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「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」by SMART USEN



[section heading="ゲストスピーカー"]

松重 健太(まつしげ けんた)
山口県出身 1988年生まれ(31歳)。エスモード大阪在学中に、神戸ファッションコンテストにて大賞受賞。その後パリの パリ・クチュール組合(通称サンディカ=La Chambre Syndicale de la Couture Parisienne)校に留学。同校を卒業後、ジバンシィ(GIVENCHY)、ディオール(Dior)、ジャンフランコ スコッティ(Gianfranco Scotti)、アン・ヴァレリー・アッシュ(Anne Valerie Hash)など名門ブランドで経験を積む。2014年、南仏イエールにて開催された若手ファッションデザイナーの登竜門として知られるイエール国際モード&写真フェスティバル(International Fashion and Photography Festival of Hyeres)でグランプリ受賞。2015年春夏から自身のコレクション、ケンタ マツシゲ(Kenta Matsushige)を発表、パリを拠点に創作活動を行っている。 自身のデザインは、ミニマルでクリーンな美しさを特徴としながら、詩的で繊細なフォルムを構築的に表現することにも長けている作品となっている。2020年春夏からハナエモリ(HANAE MORI)のデザイナーに就任。

[section heading="モデレーター"]

樋口真一(ひぐち しんいち)
ファッションジャーナリスト。業界紙記者として国内外のショーや展示会を中心に、アパレル、スポーツ、素材、行政などの分野を兼任し、ファッションジャーナリストに。コレクションを中心に、スポーツブランド、アートや美術展など様々な分野を手掛けている。コレクションなどの撮影も行っており、NHK BSプレミアム渡辺直美のナオミーツ、森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」カタログなど、メディアや出版物にも写真も提供している。

encoremodeコントリビューティングエディター 久保雅裕
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。2019年、encoremodeコントリビューティングエディターに就任。



――伝統あるブランドのデザイナーに指名されたときに、どんなことを考えましたか。

「純粋に楽しそうだなと思いました。昔はパリのアベニューモンテーニュにお店がありましたし、日本人でクチュール組合に唯一加盟していたブランドですから。もう一回、それぐらいの思いに持っていきたいと思いました。純粋にワクワクできるブランドにできたらいいなという感じが強かったです」

――自分のブランドもありますし、話が来たときに迷いなどはありませんでしたか。

「いや、迷いは特にありませんでした。本当に、とりあえず楽しそうだなと思ったら、やろうという人間なので。そっち(楽しそうという気持ち)を優先した感じです」

――先ほども少し話が出ましたが、ハナエモリというブランドについてはどのようなイメージを持っていましたか。

「ハナエモリは日本が誇る唯一のオートクチュールブランドだということは知っていました。ただ、現状、日本ではどうなのか、どういうビジネスをしているのかなどは知りませんでした。パリでオートクチュールコレクションをしていた頃のことしかわからなかったので、花や蝶などの自然のモチーフやシルクを使いながら、軽やかさと強さを併せ持つブランドというイメージでした」

――アーカイブや資料は調べましたか。

「就任に当たって、森英恵さんのアーカイブ作品を見て、モチーフに現れる生命に対する慈愛のようなものが見えてきました。また、これまでのコレクションを見て、"あっ、この時は迷われていたのかな"とか、いろいろなことを感じました。僕は、女性のデザイナーはどちらかと言えば"自分が着られる"とか"自分が着る"とかいうことを主体にしているというイメージを持っていましたが、本を読んで、森英恵さんは"人に着せたい、着てほしい"ということを第一に考えてデザインしていたということも知ることができました。僕自身、男性デザイナーですし、"男として女性に着てもらいたい、人に着せたいものをデザインしていけばいいのかな"と思っています」

――就任して内部から見て、イメージは変わりましたか。

「どうですかね。僕はフランスでしか仕事をしたことがなかったので、日本とフランスの違いは感じていますが、ブランドに対するイメージは変わっていません。日本とフランスでやっていて仕組み作りをすることや文化の違いを理解していくことが今後の僕の課題だと思っています」

――もう少し、わかりやすく日本とフランスの違いについて説明していただけますか。

「やっぱり、フランスにはクリエーションに対する強い思いがありますし、仕組み自体も分業体制というか、一人一人が自分の仕事をこなしていく。日本はどちらかというと一人一人のデザイナーが1着の服を完成させていくのに対して、フランスではみんなで協力して、分野ごとに分業で作っていく。そのあたりの仕組み作りもしっかりやっていかなければと思っています」

――ところで、松重さんは日本とパリの学校に行っていますが、それぞれの学校で学んだことや違いについては。

「うーん、どうなのでしょう。僕は日本ではエスモード大阪校に行きましたが、デザイナーの先生がフランス人でした。その先生は生徒以上に熱心で、僕はその先生が大好きで、トレンドリサーチを誰よりもしているような人だったのですが、僕は今もリサーチをしっかりしなければと思っています」

――エスモードではどういうことを学びましたか。

「エスモードで学んだことは大きいと思います。頭で考えるというよりも、実際に手を動かして、それを見ながら判断していくというデザインプロセスを学びましたが、それは今も結構使っています。自分の頭の中には無い何かを探すということはエスモードで教わりました。パリのサンディカでは、そのデザインをどう見せるのか、どういう風に広げていくのか、もっともっと洗練させていくためには、どこを確認して、どこを削るのかなどを学びました」

――それは今も役に立っている。

「役に立っていると思います。自分自身、形作りにこだわっているデザイナーですし、フランスで勉強できて良かったと思っています」

――インターンもしていましたよね。

「パリで最初にポートフォリオを作ったときに、ジバンシィの人から声を掛けてもらい、すぐにスタージュ(実地研修)させていただくことができました」

――ディオールなどでもインターンをしていますが、インターンではどんなことを学びましたか。

「ジバンシィに声を掛けて頂いた頃は、何の仕組みも知らなかったので、先生から"スタジオとアトリエのどっちがいい?"と聞かれても、"どっちでもいい"というような状態でしたが、クチュールのアトリエだったので、もの作りを学ばせてもらいました。ディオールの時はスタジオの方だったので、実際にラフシモンズがトワルチェックしている様子などを見ていて、チームでやると言うことを学びました。ある日、ラフのイメージをみんなが一生懸命に作ろうとしている中で、ラフにとって好きなものができたときに、ラフはすごく喜びました。僕もラフっぽいし、ディオールらしくてかわいいなと思いましたが、片腕のスタッフが、ラフが満足した後に、ちょっと悩んでチュールを差し込んで少しだけ色を変えて、誰が見ても更に良くなったのを見た時には、"あっ、チームでやるというのはこういうことだな"ということがわかりました」

――それも今につながっている。

「そうですね。デザインを突き詰める、いいなと思った後に、もう一度考えることが大事だと思いました」

――様々なこと学んできたわけですが、今の松重さんのデザインの方法やコレクションの発想についても少し教えて頂けますか。

「コレクションは、自分が感動するものを、いかに独自に解釈して、ちゃんとみんなに伝えることだと思います。服でも何でもいいのですが、自分が見てすてきだなと思ったものをエッセンスにしながら、自分ならではの何かを加えて、みんなに伝えることが一番大事なのかなと思っています」

――どんなものに感動するのでしょうか。

「僕は色々なものに感動するので、小説でも、現代アートでも、建築でも、自然などでも、感動するものは何でもいいのです。それを自分の中でまとめ上げて、今の時代のバランスというものをちゃんと組めれば、それが一番かなと思います」

――今の時代のバランスということはサステナビリティーなども意識していますか。

「大事だと思います。今と言うよりも昔からもっとやっておくべきだとも思いますが。過去に対する敬意と未来に対する配慮を持ちながら、今をいかに楽しむことが大切だと思っています」

――自身のブランドとハナエモリでは当然、デザインもコレクションの作り方も違いますが。

「自分のブランドは1人でやっているので、いかに自分が好きなものを発見して、それを突き詰められるか。ハナエモリはブランドのアーカイブや森英恵さんの精神を活かして、それをいかに今に持ってこられるのか。チームのみんなでいかにうまくやっていくのかということも違いますね」

――先ほどの楽しければという言葉で答えは出てしまっているかもしれませんが、ハナエモリという伝統あるブランドに就任して、プレッシャーは無いのですか。

「あります。あります。すごくあります(笑)日に日に強くなっていく感じです。でも、プレッシャーをあまり感じてもしょうがないので、自分の中にためています。プレッシャーはあっても、楽しんでやることが1番じゃないかなと。何をやるにしてもプレッシャーが無いと言うことは無いので、あって当たり前だと思うようにしています」

(おわり)



(おわり)

取材/久保雅裕(encoremodeコントリビューティングエディター)、樋口真一(ファッションジャーナリスト)
写真・文/樋口真一(同)







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