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2018.03.30

DJ KRUSH『COSMIC YARD』インタビュー(前編)――自分が通ってきたストリートの質感を

前作『軌跡』から1年を待たずにリリースされたDJ KRUSHの最新作『COSMIC YARD』。トランペッターの近藤等則、尺八の森田柊山、ギタリストの渥美幸裕、オランダのクリエイター、BINKBEATSらを招いて完成したDJ KRUSHの神髄ともいうべきインストゥルメンタル作品について、KRUSH本人がたっぷりと語ってくれた。

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――作品のコンセプトでもある宇宙の色ですが、ご自身が考える宇宙の色とは?

「おおかた深い青とかだと思っていたんだけど、実はすごい変化しているみたいで。計り知れない宇宙なんだけど、トータル的に見ると青じゃなくてベージュと言われているようで。コズミックラテっていう言葉があって、ラテ色っていうのにびっくりして」

――情報収集の過程での刺激ですね。

「知らないことがありすぎて。ふつうに青だと思っていたものが青じゃなくて、それで色々調べていくうちに、この地球がいかに小さいかとか色んなことがわかってきて。中学生じゃないけど、それに刺激されたり。ちょうど映画『ブレードランナー』の新作も公開されて、次はスペイシーでものすごく広くてクリアな宇宙ではなくて、なんというかもう少しザラついている感じを作ろうと。極端に言えば、ストリートよりの宇宙というか。レンジが広くて綺麗に抜けているような、シンセがウワーン!ていう宇宙ではなくて。そういうのを表現してみようと思いました」

――タイトルの『COSMIC YARD』は直訳すると宇宙庭園ですが、これが意味するところは?

「ジャケットは、色んな花があちこちで咲いているような認識ではいたんですけど、花とは限らずに色んなものが……このアートワークは日本盤のみなんですが、版画なんですよね。以前『深層』のジャケットも手掛けてもらった版画家の木戸一吾兵さんにやってもらって。原画がすごい綺麗で。宇宙の空間にブワッと咲いているような」

――DJ KRUSHさんとしては、ここ数年リリースラッシュですね。

「『Butterfly Effect』が11年ぶりくらいにリリースしたんですけど久しぶりに出したのでもう世代も変わっていて。その次に出した日本語ラップだけの『軌跡』は、僕のことを知らない若い人たちもいっぱいいるので、こんなオッサンもいるよみたいな感じで(笑)。今回の『COSMIC YARD』は、僕自身もインストルメンタルを作るのがすごく好きなので、自分で作ったプールに自分で水を張って。ラッパーが泳ぐんじゃなくて“俺も好きな海パン履いて泳ぎたいな”みたいな。それがやってみたかったのでDJ KRUSHの十八番であるインストでちょっと出してみようかみたいな感じで作りました」

――ご自身で一番深く潜ったと感じている曲は?

「どの曲もそれぞれ泳ぎ方が違うので難しいですけど、深く潜ったという意味では1曲目の「REGULUS」、5曲目の「EMISSION NEBULA」、11曲目の「HABITABLE ZONE (Chapter 1)」かな。全部1人の曲で、自分で泳ぎきった曲ですね。「EMISSION NEBULA」、「HABITABLE ZONE (Chapter 1)」は全部サンプリングなんですけど、あえて生バンドが演っているような雰囲気を出していますね。そういう展開をつけたりして。“生バンド?サンプリング?どっち?”っていう感じを出したかった」

――楽曲のほとんどのタイトルは宇宙的なワードが引用されていますね。

「今回は曲を作るときにある程度、イメージやキーワードを羅列してみて、それを元にこういう感じかなって頭の中で想像していって、そこに近づこうとしたんですよ。音を一個一個重ねて。全体の構成もあるじゃないですか。だから、イメージを最初に作っていたのかもしれないし。逆のパターンもある。“あっ、この言葉すごいハマるじゃん!”て。実はタイトルをつけるのが一番苦手というか厄介で(笑)」

――曲順も悩まれました?

「アーティストはみんなそうじゃないですか?下手すれば曲作るより難しいんじゃないかみたいな(笑)。ましてや僕らはDJだから、ある意味選曲しているのと同じだし。でも、自分で作って生んだ子供だから全部知っているわけですよ。裸にしたらどんな顔しているか知っているから、それを選ぶのってやっぱりすごい大変でしたね」

――アルバムを通してのストーリーがありますからね。

「ただ時代が変わって、みんな配信とかで楽曲単位で買ったりするので。僕らはアナログ世代だから、カセットとレコード盤で育ったわけで、作品は通しで一本の映画になっているというか……楽曲が短編集だとしたら、ジャケットも含めて盤そのものが一本の映画になっているという感じで作ってしまいますね。アナログも、待っている人がいるので出さなきゃなと」

――サウンド面のこだわりは?

「ザラついた紙やすりじゃないけど。目の細かい千番台の耐水ペーパー的な(笑)。気持ち的にはKRUSHがいなくちゃダメだっていうのは全編通してあるんですけど、そんな質感ですよね。それってたぶん90年代をリアルに通ってきているから。当時のHIP HOPはそういう音がいっぱいあったし、機材もSP1200(E-MU社のサンプラー。ノイジーなサウンドが特徴的だった)とか、昔のMPCとか、そういう音がしていたので。なんかそういうのは抜けきんないなって。今はHIP HOPも色んな種類があって、バリバリのヤオヤ(ローランド社のリズムマシーン、TR-808)でシンセをきれいに弾いちゃう的なトラップとか。かっこよくもあるんだけど質感で行くと、俺が同じことをやってもしょうがないかなって。やっぱ自分たちが通ってきたストリートの、煙たい感じ、荒れている質感を出すのがいいかなと思って。それも個性だからさ」

――ちなみに本作で使った機材はどのあたりですか?

「制作はいつもAbleton Liveでやっていますね。ただ、サンプリングは、マスタリングエンジニアに個人的に作ってもらった、すごく抜けが良くなる機材を通したり、キック、スネアをSP1200に入れてからリサンプルしたり。あとは、プラグインでちょっとビットが下がった音を作ったりとか……」

――MPCは?

「MPCも使ったんだけど、あんまり中心ではなかったね。素材として一回通しているんだけど、MPCを叩いてというのではなくて。ドラムも、AKAIのパッドがついてる小さいMIDIキーボードで打ち込んだりして弾いているところもあるので、キーボードが結構メインだったかな」

――アルバムに参加しているゲストはどのように決まったんですか?

「やりたい人に声をかけて。他にも何人かいたんだけど、スケジュールが合わなかったり。あと、海外行けば行くほど、やればやるほど結局日本人だな!みたいなところがあって、それを自然に出すことが別に恥ずかしくなくなったので今回は宇宙がテーマというのはありつつも、和の視点からというのもありかなと。そしたら、以前もいっしょにやらせていただいた尺八の森田柊山先生、近藤等則さんに共感する部分があって。近藤さんは、一人で山のてっぺんで吹いたり、地球を相手に吹いているんですよね。地球を共振させて何が得られるかって。世界中でそれやっているんですよ。尺八も色々考えたんですよね。尺八でJAZZが吹けたりとか臨機応変な方たちもいるんですが、でも今回はそうじゃなくて揺るがない音が欲しかったので、森田先生に頼みました」

――「邦楽2.0」の渥美幸裕さんも和の視点から?

「アナログのギターが欲しいなと思って漠然と探している中で、タップダンサーとコンガ、渥美さんのギターというトリオ編成のConguero Tres HoofersをYouTubeで観て。俺もセッションでバンドとやっているからその時にすごい近いものを感じて。そしたら和歌山のイベントで、前回の『軌跡』に参加してもらったラッパーのチプルソと、渥美さんと俺が顔を合わせる機会があって。プロモーターもいいタイミングで、いい組み合わせを選ぶなと(笑)」

――運命的な邂逅ですね。

「渥美さんも俺を知ってくれていたみたいなんですよ。その3人が集まったらセッションやろうみたいな話になって。チプルソは楽器もできるしヒューマンビートボックスもできるので、DJのビートが彼のビートに変わって、後ろの景色を渥美さんが即興で弾いていくような。それがすごい良かったので、アルバム制作しているんですけど、いっしょにどうですか?って声かけて。じゃあ、やりましょうってなって」

――『COSMIC YARD』は『軌跡』の完成後に作り始めたんですか?

「前に作ったやつを手直ししたのも何曲かはあるけど、でもほとんどは『軌跡』のあとに作ったのかな。すごく短かいスパンでしたね。本当は去年にリリースする予定だったんで、もっと短かかったんですけどね」

――1曲目「REGULUS」は、再生した瞬間にKRUSHさんの世界観の幕開けという感じがします。

「物悲しい、ザラザラっとした感じで。自分自身もああいう寂しい感じがすごい好きっていうのが出ていると思います。決して明るい雰囲気ではないけど、こういうのが僕の特徴のひとつでもあるんですよね」

――奥行きがあるベースラインと、タイトなビートの質感が印象的でした。

「少し後ノリなあのベースが重要で。ちょっとずれただけでグルーヴが全然違う。ビートは淡々と行くみたいな……ビートがキュッとなっていて、下の方でグルーヴが出来ていて、ウワモノでチラチラッと飛んで進行している感じですね。「REGULUS」って、しし座のことなんだけど、単純に俺がしし座だったんで。干支は虎なんですけどね。同じネコ科ということで(笑)」

――2曲目の「STELLAR WIND」は恒星風という意味ですが、どんな景色をイメージされて?

「なんかもう、ビートがブワッて感じよりは、ポツンポツンと色んな色が斜めから来たりとかスッスッと現れるというか……」

――軽快でもあり、オリエンタルな雰囲気も感じました。

「ネタ的にもそうですね。スネアは固めでリムショットに近い抜ける感じで」

――ビートのタメが印象的でした。

「それは僕にとってすごい重要で。そのタメからグルーヴが出るじゃないですか。HIP HOPに惹かれたのって、同じエイトビートでもなんか機械的じゃなくて、もっとこう揺れていて、グルーヴがあって首に来るっていう。そこが絶対重要だと思ったので。そういうことは、曲を作り始めた時には勉強しましたね。何でFUNKっていうのかとか。昔のFUNKのブレイクビーツを4小節くらいループさせておいて、リズムマシンでもなんでもいいですけどそれと同じ位置にハット、スネア、ドラムを同じパターンで打つんです。それで元のブレイクビーツを抜くと全部と距離感が違うことに気が付いて。ブラックミュージックってグルーヴが大切なんだなって。海外に行くともっと明確で。HIP HOPも色々な道に分岐しているけど、例えばJ・ディラなんかは、すごい気持ちいいビートを作っていたし。自分のアルバムでもそれはすごく大切にしたいことですね」

――裏でとる重要性は日本語でのラップもそうですよね。

「ラップもそうなんだよね。どんだけビートで泳ぐか、泳ぎきるか。ただ言葉をオンで乗せるんじゃなくて、横に行ったり、モタったりとか。そういう人はなかなかね。海外勢は面白い人がいっぱいいますけど。ちゃんと泳いで着地が上手いのはDJの俺らもわかっていて、曲作るときもやっぱり大切だと思ってます」

――3曲目「DIVINE PROTECTION feat. 渥美幸裕」ですが、タイトルは冥加という意味ですよね?

「色んなものに感謝するというか、大きく言うとそういう意味だと思います」

――古典邦楽の現代解釈ともとれるジャポニズム、クライマックスの奥行きを感じました。

「最初からそれを狙っていたわけじゃなくて。メールでやり取りして渥美さんのギターを何テイクか貰うんですね。そこにはシンプルな最初のパートしか入っていなくて、それに合わせて僕がバックしてというのを繰り返して。渥美さんが弾いたフリーな部分とかテーマ的なものがあったりするパターンを、どう料理していこうか?ってため息ついて(笑)。で、構成からドラムの打ち方まで全部変えていって。後ろの音が変化しないと面白くないし、渥美さんのギターに合わせて、雰囲気を壊さずに寄り添って、いかにベストなハット、細かい打ち込みとか色をつけていくか。最後にすごい弄ったね。構成を自分でひっくり返して着地させるという……今回この曲は狂言とか能とか、日本的なフレーズが満載なので、そういうテーマを渥美さんが色々考えてくれて。ご自身も実際にそういう取組みをしているじゃないですか。ギターでどこまでできるかって」

――「邦楽2.0」ですね?

「やっぱり西洋の楽器を使ってどこまで自分の個性と日本的なものが出来るかっていう、そこはすごい共感したし、僕もHIP HOPにやられて、アメリカのパワー感には勝てないけど、僕らにしか出来ない繊細な音だったり、勝てるラインがあるんじゃないかと思って。そこはなんか同じかなって。使ってる道具が違うだけで」

――制作パターンとしては最後にひっくり返すということはよくあるんですか?

「ほとんどそうですね。Binkbeatsとの曲はあまり変わってないけど、近藤さんと森田さんとの曲は全然変えたし。最後の近藤さんとの曲も、ほとんどオケは変わってます。インスパイアされちゃうんですね。曲を作っている段階でバックされたものにセッションしてみたいなイメージですね。自分の理想に、自分の中にパッと出てきたものに近づけていこうと」

――4曲目の「ASTERISM (Interlude)」はサンプリングですか?

「これはサンプリングです。これは単純に場面展開で。オーケストラとドラムだけでどれだけ展開つけられるかなって。でも今回、冷静に並べて聴いてみるとInterludeよりもfeat曲が質感も違ったりしているから展開になっているような気がするんですよね(笑)」

――5曲目の「EMISSION NEBULA」はウッドベースのラインが印象的です。

「これ生っぽく聴こえるでしょ?でも全部サンプリングで。それは狙ったんですよ。後ろのソロっぽいあのベースはリズムに関わる音を全部取るとテンポが全然違うんです。ピッチ落としていって、あのテンポに合うように全部切り貼りして。だからフレーズが被っているところがあまりない。それに合わせてドラムもJAZZのようなリムが入ったりとか。人間ぽく合わせていきましたね」

――有機的でもあり無機的でもあるというか……。

「そうですね。ギリギリのとこで動いていくっていう。ただ、最後まで聴けるように、展開をちゃんと作っていって。大きな展開はないけど、すごい細かい話なんだけど“あっ、ここ抜くんだ”みたいな(笑)。ループを作ってグルーヴを作るっていうのを、自分がバンドマンとしてセッションしている視点で作っていったんです。ベーシストになったり、ドラマーになったりして組み上げていく一人バンド的なDJというか(笑)」

――6曲目「DUST TRAIL」のイメージは?

「広めの空間のイメージがあるかな。最初は緩く入っていくんだけど後半は、どんどん音が重なってきて、緊張感が増して追い詰めていくみたいな。構成上ループを作っているわけじゃないからどっかで山場を作りたいなっていうのがあって。今回はこういう曲だから追い詰める方向に行ったんだと思う。それで最後ダーンと着地させるみたいな。最後まで聴けるようなインストとして。テクノみたいにダンスを目的にしているわけじゃなくて、常に一本の短編みたいにちょっと物語があるものを作りたいとも思ってますから」

(つづく)

取材・文/じゃけ(GunJapanez)







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2018年3月21日(水)発売
CD/ES81-2018B/2,500円(税別)
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DJ KRUSH『Cosmic Yard』
2018年3月21日(水)発売
アナログ/ES81-2018A/2,778円(税別)
ES・U・ES CORPORATION


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