三阪 咲のワンマン「Saki Misaka LJK GRADUATION LIVE ~夢のZeppで卒業式するってよ~」が、3月6日、KT Zepp Yokohamaで開催された。

ライブタイトルにあるLJKとは、“ラスト女子高生”だそうで、メジャー1st EP「I am ME」でのインタビューでも公言していたとおり、高校生のうちにZeppのステージに立つという、彼女にとって叶えたい夢のひとつが高校卒業というタイミングで実現したことになる。

卒業式当日の校内だろうか。高校生活の思い出を反芻するように制服姿で教室や廊下を巡ってゆく三阪の映像から、1曲目の「今だけは好きなものを好きでいたい」へと繋いだオープニングが、この日のKT Zepp Yokohamaに卒業式然としたムードを運ぶ。

「第98回全国高校サッカー選手権大会 みんなのアンセム」だった「We are on your side」はライブセットでも当たり前のようにアンセミックに響いていたし、「キミに会いたくなるんだよ」の歌いだしで、まっすぐ前を見てマイクスタンドを握った立ち姿や、けれんみのないラフなシャウトも好ましく感じられた。

オートチューンを効かせたボーカルと、きらきらとしたシンセ使いがよく似合う「ヒラヒラ」は、タオルまわし曲だ。間奏で湧きおこった客席のクラップに、ステージの三阪にも笑顔が弾ける。ケイティ・ペリーやカーリー・レイ・ジェプセンあたりの洋楽パーティチューンを思わせる「StaRting PoiNt」では、ダンサーチームと息の合ったパフォーマンスを披露した。

ライブ中盤の、推しをダンナと呼び合うガールズトークをモチーフにとった「DANNNA」と、ASOBOiSMが詞を提供した「Get Stronger」は、トラックもビートもR&Bやブラックミュージックからの影響が色濃く、「I am ME」でのメジャーデビューを機に、三阪自身の洋楽志向をよりストレートに作品に落とし込んでいることが見て取れた。

ABEMAの恋愛リアリティ「今日、好きになりました。」のテーマソングをメドレーに仕立てたアコースティック・セッションはこの日の白眉。穏やかに響く低音パートからハイトーンで歌われるサビへの展開がドラマチックな「Say Good Night」、サッドソングなのにやさしさに満ちた「僕でいいじゃん」、情感豊かな歌声と客席のクラップが混ざり合った「私を好きになってくれませんか」は音数の少ないアレンジも素晴らしかった。三阪いわく「アルバム『INDEIS PERSONAL BEST』のジャケットのイメージをライブに再現できないかということで、お部屋っぽく」というステージセットも雰囲気づくりに一役買っていたのではないだろうか。

そのアコースティック・セットでさらにもう1曲「My Type」をプレイ。こちらはTLCやフージーズのような1990年代R&Bマナーが香るナンバーだ。

セットチェンジと全国高校サッカー選手権大会のドラマチックな映像のインタールードを挟み、「繋げ!」で10代の輝きを歌い上げ、アップテンポなバンドサウンドがここちよい「友よ恋よ」、タイトルどおり底抜けに明るくてディスコティックな「Bling Bling」と続けた。

バンドメンバーがステージを降り、ひとり残った三阪。「昨年10月、地元大阪の梅田Trad公演でメジャーデビューを発表して、そのときに、変化ではなく進化していきたいとう話をさせてもらいました。今日のライブで何か挑戦している姿を見せられるかなと考えて、ピアノを弾かせてもらうことにしました。先生方がいろいろと手を尽くしてくださって、無事に卒業式ができました。自分は高校に毎日行けてたわけじゃないけど、友達が私の居場所を作ってくれていたおかげで、こうやって自分の活動をがんばって続けることができました。今回はピアノで何を弾こうかなって考えたんですけど、中学校の卒業式で歌ったゆずさんの「友 ~旅立ちの日に~」を弾こうと思います。いま聴き返してみても、心が苦しくなったというか、歌詞のとおりの気持ちが自分のなかにあふれているなと思ったし、心を代弁してくれる曲だなと思ったので」と告げてから、ピアノ弾き語りでゆずの「友 ~旅立ちの日に~」を披露して本編を締めくくった。

アンコールのMCにあった「未来の自分は、皆さんといっしょに上のステージに行きたいと思っています。今日ここに立てていることが、当たり前だなんて1ミリも思ってないし、これからもっともっともっと大きいステージで、でも心の距離はもっと近くで。そんなアーティストになりたいなと思っていますのでこれからも応援よろしくお願いします」という彼女の言葉には、大阪のストリートで歌っていたころと変わらないまっすぐな気持ちが宿っているように思えた。

“夢のZepp”のフィナーレに舞った桜の花びら。その光景に笑顔を弾けさせた三阪 咲。彼女が次に叶えるのはどんな夢だろう?

この日のライブの模様は3月26日から「uP!!!」で配信される。

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/Kayo Sekiguchi

LIVE INFO 三阪 咲「Saki Misaka LJK GRADUATION LIVE ~夢のZeppで卒業式するってよ~」Live Streaming

2022年3月26日(土)~3月31日(木)@uP!!!

uP!!!

三阪 咲「I am ME」

2021年11月1日(月)配信
アリオラジャパン

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