Cö shu Nieの全国ツアー「Cö shu Nie Live Tour 2023 unbreakable summer〜」のファイナル公演が930日、東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて開催された。

昨年の「Cö shu Nie TOUR 2022 "Flos Ex Machina"」以来約1年半ぶりとなる、計9公演の全国ツアー「unbreakable summer」。

2024年秋のリリースが予告されている次作アルバムに向けて、新たなイメージを提示し続けるCö shu Nieの創造性が、熱く奮い立つライブバンドの野性と渾然一体となって、美しくも凄絶なロックアートを生み出していた。

「あなたを、『終わらない夏休み』に閉じ込めた」……古き良き夏の風景を思わせる、提灯台と格子戸が設えられた舞台に、中村未来(VocalGuitarKeyboardprogramming)の静かな声が響く。

6月にリリースされた配信シングル「no future」の《終わらない夏休みが欲しい》の一節に織り込まれた感情がそのまま具現化されたような、秘めやかで濃密なライブ空間の幕開け。ソールドアウト満場のオーディエンスの熱気が、9月の終わりとは思えないこの日の暑さと相俟って、冒頭の「絶体絶命」から会場はスリリングなほどの高まりを見せていく。

これまでバンドセットでは3ピース編成でライブを行ってきたCö shu Nieだが、今回のツアーでは中村未来&松本駿介(Bass)のメンバー2人に加え、今年5月からサポートを務める大津資盛(Drums)、さらに今回のツアーで初めてサポートプレイヤーとして参加するbejaPianoGuitar)を迎えた4人編成でステージに臨んでいた。それによって、Cö shu Nieのライブが新次元の輝度とさらなる躍動感を獲得した――ということは、bejaの鮮烈なピアノの音色が「絶体絶命」の硬質なベースラインに絡んだ瞬間、「SAKURA BURST」でのバンドの獰猛なグルーヴが中村の麗しのファルセットと共鳴した瞬間、この場にいた誰もが感じたはずだ。

「『unbreakable summer』全9公演のファイナル・東京、絶対的に美しい時間にします」という中村の言葉を挟んで、ハンドマイクスタイルで「undress me」、さらにギターブースに移動したbejaとともに「病は花から」を披露。

中村が編み上げた緻密なアンサンブルを、一人二役の活躍で体現していくbeja。ツアーを経てタフに鍛え上がった松本&大津のビート感。唯一無二のバンドの極限進化ぶりが、Zeppの空間に熱いクラップを巻き起こす。

「今、アルバムを作りながらツアーを回っていて……『わたしたちは自分に重荷を課しすぎてるんじゃないかな?』って思う時があって、『そのままの自分を、もっと深いところで愛せるようになりたいな』と思って作っているアルバムです。その第1弾の曲です」

そんな中村の言葉に導かれて流れ込んだのは「no future」。《何もしたくない 何も意味ない》という気だるい、しかし誰の日常にも身近にある心象風景を、ディープでエクストリームな音像に昇華した楽曲が、会場の没入感をよりいっそう強めていった。

今は亡き大切な人への想いをストレートなロックに重ねた「夏の深雪」。インディーズ時代からの楽曲を格段にダイナミックに響かせてみせた「ペリカン号でどこまでも」「supercell」。「夏って、私は寂しい思い出が多くて。

夏が来るたびに何度も思い出して――私自身が、夏にずっと囚われています」と述懐する中村に続けて白昼夢的な音世界を繰り広げた「家」「Shiki」「butterfly addiction……

ジャンルに縛られず多彩なサウンドを展開するCö shu Nieのライブは、いつも聴く者の心の奥底の、誰もが必死に隠している弱さや痛みに寄り添ってくる。

「みんなが苦しかったり寂しい時に思い出してもらえるようなバンドでいたいな、って思ってます」と語りかけ、「尊い時間を重ねて、生き辛いことがあっても、一緒に生きていく同志だと、みんなのことを思っています。

10年後も20年後も、こうして音楽で、ずっと繋がっていられますように」という願いとともに放たれた「青春にして已む」の《ただ生きてて欲しいの》の熱唱が、会場一面のハンドウェーブを呼び起こしていた。

中村がピアノを弾き、bejaがアコースティックギターを構えて演奏したのは「give it back」。中村の切実なファルセットが、ミラーボールのきらめきと乱反射し合い、至上の時間を描き出していた。

「この『終わらない夏休み』は、すごくロマンティックで。いっぱい笑ったし、ちょっと泣いたし……たくさんのことがありました」と感慨深げにツアーを振り返る中村。続けて、「ライブをやると、もっとライブがしたくなる。

というわけで……1113日から、2ヶ月に1回、Cö shu Nie presentsUnderground』というイベントを開催します!」と告知すると、場内からひときわ大きな驚きと感激の声が沸き起こる。

「『こしゅあん』って呼んでるんだけど……こしあんみたいで可愛くない?」の中村の声に熱気が和らぎ、拍手喝采が降り注ぐ。

「悪夢を見続けた日々から抜け出せたのは、自分の過去に向き合ってこの曲をつくったからでした」という紹介から「asphyxia」に流れ込んだところから「bullet」「永遠のトルテ」へ――とライブはさらなるクライマックスへと昇り詰めていく。

そして、「アルバムを作ってるんですが、その2曲目が完成しました! 『Burn The Fire』という曲です。何かあった時に、まず自分を責めるのはもうやめたいなって。感情を爆発させられるようなことが大事だと思って」という中村の言葉とともに、新曲「Burn The Fire」を披露。

Cö shu Nie史上最もハードエッジでハイパーな、アリーナ級のスケール感を想起させるロックナンバーが、満場のオーディエンスの魂を重力から解き放ち、高々と拳を掲げる中村に応えて会場一面に高々と拳が突き上がる。

中村&bejaのツインギターが唸る「フラッシュバック」でZeppの熱量をさらに高めたところで、「みんなが今夜、あたたかな眠りにつけますように」という中村のメッセージを添えて響かせたのは「迷路〜序章〜」「迷路〜本編〜」。

物憂げで謎めいた音の渦の果てに、雄大なバンドアンサンブルの絶景を切り開いて、ツアーは最高のフィナーレを迎えた。

no future」に続く新作アルバムからの第2弾楽曲「Burn The Fire」は、1018日に配信リリースされることが決定。

そして、「クリエイターやファンと共に独自のシーンや世界観を創り上げていこうとする試み」である自主企画イベント「Cö shu Nie presentsUnderground』」の初回「vol.1」は1113日、渋谷WWWにて開催される。

初回は通常のライブのほか、創作における秘話などを語るトークイベントが予定されている。

SET LIST

01.絶体絶命
02.SAKURA BURST
03.undress me
04.病は花から
05.no future
06.夏の深雪
07.ペリカン号でどこまでも
08.supercell
09.家
10.Shiki
11.butterfly addiction
12.青春にして已む
13.give it back
14.asphyxia
15.bullet
16.永遠のトルテ
17.Burn The Fire
18.フラッシュバック
19.迷路〜序章〜
20.迷路〜本編〜

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