家入レオと加藤ミリヤがフルオーケストラとともに力強い歌声とメッセージを届けるイベント【Billboard JAPAN Women In Music vol.2】が、2月8日にTOKYO DOME CITY HALLにて開催された。

この日の歌は全曲東京フィル・ビルボードクラシックスオーケストラの演奏と共に披露され、一夜限りのスペシャルなパフォーマンスとなった。本稿ではその一部始終をレポートする。

開演時刻に指揮者の齋藤友香理とオーケストラ・メンバーがステージに姿を現すと、続いて家入レオが登場。深々とお辞儀をして来場者に挨拶するとピアノの音色が鳴り、ライブがスタートした。オープニングを飾ったのは「ずっと、ふたりで」。家入の伸びのいい歌声とオーケストラの演奏が組み合わさり、リスナーを一瞬にして音の空間に包み込んでいく。次曲「君がくれた夏」もオーケストラの演奏により、いつも以上にドラマチックな雰囲気に。開始早々、「一瞬も見逃せない特別なライブになりそうだ」と来場者全員が感じたことだろう。
 中盤のMCでは「ここ数年で、女性としての道の切り拓き方を意識して曲を作ったり歌ったりするようになりました」「多様性の時代なので、性をもっと広げていいんじゃないかなと思います」などと思いを述べる。筆者がハッとさせられたのは、「女性が女性らしくあるためには男性の力が必要だし、このことは人間全員のテーマだと思います」という言葉。昨今は男女平等が謳われ、性別を問わず同じ条件で生きるような風潮があるが、大事なのはそれぞれの違いを尊重し合って助け合うことなのだと気付かされた。

 家入はステージ後半にBank Band with Salyu「to U」も披露。アカペラで歌い始め、前半はピアノやハープという最小限の音と共に歌い、後半はストリングスも含めた壮大な演出で届けた。家入の歌声とオーケストラの演奏が音のシャワーとなって会場内に降り注ぐ。それはまるで私たちリスナーも曲の世界に入り込んだと思うほどの没入感があった。また「太陽の女神」では身体を左右に向けながら歌唱し、歌声を一人ひとりに届けていることが視覚からもわかった。一部のラストに歌ったのは「空と青」。家入が間奏でくるくる回ったりリスナーも手拍子をしたりして、会場が多幸感に溢れた状態で締め括った。

 休憩を挟んだ後にスタートした二部では、真っ黒なドレスに身を包んだ加藤ミリヤが登場。「みなさんの肌から細胞を通して心が震える瞬間がきっと何度もあるかと思います。この空気を伝って何かがみなさんに届く、そんな夜になっていくと思います。最後までお楽しみください」と伝え、「Goodbye Darling」や「With U」などを披露。オーケストラの演奏と加藤の歌声が相まって、原曲よりもダイナミックに仕上がっている。加藤の言葉通り、音が自分の肌を通って体内に入り、細胞まで届いてくる感覚があった。

 中盤には「私は女性として生きてきたことをすごく自覚している人間で、それを愛しているし、楽しんでいるし、時に悲しんでいる。日々格闘しているんですが、そんなときに自分を助けてくれるのは音楽だし、自分自身が音楽を始めたのも女性アーティストがきっかけでした」と語った。そしてMC明けには、影響を受けた女性アーティストのカバー曲として宇多田ヒカルの「First Love」をパフォーマンス。オーケストラの演奏をバックにマイクを両手で握りしめて歌う姿はとても美しく、リスナー全員の心を鷲掴みにする見事な歌声だった。言葉ひとつひとつに余韻があり、歌声と演奏を贅沢に浴びていることを実感した。

 その後には代表曲「Aitai」も披露。切ないラブソングに胸がぎゅっとなりつつも、音は心地よく、「まだ聴いていたい」と思わされる。そしてラストに届けたのは、加藤がふるさとを思いながら書いたという「JOYRIDE」。リスナーのクラップも合わさり、加藤とオーケストラとリスナーがひとつに。フィナーレにふさわしい高揚感が生まれていた。たくさんの拍手が鳴らされる中ステージを後にし、この日の公演は幕を閉じた。

女性をエンパワーすることを目的に開催された本公演。歌声、演奏、MCでの言葉、そして会場の一体感と、あらゆるところからパワーをもらえた1日となった。音に身を委ねて楽曲を楽しんだり、じっくり聴き入ったりMCの言葉に勇気をもらったりと、楽しみ方は人それぞれだったが、きっと誰しもが何かしらを感じとり、ライブ空間を堪能していたはずだ。J-POPとオーケストラが合わさることによる相乗効果も予想以上で、音楽のジャンルに垣根がないことも思い知らされた。この日会場に集まった人たちは、性別も年齢も好きな音楽もきっとバラバラだ。けれど、この日この場所で同じ音楽を聴いてひとつになったことはリスナーたちの忘れられない思い出になっただろう。

 なお、本公演はU-NEXTで配信決定。詳細は後日発表される。

Text by 伊藤美咲
Photo by 石阪大輔


◎セットリスト
【Billboard JAPAN Women In Music vol.2】

<家入レオ>
1. ずっと、ふたりで
2. 君がくれた夏
3. Silly
4. 未完成
5. to U(Bank Band with Salyuカバー)
6. 太陽の女神
7. Shine
8. 空と青

<加藤ミリヤ>
1. Respect Me
2. Goodbye Darling
3. True
4. With U
5. First Love(宇多田ヒカル カバー)
6. Aitai
7. 天国のドア
8. JOYRIDE

出演アーティストプロフィール:


<家入レオ>
2012年2月「サブリナ」でデビューし、【第54回日本レコード大賞】で最優秀新人賞ほか、数多くの新人賞を受賞。これまでに数々のドラマ主題歌やCMソングを担当し、フジテレビ系月9ドラマ『恋仲』主題歌の「君がくれた夏」はBillboard JAPAN Hot 100で1位を獲得、フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』の主題歌「未完成」はサブスクリプションサービスを中心に大ヒットを記録した。「Shine」「Silly」「空と青」など、幅広い楽曲を独自の感性と歌唱力で表現し、多くのファンを魅了。2023年にデビュー12年目を迎え、2月に約4年ぶりのオリジナルアルバム『Naked』をリリース。12月9日には自身初となる海外公演【LEO IEIRI Live in Shanghai】を中国・上海で開催した。

<加藤ミリヤ>
1988年生まれのシンガーソングライター。2004年のデビュー以来、「ディアロンリーガール」「Aitai」など、リアルで等身大な歌詞とメロディセンス、生きざまが“現代女性の代弁者”として、同じ時代を生きる同世代女性からの支持・共感を集め続けている。デビュー19周年を迎えた彼女は2児の母として女性としても成長し、現代女性における様々な愛や葛藤を歌い、表現し続けている。2023年4月に自分の使命や自身のルーツを表現した12枚目のオリジナルアルバム『BLONDE16』をリリース。デビューから変わらない“自分を強く持っているギャルマインド”を掲げながら、楽曲制作、ライブ活動を精力的に行っている。

■Billboard Women In Musicとは
2007年から米ビルボードが毎年開催しているイベント。メインとなる『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』は、音楽ビジネスに多大な貢献をし、仕事と継続的な成功を通じて、何世代にもわたって、“女性が、この分野で活躍できるよう促している”女性を表彰しています。その他、『Rising Star』『Chart-Topper』『Trailblazer(先駆者)』『Icon』など様々な切り口で、女性アーティストが表彰されています。
ビルボードジャパンでは、これまでニュースでアメリカの受賞者を発信してきましたが、2022年より、自身の活動を通じて社会をエンパワーする「かっこいい」女性たち、それを支える人々を多角的に紹介し、よりインクルーシブな社会を目指すプロジェクトとして、【Billboard JAPAN Women In Music】を立ち上げました。“音楽業界における女性”をフィーチャーし、女性たちにフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』もスタートさせています。

■ billboard classicsとは
最高の音楽と新しい体験を皆様にお届けするため、2012年にスタートしたコンサートシリーズ。「CLASSIC=クラシック音楽」を象徴するオーケストラと、トップクラスの歌唱力を持つポップス実力派アーティストとのコラボレーションを中心に、これまでに玉置浩二、藤井フミヤ、JUJU、倉木麻衣、山崎育三郎など、ジャンルを超えた音楽体験を数多く提供してきました。
優れた表現力をもつアーティスト、音のひとつひとつを大切にお届けするこだわりの音響技術、音楽を聴くために設計されたコンサートホール――特別な空間で得ることのできる最高の音楽体験、それがbillboard classicsのコンサートのかたちです

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