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2019.10.30

アパレル出自のセレクトショップ、物作りの「今」Vol.2――株式会社ジュン「アダム エ ロぺ」編

アパレル出自のセレクトショップは今、何を重視し、どんな物作りに取り組んでいるのか。第1弾はベイクルーズグループのルドーム「イエナ」MDを担うキーパーソンに話を聞いた。そして今回の特集第2弾は、ジュンの「アダム エ ロペ」編をお届け。

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服作りのナレッジをパターンに蓄積。市場起点のプロダクトアウトでヒットを生む

メンズアパレルメーカーとして創業し、昨年で60年を迎えたジュン。その代表的なブランドの一つでありセレクトショップ業態の「アダム エ ロペ」を立ち上げたのは1990年のことだった。世界各国から買い付けたアイテムに加え、オリジナル商品も積極展開。海外の新進デザイナーとのコラボも活発に行い、まだ学生だったステラマッカートニーを発掘・起用するなど大胆な取り組みも奏功し、支持を広げた。

しかし規模拡大に伴い、小売り重視へ舵を切り、物作りもOEMの活用へと傾斜。社内では一時期、「うちは本当にメーカーなのか」という疑念も囁かれたという。そこで2010年代前半にはコレクショントレンドを反映した物作りへシフト、ところが売り上げは低迷してしまう。コンセプチュアルではあったが、一方通行のクリエーションにマーケットはシビアだった。この経験を踏まえ、10年代中盤以降は原点に返り、売り場の声を取り入れた「マーケットイン発想によるプロダクトアウト」を軸にリブランドに取り組んできた。

その中枢機能となっているのが、パタンナーを集積したアトリエだ。アパレル企業では自社のパタンナーもいるが、その数は少ないケースが一般的で、デザイナーが依頼する外注先が多い。しかし、デザイナーが辞めてしまった場合、パタンナーとの繋がりも切れてしまうことになる。そのためジュンでは服作りの重要な機能であるパターンの内製化に取り組んできた。特にアダム エ ロペの商品はほとんどが自社パタンナーによるパターンで作られている。リブランドに際してはこのパタンナーを増員し、さらに強化を進めた。

パタンナーの服作りの経験値を凝縮したアトリエ



「パターンに服作りのナレッジを蓄積していきたい」とアダム エ ロペ執行役員の原 誠さん。次世代の人材育成も視野に入れ、ベテラン、中堅、若手の6人を配置している。「商品企画の会議にも参加し、企画やMDとともにトレンドや顧客動向などの情報を共有することで、同じ方向・時間軸で物作りを進められるようになった」とMDの藤本理沙さんは話す。そこにPRや販売の担当者も入って、制作中の商品の魅力を伝えるストーリーの立案も同時進行するスタイルが出来上がっていった。柔軟なチームワークによる物作りから売り場への落とし込み、コミュニケーション展開によって、ヒット品番も多く生まれるようになっている。

例えば、会津木綿を使ったアイテムは2017年春に発表し、現在25店舗ある同ブランドのほぼ全店で展開する定番商品に育っている。よりブランドの個性を出すため独自素材の開発を重視する中で、創業100年を超える会津木綿の老舗工場と協業し、作り込んだもの。同社のアーカイブを生かしたオリジナル柄などを、ワンピースやジャケット、パンツ、セットアップなどに仕上げた。「もともとは作業着だった会津木綿をファッションとして再提案する取り組みです。小幅生地を服にしていく作業は大変なのですが、売れるものにして継続していくのが自分たちの役割」と藤本さん。

会津木綿の特徴である縞柄を生かすなど多様な商品を開発

伝統の技術で織られる会津木綿。今も残る工場は2社のみ

会津木綿×ADAM ET ROPEのピローシャツ



「毎回、試行錯誤が楽しい」と生み出された商品は、特に顧客に好評だと言う。他にも国内では尾州の毛織物や山形のニットなど、産地に入って作り手と情報をやりとりしながら売り場で確度の高い商品の開発に取り組んでいる。

また、改めて開発に力を入れたのがパンツだ。もともと同ブランドはパンツが強かったが、近年は売り上げが鈍化し、前年はスカートトレンドの勢いにも影響された。そこで「今一度、執着して開発しよう」(原さん)と、企画・MD・パタンナーがマーケットリサーチを重ね、時間をかけて作り込んだ。メンズライクでシンプルなストレートパンツ。クロップトなどトレンドを取り入れたものではないが売れ続けている。メンズに始まり、メンズライクな服を女性が着る提案を続けてきた同ブランドのアイデンティティーに立ち返った物作りが評価されていると言える。今後は原点であるメンズの強化も課題に挙げる。興味深いのは、ジュンはアパレルとして長い歴史を持ち、数々のヒット商品を生んできたが、アーカイブが遺されていないということだ。

「周年記念で復刻版を作ろうと思っても、カタログも写真もない。グループの方針でもありますが、過去にこだわらないんですね」と原さん。大切なのは今、これから。ただし、前述したアトリエに象徴されるように、人にナレッジが蓄積されていく仕組みがある。激しい市場変化に日々対応する売り場の経験値も同様だろう。これら人に蓄積されたナレッジをブランドの個性として集約し、どう伝え、共感を広げていくか。「バラバラに存在している要素をストーリーとして結び付け、ウェブやSNSなども含め伝え方のアップデートを図っていきたい」(原さん)としている。

毛織物の産地、尾州の機屋での生産の様子
Photo by 石川純平

Photo by 石川純平



“アパレル出自のセレクトショップ、物作りの「今」”特集の第3弾はトゥモローランド編をお届けする。

(つづく)

取材・文/宮下政宏





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