会場となったTOKIO TOKYOには、出演者たちと同世代、そしてそのさらに下の世代の姿が目立っている。そういったそれぞれのアーティストのファンに加え、期待のアーティストたちの実力をその目で、その耳で確かめようと訪れた、音楽関係者の姿も見受けられた。

BESPER

多くの音楽ファンが集まったこの日のTOKIO TOKYOでトップバッターを務めたのは、6人組バンド、BESPERだ。アーバンなサックスをアクセントに、初期オリジナル・ラヴ(現Original Love)からSuchmosに連なる、洗練と野生味が同居したシティソウル~ファンクを立て続けにパフォーマンスしていく。メロウでロマンティックなメロディと色気を感じさせるボーカルが、しっかりと会場にいい空気を作った印象だ。演奏に時折感じた、爽やかに流れるようなクルーズ感も魅力的だった。


■SET LIST
M1.「Secret Path」
M2.「Flight Time」
M3.「Ours」

BESPERPROFILE

2020年1月結成。学祭を通じて知り合ったARARIKUとSEを中心に6人組のBESPERが誕生。2022年12月に初ワンマンLIVE@TOKIO TOKYOがSOLD OUT。同時にメンバー3名が脱退。2023年4月に新メンバーが正式加入。パワーアップした新生BESPERとして同年7月から都内ライブハウスにて精力的に活動開始。路上ライブも敢行。Instagramで46万回再生のプチバズ。2024年もさらにスピード感を増し、3月には初の大阪遠征、4月、7月にワンマンライブが控えており、6月には「Twilight Dive」含む新曲3曲を配信リリースする。

 LIVE INFO 
3月18日(月)@大阪寺田町Fire Loop
3月19日(火)大阪DJイベント@心斎橋musicbar M
3月23日(土)CANVASライブ@江古田クラブドロシー
3月26日(火)@青山月見る君想ふ
3月28日(木)@新宿ロフト
4月2日(火)@南青山マンダラ
4月12日(金)「music bridge tokyo festival」@渋谷La.mama、渋谷RUBY ROOM、etc.
5月6日(月)@渋谷HOME
5月9日(木)@代々木Lodge
5月23日(木)@新宿ロフト
5月28日(火)@渋谷GRID
7月13日(土)BESPER リリイベ「Twilight Dive」@Spotify O-nest
9月22日(日)新宿ロフト25周年企画@新宿ロフト

BESPER(Instagram)

BESPER「Orbit」DISC INFO

2022年12月7日(水)発売

BIG UP!

佐野諒太

次に登場したのは、25歳のシンガー・ソングライター、佐野諒太。アコースティックギターを手にひといステージに立った彼は、3曲の中でネオアコ的な切なさと清涼感、フォークロックに通じる飄々とした哀愁、そしてボサノバのリズムで刻まれるギターの爪弾きが運ぶ心地良さと、それぞれ異なる音楽性を披露した。純朴そうだが、その奥に一筋縄ではいかない音楽的パーソナリティを秘めていることを感じるステージだったと思う。


■SET LIST
M1.「驚き舞うセカイ」
M2.「おもひで」
M3.「信号機」

佐野諒太PROFILE

東京都出身、湘南在住、25歳のシンガー・ソングライター。17歳より独学で楽曲制作をスタート。日常で誰しもが感じたことのある歌詞の世界観と、 情景描写が浮かんでくる美しいメロディー。そして一番の特徴は温かみのある歌声にある。現在は楽曲の制作と弾き語りでのライブ活動を行っている。

 LIVE INFO 
跳ね回る
4月12日(月)湘南bit

佐野諒太(YouTube)

佐野諒太「おもひで」DISC INFO

2024年3月13日(水)発売

TuneCore Japan

灯橙あか

3番手は、女性シンガー・ソングライターの灯橙あか。彼女もまた、佐野と同様にギターを手にひとりでステージを全うした。その眼差しをまっすぐフロアへと向けながら歌い始める。アルペジオと力強いコードストロークが静と動のコントラストを描く中、激情的なメロディとシャウトが光るナンバーを始め、計3曲を披露したが、どれも熱のこもったパフォーマンスだった。2曲目の「煙草とオレンジ」を歌う前、「失恋ソングは大の得意です」と言って見せた笑顔も印象に残った。


■SET LIST
M1.「ここでしか泣かない」
M2.「煙草とオレンジ」
M3.「今日の私が一番綺麗」

灯橙あかPROFILE

とうだい あか。長野県出身。YouTubeを中心に活動 中。女子心が包み隠さず表現された繊細で独特な強い歌詞と心地よいメロディラインが特徴。2023年10月にシングル「今夜、死にたいと思った。だから、歌いたいと願った。」、2024年1月 にシングル「火を吹く二人」をリリースし、同じく1月にバンド形式の ワンマンライブ「あのバス停で春を待つ」を渋谷duo MUSIC EXCHANGEで 開催。3月にシングル「今日の 私が一番綺麗」をリリース。ネクストブレイク筆頭のシンガ ー・ソングライターである。

灯橙あか

灯橙あか「今日の 私が一番綺麗」DISC INFO

2024年3月13日(水)発売

Eggs Pass

LUKA

佐野、灯橙と続いた弾き語りから一転、バンドセットでのライブを披露したのは、男性ソロアーティスト、LUKA。ツインギターにベース、ドラム、そして本人もアコースティックギターを弾きながら歌うバンドスタイルで、パワーポップ系のサウンドの渦の中を泳ぎ回った。繊細で清涼感のある歌声とメロディの絶妙なグラデーションを描き出したこの日のスタイルもいいが、より歌声とメロディが際立つであろうアコースティックセットでのライブも見てみたいという興味を抱かせるパフォーマンスだった。


■SET LIST
M1.「愛まかせ」
M2.「レトロブルー」
M3.「アイランド」

LUKAPROFILE

シンガー・ソングライター。愛知県岡崎市出身。80s~90sに影響を受けた懐かしさと情緒ある音楽性で現在と過去を繋ぐ次世代アーティスト。2023年5月に1st シングル「愛まかせ」をリリースすると各ストリーミングサービスのプレイリストやラジオを中心に話題になり、パワープッシュに選出。新人ながらZIP-FM Hot100にチャートインを果たし、USENでも注目アーティストとして楽曲が初オンエアされた。yamaと音楽コンシェルジュのふくりゅうが、J-WAVE 「ベッドルームポップ特集」で注目アーティストとして「愛まかせ」を選出。2023年8月9日、5曲入りEP「宇宙船メモリー」を発売、2024年2月14日、2ndシングル「アイランド」を配信。


LUKA

LUKA「アイランド」

2024年2月14日(水)発売

TuneCore Japan

浜野はるき

そして、この日のトリを飾ったのは、TikTokを中心にその存在が知られ、同世代の女性から大きな共感を得ている注目の女性シンガー・ソングライター、浜野はるきだ。アコースティックギターとキーボードというシンプルな構成で聴かせるのは、女性のリアルな目線でその心情を歌った恋愛ソングの数々。「すべての女性の味方になる」という目標を掲げる彼女だが、その言葉のとおり、多くの女性に共感を呼ぶであろう歌詞とキャッチーな音楽性が大きな武器になっている印象だ。一方、4曲目では自身が福岡から上京したときの心情を歌った「Tokyo」を披露し、恋愛ソングにとどまらない可能性も見せた。そんな浜野はるきは、4月から初の全国ツアー「Princess World」を開催するそうだ。


■SET LIST
M1.「中洲ロンリーナイト」
M2.「最低な君」
M3.「ギジコイ」
M4.「Tokyo」

浜野はるきPROFILE

はまの はるき。福岡県出身のシンガー・ソングライター。幼少期よりピアノやダンスを始め、音楽に触れてきた生活を送ってきた。2021年6月に歌手の夢を叶えるために単身東京へ進出。上京後、渋谷、新宿など都内を中心に路上ライブを年間200 本以上実施。活動当初より常に掲げてきた目標は「全ての女性の味方でいる」こと。TikTok を中心に、女性なら誰しも一度は考えたことのあるリアリティのある歌詞に共感する同世代の女性に圧倒的な共感を得ている。

 LIVE INFO 
1st Live Tour「Princess World」
4月14日(日)The Voodoo Lounge(福岡)
5月18日(土)梅田 Zeela(大阪)
6月8日(土) 韓国公演決定! ※TBA
6月28日(金)新宿 ReNY(東京)

浜野はるき|Parufam

浜野はるき「爆誕祭♡」

2024年3月20日(水)発売

Linkfire

さまざまなフィールドで多様性が重要視されるようになっている近年だが、この日に出演した5組のアーティストたちもまた、そんな時代を象徴するように思い思いの個性を音楽で表現していた。その中で共通していたのは、どのアーティストも表現の中に初々しさや瑞々しさ、その裏にある青さやもどかしさ、そしてどこか胸の奥がキュッと締めつけられるような切なさ、さらにはヒリヒリした痛みや苦みが表現されていたことだ。それらは単に歌詞から感じられるだけではなく、彼ら彼女らの歌声、演奏、たたずまいや顔つきの随所に匂い立っていた。

それはやはりきっと、若さ――決して年齢の若さだけを指すのではなく、アーティストとして伸びる余地がまだまだあるという意味も含めて――ゆえなのだろう。若さは、言い換えれば可能性だ。この日、出演した5組の音楽が放った若さに共鳴した同年代のオーディエンスも、少なくなかっただろう。そして、5組のライブに未来への可能性を感じ取った音楽関係者がいたであろうことも間違いない。そんなTOKIO TOKYOで芽吹いた音楽が、やがて花開き、大きな実を結ぶ日が訪れることを楽しみに待ちたいと思う。

(おわり)

取材・文/大久保和則
写真/藤村聖那

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