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2019.05.10

DJ HASEBE「Midnight Dreamin’ feat. SALU & SIRUP」インタビュー――気持ちよく繋がるイメージとサックスネタ

2019年2月、Manhattan Records PresentsでミックスCD『Tokyo Neo 90s Groove』をリリースしたDJ HASEBE。90年代のエッセンスを取り入れた“Neo”なミックスとともに生み出されたナンバー「Midnight Dreamin' feat. SALU & SIRUP」について、そして90年代以降現在までの、日本のHIP HOP/R&Bシーンについてのインタビューを。

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――まずはミックスCD『Tokyo Neo 90s Groove』にも収録されているオリジナル曲「Midnight Dreamin’ feat. SALU & SIRUP」が生まれたきっかけを教えてください。

「Manhattan Recordsとは過去に2作品リリースしました。シティーポップやHIP HOPをミックスした作品で、自分のオリジナル作品を1曲目に入れて作っていたんですが、今回は打ち合わせの中で、最近の90年代を感じる作品をまとめると新鮮で、面白いのでは?という流れで話が進みました。僕自身も邦楽の選曲をする時にそのあたりの作品を選ぶことが多く、その感じが面白いかもということになりました。自分の新曲も、自然といま出したい音を作れば90年代を感じる曲になると思って。それがきっかけです」

――サックスのゆるい感じが魅力的ですね。

「自分のこれまでの作品で、サックスをメインに使った曲をあまり作ったことがなかったんですが、今回のテーマでもある90年代の僕の好きな曲にはサックスメインのサンプリングが多いなと思って、今回はサックスメインで決めました。その後、レコードからサンプリングを探し始めてあのゆるいサックス音を見つけたんです」

――PVでもアナログレコードでプレイするHASEBEさんをバックにSIRUPとSALUがパフォーマンスするシーンがありますが、そのあたりは90年代をイメージしたのでしょうか?

「そうですね。そのあたりは90年代を意識しましたね」



SALU

SIRUP



――いまの日本のHIP HOP/R&Bシーンを代表するSIRUPとSALUとの共演することになった経緯を教えてください

「まずは、自分が一度も絡んだことがないアーティストということ。そして男性と男性の組み合わせで作品を作ることが少なく、だいたい男性と女性という組み合わせになりがちだったんですが、今回は男/男でアーティストを揃えた方が、リスナーも新鮮に聴いてくれると思って、まずはSIRUPにオファーしました。最近のR&Bシンガーの中では彼がいちばん良いと思ったのと、ブラックミュージックを日本語に変換して歌うと、いわゆるソウルフルな感じになりすぎたりするんですが、SIRUPはそこを和らげながらブラックミュージック的な歌い方が出来るというところに魅力を感じたからです。今回はそういう感じの歌い方を求めていたので」

――最初にSIRUPが決まって、その後にSALUが決まったんですか?

「そうです。SALUは始めから頭の中に候補としてあったんですが、SIRUPと相性がよさそうだなあと思いました。最近のSALUの作品を聴くと、Auto-Tune使いが多くなってきていて、今回僕と90年代的なアプローチをすると、彼のリスナーたちもフレッシュに聴いてくれるのでは?と思って、彼しかいないと思いましたね」

――自分が一度も絡んだことがないアーティストという話がありましたが、初めて絡むアーティストと作品を作るのはやはり刺激的ですか?

「あきらかに刺激的ですね。初めての人、知らないアーティストの方が、自分も気を張って挑まないとうまくいかないこともあるし、経験したことがないことを経験しないと、自分も得るものが無い。自分も曲も成長しないので、まずは一回も作品をやったことがない人ということが条件でした。同じアーティストだとマンネリ感が作品に出そうですし。自分自身の進歩のためにもです」

――ということは、SIRUPとSALUをフィーチャーすることが決まってからトラックを作り始めたということですね?

「『Tokyo Neo 90s Groove』の1曲目なので、ミックス用にセレクトする曲を見ながら考えていました。「Midnight Dreamin’」の後にミックスする曲をMALIYAの「Breakfast In Bed feat. Ryohu」に決めました。この曲のBPMが98なので、手前に来る「Midnight Dreamin’」のBPMも98にするのがベストかと。MALIYAの曲に気持ちよく繋がる曲のイメージと、サックスネタでチルな感じを出だしたかったということで、「Midnight Dreamin’」が生まれました」

――ふたりから上がってきたリリックを見てどう思いましたか?

「今回は“都会で夢を追いかけている若者”というテーマをふたりに投げました。初めにSALUから届いたリリックは彼らしい感じで満足いく内容でした。SIRUPもいい感じのリリックをくれて、僕と何回かワードのやり取りをしながらアップデートして完成させました」

――SALUの「誠実に生きるのは難しい」という始まりは本当に彼らしいワードですね。

「そうですね(笑)。出だしからゆるい感じで、ヌルっと入ってくるところが魅力的ですね」



USENのトーク番組「音ナ図鑑」の収録にて

  



――「Midnight Dreamin’」は、クラブやラジオ、あるいはストリーミングなど、どういう聴かれ方をイメージして作りましたか?

「がっちりクラブで流れて欲しいという感じは、昔ほどないですね。「Midnight Dreamin’」はいろんな所で聴けて皆に届けば。クラブでプレイしても盛り上がるし、街角で自然に流れて来てもいいなと思ってもらえると思うので。深夜のラジオがいちばん近いイメージですかね」

――PVでは、バイト先で行き詰まるSALUとSIRUPに人生のアドバイスをする先輩役でHASEBEさんが 登場しますね。

「PV制作とジャケット関係はChillySourceにお願いして、“真夜中に思い描く夢”を映像化してもらいました。PVは“夢を求めて”というテーマだったんですが、僕は夢を追う年齢ではないので(笑)、ふたりをアドバイスする先輩という役で出演するという提案をさせてもらいました」

――レコーディグはどんな感じで進んだんですか?

「SALUには自分のスタジオで収録したものを送ってもらいました。ラッパー達はそういうスタイルが多いです。歌は立ち会ってディレクションしたかったので、SIRUPはスタジオで立ち会って収録しました」

――「Midnight Dreamin’」をリミックスする予定はありますか?

「特に予定はありませんが、曲のインストも配信してるので、いろんな人にラップを乗せてもらったり、エディットやリミックスをして欲しいですね。あと、僕自身がさらに90年代的なアプローチでリミックスしてみたりとか」

――3月に苗場で行われたSnow Light Festivalで「Midnight Dreamin’」が初披露されましたが、今後ライブの予定はありますか?

「たまたま苗場で3人のスケジュールが合ってステージが実現しました。イントロでつかめる感じの曲なんで、もう一度ゆるくライブをやってみたいです。そうですね、大阪や東京でもやりたいですね」

――今回のミックス集『Tokyo Neo 90s Groove』は、2018年頃にリリースされた楽曲を中心に比較的最近の作品がセレクトされていますが、そのあたりが“NEO”ということでしょうか?

「そうですね。やはり新鮮さが欲しい。90年代的なんだけど、ここ最近の、現行の楽曲で90年代を感じるタイトルをまとめました」

――収録曲を見て改めて感じたんですが、90年代のエッセンスを感じる曲が多いですね。HASEBEさんはどう感じていますか?

「Mondo GrossoやSOIL&“PIMP”SESSIONSとか、近い世代のアーティストもいますが、ほとんどが90年代生まれのアーティストで、当時を知らない人が新しい音楽として作る感覚は、僕にはないので。それが面白くて刺激的です。自分自身の制作スタイルをアップデートさせるためにも、いまの若い人の曲を聴きまくって、いろんなアプローチを自分の作品に活かしたいと思っています」

――ミックス用にセレクトしたのにライセンスの問題で収録できなかったタイトルもあるのでしょうか?

「いっぱいありますよ。ライセンスの問題は付き合っていくしかないです。選曲が構想どおりにならないのは想定内。最終的にライセンスが取れたタイトルで作るのが自分の100%。そういう考え方です。ライセンスに関しては、アーティストの考え方、プロダクションの考え方もさまざまですから」

――今回、もろ90年代の曲を入れようと思ったことはなかったんですか?

「それはないですね!過去にそういう作品を作ったこともあるので、いまは必要ないかと思います。自分的にも新しい曲やアーティストに触れることが、いまいちばんフレッシュなことなので」



  

  



――いまは若い世代に90年代のサウンドを意識するアーティストが増えていますが、HASEBEさんはどう思いますか?

「うれしいことです。ただ、たくさんいすぎて大変かもしれません。数年前までは曲をネットにアップすれば、ある程度注目されていましたが、いまは落ち着いてきて、より楽曲のクオリティや演出の仕方を考えないと伸び悩む時期なのかもしれません。若いアーティスト達も大変です。音楽シーンが細分化されまくっていて、一つのシーンに求めるターゲット層が全ている訳ではないので、どこにアプローチするかが重要ですね」

――今回のミックスCDは「こんな場面で聴いて欲しい」というイメージはありますか?

「特にないですね。今回はチルがテーマなんで、いろんな場面で、ゆるく聴いてほしいですね」

――今回の作品では、アナログノイズやスクラッチノイズなど、レコードを聴いているような、それこそ90年代を感じるところがありますが、それは意識して?

「ムード作りで入れてみました。テーマでもある90年代をコンセプトにレコード的なイメージを付けたいなと思って。スクラッチを入れて、ローファイ感のある柔らかいノイズを演出してみました」

――大阪のアメ村にできたManhattan Recordsのオープニングパーティーでは、ミックスの1曲目「Midnight Dreamin’」から2曲目のMALIYA「Breakfast In Bed feat. Ryohu」の流れをミックスパートそのままプレイしていましたね。

「MIXをそのまま再現するところと、崩していくところがあったほうが現場では面白いと思いますが、今回のミックスCDの流れは僕の中で定番化すると思います」

――HASEBEさんがDJを初めた90年代当時は、レコードの試聴もあまりできずジャケ買いもしていたと思いますが、Manhattan Recordsには当時からDJブースがあって、お店の中で最新の曲がプレイされていましたよね。

「当時の宇田川町は、Manhattan Recordsのようなお店が増えてきて、いい流れでした。僕はお店の人と仲良くなって、聴きたいレコードを持って行ってDJブースに陣取るタイプでした(笑)。お店の人と仲良くなると、いいレコードを手に入れやすい。そんな特権的な感じが面白かったですね。レコードといえば、80年代後半から90年代は、レコ屋のコメントを見て買って、騙されたこともよくありました(笑)。ジャケットのクレジットを見て音を判断する時代でもありましたね。プロデューサーやリミキサーが重要なんです。当時の曲はプロデューサーやリミキサーの個性が出る時代で、クレジットのチェックは欠かせなかったです。いま、Manhattan Recordsはネットだけでなくリアルな店舗が東京と大阪にあるので、いろんな若い世代の人に遊びに来てほしい。リテールのManhattan RecordsとプロダクションのManhattan Recordingsが、いまの若い世代のアーティストの作品をリリースして、目立つ存在になってくれるといいなと思いますね」

――今回の作品のテーマは90年代ですが、HASEBEさんにとって90年代のアイコン的なアーティストといえば?

「僕のアイドルはア・トライブ・コールド・クエストで、93年に初めてひとりでN.Y.に行った時に、彼らの「シナリオ」のリミックスが流行っていて、どこのクラブに行っても合唱しているのが衝撃的でした」

――日本のR&Bシーンのクラシック、「今すぐ欲しい feat. Sugar Soul & Zeebra」の7インチシングルレコードが、2018年の末にリリースされて話題になりましたが、なぜあのタイミングで?

「2018年は、僕が98年にリリースしたアルバム『adore』の20周年だなあと思いながら、何もしてなくて。じゃあ「今すぐ欲しい」の7インチを切ろうと。いままで7インチでのリリースはしてなかったので。今回、東洋化成でレコードのカッティングに立ち会って作りました。昔は毎回レコードを作る時に東洋化成のカッティングに立ち会っていたなと、当時を思い出しました。懐かしい体験が出来て初心に帰った感じがしました。そこで自分の90年代を感じたことが、「Midnight Dreamin’」を制作する上でも影響しましたね」

――90年代からDJをしていると、DJプレイのスタイルも多様化し、機材もアナログからCDJ、PCと変化していますが、HASEBEさんはどうですか?

「僕は、2005年から2006年にかけてPCでプレイしはじめましたが、結構自然な流れでした。当時、台湾でDJプレイしたときがあったんですが、経費の問題でレコードを持っていくことが現実的ではなく、そのタイミングでPCプレイに変更しました。そのイベントに向けて、アナログをデジタルに変換する地味な作業が1週間(笑)。朝起きてひたすら自分のレコードをデジタル化するという日々でしたね。PCでプレイすること自体にはすんなり移行できました」

――HASEBEさん自身はどのプレイスタイルが好きですか?

「最近、PCのコントロールヴァイナルを使ってプレイするのもどうなのかな?と思う瞬間もあって、アナログに戻るDJもいたりして、けど、それもどうなんだろうと、いま迷走中です(笑)」

――今後の展望や活動予定を教えてください。

「2019年中には、アルバム出したいな……(笑)。2018年にOLD NICK名義でアルバムをリリースしたんですが、それは夏のコンセプトアルバムだったので、数年前から構想しているDJ HASEBE名義のアルバムを今年中には実現したいです。後は、とにかく曲をたくさん作りたいですね。そしてそれをどう世の中に広げていくかを考えています。ただ作るだけでなく、計画的にコツコツ作っていきたいです。命削って作っているので、ひとつひとつの曲を大切に、そしてたくさん作りたいです」

――最後にヘッズや、HASEBEさんのようにシーンで長く活躍したいと思っているDJたちにもメッセージを。

「とにかく辛くてもやり続けることですね。気持ちが変わる時もあるし、良い時もあれば悪い時もありますが、継続することが大事です。僕は、19歳のときに音楽で生きていくと決めてから、選択肢が他にありませんでした。古くさいですが、“音楽で飯を食っていく”ということが自分自身とって重要なので、とてもストイックに考えています。覚悟を決めて音楽をやるということですね」

(おわり)

取材・文/小川聡明



3月21日に行われた「Manhattan Records in WEGO VINTAGE AMERICAMURA OPENING PARTY」の様子



■SOUND PLANET「音ナ図鑑」の放送予定
第7頁/DJ HASEBE 2019年5月13日~5月19日

■ What’s “音ナ図鑑” ?
「音ナ図鑑」はUSENのBGMサービス「SOUND PLANET」で放送中のトークプログラム。毎週、旬のアーティストをパーソナリティに迎えてお届けする“音の図鑑”です。



DJ HASEBE「Midnight Dreamin’feat.SALU & SIRUP」
2019年2月27日(水)配信
250円(税別)
Manhattan Recordings/LEXINGTON


V.A.『Manhattan Records presents TOKYO NEO 90s GROOVE mixed by DJ HASEBE』
2019年2月20日(水)発売
LEXCD-19001/2,300円(税別)
Manhattan Recordings/LEXINGTON


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