enj_191015_mashi_main

ピックアップ
2019.10.15

ましのみ「エスパーとスケルトン」インタビュー――ましのみっていうキャラに引っ張られずに

つまるところ、ましのみというアーティストの表現欲求は“歌うこと”に収斂している気がした。そしてたぶん、それをたくさんの聴き手に届けたいという思いが彼女を前進させる燃料なんだ。最新曲「エスパーとスケルトン」について聞きながら、彼女が音楽活動を始めてから刻んできたステップを追ってみた。

<PR>
J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



――ましのみさんは、デビュー当時は大学生だったわけですが、もう卒業されたんですよね?

「卒業しました」

――じゃあ、いまは純粋にアーティスト一本?

「はい。もう立派に純アーティストです(笑)」

――なるほどなるほど(笑)。大学時代といまでは心構えというかモチベーションみたいな部分って変化しましたか?

「いやー……たぶん変わらないですね。私の場合は大学生のときもどっぷり音楽に浸かっていて、“大学もがんばらなきゃ”っていう感じだったので、普通に生きているなかでの価値観はずっと変わらずいたんですけど。ただまわりの子たちは卒業して社会人になっていたりするので、そういう話を聞いていると価値観は少しづつ変化していって。でも音楽に対する心構えは変わっていないですね」

――確か本格的に音楽活動を始めたのは大学生になった頃でしたね?

「そうですね。本格的に音楽活動を始めたのがだいたい4年前くらいなんですけど、そのときにはもう、やるからにはこれを仕事にしようと思っていたので。じゃあ、そのためにはどうしたらいいのかって考えて、自分で曲を書いたり、ライブをするようになったんです。逆に、それができないくらいなら就活のタイミングであきらめようと思ってましたね」

――しかし、音楽を始めて約2年ほどでメジャーデビューって……第三者的な視点では、すごいサクセスストーリーに見えますが、壁にぶち当たったり、挫折したりとかそういう試練はあったんでしょうか。

「わりと常に挫折してますよ。特にこの4年間は。壁にぶち当たっては模索し、ぶち当たって模索し……という繰り返しです。2016年にミュージックレボリューションというオーディションでグランプリを獲ったんですけど――音楽活動を始めてからちょうど1年くらいでしたね――まわりの人たちは私よりもっと若いころから音楽をやっていましたし。それに比べて私は音楽を始めたのは遅かったので。だからそのぶん必死でしたよ。音楽で食べていきたいという気持ちは人一倍強かったと思うし、これでがんばっていけるんだっていう手がかりを掴みたかったんです。それこそいまよりもボロボロになりながら、すべてを排除して音楽に打ち込んでいましたよ。毎日曲を作って、毎日歌って、ライブもめちゃめちゃやってましたし」

――いまの音楽業界、ラッキーでここまで来れるほど甘くないですもんね。

「あ、でも出会いにはすごく恵まれているなって思いますね。音楽でも、音楽以外の人生でも。オーディションは審査員の方々との出会いだし、デビューもレーベルの方々との出会いでしょうし……だってミュージックレボリューションって、私が参加した2016年が最後の開催だったんですよ。私は東日本ファイナルのグランプリなんですけど、その数年前まであったジャパンファイナルが開催されていなかったし。それなのに審査員の方が私の歌を気に入ってくださって、それが後に育成でお世話になるディレクターさんだったんですが、その方がいなかったら人生が変わってたでしょうし。そもそも翌年にはそのオーディション自体なかったわけで……と、思うとビビりますよね(笑)」





――デビュー前にやっていたライブって、弾き語りスタイルだったんですか?

「その頃は、自分の曲でバンド編成のアレンジをしたこともなかったので、とりあえず弾き語りでって感じでしたね。最初は座ってピアノを弾いて歌ってたんですけど、それだとお客さんの顔が見えないじゃないですか。で、ちゃんと前を向いて歌いたいな、身動きできたほうがいいなって思うようになって、立って歌うスタイルになったんです。いまもひとりでやるライブはそうなんですが、デビューのタイミングで同期を使いながらピアノを弾くようになってサウンドががらっと変わりましたね」

――曲は、閃いちゃうタイプですか?それとも籠って書くタイプ?

「んー……どっちもですね。まあ、どこか決まった場所じゃないと絶対に書けない!ってことはないですけど。日々生きているなかで思うこと、感じることが多いタイプだと思うので、そういうことが言葉になり、歌になり……確かに曲を書こうってなったらピアノの前にいたほうが書きやすいですけど、詞に関しては、電車乗ってるときとか、ところ構わず出てきますね」

――断片的な言葉とかフレーズから曲全体のストーリーが出来上がってゆくのかなって感じたんですが?

「っていう曲もあります。森山直太朗さんが“夏の終わり”って歌いたかったからあの曲を書いたって話を聞いたことがあるんですけど、そういうことですよね?私の場合は先に歌いたい内容があって、それにぴったりハマる言葉が見つかったときにそれをサビにしたりはしますけど。たとえば、「プチョヘンザしちゃだめ」だと、シチュエーションとか、主人公の気持ちにぴったりくる言葉が“プチョヘンザしちゃだめ”だったんですね。だからそこまで“無性にこの言葉が歌いたいっ!”っていうのはあまりないのかな……」

――すごく耳に残るんですよ。“プチョヘンザ”とか、“アポストロフィーエス”とか、そういうフレーズが楽曲のシグネチャーになってますよね。

「あ、なんかすごく嫌そう(笑)」

――全然嫌じゃないですよ。むしろ大好きです。まあ、ましのみさんを聴きながらのデスクワークが捗らないのは確かですけど(笑)

「確かに!BGM向きじゃないですね。そうそう、「’s」は言葉優先でできた曲ですよ。なんか勉強してるっぽい詞が好きですね。「Q.E.D.」とかもそうですけど、全然難しくないちょっとした勉強してる感じを出したかったんです」





――ましのみさんにとってのルーツミュージックは?

「『リトルマーメイド』のアリエルの歌ですね。タイトルが思い出せないや……“自由に~人間の~世界へ~”って曲です」

――「パート・オブ・ユア・ワールド」かな?

「あ、たぶんそれです。それと山口百恵さんの「プレイバックPart2」。この2曲は幼稚園に入るか入らないかくらいのころに歌ってたと思うんですけど、そのころから、歌う、踊る、あと楽器を鳴らすのも大好きでした。電子ピアノの自動演奏でクラシック音楽メドレーとかがプリセットされてるじゃないですか。あれを流しながらお母さんとふたりでスカーフを振りながら歌ってましたね。とにかくお母さんがよく歌ってくれて。それこそ『リトルマーメイド』の曲をミュージカル風に(笑)。“いっしょに歌いましょう”って。そうそう!やっぱりお母さんの影響は大きかったと思いますよ。おばあちゃんもよく演歌を歌っていたので演歌のカセットを聴いたりもしていましたね。だから決してマニアックな聴き方はしてないですけど、すごく大衆的というか、“単純に歌うのが好き”みたいな家族でしたよ」

――ポップですよね。音楽的にとてもポップだし、そういう家族の風景もポップですよね。いまのましのみさんを見ていると、ちゃんとそういうキャラクターに仕上がってるって思いますもん。

「おおっ!本当ですか(笑)」

――本当です。っていうか、歌の性質がすごく健康的な感じなんですよ。歌詞に描かれている登場人物とかシチュエーションはいまどきだし、ちょっとエッチな感じとかもとてもリアルなんです。リアルだけど、変に鬱屈していたり、やさぐれてたりしないし。この人はちゃんと健全な家庭で育ったんだなって思いました。

「いや、でもそうかもしれない。“健全な家庭で育った”って部分は間違いないです(笑)。まあ、アーティストって、時代的に少し影のあるキャラクターが求められがちですもんね。わたしはそういうマニアックな要素は全然ないし」





――で、新曲「エスパーとスケルトン」にもその印象はありまして。可愛らしい曲ですね。

「ありがとうございます。ライブでも歌ってます。もう2、3回歌ってるかな……」

――今回はアレンジャーとしてsasakure.UKさんがコラボしていますが、初仕事ですか?

「です。私の方からお声がけしまして。いままでは、音もこだわりたかったし、歌詞もキャッチをたくさんつけたいし、MVの印象も……って尖らせる要素が多かったんですね。でも「エスパーとスケルトン」は、それによって見えなくなっちゃう部分をきちんと表現したいなという思いがあったんです。だからいちばん大事にしたい声とピアノ、あとは、ちょっと面白いけど心地よく乗れる音楽っていう部分を軸にして、生音を入れたりしていて……っていうなかで、ボカロPの方々の、現実の世界では実現できない音遣いっていう部分に私の好みがマッチすることがあったので、面白くって、心地よい音遣いができる人を探していて、sasakureさん自身の作品のただヘンテコなだけじゃない部分が好きだったので、お声がけして、実現してって感じです。私、いわゆるボカロPとかニコ動っていう文化を知ったのは音楽を始めてからなんですよ。世代的には同世代くらいのはずなんですけどね。完全に後追いです」

――「エスパーとスケルトン」って調性がすごく曖昧ですよね。歌メロというか歌声は朗らかですけど、鍵盤のメロは長調なのか短調なのかはっきりしない不思議な感じ。

「そうですね。私、何かに縛られて作るということが苦手で、コードもそんなに知らないし、コードから曲づくりということもしたことがなくて。結構、突飛な音が好きで、でもサビでは心地よく乗れるみたいな曲が好きだし。今回もメロは明るいんだけど、キーは少し落として、落ち着いた感じにしてみようとか。あとは乗りですかね。テンポ感とハネ感はガツガツしたタテ乗りじゃなくて、ヨコに揺れるようにしようと。歌メロを書いて、そこまで決め込んでからsasakureさんに投げて、そこから結構遣り取りを繰り返しましたね。いままでどんなものが出来上がるかわからないってワクワク感でやっていたんですけど、今回はここからどうやってゴールに持っていくのか?っていう部分でsasakureさんの色を出してくださいってお伝えして。方向性は見えていたんですけど、ただ、sasakureさんがその方向性の斜め上というか、遠くまで連れてってくれた感じがしています。単純にすごくいいものができたんじゃないでしょうか」





――MVもこれまでとは違うアプローチですよね。僕、教えてもらうまでましのみさんがどこにいるかわかりませんでしたよ。

「ふふふ……それでいいんです。だって、私、MVに出るつもり全然なかったんですよ。ただ撮影の現場を見学しに行ってただけで。そしたら“ここの席埋めたいから座ってて”って言われて」

――エキストラじゃん(笑)

「そうですよー!めちゃめちゃ雑な扱いでしたよ(笑)。“そこに座って首振ってればいいから!”みたいな。MVを撮ってくれたヒサノモトヒロ監督は私と同い年で、『ぺっとぼとレセプション』のジャケを撮ってくれた人なんですけど、それが面白く撮れていたし、同世代のクリエイターの人と仕事をしてみたいというのもあって今回MVをお願いしたんです。なんとなく「エスパーとスケルトン」で新しいフェイズを見せたいという思いもあって、映像もアートワークも私が登場しないことで、すごく客観的に作品を捉えられた気がするんです。たぶん自分がいないことで、ジャケもMVもリスナーが初めてそれに触れあったときの感覚でプロデュースというか、意見を言えた気もしていて。だから「エスパーとスケルトン」は、匿名性というか、ましのみっていうキャラクターに引っ張られずに楽曲そのものとして聴いてもらえるんじゃないかなって思ってます」

――MVの主人公の女の子も可愛いですよね。不思議な存在感があって。

「本物はもっと可愛いいんですよ(笑)。本当は髪もロングなのに、わざわざショートのウィッグを被ってもらって、ズボンだし、中性的な感じにして。そこもやっぱり匿名性みたいな部分を持たせたかったので。楽曲も歌詞にキャッチを付け過ぎないとか引き算で仕上げましたし、MVも引き算で作っていったというか、映像のイメージに引っ張られ過ぎないようにしたいなと。本来、辿り着いて欲しいのはそこじゃなくて、もっと芯の部分――楽曲そのもの――だったりするので」





――デビューしてまだ1年半ほどですが、そうやって自分を客観視するようになったのは最近ですか?

「いや、私の場合はずっと客観視しているほうだと思いますよ。常に模索しているというか……だから現状に舞い上がるような局面はあまりないんですよ。良くも悪くもですけど」

――ましのみさんて、MVとか楽曲の印象もあって、もっとふわふわしたエキセントリックな女性だと思っていました。

「そう思われないようにしようと気を付けていますね。最近は(笑)。なんかそっちの印象が邪魔になってきちゃったんですよ。いや、別に最終的にはそっちでも全然いいんですけど、ちゃんと楽曲に辿り着いてもらって、そのうえでキャラ設定してくれれば。何て言うんでしょう、主従関係というか、楽曲が先にあって、ましのみっていうキャラクターがそれを引き立てる存在であって欲しいなって」

――では、ソングライターのましのみと、シンガーのましのみ、自分のなかでどちらの存在感を強く感じますか?

「んー……たぶんイーブンですね。でも始まりは完全に100対0でシンガーですね。まず歌いたいっていう初期衝動があって。で、作っているうちにソングライティングもすごく好きになってきて。いまは人に楽曲提供する自分も好きだし、逆に人の曲を歌う自分も好きだし。最終的にどうありたいかっていうと、自分で歌いたい曲を自分で書くということなのでイーブンです」

――シンガーとソングライターの両輪で行きたいということで。じゃあ、最後にもう1枚写真を撮らせてください。えーと、そのままソファに寝そべってもらえますか。TV見ながらポテチ食べてる感じで(笑)

「ええっ!ポ、ポテチ?寝そべって……ってまたそういうパターンですか(笑)」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/桜井有里



■「エスパーとスケルトン」リリース記念イベント
10月16日(水)ヤマハミュージック名古屋店 8F ヤマハ名古屋ホール
10月19日(土)ポニーキャニオン 3F イベントスペース
10月22日(火)ダイナシティ小田原 ウエスト1F キャニオンステージ ……and more!

■ましのみワンマンライブ(仮)
11月15日(金) 渋谷TSUTAYA O-WEST(東京)
11月20日(水) アメリカ村BEYOND(大阪)



ましのみ「エスパーとスケルトン」
2019年10月14日(月)配信
ポニーキャニオン
ましのみ『ぺっとぼとレセプション』
2019年2月20日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/PCCA-04748/3,241円(税別)
ポニーキャニオン
ましのみ『ぺっとぼとレセプション』
2019年2月20日(水)発売
通常盤(CD)/PCCA-04749/2,778円(税別)
ポニーキャニオン




J-POPフリークの音楽アプリ「SMART USEN」



アプリのダウンロードはこちらから

Get it on Google Play
Get it on Google Play