンデゲオチェロとか。やっぱアルバムごとにジャズ行ったり、ロック行ったり、ああいうアーティストがいちばんかっこいいなと思うんですよね」

――そういえば、今回はオケの音数が研ぎ澄まされて、エレクトロニックな音の選び方も変わってきてるなと感じました。

「なんかそうですね。作り方として、メロディとコードを先に全部作ったんですよ。メロディが決まってないけど、トラックを先にわーっと作って後からメロディ考えるというよりかは、先にメロディとコードを作って、それがよければ、そこに肉付けをしていくし、微妙かなと思ったらその場でお蔵入りにする感じで。だからそのシンプルな形の状態で、一度作っちゃうと、必要最低限のもので済むというか。まだメロディがはっきりしてない状態で作り始めると、とりあえずいっぱい入れてしまうし、後でメロディをつけると、どうしても全体がごちゃごちゃしてくるので。今回は、作り方を変えたせいで、そういう風になった部分は大きいかもしれないですね」

――今、20代ぐらいのかっこいい音楽を作るミュージシャンの影響源はブラックミュージックや新世代ジャズに偏りがちな気がしますが、mabanuaさんの場合はちょっと違うのかなと感じますね。

「ああ、そうですね。自分が今30ちょいなので、たとえば22、23ぐらいだったら、今の流行りど真ん中を取り入れるサウンドをやってもいいかなとは思うんですけど、なんかその場に自分が入っていくのは違うなと思ってて。もうそろそろ流行りとは関係ないところで自分の音を追求していい頃かなというのはなんとなくあったんですよね。で、これってどういうことかというと、たぶん自分に正直であるっていうのもあるし、5年経っても、10年経ってもずーっと聴けるようなものを作らないといけないのかなっていうのもあって」

――と、同時に今までのmabanuaさんに素朴なものを感じているとしたら、今回はもうすこし都会的な印象があります。

「都会っていうよりは……なんか柔らかい人みたいなことですか?(笑)。ちょっと草木、森みたいなものをイメージしてる人がいたとしたら、そんなことはないんだよってことを示したアルバムかもしれないですね」

――今回のアルバムを聴いていて、“こんな声で歌えたら気持ちいいだろうな”って思ったんですが、自分の声は好きですか?

「ほんとですか?ありがとうございます。理想として“こんな声になりたい”っていうのはあるんですけど、ちょっとそれに近づけたかなって思います。昔は歌うつもりもなかったのに歌ったりしてたので。好きかどうかで言われると、まだ嫌いな方に入るんですけど、でも昔よりは好きになって来たかなと。少なくともギター1本でライブなんて、昔は絶対、無理だったんで。今は自信持ってある程度できるようにはなってるので」

――プロデューサーとしてのmabanuaには、ボーカリストのmabanuaはどう映っているんでしょう?

「どうですかね(笑)。面白いことに、ボーカルで参加してくれっていう依頼が最近多いんですよ。余談ですが、さかいゆうさんといっしょにやることがよくあるんですけど、“世の中には歌っていい人と歌っちゃダメな人がいるんだよ。mabanuaくんは歌っていい人だから”ってゆうさんが言うんです(笑)。Ovallのゴッチさん(Shingo Suzuki)にも言われたんですけど、フランスにライブしに行ったときだったかな。最後の夜に――僕、山ちゃんて呼ばれてるんですけど――“山ちゃん、mabanuaの4枚目が出るとしたら、もうギター、ベース、ドラムぐらいの編成で、もっとボーカルがフォーカスされるアルバム作って欲しいな”とか言って。“声って変えようがないじゃん?声ってギフトだからさ”みたいなことをボソッと言ったんです。もう12、3年ぐらいの付き合いなんですけどそんなこと今まで言ったことないのに(笑)。初めて会った人に“ボーカルも素敵ですね”とか言われても本心はわかんないじゃないですか。でも長年付き合いのある人からそういうこと言われると自信が持てるというか……そういうこともあって、昔よりは自分のボーカルが好きです(笑)」

(おわり)

取材・文/石角友香
写真/柴田ひろあき



mabanua『Blurred』
2018年8月29日(水)発売
生産限定盤(2CD)/OPCA-1039/3,000円(税別)
通常盤(CD)/ OPCA-1038/2,500円(税別)
origami PRODUCTIONS


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Ovall, Michael Kaneko,Kan Sano, mabanua and more! from “origami PRODUCTIONS” by SMART USEN



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