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2017.06.15

沖仁インタビュー――『Clásico [クラシコ]』と15年の道程

活動15周年を記念した8枚目のアルバム『Clásico [クラシコ]』をリリースしたばかりのフラメンコギタリスト、沖仁。スペインと日本を往復した20代を経て、2006年にメジャーデビュー。そして2010年、「ムルシア“ニーニョ・リカルド”フラメンコギター国際コンクール」で優勝、名実とも日本を代表するフラメンコギター奏者となった彼に、ニューアルバムに込めた思い、そして15年間の道程を振り返ってもらった。

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――まずは6月7日リリースされたばかりの8枚目のアルバム『Clásico [クラシコ]』のテーマについて教えてください。

「アルバムタイトルの『Clásico』に込めた思いとして、ひとつは、多くの曲のアレンジでストリングスをフィーチャーしたことと、もうひとつ、フラメンコの形式に則って古典的なアプローチを取り入れたという意味が込められていますね」

――「Tierra [ティエラ] ~大地行進曲~」には、ヴァイオリニストの葉加瀬太郎さん、そしてプロデューサーとして亀田誠治さんが参加していますが、こうしたコラボレーションが実現した経緯は?

「以前から亀田さんが参加されていた秦 基博さんや椎名林檎さんの音楽が好きで、これまでも亀田さんのプロジェクトには何度か呼んでもらっているんですが、いつか僕の作品にお呼びして1曲作ってみたいという思いが3年越しぐらいであったんです。どうして亀田さんにお願いしたかったかというと、もちろん僕が、彼の一ファンであったという部分もあるんですが、今までの僕のアルバムはセルフプロデュースで、自分がイメージしているサウンドを作るということをずっとやってきたので、そこを越えたいという気持ちがあって、ポップスやロックというジャンルを主に手がけてきた亀田さんから、僕の音楽はどう見えるのかなっていう興味があったんです。より多くのリスナーに僕の音楽を届けるにはどうしたらいいかって考えた時に、亀田さんにぜひとも力添えいただきたいという気持ちもありましたね」

――前作『 Dialogo [ディアロゴ] ~音の対話~』から4年くらいの間にそうした思いを温めていたと。

「そうですね。ただ、楽曲ありきの話でしたので、数年前からデモテープ段階で何度か送ってやりとりをしていましたが、今回レコーディングした「Tierra [ティエラ] ~大地行進曲~」の原型を送ったら亀田さんにとても気に入ってもらえて。さらに話を進める中で、葉加瀬太郎さんをフィーチャーすることも決まって、ようやく夢が実現しました」

――「Tierra [ティエラ] ~大地行進曲~」は、フラメンコの軽やかなリズムに沖さんのギターと葉加瀬さんのヴァイオリンの掛け合い、モダンなアレンジがとても気持ちいいですよね。さて、今回のアルバムはデビュー15周年を記念した作品でもありますが、この15年を振り返ってみていかがですか?

「ひと言では言えないですけど、振り返ると山あり谷ありでした。どうにかここまで進んでこれたのは、これまで応援してくれたリスナーの皆さんのおかげですね。フラメンコって、日本では、15年前も、いまも、相変わらず、音楽として確立されていないジャンルかもしれませんね。自分以外で音楽シーンで活動している人は少ないし、踊りの世界と思っている人も多いですし。ギタリストとしても、アコースティックでもなく、クラシックでもなく、ジャズでもなく……どこに行ってもちょっとはみ出しているというか(笑)。それでも少しずつフラメンコという音楽が浸透してきたなという実感はありますね」

――いま、日本でフラメンコ音楽の第一人者と言ったら間違いなく沖仁の名が挙がると思いますが。

「例えば、本国スペインでは、フラメンコギターといえばパコ・デ・ルシアでしょう。でも日本人である僕が彼の真似をしてもしょうがないし、民族音楽であるフラメンコに対して僕は、アウトサイダーというか、門外漢なので。そういった中で、日本というホームグラウンドで、どういうスタンスでフラメンコをやっていくのかが自分の命題なんです。その答えを模索し続けた15年だったとも言えるし、ステージに上がるたびにその問いに対して答えを出し続けてきたと言えます」

――確かに、日本では、沖さんの登場までフラメンコは敷居の高い音楽だったかもしれませんね。

「パコ・デ・ルシアの音楽って、もちろんとても素晴らしいんですけど、フラメンコの形式を理解していないとなかなか楽しめないと思うんですよね。リズムが複雑でわかりずらかったり。でも、そうじゃなくて、初めて聴く人に楽しんでもらうにはどうしたらいいんだろうって、僕はずっと考えてきて。そういう感覚を日本のリスナーに教えてもらったというか、リスナーの反応によって、こうすればいいのか!って気づいたり、これじゃ伝わらない!とか試行錯誤して、そうやって進んで来た15年でもありました」

――「Tierra [ティエラ] 〜大地行進曲〜 con 葉加瀬太郎」をはじめとしたオリジナル曲はもちろん、チック・コリアの「Spain」、ガーシュウィンの「Someone to watch over me」、映画音楽の「禁じられた遊び」、「ロミオとジュリエット」といった選曲と、クラシカルでコンテンポラリーなアプローチは、ジャンルを超えて純粋に楽しめるアルバムだと感じました。

「日本の人たちの、フラメンコのハードルを下げることが僕の役割だと思っています。やはり日本では、フラメンコは未だに敷居が高いですし、フラメンコの形式を理解していないと本当の意味では楽しめない。ただ、今回のアルバムを作る上では、そういう理屈を抜きにして、初めて聴く人にもフラメンコを楽しんでもらえるということをとても強く意識しました」

――ところで今回の亀田さん、葉加瀬さんもそうですが、沖さんは、実にさまざまなジャンルのミュージシャンと共演されていますよね。

「単純に好きなんですね、あの方たちの音楽が。いつも楽しく共演をさせてもらっていて。特にロックやポップスとのコラボレーションは、伝統や常識に縛られずに演奏できるので、ある意味自由にできる楽しさがありますね。気持ち的には、敬語ではなく、タメ口で話せるような音楽(笑)。コラボレーションの場から学ぶこともありますし」

――なるほど。新しい音を見出す場でもあるんですね。沖さんのアルバムを聴いて強く思ったんですが、フラメンコの魅力のひとつは、やはりライブだろうと。今後のライブのご予定はいかがでしょう?

「まずは、活動15周年を記念したライブ「15 -Quince-」を7月1日(土)に東京オペラシティーで行います。15年の活動を凝縮してダイジェストで振り返る、目眩くようなライブにしたいと思っています。インディーズ時代、メジャー時代、そして “ニーニョ・リカルド”受賞以降と、3つの時代を追いながら、初めて聴く人からコアなファンまでが楽しめるスペシャルな一夜になるはずです。さらに11月からは、『Clásico [クラシコ]』のリリースを記念した全国ツアーも行います。生演奏というのは即興の要素も強いので、CDで聴くのとはまた違うスリリングなライブをお届けしたいと思っています」

――最後に、沖仁ファン、そしてフラメンコに興味を持っているけれどライブにはまだ行ったことがないというフラメンコ初心者にメッセージをお願いします。

「実際にライブに足を運んでいただくと、思っているよりも、ふだん聴いているポップスやJ-POPと近いところにある音楽だなと感じてもらえるはずです。フラメンコはもともと演奏する側と聴く側との境界線があるものではなく、いっしょに場を作る音楽です。僕もリスナーといっしょに音楽を楽しむ場を作りたいと思っています。難しい形式や概念は置いておいて、とにかくまずはライブを、沖仁のフラメンコを楽しみに来てください」

(おわり)

取材・文/大島忠智(IDEÉ)



沖仁『Clásico [クラシコ] 』
2017年6月7日(水)発売
VICL-64793/2,800円(税別)
ビクターエンタテインメント


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