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ピックアップ
2020.01.21

SEAMO『PERFECT SEAMO』インタビュー――人生の分母が広がっていく

ともあれ15周年である。シーモネーターとして地元名古屋のシーンで頭角を現し、2006年「マタアイマショウ」で賞賛とリスペクトを獲得するに至ったSEAMO。決して平たんではなかった自身のキャリアを振り返って思うこと、地元への愛着、そしていま想い描く未来とは?

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──2020年は、1月にデビュー15周年を記念した2枚組オールタイム・ベストアルバム『PERFECT SEAMO』のリリース、ドキュメンタリー映画『もしもあの時“if”』公開、そして2月からは全国ツアー「Wave Your SEAMO TOUR」がスタートしますが、いま思うこと、感じていることは?

「実は僕、デビュー10周年がすごく曖昧なまんまで終わったんですよ。当時の事務所との関係値だったり、担当スタッフともあまりうまくコミュニケーションが取れていなかったこともそうなった一因なんですけど、僕自身も10周年に先立つ何か大きなことがやれていたわけじゃなかったので。だから、10周年でアーティストとしての集大成みたいなことをやっていなかったんですよね。そんなふうに10周年が曖昧に終わったことで、それ以来、自分の中ではあんまり何年にデビューして何年やったとか、ピンときてないところがあったんです。特に、僕の場合はシーモネーターとしてのキャリアもあって、正直、数字に対する感覚がなかったんですよ。じゃあ今回の15周年はどうしてこんな感じになったかというと、まわりのスタッフが15周年だよねって、意識して盛り上げてくれたからなんです。僕はいま、みんなが作ってくれた神輿に乗っからせてもらっていて。せっかく作ってくれた神輿なんだから、思う存分に暴れようと思っています」

──曖昧なまま終わった10周年のときに比べ、この5年で、どんな変化があったと思いますか?

「10周年を盛り上げられなかった原因のひとつに、材料がないというか、僕が満足のいく作品を作ることができなかったことがあるんです。そのころは、自分の中で納得できる作品が生み出せない。でもある一定のクオリティの音楽が作れないとタイアップがつくような大きなリリースにこぎつけられない。そういう負のループに陥ってたような時期だったと思います。その時期は、もしかしたら大切なことを見失っていたかもしれないですね。自分は何のために音楽をやっているのか、誰のために音楽を作ってるのかと考えたら、もちろんタイアップをつけるためでも、ただリリースするためでもない。けっこうな歳のベテランなのに、いちばんアーティストとして根底で忘れちゃいけないことを、いろんなことがあった結果、見失ってしまっていたかもしれない。でも、悩んでてもしょうがないし、自分ができることをやるしかないって思って。未来へのヒントは実は自分の過去にあるんだってわかってからは、原点回帰できたし、吹っ切れて調子が出てきて、どんどん転がっていくようになりましたね」

──ひとくちにベストアルバムといっても、曲目や曲数、曲順、そしてタイトルなど、アーティストはいろんな思いを馳せて制作すると思います。SEAMOさんの場合は、今回の『PERFECT SEAMO』にどんな思いを込めたんでしょうか?

「まずタイトルに関しては、“PERFECT”が僕の中でちょっとダサいとかっこいいのスレスレのワードというか……それは自分だけのセンスなんですけど、3周ぐらいして押し出しが強くて、ダイナミックでかっこいいっていう。もうなんか、思いつき一発ですよね。あまりにも押し出しが強すぎて、みんなつけないタイトルというか(笑)。あとは、ベストアルバムにおけるクリエイティブの要素って、マスタリングのし直しなどもあるんですけど、僕は選曲だと思うんですよね。だから、いままでのシングルであったり人気曲、ファンのみなさんにとって外せない曲、いろんなことを考えました。それと、デビューから15年経って、僕のことを全然知らない若い人たちもいるので、そういう人たちにもう一回プロモーションというか、いわゆる初めましてのアルバムにもなると思うんですよね。そういう意味で、僕の根幹を支えてきた曲やライブで盛り上がる曲を入れたいと思いました。その中で、選考に漏れるか漏れないか、瀬戸際の曲がどうしても出てくる。そういうときは、いままで応援してくれた人の顔を思い浮かべて、どっちの曲を入れたらみんながハッピーになるかということを選考の基準にしました。あとは、2枚のアルバムの戦闘力を均一にすることも意識しましたね。たとえば、アッパーな曲とメロウな曲をそれぞれのディスクに振り分ける選曲の仕方もあるんですけど、今回はどちらのディスクでも起承転結の流れが感じられて、ポテンシャルのある曲も均等に振り分けました」

──代表曲の「マタアイマショウ」は、15th Anniversary ver.として、新たにMVも制作されました。

「「マタアイマショウ」は、僕の音楽人生でトピックになっている重要な曲なので、15周年を機にもう1回スポットを当てさせてくれという話をして、新しいバージョンを作らせてもらった形です」

──先ほどの、選曲に迷ったときはお客さんの顔を思い浮かべてという話も興味深いです。

「いろんな考え方があると思うんですけど、曲は自分のものじゃなくてお客さんのものになっていく感覚をメジャーデビューさせてもらってから感じるようになったというか……良くも悪くも、インディーズ時代は自分のための音楽、クラブとかの狭い空間でどれだけ目立つか、相手を出し抜くか、そうやって自分を着飾る音楽だったと思います。そういう音楽のあり方も、それはそれで決して悪いことではないんですけどね。でも、メジャーデビューしてから、自分の意図しないところでこんな人にこんなふうに自分の曲が伝わるんだって、ミュージシャンとして素晴らしい感覚を味あわせてもらえたんです。そういった経験の中で、それまで自分が仲良くしてこなかったタイプの人たちと触れ合うことができたのは、間違いなくメジャーデビューしたおかげなんですよね。そこには、すごくたくさん発見がありました。ベストアルバムって、自分が積み上げてきたものではあるんですけど、みんなが喜ぶ姿を想像したほうがいいテンションで制作に望めるので」

──15周年記念ドキュメンタリー映画『もしもあの時“if”』は、SEAMOさん自身へのインタビューに加え、多くのアーティスト仲間や関係者、さらにはファンへのインタビューも交えながら、SEAMOさんのインディーズ時代から現在までが丁寧に描かれています。

「僕自身は考えてもいなかったことなんですけど、スタッフサイドからドキュメンタリー映画を作ったらどうかというアイデアがあって実現しました。僕が発起人を務めていたTOKAI SUMMITというフェスの撮影クルーの子が参加してくれたり、地元がいっしょで以前からお世話になっている堤 幸彦さんが監修をしてくれたり、まわりの方たちのたくさんの協力があって完成しましたね」



シーモ

SEAMOの15周年記念ドキュメンタリー映画『もしもあの時“if”』より

シーモ

『PERFECT SEAMO』初回生産限定盤付属のDVDには『もしもあの時“if”』のDirector’s edit ver.が収録される



──SEAMOさんの赤裸々な言葉が強く印象に残りました。

「僕、今回の撮影でインタビューを受けるときに、あんまり狙ってないというか、決め込んでいないというか。自分であとから見て、“うわっ!こんな姿で撮られてたんだ……”って思うぐらい、隙だらけ。それだけ素で撮影されてて、出演している人の中で僕がいちばん貧相に見えるなって(笑)。そういう意味では、本当にリアルに僕に迫ってくれているなと思います。僕自身も、ここは見せたくないとか、話の起承転結とか、かっこつけたコメントをしたいとか、そんなことは一切考えませんでした。だから、最終的にどんな作品になるのか、ゴールも見えていなかったです」

──そこまで自分をさらけ出すことで、しんどい部分もあったんじゃないですか?

「若いときは、こんな自分は見せたくないという気持ちがありました。でも、歳を重ねると人生の分母が広がっていくんで、あのときのことって些細なことだよって、どんどん話せるんですよね。そう考えると、いまだからこそ包み隠さず話せている。完全無欠のSEAMOでいてほしいっていうファンの声もあるし、みなさんが見てどう思うかはわからないんですけど、最終的には後ろ向きなことではない作品になったと思っているので、15周年でこうした映画ができたことに充実感がありますよね」

──映画の撮影を通して、あらためて感じたことはありますか?

「やっぱり、この15年間は自分との戦いだったんだなとは、あらためて思いましたよね。HIP HOPカルチャーって、大きな旗のもとに動いていく面があるんですけど、僕も若いころは地元の名古屋の一味だってことを大事にしてきたし、自分より若い連中をフックアップしたりもしてきました。でも、キャリアを重ねる中でどんどん自分と向き合っていった15年だった。数字とかタイアップとかじゃなく、自分に打ち克つ戦いというか。みんな、結局は自分に負けてくんですよね。苦しいときに踏ん張りきれなかったり、モチベーションを保てなかったり」

──15周年の節目で、ベストアルバムとドキュメンタリー映画という形を残したわけですが、この先、どんな未来を思い描いていますか?

「若いころは、当たり前のようにアルバム作って、プロモーションしてツアーするっていうルーティンにちょっと飽きてたっていうか、そういう時代もありましたよね。そこに面白さを感じられない時期というか。実際はすごいことなのに、人間ってそれが続くとありがたみを感じられなくなるというか。でも、そこからもう1周すると、アーティストとして幸せなことだって気づけるんですよね。気づけたのは、アルバム『Moshi Moseamo?』をリリースして、久々にツアーをしたときです。そのツアーで、ファンのみんながすごく感動してくれたんですよね。いままで当たり前にやっていたことを久々にやっただけなのに、僕のファンはこんなに喜んでくれるんだって思いました。ピンのラッパーでメジャーで10枚のオリジナルアルバムをリリースしている人ははなかなかいないと思うし、元中日ドラゴンズの山本昌さんじゃないですけど、どんどん記録を更新してくぐらいの勢いで、当たり前のことをやっていこうかなっていう感じですかね。おかげさまで、まだまだ元気だなっていろんな人に言われていますし」

──ファンに気づかされることは、本当に多いものなんですね。

「僕は、客がゼロになってもやるとか、そういうタイプではないので。シーモネーターでダメダメになったときでも、1人か2人はお客さんがいましたから(笑)。いまでも、各地方に僕のことを星野 源さんや米津玄師さんよりもいいっていう人が、ちょこっといるんですよ(笑)。そういう人たちの気持ちには、応えていきたいなと思いますよね。いつか、SEAMOはやっぱり星野 源さんや米津玄師さんと同列だ、いやそれ以上だ、ファンでいて間違いなかったなって思わせたい。だから、バックトゥ紅白でも、バックトゥ武道館でも、なんでもいいからもうひと波起こしたいなと思っています。そういうことの実現へのターニングポイントになるいい曲を作って、大きいフィールドにもう1回行きたいなと思いますね」

──15年とうキャリアのなかで、歌っていきたいことに変化はありましたか?

「HIP HOPのいいところって、今日の朝は何食べたとか、通勤途中にこういうかわいい子を見たとか、そういうワン・シチュエーションだけで曲が書ける、広げられることだと思うんですよね。だから、小賢しいことをリリックにするんじゃなくて、感情をそのまま言葉にしていけばいいといまは思っています。いままで、恋愛のこと、失恋のこと、友だちのこと、家族のこと、精神論、ひと通りのこと書いたんで、じゃあこっからは身の回りの些細な出来事を歌にしていくというか……10枚目のオリジナルアルバム『Wave My Flag』を作っていたとき、歌詞が書けなくてそのままレコーディングスタジオに行ったことがあったんです。そのときは、スタジオで湯豆腐のことをひたすら書いたんですよ(笑)。それが「You don’t Fuu」という曲になってアルバムに収録されているんですけど、まわりからも面白いよねって反響があったんですよね。それがきっかけで、曲を書くことはそんなに難しく考えることじゃないな、悩んでる暇があったら身のまわりに落ちているネタを書けば、逆に自分にしか書けない歌詞になるんだなって」

──地元の名古屋への愛は、これからもきっと変わらないですよね。

「若いときは、名古屋から東京を落として天下を獲るみたいな感覚がありましたよね。HIP HOPはご当地ミュージックだから、北海道にも九州にも名物ラッパーがいるし、自分は地元の名古屋のアイコンを背負ってるみたい気持ちもありましたし。いまは、やっぱり名古屋は住みやすいというのが、いちばんに感じることですね。東京は、人が歩くスピードが速いし、やっぱり疲れます(笑)。東京にも名古屋出身のアーティストはいっぱいいるんですけど、僕みたいに名古屋に住み続けて活動しているアーティストはそんなにいないんですよね。でも、そうやって住み続けているからこそ、ラジオの冠番組だったり、地元の人との仕事ができる。だからこそ、これからももちろん地元との関係はちゃんと大事にしていきたいですよね」

──ツアーに関しては、現在どんなことをイメージしていますか?

「絶賛考え中なんですけど、ベストアルバムも聴かせたいし、最新のオリジナルアルバムもやりたいし、そういうことに頭を悩ませてます。でも、ベストしか聴いていない人、オリジナルアルバムしか聴いていない人、両方を聴いている人、そのすべての人がもれなく楽しめるライブにはしようと思っています。若いころは、演出とかに凝ってましたけど、いまはその音楽をどう歌うか、結局シンプルなところにたどり着いた感じです。僕たちのHIP HOP文化は、2ターンテーブルと歌い手だけでどう見せていくか、いまある材料で工夫する表現。そういう原点を踏襲して、きちんと歌って、きちんと喋ってっていうことをやっていきたいなと思ってます」

──「シンプルなところにたどり着いた」という言葉がありましたけど、かなりすっきりしたコンディションなんですね。

「自分と向き合ってるからだと思うんですよね。SNSの時代になって、若い子とかは他人のことがすごく気になるんだと思うんですけど、いまの僕はそんなことじゃなくて、自分との戦いだし、多少トレンドと違う方向に向かっていたとしても、積み上げてきたものをどう表現するかですから。だから、楽しんでやってますよね。勝手にトレンドがぶち当たってハネることもあるでしょうし、自分を表現し続けることで第一人者になっていくものなんでしょうし。いまそう思えているのは、15年間やり続けてきた賜物だなって思います」

(おわり)

取材・文/大久保和則



■Wave Your SEAMO TOUR
2月2日(日) 仙台darwin
2月8日(土) 金沢GOLD CREEK
2月11日(火) 高松MONSTER
2月15日(土) 広島クラブクアトロ
2月24日(月) イムズホール(福岡)
3月1日(日) BIGCAT(大阪)
3月7日(土) 山野ホール(東京)
3月14日(土) Zepp Nagoya

■「B-65 アーティスト特集 WEEKLY J-POP 2」1月20日(月)~1月26日(日)の特集はSEAMO!(music.usen.com)

■「C-43 MUSIC&TALK WAGON ~音バナ~ “VINTAGE MUSIC”」2月3日(月)~2月16日(日)のゲストはSEAMO!(music.usen.com)



SEAMO『PERFECT SEAMO』
2020年1月22日(水)発売
初回生産限定盤/BVCL-1035~1037/6,000円(税別)
アリオラジャパン
SEAMO『PERFECT SEAMO』
2020年1月22日(水)発売
通常盤/BVCL-1038/3,000円(税別)
アリオラジャパン




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