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特集
2016.01.15
歌謡曲からJ-POPの時代へ

「また逢う日まで」

「歌謡曲」をテーマにお送りしている1月の特集です。前回に引き続き、『すべてのJ-POPはパクリである』などの著書があり、日本のポップスの研究家でもあるマキタスポーツさんにお話を聞きました。音声版ではよりコアなお話を聞くことができます。

「また逢う日まで」

日本の音楽マーケットのメインジャンルの呼称が〈歌謡曲〉から〈J-POP〉に変化し、たくさんの時が流れた。多種多様なジャンルがひしめき合い、音楽を体験するカタチもさまざまに選択できる。言わば音楽の聴き方がより“個”に向かっているにもかかわらず、紅白歌合戦が、その使命として「全国民を納得させなければならないという矛盾に取り組まざるを得ない」というくだりで1回目を締めた。このように現在の音楽をとりまく状況は、かつてあった姿に比べれば、ずいぶん混沌としている。そんな現在に求められているものは、その混沌を突き破るシンプルな強さなのかもしれない。
「長渕 剛さんの10万人ライブ(『長渕剛10万人オールナイト・ライブ2015 in 富士山麓』)を観に行ったんですよ。長渕さんが“お前らの力で太陽を引ずり出せ”ってコブシ突き立てるんです、“オイ!”って。〈ビリーズブートキャンプ〉みたいですよ。何万もの人間が、長渕隊長の元でコブシを突き出すっていう。“長渕隊長!”みたいな(笑)。長渕さんって、誰よりも元気なんです。子どものころ、僕らがブルース・リーを初めて見たときの、エネルギー発行体の凄いのを見たような驚きや感動が、長渕さんにはある。あるいは矢沢永吉さんのライヴに行っても……まあ、あんな60代いないですよ。身体性の化物を見るような感じ? そういう“生きもの感”が強かったり、そういう力を持ってる人が、やっぱり今、必要とされているんだろうし。だからお金を払って、たとえば、生のライヴを体験したいっていうときに、“生演奏のグルーヴ”とかだと、ちょっとマニアックになってしまう。そういうことを分からなくても、長渕さんや矢沢さんみたいなレジェンドクラスの生き物……“歌怪獣”みたいなね、そいういうのは見たいんじゃないかな。
その逆で、完全に身体性を伴わない音楽もあるわけで。それこそ初音ミクみたいなものだったり、その幅はあるんですが、エンターテインメントで、お金払って生のライヴを体験するって、その“生き物感”が大事な気がします。アイドル、特に女性のアイドルが結局、賞味期限つきだったりするっていうのは、身体性の部分が大きいと思うんですよね。いやな言葉でね……〈劣化〉ってすぐ言うじゃないですか。あれって、さっき言った〈もちもち感〉と似てるんですよ(〈もちもち感〉については音声版を参照)。いやいや、と。それをこう、ね? 一歩ひいたところで“わびさび”って考え方だってあるじゃないかっていう」

最後に再び、テーマである〈歌謡曲〉に戻りたい。「日本人の中の集合的な無意識ってあると思うんですが、尾崎紀世彦さんの〈また逢う日まで〉って原曲があったのってご存知ですか?」と、取材の最後に、思い出したようにマキタさんは話してくれた。この歴史に残る大ヒット曲にまつわるエピソードが、マキタさんの思う“歌謡曲的なもの”なのだという。
「原曲は〈ひとりの悲しみ〉っていうタイトルなんですが、ズー・ニー・ヴーていうGS時代に活躍したバンドが歌っているんです。1970年に発売で、これは、売れなかったんですね。翌1971年に、〈また逢う日まで〉に、改訂されて、尾崎紀世彦さんが歌って、レコード大賞を獲っているんですよね。これって、すごく面白い現象だなと思っているんです。〈ひとりの悲しみ〉は、曲先で筒美京平さんが、CMの候補曲として書き下ろした数曲のうちのひとつで、紆余曲折あって、当時イケイケの阿久悠さんが詞を書くんです。〈ひとりの悲しみ〉のテーマが何だったかっていうと、歌詞をみると分かるんですけど、学生運動に挫折した人間の孤独を歌にしたものなんですね。これが、〈また逢う日まで〉でどう改訂されたかっていうと、〈また逢う日まで〉は、男女の別れの歌なんですよ。それが〈ひとりの悲しみ〉から一年たらずで、何でこんなに普及したのか、愛されたのか? 男女の物語、君と僕の物語……誰もが共感できる、あるあるネタのほうがより多くの人達に受け入れられた、この出来事って、けっこう歌謡曲っぽいなと思うんです。60年代当時の学生運動に参加するのって、僕はスノビズムだと思うんですよね。現代でいうとSEALDsはそういった学生運動に近いのかもしれないですけど、それはいいんです。ヒップホップとかやるの、いいんですよ。でもそこに先端であるという感覚を持ち込んじゃダメなんですよ。SEALDsみたいなものも面白いんですけど、三代目J Soul Brothersみたいな水っぽさ、“男と女”みたいな普遍的な事は、日本における定位のひとつだと思うんです。学生運動に挫折した男の孤独なんて、あまりにも先端に過ぎるじゃないですか。そんなの誰がのっかれるんだ、共感できるんだ?っていうのがある。ポップス、大衆芸能、歌謡曲――それがJ-POPに移り変わろうとも、日本人が求めているものは、〈また逢う日まで〉の、お話したようなエピソードに象徴されているのかな、って思うところはありますね」(つづく)

※1月特集『歌謡曲からJ-POPの時代へ』マキタスポーツさんに続き、次週より、タケカワユキヒデさんが登場します。歌謡曲全盛で歌番組華やかかりし時代にゴダイゴのメンバーとして、ロック、ポップスのフィールドから見た当時のお話など、お聞きします。お楽しみに。

⇒ 紅白歌合戦、歴代の出場者一覧はこちら

【プロフィール】
マキタスポーツ/アーティスト・役者として活躍中。これまでの出演作品に『ルーズヴェルト・ゲーム』『花子とアン』『みんなエスパーだよ!』などがある。近作は映画『ピンクとグレー』(全国順次公開中)、『アイアムアヒーロー』(4月23日公開)、『臨床犯罪学者 火村英生の推理』(1月24日放送スタート:日曜夜10時30分~ 日本テレビ系)。アーティストとして、マキタスポーツpresents FLY OR DIEの1stアルバム『矛と盾』が1月20日に発売される。


Live

Fly or Dieのライヴから。ボーカルのDark’~nessがマキタスポーツさん

すべてのJ-POPはパクリである【現代ポップス論考】

マキタスポーツ著『すべてのJ-POPはパクリである【現代ポップス論考】』扶桑社



マキタスポーツ
マキタスポーツ presents Fly or Die
『矛と盾』(CD)
1月20日(水)発売
COCP-39407
3,000円(税別)
日本コロムビア


マキタスポーツ
マキタスポーツ presents Fly or Die
『矛と盾 “Dark’~ness Special Version”』(LP)
1月20日(水)発売
LP COJA-9302
4,500円(税別)
日本コロムビア