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2019.11.13

2020年春夏パリコレクション――サスティナブルやアースコンシャス、ミニマリズム、リラックスを意識 原点に戻りながら持続可能で、タイムレスなコレクションを追求

2020年春夏パリコレクションが9月23日から10月1日、パリで開かれた。約90ブランドが参加し、最新コレクションを発表した。2020年代という新たな10年に向けた最初の提案となった今シーズン。原点回帰とともに、サスティナブルやアースコンシャス、ミニマリズム、リラックスなどがキーワードとなった。

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パリコレクションやワールドトレンドをリードするラグジュアリー系ブランドでは、前回同様にブランドの原点や特徴、デザイナーの得意とする表現や好きな時代に戻りながら、ノスタルジーではなく新しいデザインを提案したブランドや、リリースに「“Think we must. We must think” – 考えなければならない。私たちがすべきことを。」と書いた「ディオール」など、サスティナブルを意識したブランドやアースコンシャスの流れを意識したブランドが目を引いた。

また、サスティナブルへの取り組みを服のデザインやもの作りだけでなく、コレクション会場も含めて行うブランドも登場。「ルイ・ヴィトン」のショーで使用された木材はすべて、フランスにある持続可能に管理された森林から調達。装飾に使用された木材はすべて、ショー終了後、環境保護を目的として芸術作品のエレメントをリサイクルまたはアップサイクルすることを使命とする団体「Art Stock」とのパートナーシップの一環として再利用のために寄付される。ディオールのショーの舞台に現れた森は、都市におけるインクルージョンの原動力として園地栽培に取り組み、環境デザインを行うアーティスト集団「アトリエ コロコ」とのコラボレーションによりデザインされたもの。会場のロンシャン競馬場に植えられた木々は終了後には3つの長期プロジェクトに参加し、様々な土地の一部になるという。ミニマムとマキシマムなど相反する要素を組み合わせた「ミュウミュウ」など、ミニマリズムやリラックスなどのトレンドに対応しながらも、装飾性も共存させたコレクションも提案されている。

一方、未来に向かい、常にこれまでなかったデザインや素材、機能、新しい美の概念や伝統的な服への異議申し立て、アイロニーやメッセージを打ち出し、パリコレクションに刺激を与え続けてきた日本人デザイナーのコレクションでも、原点に回帰しながら新しさを生み出そうとするブランドやサスティナブルやアースコンシャスを意識したようなブランドが増えている。

「イッセイ ミヤケ」は、身体と一枚の布の関係という同ブランドの原点に戻りながら、服を着る楽しみや喜びを表現。「ヨウジヤマモト」も、これまでタブーとしてきた美に挑戦しながら、どこからどう見てもヨウジヤマモトらしいコレクションを発表したが、地球温暖化も意識し、軽さや着やすさも追求。フィナーレに山本耀司が着ていたジャケットの背中には「NO FUTURE」と書かれていたという。「サカイ」は様々な異なる洋服の要素を組み合わせて調和のとれたハイブリッドを生み出すという独自の路線を続けながら、世界地図や地球儀のようなモチーフなども取り入れ、異なるものの調和や共存、明るい未来なども表現した。「ノワールケイニノミヤ」も植物や果物を着てしまったようなデザインや山の化身のようなムードのドレスなど、アバンギャルドやフューチャリスティックとサスティナブルが共存したようなコレクションを発表した。「ビューティフルピープル」もパタンナー出身のデザイナーらしい原点に戻りながら、24通りの着方の出来るデザインを提案した。「アンリアレイジ」は日常的なデザインを新たな視点で捉え直し、アバンギャルドに仕上げて見せた。数年前と比べると日本人デザイナーの数は減っているが、そのパワーは変わっていない。

そのほか、ダイバーシティの流れも定着。根源的な力強さを表現できることや、中国の次の市場のひとつと言うことか。アフリカなどからの影響を感じさせる力強いデザインや、アフリカの自然や大地を思わせる色や柄なども続いている。ストリートやアバンギャルドとアフリカ的なムードをミックスしたようなものも多く、色もイエローやオレンジ、ブルー、グリーン、茶などが目立った。ブラック・イズ・ビューティフルとでもいうように、たくさんの黒人モデルを使うコレクションや、様々な国のモデルを登場させるコレクションも当たり前になっている。「マニッシュアローラ」のコレクションには障がいを持つモデルも登場した。

2020年まであとわずか。今求められているのは60年代に未来派と呼ばれたデザイナーたちがビニールやメタルを使って作ったドレスや宇宙ルックではなく、ミニマリズムともいえるデザインやリラックス出来る服。そして、古着やレンタルした服を着ることや、フリマアプリで服を売り買いするのが当たり前になり、サスティナブルがトレンドではなく、2020年代以降のキーワードであり、不可欠な要素とも言われる今。ファッションが消費するエネルギーまでもが問題になる中で、デザイナーやブランドは原点に戻りながら、新しいだけでも奇抜なだけでも、ノスタルジックなだけでもない、時代を超えて古くならないタイムレスなデザイン、シーズンで終わらず、アップデートできるデザインや素材だけのサスティナブルには終わらない、持続可能なデザインとコレクションを生み出そうとしているのかもしれない。

ディオール
庭園で花々に囲まれるディオールの妹の写真から発想した今回。現代において植物や花々を育てることの意味は何かという問いを提起した。

ルイ・ヴィトン
伝統的な仕立て方法を忠実に守り、パリが輝きを放った時代に回帰。原点回帰しながらスタイルとジャンルをブレンドし、20世紀と21世紀を結び付けた。

サンローラン
サンローランが66年にパリ左岸に店を構えた当時の精神と、マスキュリンでありながらフェミニンでエレガントなテーラリングスタイルを発表した。

ランバン
アメリカ漫画「リトル・ニモ」や1950年から60年代の社交界から着想を得て、エレガンスでエフォートレスなスタイルを表現している。

バレンシアガ
仕事のための装いを再考。原型とは異なり、ガーメントとアクセサリーを斬新なプロセスで作った新たなファッションユニフォームを提案。

セリーヌ
テーマは70年代。パリジャンのエレガンスやブルジョワジーのエッセンスに加え、今回はサントロペのリゾートスタイルも見せた。

ミュウミュウ
創造の自由、創造的な表現、手の感触、偶然の美しさを追求。相反する組み合わせや逆説的な組み合わせによる遊び心のあるコレクションを提案した。

イッセイ ミヤケ
テーマは「A Sense of Joy」。1枚の布や着る楽しさや喜びという同ブランドの原点や根源的な美しさに戻りながら、未来に向かうコレクション。

ヨウジヤマモト
伝統的な美しさを山本耀司流に表現したデザインやインドの刺しゅうを使ったスカート、マグネットを使ったデザインなど今シーズンもタブーに挑戦。

ノワールケイニノミヤ
木のようなヘッドピースとドレス、熱帯の果物や植物のようなドレス、こけや山の化身、光を着たようなドレスなど、前衛とサステナブルを共存させた。

サカイ
独自のハイブリッドなスタイルに世界地図や地球儀からインスパイアされたようなデザインをプラス。多様性や持続可能などのメッセージを表現した。

アンリアレイジ
アングルをテーマに、定番的なアイテムをハイアングル、ローアングル、サイドアングルという3つのアングルで撮影した画像を実際の服にした。

ビューティフルピープル
サイドCという取り組みを更に発展させた今回。リバーシブルや前後、上下に加え、身体を通す穴を増やすことで24通りの着方が出来る服を提案した。

マメ
包むという概念を中心に、春の芽吹きを纏い、日常に溢れる命の気配に耳を傾け、我々の体を守り、包む存在としての洋服を表現した。

ジュンコシマダ
ギメ美術館の庭園でコレクションを行った今回。マダム・バタフライをテーマに、日本的要素と自然が共存するコレクションを見せた。

メゾンマルジェラ
「マインドフルネス」の必要性を提唱し、プリント機がハッキングされたかのようなモチーフなど、記憶と忘却の間にあって、はっきりと識別できない感覚にチャレンジ。

シャッツィ・チェン
竹が奏でる風のリズムをテーマに、自然と美の観点から東洋を象徴するという、竹のしなやかさからインスパイアされたデザインを発表した。

ラコステ
テニス全仏オープンが行われるテニス場でコレクションを行った今回。ブランドの原点に返りながら、テニスウエアなどを再構築したコレクションを見せた。

マニッシュアローラ
マニッシュアローラは今回もアフリカやインドから日本のかわいいカルチャーなど、様々な要素をリミックス。エキサイティングなコレクションを提案した。

アン ドゥムルメステール
ボディコンシャスやスリットから脚を出すデザイン、透ける素材、ボンデージ風など、黒の禁欲的なスタイルの中にセクシーなムードをプラスした。

セドリック シャルリエ
セドリック シャルリエはウエスタン風のムードをプラス。デニムやスカーフモチーフ、レースなど様々な素材や要素をリミックスした。

クリスチャン ワイナンツ
ストリートウエアやシャツからシックなドレスまで、様々なアイテムにアフリカを思わせる柄やムードをプラスした。

マリーン セル
黒を中心にしたアバンギャルドや中東を思わせるデザインと共に、今シーズンはサステナビリティーを意識したようなデザインも登場。



取材・文/樋口真一(ファッションジャーナリスト)
写真/各社提供(マニッシュアローラ、アン ドゥムルメステール、セドリック シャルリエ、クリスチャン ワイナンツ、マリーン セルは樋口真一撮影)

樋口真一(ひぐち しんいち)
ファッションジャーナリスト。業界紙記者として国内外のショーや展示会を中心に、アパレル、スポーツ、素材、行政などの分野を兼任し、ファッションジャーナリストに。コレクションを中心に、スポーツブランド、アートや美術展など様々な分野を手掛けている。コレクションなどの撮影も行っており、NHK BSプレミアム渡辺直美のナオミーツ、森美術館10周年記念展「LOVE展:アートにみる愛のかたち」カタログなど、メディアや出版物にも写真も提供している。