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特集
2016.11.11
浜田省吾の軌跡

Vol.01 日本ロックの成長の証し――浜田省吾

アルバム『J.BOY』の30周年記念盤をリリースした浜田省吾。日本ロック界のトップランナーたる彼の軌跡を、これまでに浜田省吾に関する3冊の書籍を著した音楽ライター、田家秀樹氏の言葉で振り返る。

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今更何をと言われそうではあるのだが、浜田省吾はシンガー&ソングライターである。自分で書いた言葉やメロデイーを自分で歌う。つまり、“シンガー”と“ソングライター”というふたつの側面がある。 彼の魅力は、そこに尽きると言って良いのだと思う。“シンガー”と“ソングライター”というそれぞれの面での誰にも真似の出来ない世界を築き上げている。
何よりも、声だ。低くて艷があり、甘くて野太い。男性的というだけでは括れない痛みや悲しみや祈るような切なさが備わった深み。知的で上品。ロックシンガーという言葉には収まりきらない暖かい包容力もある。仮に“ソングライター”という要素を取り外して他の作家の書いた曲を歌う“シンガー”としても十分な魅力を持った存在だろう。
それでいて彼の書くメロデイーは、声と一体になっている。どんなに歌唱力のあるシンガーでも、彼の曲を彼以上に歌った例を知らない。彼がソングライターであるからこそ書ける言葉とメロデイーが、あの声で歌われた時の説得力は、ソロデビュー40周年を迎えて年々重みを増すばかりだ。

    ソングライター、浜田省吾が、一貫して歌ってきたこと――。
    それは、“人生”ということだと思う。

それも抽象的なものではない。この世に生まれて、ひとりの人間として成長して行く。その間に経験する様々な出来事の中の喜びや悲しみ、初めて異性に興味を持つ思春期の胸のときめきから、恋の切なさ。人を愛することや裏切られること、思うようにならない現実に打ちのめされ、そこから立ち直って行くこと。そうやって若者が大人になってゆく過程がどのアルバムにも瑞々しく描かれている。
彼のアルバムに最も多く使われた形容詞が「青春映画のような」である。一枚のアルバムが、一本の映画のような物語性を持っている。聴き手がそこに自分の日々を重ね合わせることが出来る。
シンガー&ソングライターは、自分の心情を歌う。ともすれば自分の身の回りのことに終始してしまうケースも少なくない。“四畳半フォーク”と呼ばれた70年代のフォークソングがそうだったようにだ。浜田省吾は、そうではない。作家としての“作風”を確立している。
彼の76年のデビューアルバムのタイトルは『生まれたところを遠く離れて』。吉田拓郎のバックバンド、AIDOの一員として鳴り物入りでデビューしたものの、思うような結果を得られずにソロになった当時の心境は、デビューシングル「路地裏の少年」にある通りだ。つまり、彼のシンガー&ソングライターとしての第一歩は、自分のことを歌う所から始まっていた。
ただ、彼の軌跡が希有なのは、そこに留まっていないことだった。
“自分のこと”を書きながらも“独立した作品”として成立している。84年に発表したアルバム『DOWN BY THE MAINSTREET』は、『生まれたところを遠く離れて』の発展形だった。広島で生まれ育ち、音楽に目覚め、上京してバンドを組む。自分のストーリーがモデルになった“青春映画のようなアルバム”。明日を夢見て悶々とする、全国どこの街にもいる若者達のバイブルのようなアルバムになった。80年代以降の日本のロックの“疾走型”というスタイルを作り上げたのが彼だ。
ソングライター・浜田省吾が、日本のロックに開けた扉は、もっとある。81年『愛の世代の前に』、82年『PROMISED LAND』は、“仕事”や“地球環境”“核兵器”など、これまでの日本のポップミュージックが敬遠していたテーマを織り込んだロックアルバムだった。『PROMISED LAND』の中の「僕と彼女と週末に」は、環境汚染を背景にしたラブソングという意味でも前例がない。アメリカのハリウッド映画が原発事故も映画化してしまうように、時代を直視した、それでいてエンターテインメントとして成立している。86年の『J.BOY』、88年の『FATHER’S SON』は、日本の戦後の全ての若者たちの時代史でもあった。

2015年、新作アルバム『Journey of a Songwriter』は、2005年の『My First Love』から10年ぶりのアルバムだった。“僕の初恋はロックンロール”と歌い、ロックに特化した前作と違い、レゲエやワルツなど、幅広い音楽を網羅したアルバムは彼の中の“音楽の旅”だった。21世紀に入り、戦火の止むことのない世界を旅する中で見たことや感じたことが、祈りのようなラブソングとして結実していた。
2016年9月から、40周年のアリーナツアーが始まっている。選ばれている曲は、70年代から最新曲まで時代を超えた名曲ばかりだ。彼の中のR&B色を強く感じるツアーでもあるかもしれない。歌の中の主人公は10代から40代、50代までいる。大半が40代、50代という客席の誰もがそこに自分の人生を重ね合わせている。
浜田省吾は、テレビで歌わないという希有なアーテイストだ。どこも立ち見が出る客席の一人ひとりが、自分の耳と目で彼を見つけてきた。曖昧な情報に流されるのではなく、自分の意志で聞いてきたからこその思い入れ。ステージに立つ浜田省吾自身が、自分の歌が、そういう人たち支えられてきたことを誰よりも分かっている。そこにある信頼と絆は、一朝一夕には生まれない。彼のコンサートは、お互いの人生の確認の場にもなっている。
演奏時間3時間半。映像や照明も含めて、今、これ以上の質の高いロックコンサートをやっているアーテイストはいない。

ソロデビュー40年、そして、日本のロックの分水嶺とも言える名作アルバム『J.BOY』から30年。浜田省吾の軌跡は、そのまま日本のロックの成長の証しである。

(つづく)

文/田家秀樹
撮影/内藤順司

Vol.02は、11月18日(金)12:00にアップします。お楽しみに。


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10月1日に行われた仙台公演より

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浜田省吾本
『僕と彼女と週末に 浜田省吾 ON THE ROAD 2011 The Last Weekend』 田家秀樹 著/幻冬舎
2011年のアリーナツアー「ON THE ROAD 2011 THE LAST WEEKEND」に同行した著者が浜田省吾とそのツアーの全貌に迫る

田家秀樹(たけ・ひでき)
1969年にタウン誌のはしりとなった『新宿プレイマップ』の創刊編集者としてそのキャリアをスタート。『夢の絆/GLAY2001ー2002ドキュメント』『豊かなる日々/吉田拓郎・奇跡の復活』など著書多数。浜田省吾に関する書籍としては『陽のあたる場所 浜田省吾ストーリー』『オン・ザ・ロード・アゲイン/ 浜田省吾ツアーの241日』『僕と彼女と週末に 浜田省吾 ON THE ROAD 2011 The Last Weekend』がある。現在『J-POP TALKIN’』(NACK5)、『J-POP LEGEND FORUM』(FM COCOLO) のパーソナリティを務めるほか、新聞、雑誌などでも執筆中。


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