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特集
2017.11.15
特集 ベルリン・フィルハーモニー八重奏団『シューベルト:八重奏曲』

スペシャルインタビュー
オクテット編

SMART USENの期間限定チャンネル「樫本大進とベルリン・フィルの仲間たち」にちなんだスペシャルインタビューの後編は、ベルリン・フィル八重奏団メンバーの登場です。

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SMART USENのスペシャルコンテンツ「樫本大進とベルリン・フィルの仲間たち」は11月15日から



――インタビュー後編では『シューベルト:八重奏曲』についてオクテットの8人のメンバーにお話を伺います。まずは第1ヴァイオリンの樫本大進さん。どういう気持ちで演奏に臨みましたか?

樫本大進(第1ヴァイオリン)「シューベルトのファースト・ヴァイオリン・パートを演奏するということは、本当にとても難しくて、大きなチャレンジです。大変な技術を要しますし、常に高い水準を要求されます。こうした難しい演奏のとき、大きな編成のアンサンブルでは、グループを常に支えることが大切なのです。コントラバスのエスコ・ライネさんが主に支えてくれていますが、自分もファースト・ヴァイオリンとしてみんなを支え、ときには引っ張ってゆく。もちろん、きちんとした音程を押さえなければならず、難しいのですが、それこそがオクテットをやる醍醐味でもあります」

――続いて弦楽セクションの皆さんにお話を伺っていきましょう。

ロマーノ・トマシーニ(第2ヴァイオリン)「まず、私たちは、類まれなる作品と作曲家に対峙しているということをあげたいと思います。私が担当するセカンド・ヴァイオリンの役目は、同僚たちが生み出す音楽に合わせながら、対応する必要があります。最も負担の大きいファースト・ヴァイオリンは、まるで協奏曲の演奏のような大変さですし、管楽器も出番が多いですからね。セカンド・ヴァイオリンとしては、彼らを支えつつ、グループとしていかにしてシューベルトと対峙するかに重きを置いて演奏しています」

アミハイ・グロス(ヴィオラ)「ヴィオラにとっては、やはり室内楽の醍醐味が詰まった、大変興味深い楽曲で、私は大好きです。大進さんの言うように、高音部と低音部が折り重なるような楽曲で、ヴィオラはちょうど中間に位置していますので、私はふたりのヴァイオリンの様子を伺いつつ、コントラバスやチェロとのバランスをとりながら、高音と低音の接着剤のような役割を担っています。難しいことなのですが、自分がどれだけ安定した演奏ができるかを心がけています。ヴィオラのパートはとてもリリカルですが、同時にリズミカルでもあり、リズムには気をつけて演奏しています。管楽器と並奏する部分もありますしね。他のみんなも同意してくれると思いますが、一人ひとりにとって、とてもやりがいのある素晴らしい楽曲だと思います」

クリストフ・イゲルブリンク(チェロ)「チェロは、多くの部分でコントラバスといっしょに演奏しますが、伴奏のみならず、主題もたくさん演奏します。大事にしているのは、ヴァイオリンやコントラバス、管楽器に呼応しながら音楽を作ることです。それにこの曲はとても楽しい曲ですし、現存する弦楽八重奏曲の中では、最も美しい曲だと思います。まさにこのアンサンブルの存在理由でもあるような楽曲ですね」

エスコ・ライネ(コントラバス)「コントラバスにとって最も重要なのは、テンポを維持し、常にタイムをコントロールすることだと思います。大進さんやクリストフも言っているように、低音部を担当して底を支えていますし、正確な音程をとらなければなりません。もちろん、チェロと演奏することが多いので、合わせることにも気をつけています」

グロス「管楽器セクションに行く前に、どうしてもここでお話しておかなくてはいけない事があります。このアンサンブルで演奏するときに、私たち弦楽器セクションにとって最も重要なことは、常に管楽器にぴったり合うサウンドを作りださなければならないということです。これはとても難しいことです。なにしろこのオクテットにはトップ中のトップの管楽器奏者が揃っていますからね(笑)。それはとてもやりがいのあることで、正しいバランスを見つけることを大切にしています」

――メンバー全員がグロスさんの発言を拍手で讃えています。それでは、その素晴らしい管楽器セクションにお話を伺いましょう!まずはドールさん。

シュテファン・ドール(ホルン)「アミハイ、ありがとう!まず、ホルンについて言えば、たくさんの素敵なソロパートがあって恵まれていると思います。同時に、同僚たちの演奏をじっくり聴いているだけの暇な時間も長くあります(笑)。だから演奏した後で、同僚たちに感想を述べたり、注意したりもします。この八重奏曲におけるホルンの役割は、交響楽的な響きをもたらすことです。もちろん大き過ぎないよう注意し、絶妙なバランスを保つようにしています」

モル・ビロン(ファゴット)「シュテファンが言っているように、私たち管楽器セクションは、室内楽をやりながら、音楽に交響楽的な響きをもたらしていると思います。昨日も車の中で話していたのですが、それは、例えるならば、ワーグナー的な巨大な曲なのです。室内楽でありながら、交響楽的であるという難しさはありますが、弦楽器と管楽器が交じり合い、ひとつになって、いかに新しいものを生み出していけるかということを心がけています」

ヴェンツェル・フックス(クラリネット)「まず、私にとってシューベルトを演奏するということは、とても名誉なことです。特にこの八重奏団のメンバーとは、他のアンサンブルでも演奏した経験があります。しかし、このメンバーの組み合わせにおいては、多少、ゲームのような面白さを感じています。たとえば私が主題を演奏していても、次の瞬間には大進のヴァイオリンや、チェロや、ヴィオラに主題を渡す、パス回しのように感じることがあります。そして、この音楽は、私を少しばかりホームシックにします。というのも、私はウィーンで勉強していましたし、この主題を聴くと、古きよきウィーンを思い出すのです。特にこのメンバーとは、心から愛し合っていますし、お聴きになる人たちにもそのあたたかい気持ちを感じ取っていただけるとうれしいです」

――このアンサンブルにいちばん長く在籍していらっしゃるのは?

全員「フックスさん!」

フックス「でもいちばんの年寄りではないよ(笑)いちばん長くいるけどね!」

――ではフックスさんにお聞きしましょう。ベルリン・フィル八重奏団で、最初にこのシューベルトを演奏したときのことを教えてください。

フックス「OK! 最初の演奏は1993年、私がオーケストラに入団した直後で、フランスに行ったときでした。なにしろリハーサルの時間がなかったから、よく覚えていますよ。ちょうど休み明けで、メンバーは色々な場所から集まったのですが、電車が遅れて到着が間に合わない人もいて、リハーサルができませんでした。ファースト・ヴァイオリンがちょろっと弾いてそれに合わせる、みたいな感じで心配だったのですが、結果的にはうまくいきました。現在のこのメンバーに関しては、皆、本当に心から音楽を愛していて、音楽に対して一生懸命で、これまでのどのアンサンブルよりも真剣に練習します。真剣に取り組んでいるので、あまり言いたくないけれど、いちばん好きなメンバーです(笑)。もうひとつ言わなくてはいけないのは、大進は偉大なリーダーだということです。彼は本当によくやってくれていますし、なくてはならない存在です」

――大進さんはこれまでにデュオからオクテットまで、色々なアンサンブルを経験しておられますが、このオクテットに取り組むことになったときのお気持ちは?

樫本「このシューベルトの楽曲は、この素敵なファミリーに入る前から知っていましたし、演奏もしたことがありました。この曲はとても難しく、初めて演奏する人たちとは、何が起こるかわからないので、まるでプールに飛び込むときのような感じで、先が見えないのです。ですから最初からプランやコンセプトをもって臨んだわけではありませんでした。でもリハーサルを重ねるうちに見えてくるものがありました」

――今回の録音で、いちばん難しかった点は?

全員「もちろん僕のパートがいちばん難しかったよ!」

樫本「いやいや!そういう意味ではなくて(笑)」

トマシーニ「まず、長大な曲であるということですね。長いが故に、録音においては、ディテールにこだわりすぎずに、ひとつの大きなアーチを描くつもりで、テンションを保ちつつ、いかに長いラインを築いていくかということだったと思います。コンサートではそれは容易なのですが、録音は演奏会とは違うので、演奏している私たちが気付かないことをアンサンブルの耳となって聴いてくれる人が必要なのです。クリストフのようにね」

グロス「私たちの強みは一体感があることですが、実際には、録音で演奏してコントロールルームに戻ると、自分たちが思っていたような演奏とは全く違うことが多々あります。それはテンポだったり、いろいろな細かいことなのですが、そういったときに、クリストフのような信頼できる人がいて、8人それぞれが意見を持ち寄って、何が正しいかを判断していく作業が必要です」

ライネ「私たちが、プロデューサーのクリストフの要求にどうやって応えたか?初日は9時間ぐらいぶっ通しで録音しました。7回も公演で演奏した後の録音だったのに、それはまるで最高のリハーサルのような素晴らしい体験で、とても濃密な時間でした。クリストフがこれまでに考えたこともないようなことを指摘してくれて、新しいアイデアが生まれ、新しい扉が開いたのです」

(おわり)

取材・文/伊熊よし子
構成/encore編集部
写真/Keita Osada

■Philharmonic Octet Berlin(ベルリン・フィルハーモニー八重奏団)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーで構成される室内楽アンサンブルとして80年以上前に結成され、交代を繰り返しリニューアルし続けている。歴代メンバーには、かつてのコンサートマスター、スピヴァコフスキー、レーン、ボリース、チェロのピアティゴルスキー、グラウダン、デ・マシュラ、クラリネットのビュルクナー、ファゴットのローテンシュタイナーらが名を連ねる。現在のメンバーは樫本大進(第1ヴァイオリン)、ロマーノ・トマシーニ(第2ヴァイオリン)、アミハイ・グロス(ヴィオラ)、クリストフ・イゲルブリンク(チェロ)、エスコ・ライネ(コントラバス)、ヴェンツェル・フックス(クラリネット)、シュテファン・ドール(ホルン)、モル・ビロン(ファゴット)。



ベルリン・フィルハーモニー八重奏団『シューベルト:八重奏曲』
2017年11月15日(水)発売
初回仕様限定盤/BPOC-1/3,000円(税別)
ウィステリアプロジェクト


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