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2019.11.01

アパレル出自のセレクトショップ、物作りの「今」Vol.3――株式会社トゥモローランド編

アパレル出自のセレクトショップは今、何を重視し、どんな物作りに取り組んでいるのか。これまでベイクルーズグループのルドーム「イエナ」、ジュンの「アダム エ ロペ」MDを担うキーパーソンに話を聞いた。特集ラストとなる第3弾は、トゥモローランド編をお届け。

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「サンプルは山ほど作れ」生地から作り込むオリジナリティー

トゥモローランドは現在、9つの自社ブランドを展開し、百貨店、ファッションビル、路面店で167店舗を出店している。セレクトショップ業態を展開して以降は企業規模も拡大したが、同社が標榜し続けているのが「小さな会社」だ。常に表現・提案したいモノやコトに挑戦できる土壌を重視し、その起点として「物作り」を位置づけてきた。

「とりわけ重要なのが生地」と商品Ⅰ部部長の春山浩庸さんは言う。「素材作りから始まる商品が最も多い。前年動きの良かった商品をさらに良くするためにもう一度作り込むなど、常にアップデートも図っている」。そのこだわりは、様々な機屋で聞かれる「セレクトショップで産地に最も入っているのはトゥモローランド」との声からも窺える。

トゥモローランド日本橋高島屋S.C.店



商品Ⅰ部が担当するのは、「トゥモローランド」「マカフィー」「トゥモローランドコレクション」「バッカ」の4ブランド。商品開発は一般にマーチャンダイザー(MD)がブランドコンセプトに沿ってシーズンテーマを設定し、デザイン、パターンと進んでいくが、同社ではMDやデザイナー、パタンナーなどがチームになり、コンセプトを掘り下げ、「今、何を作るのか」を導き出し、その実現に必要な要素を検証する。作りたいモノに最も合う生地を求めるため、素材企画からの商品開発が必然的に多くなるのだ。コンバーターとともに機屋に入り、生地から商品を作り込む。このような物作りを各商品部が行っている。

OEMやODMに依存することなく、自らリアルな情報交流や意思疎通を図り、安定発注することで、作り手の信頼を得てきた。国内の各産地に「30年以上にわたり関係者を通じてお世話になっている機屋が数多くあり、自社の製品クオリティーやマインドを理解していただいている」と言う。これらの機屋の多くが現在、グローバルブランドを手掛ける存在に進化していることも注目される。

生地から作り込むとは、それだけサンプル作成が多いことを意味する。「コストはエグイことになっている(笑)」と言うが、良いモノを提供するために「サンプルは山ほど作れ」のポリシーを貫いてきた。ただ同社が目指す良いモノとは、単なるトレンド商品ではない。「市場を意識し過ぎるなと社内ではよく言われますし、意図的に海外のトレンド情報を収集しないようにしています。大切なのはお客様の支持。自分たちが良いと思ったモノとお客様をつなげ、どういう新しい価値を生み出していくかです。全体的に洋服を買う人は減っていますが、良いモノを長く着たいというマインドも出てきている中で何に魂を込めていくか。やはり1点1点の完成度でファンを作ることだと思う」。

その商品の1つがパールボタン付きのニットウェア。真珠のボタンが付いたシンプルなウールのニットカーディガンだ。10年以上前から「形を変え、素材を変えながら表現し、売れても売れなくても継続してきた商品」で、この2~3年で顧客の認知が広がった。今年は8月中旬からプロパーで毎週100点を超える売れ行きを続けている。「お客様がワードローブに必要と思うモノを追求した結果、トレンドではないけれどヒットする商品が結構ある」。

いまだEC化率は1ケタ台というから、いかに店頭を重視し、支持を得ているかが分かる。その場となる「百貨店、ファッションビル、路面店の3軸でフェイス・トゥ・フェイスの商売をきちんと行い、それができるモノをフェイス・トゥ・フェイスで作っていきたい」と春山さんは話す。

商品企画ではトレンドを追わないが、糸や生地については最先端を含めた新たな発見を求め、海外の見本市や工場にも足を運ぶ。今年6月にはその出会いがあった。ニットチームが縁あってイタリアの小さなOEM会社を訪れた時のこと。そこに並んでいるサンプル、技術に感動したという。そこに使われている独自のイタリア糸を使用できることになり、さっそくサンプルを依頼した。来春夏へ向けて製品化に取り組んでいる。

店頭でのフェイス・トゥ・フェイスの商売を重視(日本橋髙島屋S.C.店)

10年以上続く定番アイテム「パール付きニット」

糸や生地から作り込み縫製された商品は厳しい検品を経て売り場に並ぶ



一方、量産が必要な商品もある。国内縫製で数ヶ月間かかる数量の「売り筋商品」などは中国やベトナムで生産している。昨年はベトナムに新たな縫製工場を開拓した。「縫う技術は一定以上あるので、最も理解を求めたのは検品の考え方」と3シーズンにわたり徹底し、レベルを安定させた。メード・イン・ジャパンもメード・イン・海外も価値基準は同じ。正価で購入する顧客=ファン作りに徹している。

物作りには変わらない姿勢を貫いてきた同社だが、「変わらなければいけない部分は常に半分はある」と言う。今後は売り場の実績データも踏まえ、「営業や販売スタッフとの議論を深め、自分たちが良いと思ったモノを心底伝えていくことにも時間を使いたい。そういうコミュニケーションがトゥモローランドらしいあり方」と意欲を見せる。

「サンプルは山ほど作れ」生地から作り込むオリジナリティー

3社の物作りには主に三つの共通点がある。

一つは素材からの作り込み。各社とも国内外の産地や機屋に入り、オリジナル素材を開発している。元になる素材から作らなければ競合との差別化が難しくなっている現状もあるが、むしろ展開するブランドの存在理由を見直し、その個性をより進化させる取り組みとして素材開発がある。しかし、単発の発注では機屋との信頼関係はできない。取り組みの継続へ向けて売れる商品にし、安定発注する努力が求められる。そのために、企画、MD、デザイナー、パタンナーがチーム化して物作りを担い、時には営業や販促の担当者も加わって商品の魅力をストーリー化するなど、より柔軟な横のつながりが生まれている。出来上がった商品の検品にシビアなことも、小売店に卸してきたアパレル出自だけに共通している。

二つ目は企画・デザインの内製化。パターンについては外注もあるが内製化傾向が見られ、特にパタンナーを集積したアトリエ機能を強化するジュンの取り組みが注目される。パタンナーは企画・MD・デザイナーが表現したい価値を型紙に置き換え、縫製工場に伝える専門職。とはいえ、現状のアパレル業界では、工場のパターン担当者が実際に縫えるように修正するケースも多いと聞く。服の完成度やコストにも影響するだけに、パタンナーのスキルアップ、さらにプロフェッショナルなモデリストの育成も必要になるかもしれない。 三つ目は売り場から得られる情報を実績データだけでなく、現場に入って肌感覚で変化や問題を感じ取り、企画に落とし込んでいること。古典的な手法だが、ニーズの多様化・個性化が進み、マーケットの変化が加速していることから、「現場」重視を強めている。

三つ目は売り場から得られる情報を実績データだけでなく、現場に入って肌感覚で変化や問題を感じ取り、企画に落とし込んでいること。古典的な手法だが、ニーズの多様化・個性化が進み、マーケットの変化が加速していることから、「現場」重視を強めている。

異なるのはトレンド情報への姿勢。ジュンはR&D事業部も設け国内外の情報を収集し、ベイクルーズは専門誌のストックやセミナーへの参加などはあるものの基本的には社員が自主的に集め、トゥモローランドは意図的には集めない。ジュンが指向しているのは、今、これからへ向けたマーケットイン発想のプロダクトアウト。カタログも遺していないと徹底している。逆にベイクルーズのイエナは創設時からのカタログを遺しており、若手がブランドの感性を理解し、企画に取り組むモチベーションになっているという。企画を確かなものにするために、売り場に足を運ぶ。トゥモローランドは「自分たちが良いと思ったモノを作り、1点1点の完成度を高める」ことで、顧客接点となる実店舗で定番商品を育てている。

販売チャネルについては、ベイクルーズは実店舗と並行してECも拡大、トゥモローランドは圧倒的に実店舗重視と両極にあるが、ジュンを含む3社いずれも「伝え方」を課題に挙げる。ブランドや商品の価値をどう伝えていくか。インスタグラムやブログなどのSNSが当たり前になった中で、今後のストーリー発信、コミュニケーションのあり方が注目される。

(おわり)

取材・文/宮下政宏





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