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――ドラマ「死にたい夜にかぎって」の初回オンエアが昨日だったじゃないですか。起きていられなくて、録画して今朝見たんですよ。

「朝ですか?あのドラマ、完全に深夜のメンタルですけどね(笑)。爪 切男(つめ きりお)さんの原作を読んでも、台本を読んでも結構ハードな内容だし。私もどんな仕上がりになるのかなと思ってたんですけど、賀来賢人さんも山本舞香さんもハマり役だし、すごい入り込めました」

――で、ましのみさんが歌っているオープニング主題歌「7」は書き下ろしなんですね?

「そうなんです。原作を読んで、打ち合わせをさせてもらって、台本を読んで、原作、打ち合わせ、台本……って繰り返して書き上げました。だから映像を見たのは曲を書き終えてからなんですけど、こんなにも原作の空気感が再現されるとは思っていなくて。賀来さんがね、爪さんにそっくりなんですよ。いや、顔が似ているわけじゃないのに、笑ったときの表情に爪さんを感じちゃって。あの“虫の裏側”の再現度ってすごくないですか?」

――確かに。ト書きに「虫の裏側みたいな表情で」って書いてあったとしてもできないですよね。

「ですよね!役者さんってすごいなって。いやー、びっくりしました。爪さんの、本当はしんどいってみんなが思うような出来事を“まあいいか……”ってポジティブに捉えられる余裕だったり、良くも悪くも他人に興味が向かなかったり、というところも私にはとても魅力的に思えて。それが詞を書くときのファースト・インプレッションになったんです」

――ファースト・インプレッションをそのまま「7」に吐き出した感じ?

「んー……ファースト・インプレッションのままではないですね。私自身は、日常生活も恋愛もすべてをネガティブに見積もっちゃうタイプなんですけど、爪さんは“まあいいか……”ってすべてを受け容れるタイプだから、それを自分のなかに取り込むという作業にいちばん時間をかけました。“爪さんになり切って曲を書こう!”ということをしたくなかったので、原作を読んで感じたことを、日記みたいに何枚も何枚もがーっ!と書き出していって、それをそぎ落として爪さんのテーマソングになりうる要素を残したんです。あと「死にたい夜にかぎって」って結構、暗いワードですけど、最後までストーリーを追うと勇気をもらえる内容なので、「7」も希望に繋がるテイストを持たせたし。フィルムライクな映像になるっていうことも聞いていたので、そのイメージは常に意識しましたね」

――ましのみさんって、正攻法でタイアップに臨むタイプというか、課題を与えられて何かに取り組むのが好きなんですね?

「依頼をいただいて何かを書くということはすごく好きですね。自分にはない価値観を取り入れるっていうことが好き。私と違うものの見かたをしてる人にものすごく興味が湧きますし。いままでは私のなかのマイナスを掘って曲を書くというアプローチが多かったんですけど、テーマとかモチーフをいただくとプラスの掘り方ができるというか、プラスの要素を取り入れて作ることができるので。ある種、ご褒美をいただいている感覚ですね。価値観も広がりますし、たぶん人間的にも成長できているんじゃないかな……と思います」





――「7」というタイトルに込められたさりげないメッセージも素敵です。

「自分のことを、ろくでもないって思っている人が多い気がしていて。やっぱり自分に欠けている部分ほど目に付くものだし、そんなに毎日がんばり続けられないし……っていうときでも“まあいいか……”って思えるような、“6でもない7”な人たちのテーマソングになれたらいいなって」

――ある種、賀来さん演ずる浩史(ひろし)のモノローグのような……

「爪さんとアスカさんの物語はフィクションではなくて、ふたりは実際に6年間をいっしょに過ごしたそうで、それを綴ったのが原作の「死にたい夜にかぎって」なんですね。なので“やっと浩史とアスカを繋ぐテーマソングができた”って爪さんが言ってくださって。それはうれしかったですね」

――『つらなってODORIVA』に収録されている「のみ込む」は、「7」の続編的なエッセンスがありますよね。

「お、さすが!初めて言われました。うれしい。「のみ込む」の“眉毛に火がつくような”からのブロックは、歌詞もメロも「7」を作っているときに考えていて、試行錯誤してた部分なんですよ」

――「のみ込む」と「7」には“眉毛に火がつくような”、“まあいいかの口癖”とか共通するフレーズが散りばめられていて。

「そう。「7」と同じテーマ感なんだけど、でも「7」には入れなかった部分をスピンオフみたいな感じで「のみ込む」に取り込んだりしていますし。どっちの曲も恋愛を軸にしてはいるんですけど、「のみ込む」はいやなことがあって、その帰り道とか、部屋でひとりになったときに寄り添える曲になったらいいなと思って書きました。で、『つらなってODORIVA』の5曲は、それぞれがバラバラというわけじゃなくて、同じ主人公のいろんな場面を描いているので、「7」から始まったいろんな伏線をラストの「のみ込む」で回収しているつもりなんですね」

――僕、ずっと『つらなってODORIVA』を全曲リピートで聴いていたんですけど、5曲目から1曲目に戻ったときの“なんだ?この繋がり感は……これ、ひとつのストーリーになってるじゃん!”って。

「そうそう!そんなふうに“あ!これってもしかして……”って気付く瞬間が楽しいじゃないですか」

――ですよね。だから本当はこのくだり書きたくないんですよ。これから『つらなってODORIVA』を聴く人に自分で気付いて欲しいから……とか言って書いちゃうんだけど(笑)

「違いない!違いない!みんな、ここネタバレ注意(笑)」





――えーと、話題がドラマに寄り過ぎてしまったのでちょっと軌道修正します。ましのみさんにとってミニアルバムというフォーマットは『つらなってODORIVA』が初めてですか?

「んー、何をもってミニアルバムに分類するかってことなんでしょうけど、曲数的には『ハッピーエンドが見えません』もそうなのかな……でもまあメジャーとしては初ですね」

――ということは、ましのみさん的にフルアルバムだからこうしたい、ミニアルバムだからこうしよう、という作品への向き合い方だったり、フォーマットの違いはさほど意識していない?

「いや、それがですね、今回やってみてミニアルバム最高!って思いましたね。というのも、私としては2ndアルバムの『ぺっとぼとレセプション』からだいぶ間を空けてのCDリリースになったんですけど、その間に音楽に対する考え方とか美学ががらっと変わってしまったので。たとえば、2ndまでは、自分自身を客観視できているっていう自信がなかったんですよ。それはいまも同じなんですが、やっぱり自分のビジュアルだとか、パフォーマンスがどう見られているのかっていう部分はまわりの人の意見を大事にしようとか、音に関してもアレンジはアレンジャーさんに……というふうに、それぞれの分野のスペシャリストに委ねることによっていい作品ができるって思っていたんです。でもアレンジも、ジャケットもなんとなく客観視できなくなっちゃって。だから次に作る作品は、自分のセンスで100パーセントいいと思えるものにしたいという意識に変化したんです。楽曲もそうですし、ジャケットのアートワークもアーティスト・ビジュアルもそう。で、その前提のうえで、5曲入りのミニアルバムっていうフォーマットがめちゃくちゃよくて。こんなにも軸がブレずに最後まで生き生きとプロデュースできるんだっていうことに気付けたので、そういう意味でミニアルバム最高です。すごく回りくどい説明になっちゃいましたけど(笑)」

――すごく純度が高いというか、研ぎ澄まされた作品になっていると思います。

「そうですね。もっとこういうことがやりたい、こんな曲もあるし、あんな曲もあるし、もっとファンクな曲も入れたい!っていろんなアイデアがあったんですけど、なにせ5曲しか入れられないですから。アルバム内オーディションじゃないですけど、めちゃくちゃ悩みましたね。12曲入りのフルアルバムって、それはそれでいいですけど、ミニアルバムは5曲すべてにスポットライトがあたる感じがしてうれしいですね。あと、2ndまでは他のひとの音楽を聴いたり、人の話を聞いたりすることで感性が失われてゆくような気もしていて。それよりももっと自分の内面を掘ってゆくというか……」

――内省的であろうと?

「そう、それ!その方がいい歌詞が書けるっていう考え方だったんですけど、いまはむしろもっと社交的になろうといろんな人と積極的に音楽の話をするようになりましたね。やっぱりsasakure.UKさんとの出会いも大きくて。sasakureさんみたいに、いろいろと勉強して新しいことを取り入れていても、自分の感性を見失わずにいられたら最強なんだなって気付かせてもらいました。そう思ってゼロから積み上げての『つらなってODORIVA』なので。その間の「エスパーとスケルトン」も新しい取り組みのなかでの作品ではありますけど、1曲だけだったので、あれを点とすると、今回は面で新しいましのみを提示できたんじゃないかなと思います。ましのみってパーソナルな部分に引っ張られちゃってる気がするっていうお話は前回しましたっけ?」

――「エスパーとスケルトン」のときにしましたね。キャラが邪魔になるっていう。

「私、自分の顔とか見た目に自信がないのでマイナスな部分を探しちゃうんですけど、自分をひとつのデザインとして客観的に捉えたり、曲の振り幅の広さをひとつに収束させる軸って、結局はパーソナルな部分なんじゃないかって思えるようになったんです。それは現在進行形で考えていますね。まだ自分の姿かたちを含めて客観視できるようになってはいないので、そこはちょっと成長中なのかも(笑)」

――もう答えが出てる感じがしますけどね。だって、いま自分で言ってたもん。“まだ”って。それ時間の問題っていうか、もうすぐぱっと視界が開けるときがやってきますよ。

「うん、そうかもしれない。いまは音楽を聴いても、ライブしてても、もっと身軽に、自由に、ナチュラルに、そこにいるみんなで音を楽しむっていう方向に変わってきて。むしろ音楽を始めたころの感覚に近くなってきたような……さっきも言いましたけど、『つらなってODORIVA』に入れなかった曲もたくさんあるし、それはやりたいことがまだたくさん溢れているってことですから、次のリリースを考えるという作業も楽しみっていう感覚もありますね」





――「NOW LOADING」もましのみさんのレパートリーとしては新しい試みなんじゃないかと。

「ですね。もともとパソコン音楽クラブが好きだっていうこともあって、もしもパソコンさんとごいっしょできるならこんな曲がいいなっていうところから生まれた楽曲です。私、本来はずっとループしてるダンスミュージックって苦手意識があったんですけど、ループしていることによってだんだん体が揺れてくる、みたいなよさにやっと気付いてきて。じゃあ、飽きがこないメロウなダンスミュージックを書こうと思ったんです。そういうテーマありきの楽曲です」

――詰め込み過ぎてない隙間の多いトラックなんだけど、ましのみさんのラップはわりとストレートな感じで“ましラップ”とぜんぜん違うし。

「私、これラップだと思ってなかったんですよ。そしたらみんなに“今回はちゃんとラップしてるね”って言われて、“あ、確かに”って(笑)。ここ1年くらいでいろんな曲を聴くようになってHIP HOPもすごく好きになってきたので、ラップももっと勉強したいです。あと「NOW LOADING」は歌ってても超気持ちいいので早くカラオケに入れて欲しいです」

――ラストのプルルル!ってスキャット、「どうせ夏ならバテてみない」にも入ってますけど、あれ、ましのみさんらしくて大好きです。

「あ、気付いちゃいました?あれ、私も好き過ぎて擦っちゃうんですよね(笑)」

――自食作用?セルフサンプリングって言ったほうがいいか(笑)

「ははは!じゃあセルフサンプリングってことで」

――まあ「7」、「NOW LOADING」とわざとゆっくりめのBPMで運んでおいて、3曲目の「エスパーとスケルトン」でぱーん!と弾ける感じがありますよね。

「曲順、めちゃくちゃ考えましたね。BPMもいろいろ試した結果のあれです。いままでは曲のピックアップも客観性という意味でスタッフに委ねていた部分もありましたけど、今回は自分で選曲しました。なんだろう、自分の感性に自信がついてきたっていうのもあるのかな」

――じゃあ、『つらなってODORIVA』は、ましのみというアーティストにとっても、次の作品に向かうための踊り場っていうか、インタールード的な作品になった?

「あー!確かに(笑)。さっきもお話しましたけど、実際、ここ1年間くらいが私にとっても踊り場的な時間だったし、『つらなってODORIVA』という作品自体にも、ライブにも徐々にそういう変化が現れ始めているんじゃないかな。あと“つらくなったら踊ればいいじゃん!”っていうダブルミーニングにもなっているので、そういう意味でも次のワンマンはみんなの踊り場になったらいいなと思ってます」

――なるほど、ましのみのライブは、みんなで踊る場所でもあると?うまいこと言いますね!

「でしょ(笑)」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/桜井有里





■ましのみ「つらなってODORIVA」リリース記念ネットサイン会(MUVUS)
3月21日(土)19:30~20:30 ましのみオフィシャルLINE LIVEチャンネル

■ましのみワンマンライブ「ODORIVA」
5月13日(水) アメリカ村BEYOND(大阪)
5月20日(水) Shibuya WWW X(東京)
※ライブ、イベントの内容は開催当日までに変更される場合があります。必ずアーティスト、レーベル、主催者、会場等のウェブサイトで最新情報をご確認ください







ましのみ『つらなってODORIVA』
2020年3月18日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/PCCA-04934/2,727円(税別)
ポニーキャニオン

ましのみ『つらなってODORIVA』
2020年3月18日(水)発売
通常盤(CD)/PCCA-04935/1,818円(税別)
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