ALIのワンマンツアー「VIVA LA MUSICA」満員御礼の埼玉公演のライブレポが到着!

「お互いに愛と尊敬をもって、今日を最高の時間にしましょうよ。だってオレら、全国を回って、お前のハートに火をつけにきたんだぜ!」

 ALIが2023年10月29日、HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3にて『ALI ONE MAN TOUR 「VIVA LA MUSICA」』埼玉公演を開催した。

 同ツアーは、今年8月に発表した6曲入りEP『VIVA LA MUSICA』を携えて、9月8日のZepp Shinjuku(TOKYO)から出発したもの。最終的には、石川・兵庫での追加公演を含めて、全国16都市を巡る、バンド史上最大規模の旅となった。そのうち、本稿で紹介する埼玉公演は、11月29日に兵庫・神戸で迎えた千秋楽に先駆けて、実質的には首都圏でのツアーファイナルに。チケットも早々にソールドアウトするなど、メンバー、ファンともに気合い十分で臨んだ同公演について、改めてその模様を振り返りたい。

開幕曲はおなじみ「仁義なき戦い〜Dance You, Matilda」。CÉSAR(Gt.)、LUTHFI(Ba.)、そしてサポートメンバー陣が登場すると、フロントマンであるLEO(Vo)の降臨を、いまかいまかと期待させるべく、演奏のボルテージが上がっていく。すると、衣装をダークトーンで統一したステージに唯一、真っ白なジャケットを纏ったLEOが姿を現す。ライブ開始早々、ビジュアルもスキャットも艶やかで汗ばんでいるような印象を放てば、楽曲終盤には人差し指を天に向け、バンド隊の音に合わせて、何度でもポーズを決める。どれだけ決めれば気が済むんだ、というくらいに惜しみなく。

さて、この日の会場キャパシティは、およそ350名。フロアの広さは学校の教室を一回り大きくしたほどで、開演前から人も熱気もパンパンに詰まっていたし、なによりメンバーが目の前に迫り、誇張抜きで情熱をぶつけあえるほど、とんでもない至近距離である。もちろん、ステージの上も所狭し。下手から順に、あっきー(Tp.)、YOSHIO(Tb.)、黒川和希(Sax.)、BOBO(Dr.)、NADIA(Cho.)と、ALIの3名を入れて合計8名もが並んでいた。この規模のライブハウスではなかなか見ない光景だった。

そうした至近距離ゆえのスリリングさを味わえたのが「仁義なき戦い〜Dance You, Matilda」など。LEOがマイクスタンドを持ち上げて軽く振り回すと、横にいるLUTHFIや、彼の弾くベースをすれすれの距離感でかすめる。

さらに、ラテンな雰囲気の“タオル曲”こと「WILD ANGEL」では、演奏開始からすぐにメンバー全員が跳びはね始めたのだが、LEOがタオルを横……ではなく、今度は縦方向にぶん回し、最後には一度は床に置いたタオルを拾い上げたかと思えば即、フロアに投擲(まだ2曲目なのに)。曲中に挟んだ「“VIVA LA MUSICA”へようこそ!」という、“歓迎ムード”も桁違いな挨拶、そして次曲「FEVER」にて、マイクが顔からほとんど離れているはずなのに、彼の叫んだ「行くぞ!」や曲中での雄叫びがなぜかダイレクトに耳に届いてきたことを含めて、最高すぎるシーンの連続だった。

そこから、ステージに立つ全員が揃って軽やかなステップを踏んだ「I Want A Chance For Romance」などで感じたこと。こうしたメンバーとの距離感が近いライブは、盛り上がることが専売特許でありながら、同時にその一点突破になりがちにもなる。終演後、“楽しかった”という感覚だけが残り、当時の光景がぼんやりとしか思い出せない経験をしたことがないだろうか。一方で、ALIのライブはどうしてか、要所ごとのシーンを明確なくらいに思い出せてしまう。

理由はなぜか。おそらく、例えば「I Want A Chance For Romance」のイントロやAメロなど、楽曲が比較的に穏やかになるタイミングで、メンバーがまるでユニゾンで歌を奏でるように、全員が振りを揃えた動きを見せてくれるからだろう。それも、ただステップを踏んで揺れるのではなく、ときには上手や下手の方に体を90°回転させて、フロント・バックステップを踏む。まるでサーカスのような演出は、非常に記憶に残りやすいし、なにより常に艶やかなALIが魅せるそれは、これ以上ないくらいに“画になる”。

もちろん、これは別に今回に限った話ではなく、大型ライブハウスなどでも同様。ただ、スーパースターが目の前にいる迫力を加味すれば、記憶に鮮烈に刻まれることも想像できるはず。こうした全員ユニゾンでの振りは、彼らのライブを語るうえで欠かせない要素であり、本当に“画作り”の巧みなアーティストだと思わせられる。

ライブ中盤以降は、LEOがMCで予告した通りの駆け抜けるような展開に。ミラーボールに、心地よいファンクテイストがよく似合う「LONELY LONELY」、この日唯一、フルコーラス尺をダークピンクな照明で彩った「THE SWEETEST TABOO」を披露し、この時点で「Funky Nassau」のみを残して、『VIVA LA MUSICA』全収録曲のうち5曲を使い切る。「Dance Freak」では、NADIAがステージ上手からフロントに登場し、LEO、ほかメンバーとともに、フロアの熱狂的なダンスを煽った。

また、バンド結成当時に制作した「Bonnie」は、NADIAの気怠くレイドバックしたラップと、LEOのメロウなメロディが交わるR&B。夜の首都高速を思わせるような歌詞がときおりに焦燥感を抱かせつつ、LEOが遠くの方に眼差しを向けて、過去を懐かしむように歌い上げる。続けて「ツアー中に気づいたことがあって」と、「(BUT) WONDERFUL」を歌唱。目の前にある道に光が射し、視界が少しずつ開いていくような照明演出と歌詞。それらはこれまでのバンドの道のりと重なり、まるで“祝福の歌”のように鳴り響いていた。

「忘れられない出来事。去ってしまった友人。それでもオレは思う。続けていることがいちばんカッコいいと思うし、いまこの瞬間がいちばん美しいと思う。この曲を歌わせてくれてありがとう」。最後まで、LEOが“気づいたこと”の全貌こそ明かされなかったものの、なにかを感じた人もいるだろう。その想いをぜひ大切にしてほしい。

15曲目「Wild Side」は、会場全体が期待していた一曲。というのもライブ冒頭、フロア後方にいたファンから“とあるメッセージボード”が掲げられていたからだ。そこに記されていたのは、イタリアから「Wild Side」を聴きに来日したという熱い想い。お待ちかねのイントロにあわせて、LEOがフロア後方を指さすと、件のファンも大歓喜である。NADIAとともに、どこかダウナーで、ラフな感じのマイクパスをするなか、ボーカルにボコーダーをかけたり、ジャズテイストにビートスイッチをしたりと、次々に変わる展開がフロアを飽きさせない。

「全員で滅茶苦茶になろうぜ。タオルを持ってる奴はぶん回して。持っていない奴も体ぶっ飛ばしていくぞ!」。本日2回目の“タオル曲”こと「FIGHT DUB CLUB」では、再びラテンの血が騒ぎ出し、両手を広げながらボックスステップを踏むLEO。「こんなんじゃ関東ファイナル終わんねえぞ!」と、最後まで我々をブチ上げてくれる。

そんな最高のラストパスを受けて演奏されたのが、バンドを今日の知名度まで引き上げた代表曲「LOST IN PARADISE」。AKLOのバースはNADIAが担当し、曲中には〈Tokyo prison Going to relight your feelings〉の“Tokyo”を即興で“Saitama”と歌い変える場面も。満を持してのパフォーマンスに、フロアの手を振るときの統一感もひとしおだった。

ALIの勢いは、アンコールでも止まることを知らず。むしろ、メンバーの眼光がライブ序盤よりも鋭くなっている気さえしたし、ライブをもうひと回しするなんて言われても、思わず信じてしまいそうになるくらいのエネルギッシュさ。それを証明したのが、LEOが「TEENAGE CITY RIOT」で使った“マイクスタンド”。途中、楽曲が盛り上がるタイミングで、マイクスタンドを“ゴン”という鈍い音とともに、地面に対して垂直に沈ませると、自身の肩の高さに合わせていたのが膝の部分までに。有り余るバイブスが対照的に、マイクスタンドの“低さ”に表れていた。アンコールで空気が緩むありがちな展開なんて、ALIには通用しない。

最後のMCでは、「みんなそれぞれ、見えない血を流したり。見えない棺桶を引きずって生きていたり。オレら以上にタフな環境っていうのが滅茶苦茶あって。それでも音楽に生きる意味があるんじゃないか。この世界を美しいって思える理由があるんじゃないかって思って、みんな(このライブに)来てると思う」と、LEOが情熱的に、かつゆっくりと説く。

そんな言葉に続いたのは、この時代を生き抜くための盛大なエール。「何もかもうまくいかねえ。そのときは、またオレたちんとこに会いに来てくださいよ。オレが、お前らの悲しみ、怒り、オレが音楽で何度でも何度でもぶっ飛ばすから。殴られても、殴られても痛くねえ音楽でおれがぶっ飛ばすから。“離れて頑張れよ”じゃなくて、一緒に生きようぜ」。

どこか満足げな表情で、次のライブへと旅立つ準備をするかのよう。ラストチューン「Funky Nassau」を演奏するにあたり、今年2月まで開催された前回の全国ツアー『ALI 1st Album Release Tour - MUSIC WORLD-』を経て、「これが、“音楽万歳”を掲げたツアーのなかで見つけた、最先端の答えです!」と、この楽曲にかける想いがぶつけられた。その言葉に違わず、最後に改めて「音楽万歳!」のスローガンを宣誓。瞳を閉じて、腕を大きく広げ、CÉSAR、LUTHFI、そして数多くのサポートメンバーとともに、LEOがフロア全員からの拍手を一斉に受ける。

往々にして、“説得力”なるものは、形をもって目には見えないわけだが……2023年10月29日、埼玉。さすがにこの日ばかりは誰も否定できなかったに違いない。“目に見える説得力”が、間違いなくそこにはあった。

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