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2020.01.31

記事を通して見えてくる世界観~セレクトショップ・ウェブマグを探る~

直接的な商品紹介やECへの誘導だけではなく、カルチャーや世界観を表現し顧客との接点を広げ新たなファンを創造しているシップス、アーバンリサーチ、デイトナ・インターナショナル3社のセレクトショップ・ウェブマグから、その独自性と共通理念を紐解いていく。

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シップス編「SHIPS MAG(シップスマグ)」

シップスが多角的に見えるコンテンツを発信

シップスにまつわるヒト・モノ・コトを紹介してきたシップスマグは2011年にスタート。セレクトショップのウェブマグの走りであるシップスマグについて企画編集に携わる販売促進部プレスの成瀬涼子氏に話を聞いた。「当初は売りを意識するということよりもシップスユーザーではない方にもシップスを知っていただくきっかけ作りとしての側面を持って始まりました。それまでシップスを表現するものといえばカタログしかなかったので、届けられる情報は限られていました。シップスマグは、シップスの価値観や扱う商品をより深く知ってもらうためのツールでありその根底は今も変わらない」。これまで3000以上の記事をアップしてきたシップスマグのコンテンツはシップスの商品が中心にはなっているが、カタログ的に見せるだけでなくユニークな切り口から表現をするなど、さまざまな視点からシップスが多角的に見えるような発信をしてきた。

ピープル・ファッション・シングス・スタイルブックの4カテゴリーをベースに展開するシップスマグ



「洋服を通じて生活を豊かにしたいという想いはライフスタイルやカルチャー、音楽にも紐付くところ。そういう面からアーティストやデザイナーさんなど著名な方に登場いただく記事もあります。反響は大きくファンの方々にシップスを知っていただくきっかけにもなりましたね。中でも長年やらせていただいているのは、プロモーションに参加していただいたクリエイターを皮切りにその方のお友達でリレーしていくという、まさに『笑っていいとも!』であったテレホンショッキングのようなスタイルのインタビューや、桑原茂一さんを軸に毎号ゲストをお招きして生き方を学ぶ対談の連載などで、とても面白いコンテンツになっています。シップスマグで出会えた方はたくさんいますので、そういう人たちが集まったイベントを開催したり、リアルに繋がるような展開ができたら良いのですが、実際にはまだそこまで至っていないですね」と成瀬氏は続ける。連載はシップスマグの中でも別格の存在で、深みを与えてくれる特殊コンテンツといえる特別なものだという。

人気連載「注目アーティストの友だち巡り」



シップスマグは2018年の11月にシップスのホームページとECサイト、シップスマグの3サイトを統合。シップスマグはオーガニック検索からの流入が多いもののECサイトユーザーの方にシップスマグの記事を届けられるという意味で良い場所で展開している。昔から企画構成・編集は社内のプレスチームが担っており、フォーマット化せず記事ごとに違うデザイン入れも行うこだわりがある。シップスマグの歴史は長く、参加したいというスタイリストもいるそうで雑誌のようにさまざまな企画を展開できている。 来年10周年を迎えるシップスマグは今春新たな局面を迎える。「レーベルの統廃合」「シップスマグコンテンツの充実」という観点から3月中旬にリニューアルを予定している。シップスにまつわるヒト・モノ・コトを紹介するという当初からのコンセプトはそのままに記事数を絞りシップスマグにしかできない深掘りした丁寧な記事を増やしていく。ECを意識した記事作りは社内のデジタルマーケティングチームが運営しており、そこで発信されているライトな記事との差別化を図る目的もあるという。「販促としての発信に変わりはないが、ただ単純に商品を紹介するのではなく今まで以上に伝え方に厚みを持たせ、シップスの価値観を深く理解していただくためのコンテンツ作りに注力していきたい」と成瀬氏。今年デビューした「SHIPS any(シップス エニィ)」は単独サイトを立ち上げたこともあり、シップスマグはシップスのメンズ、ウィメンズ、キッズのみを取り上げていく。

アーバンリサーチ編「URBAN RESERCH MEDIA(アーバンリサーチメディア)」

チャンスが次に繋がるような情報プラットフォーム。

現在のアーバンリサーチメディアの前身として2018年4月にスタートした「URBANTUBE(アーバンチューブ)」。面白い情報がただ流れてくるSNSを見ていた時にもう少し続きが読みたい、それらをアーカイブとして見られるプラットフォームを作りたいという気持ちがきっかけで始まったと教えてくれた編集長の齊藤悟氏。「7、8年前になるのですが、各都市を考察して「アーバンという言葉について考察する」というコンセプトブックをカタログ代わりに作っていた時期があって。当時は今のようにスマホが進化していなかったのですが、時代が変わり弊社もウェブサイトやECに力を入れだしました。ジャパンメイドというシリーズをやっていたこともあり、地域との取り組みやその街を深掘りして商品として繋がっているものをピックアップしたり、コンセプトブックでやっていたような都市を考察するものからウェブマグを始めることになりました。会社にアーバンチューブの企画を提案した時、弊社の代表にランダムにピックアップした雑誌と機内誌の『翼の王国』だったらどちらを読みますかと問いかけたところ後者を選んだ。自分自身も90年代に『リラックス』を読んで育った世代で、あの時代のニッチなカルチャーや誰かわからないけど面白いと思える人選感に影響を受けています。著名人じゃなく有名無名問わない方のコラムでメジャーではなくニッチで濃い内容でちゃんと読みたくなるようなものにしたかった」という。

2013年までアーバンリサーチが手掛けていた都会を考察するコンセプトブック

2018年4月にローンチしたアーバンチューブ



「アーバンチューブは他社のウェブマグに比べるとメジャー感が足りないなとか、インディーくさい感じはちょっとだけ取った方がいいかなと感じることはありました。コラムに関しては始まってからやりたいと言ってくださる方もいますが、基本は知り合いからのスモールスタート。しかしながら、社内ですべてを担っていると、どうしても記事に偏りが出てしまうという。そこで昨年10月にレディス部門は小学館と協業し、メディア複合型サイトとしてアーバンリサーチメディアとしてローンチ。小学館との取り組みの始まりはアーバンリサーチで取り扱っているブランドが小学館の『Oggi』との付き合いも多く自社と相性が良いこと、社内の編集チームの女性スタッフが小学館出身ということもあり、クイックに話ができスムーズにことが進んだことにあるという。 今後の課題としては、動画を含めたエンタメ性のあるコンテンツを開発し、10代とか大学生くらいの子が読んでも面白いものをやっていかなくてはと感じています」と齊藤氏。

現在のアーバンリサーチメディアのトップページ



現在はメンズ部門も出版社と協業を進めており、春くらいには発表しスタートできるように取り組んでいる。今までの「メディアに出稿する」という考えではなく、自社に出版社と取り組んだエディトリアル機能を持たせたプラットフォームは、自社製品の紹介を直接的なものでなく幅広い視点で表現できる。アーバンチューブがやってきたコラムもサイト内で継続しており、小学館の担当者からの評判も良く、コラムを切り取り書籍化していくようなチャンスなど次に繋がるような情報プラットフォームを目指している。当初ブランディングとして始まったアーバンリサーチのウェブマグの次のステップは、アーバンリサーチのファンになってもらいECで買ってもらう筋道を立てていくこと。今春いろいろと動き出すというメンズメディアの展開や「メジャーであるECという土台に対して、メディアの持つサブカルチャーのエッセンスがどこまで上手く溶け合えるのかいろいろとチャレンジしていきたい」と語るその動向に注目していきたい。

デイトナ・インターナショナル編「FREAK(フリーク)」

形態を限定しないフリークの在り方

2019年にマガジンから始まったフリークス ストアや2G、ファーストハンドを運営するデイトナ・インターナショナルが展開するコミュニケーションメディア『フリーク』。コンセプトは、様々な事業展開を通じて出会った熱狂的な人びとの熱量やクリエイティビティー、世界各地の魅力的で豊かなカルチャーを発信していくこと。自分たちの視点からセレクトショップ本来の姿をあらゆるカタチで発信したいと、自ら企画提案したというデイトナ・インターナショナルのPR・マーケティングディレクター清宮雄樹氏に話を聞いた。「フリーマガジンから始まったフリークの創刊号は長野特集でした。ローカルが持つ独自の価値観が面白い有機体だと感じることも多く、グローバルというのはつまりローカル to ローカルの延長上にあるものと考えました。フリークス ストアは地方にも多く店舗展開をしているので、今までもローカルに根付いたお店の作り方をしながら地方活性化に繋がるような面白いことをやってきたけれどすべてが点で終わっていたんですよね。この動きをちゃんとカタチにしていくために、まずはローカルにフォーカスした特集企画でスタートしました。特別ローカルにこだわっているわけではなく、あくまでもコンセプトは熱狂的=フリークなヒトやモノやコトをきちんと紹介していくこと。それこそがセレクトショップの原点回帰なんじゃないかと思っています。全国のご当地ものを東京に集めるというやり方じゃなくて、地元ローカルからの発信でそのひとつひとつの現場を面白くしていきたい」と語るその取り組みはセレクトショップが手がけるマガジンという考えをはるかに超えるもので、社内に編成する編集チームのフィルターを通して、フリークだと思うヒトやモノやコトを追求し、実際に会いにいくという。創刊号の長野特集では、過去にオリジナルラベルの日本酒をコラボレートしたこともある昭和59年度生まれの長野県の酒蔵跡取り5人からなるユニット「59醸」を訪ね取材。それだけでなくフリークス ストア長野店で行われたフリークのローンチ記念イベントでは、フリークス ストア限定の日本酒をケータリングとして提供。また同号で誌面に取り上げた古民家ダイナーのフードも振舞われたという。単なるコラボレーションだけで終わらず、誌面で紹介し、ノベルティー製作やイベントケータリングなど、継続して取り組むことで本当の意味での地元活性化にも繋がっている。

フリークのマガジン創刊号は長野特集(左)、2号目は大阪特集(右)

フリークス ストア長野店で行われたフリークのローンチ記念イベント時のウインドー

フリークのオリジナルグッズも製作している



「業界の方も多く見てくれていて、地方自治体から一緒にやりたいと声も掛けていただいています。そもそもオススメのショップを紹介するようなローカルブックをやりたかったわけではなく、人の琴線に触れるような熱量を持ったユニークなカルチャーや誌面で追いきれない情報をウェブで紹介していた。フリークは、形態を限定しない存在。メディアを限定せずイベントも商品もブランドとのコラボレーションもそうですが拡張性を持たせています。これまでにもインディペンデントマガジン編集者とのトークイベントやこだわりを持ったローカルブリュワリーとの商品コラボ、ライブベントなど、幅広いメディアとしてフリークを展開してきました。今後も実験的に自由にいろんな価値を発信していきたい」と清宮氏。

フリークのウェブサイトのトップページ。マガジンで取り上げきれない情報をウェブで展開している



現状フリークのウェブマグは、デイトナ・インターナショナルのコーポレートサイトの中に位置しているが、今後は、独自のドメインで切り離していく考えもあるとか。「他社のセレクトショップとは違って、フリークにはECと連動したアプローチは基本的に何もない。社内から商品を紹介して欲しいと言われても断っているんですよ。買うために見てくれるユーザーと情報を見てくれるユーザーでは知りたい内容や情報に対して求められることが違うので、消費者の方が得たい情報と物を買うためのプラットフォームは分けています。私たちはファンマーケティングをキーワードにしていて、共感者をどれだけ作れるかがミッション。顧客だけでなく自社の販売員もそうですが、どれだけ会社を好きになってくれるか、共感者を増やしていけるかでフリークはそのフック。直接的な消費に繋がらなくてもデイトナ・インターナショナルにとって良いイメージを持って貰えたり、我々の考えを理解してもらえるということには、ものすごい価値があると思っています」。3ヶ月に1回の頻度で発行しているマガジンはすでに次の企画も動き出しており、次号は5月下旬に【TOKYO】特集を予定している。





早くからウェブマグを手掛けてきたシップスマグは、長年積み上げてきた実績をもとにより深みを持たせたコンテンツで勝負していくフェーズを迎え、アーバンリサーチメディアは出版社と協業をすることでインディー感ある記事とのバランスを取りながらプラットフォームを広げ、次のチャンスに繋がるような取り組みを目指している。さまざまな視点から幅広い展開をもたらすフリークは、メディアに限定せず拡張性を持たせることで自由に共感者を増やしていけるフレキシブルな存在だ。3社共通していえるのは、ウェブマグを通じて独自が考える価値観やイメージをあらゆる表現で訴求し続けていること。ECへの導線に対する意識やその発信に対する考え方は各ショップでさまざま。世に溢れるものだけでなく、情報の取り上げ方にもセレクトショップの原点を思わせてくれる

(おわり)

取材・文/成清麻衣子

成清麻衣子(なりきよ まいこ)
文化服装学院卒業後、PR会社を経て独立。媒体執筆の他、PR経験を活かした企業のコンサルティング業務、プレスリリースやウェブサイトのライティング、カタログ制作も行う。





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