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――2019年も残りわずかですが、平原さんにとってはどんな1年でしたか?

「ちょっと前まで1月だったのに、気が付いたらもう12月……今年も息つく暇なくがんばってきたなぁと思います。なので、支えてくれている家族やスタッフも大変だったろうなと思います。言ってみれば“運命共同体”ですから。そういったまわりのサポートもありつつ、今年もいっぱいいろんなことをやらせていただいたなと思いますね」

――7月に行われた「氷艶hyoen2019 ―月光かりの如く―」への出演は新たな挑戦でしたね。この作品はフィギュアスケートと演劇を融合したものですが、平原さん自身もスケートをしながら歌いたいという願望が10代の頃からあったそうですね。

「そうなんです。滑れないのに、ずっとそう言っていたのは不思議なんですけど(笑)。でも、昔からフィギュアスケートが憧れの存在だったんです。あんなに素晴らしい滑りに、さらに歌がプラスされたら、どれほどのエンターテインメントになるんだろうって。ただ、それを自分が今世でやるとは!口に出して言ってみるもんだなぁと思いましたね」

――それは、言霊というか、言葉に思いを託すということですか?

「私はもともと自分から夢を掴みにいくタイプじゃなかったというか、“これをやるんだ!”と言って自発的に動けるタイプじゃなかったんですね。そういう自分の性格をよくわかっていたので、だったら夢に迎えに来てもらおうと思って。迎えに来てくれるまで、自分を磨いておこう……そんな心づもりでいたら、本当にいろんな夢が迎えに来てくれるようになりました。“ミュージカルをやってみませんか?”と『ラブ・ネバー・ダイ』に声を掛けていただいたこともそうでした――実は最初2度お断りしたんです。自分はオペラが歌えるとは思っていなかったし、不安で。そんな中、「ぜひやりませんか?」と再度オファーがあったんです。不安なものほど本当は自分がやりたいことだったんだと気がつきました。あの時思い切ってチャレンジしたからこそ、今があると思っています。その後の『メリー・ポピンズ』では「外国のプロデューサーが来るので、1曲歌いに来てほしい」と言われ、その何年後かに「オーディションを受けてください」と。そういうオーディションを受けたことがなたったので“どうしよう!”と焦りましたが、やっぱりそれも声を掛けていただけなかったら、この素晴らしい世界を体験できていなかったと思います。さらに今回の氷艶だって、“滑りながら歌ってみませんか?”と言われなかったら絶対やってない(笑)。常にチャレンジしたいという思いを持ち続けていると、そうやって迎えに来てもらえるんだなぁと実感した1年でした」

――新しいことに挑戦することに、怖さや躊躇する気持ちはありませんか?

「やっぱり大変です。挑戦していくなかで、すごく苦しいこともありますし。でも、それをやらなきゃいけないのは自分自身ですから。ここまでとストップするか、無理をしてでももう一歩先に行くかを決めるのは自分次第。ただ、私自身は、チャレンジするのが好きかと言うと、決してそうじゃないというか……自分でもわかりません(笑)。でも、“あ、なんかやってみたいな”って思える気持ちがうれしかったりします。それから、私がそれをすることで喜んでくれる人がいるということがうれしいですね。声を掛けてくれた人のためにも頑張ろうと思いますし、楽しみにしているお客様に喜んでもらいたいと思うとやる気が出ます」





――ミュージカルなどの活動が、声を掛けてくれた人や観客のみなさんのためと思えるものだとしたら、音楽活動はスタンスも異なるのではないかと思うのですが。

「そうですね。ミュージカルの場合、自分じゃない誰かになって演じるものなので、実は自分を表現するより楽なんです。なぜなら、やらなきゃいけないことを演出家の方が教えてくれますし、すべて台本に書いてあるので、作詞作曲するときのような悩みが一切ないんですね。どう演じるかという挑戦なので、例えるならもともとある模型を最初はデッサンしながら練習して、最終的に自分の絵を描いていくしような感覚なんですよね。一方、“平原綾香”という自分自身を表現する音楽のほうは、真っ白なページに何でもいいから好きなものを描いてくださいって言われているようなものなので、より難しさを感じます。もちろんミュージカルも生半可な気持ちでできるものではないんですけど、音楽のほうで常に自分と向き合ってきたこともあって、ある意味ミュージカルが癒しなんです。だって、メリー・ポピンズになれるんですよ?楽しいじゃないですか!(笑)。とはいえ、最初からそうだったわけではなくて。今までは自分の中でチャレンジというカテゴリーだったかもしれないんですけど、今はそれが本当の楽しみに変わっているのは、少し成長した証なのかもしれませんね」

――そして8月にはオリジナルアルバム『はじめまして』をリリースしました。2018年にデビュー15周年を迎えた平原さんですが、このタイミングで“はじめまして”という言葉を作品に名付けたことに驚きを感じたのですが……

「やっぱり何事も“はじめまして”と思って行動するのと、“いつものこと”だと思ってやるのとでは、全然感覚が違うなっていうのを感じるんですよね。例えば、お風呂に入るのって結構面倒じゃないですか。疲れていたりすると特に。でも“私は初めてお風呂に入るんだ!”と思って入ると、すごい気持ちよかったりするんです(笑)」

――心の持ちようですね(笑)。

「そうですそうです(笑)。そして、それを同じような感覚で音楽をやっていることに気付いたんですね。それこそ、15年以上歌い続けている「Jupiter」でさえ、いつも初めてのような感覚で歌っているんです。だから、今でも感謝しながら歌っているし、毎回違う「Jupiter」になるんです。それといっしょで、人と会うときもそんなふうに思えたら、新しい発見や得るものがあると思うんです。『はじめまして』という作品には、私が感じた人生の感動、音楽や言葉の感動がたくさん詰まっています。初めて何かをした時のような心の高鳴りが、きっと聴こえると思います」

――ではアルバムの制作を進めていくなかで、平原さん自身が“はじめまして”を感じた出来事はありましたか?

「それこそ「はじめまして」という曲を槇原敬之さんに作っていただけたことは、“はじめまして”でしたね。しかも、レコーディングにマッキーが立ち会ってくれたんですよ!」

――槇原さんとのレコーディングはいかがでしたか?

「レコーディングのときって、私はいつも自分がすごくイヤになる瞬間があるんです。いろんなことにこだわりすぎるから。もちろん、音楽を追求していくことはとてもいいことだし、それが自分のやりたいことであるはずなんですが、それがいつしか、“いい音楽”ではなく“いい自分”を聴いてもらいたいという目的に変化していくような気がするんです。自己満足で終わってないかな?って不安になる。そうすると、だんだん自分がイヤになってくることがあったんです。でもマッキーといっしょにレコーディングをしてみて、“私よりもっとこだわりの強い人がここにいた!”って(笑)。ふだんは私がスタッフさんから“もういいんじゃない?”と言われて終わるところを、今回は私がそう思うくらいマッキーがこだわってくれたことがすごく幸せでした。自分じゃない誰かが自分の歌にこだわってくれること、平原綾香の歌をどう聴かせようかと考えてくれるプロデューサーがいること……本当に感謝しかないですよね。最近、プロデューサーを立ててこなかったのでなおさらそう思いました」

――槇原さんが書かれた「はじめまして」という曲自体も、壮大で素敵ですよね。

「すごくいい曲を書いていただいたと思います。この曲は10年後に歌ってもまた違うでしょうし、誰が歌ってもいい曲になると思います。壮大な愛の歌にするか、もっと身近な愛の歌にしようかってマッキーも結構悩んだみたいです。でも、やっぱり“平原綾香の世界観で歌ってほしい”ということで、テーマ的にもすごく壮大な楽曲になったって。そこを私に求めてくださったのがうれしかったです。というのも、私自身はデビュー当時からもっと身近な愛の歌を歌ったほうがいいんじゃないかと悩んできた部分もあったんです。デビュー曲の「Jupiter」で描かれる母の愛とか家族の愛というのは、当時19歳だった私にとっては身近なものだったんですけど、果たしてこれでいいのだろうか?という悩みもあって……でも、今回マッキーがそう言ってくれたことで吹っ切れたというか。16年目にしてこれでいいんだ!と思える出来事でした」

――そして、アルバムの制作と平行するように、6月からは全国ツアー「平原綾香 CONCERT TOUR 2019 ~幸せのありか~」が行われましたが、アルバムをリリースしてからツアーを行うのと、ツアー中にアルバムをリリースするのでは作品やステージへの向き合いかたは違うものですか?

「このツアーでも新しい挑戦をしたんですけど、いつもと違うという点では、今回はお客様にとって、新曲に対する思い出作りの方法が違ったと思います。先にアルバムで聴いて、それぞれにいろんな思い出を作ってからツアーでその曲を聴くか、それとも、ツアーで曲を聴いたことが思い出となって、それをアルバムで聴くか。その違いなんですけど、今回みたいな順番は私にとっては珍しいことなので、とても新鮮でした。新しい試みは、やはりメリーですね。昨年ミュージカルでメリーを演じましたが、今年はディズニー映画『メリー・ポピンズ リターンズ』でも歌とセリフの吹き替えと日本版エンドソング「幸せのありか」を歌わせていただきました。ファンのみんなが“絶対に『メリー・ポピンズ』の歌を聴きたい!”と言ってくれていたので、踊りながら映画を再現したんです。毎年、ツアーですべてをやり尽くしちゃうので、来年は何をすればいいんだろう?って思うんですけど、いろんなことにチャレンジしていると、何かしら新しいトピックスがやってくるんですよね。なので、これまで出し惜しみをしたことがなくて」

――そうやって毎年アップデートされているのはすごいことですよね。

「ありがとうございます。でも、デビューしてからずっと私にとって歌を歌うこと自体がいちばんのチャレンジだったんですよね。高校、大学ともに音楽学校に通って歌手をやっていると、声楽科出身と間違われることがあるんですけど、私はサックスを学んでいたので。デビュー当時は歌い手としての基礎を勉強していなかったことがすごく自分自身を苦しめましたし、“平原さんって声楽科っぽくないよね”と言われることに対してすごく悔しい思いもしました。でも、いろんなチャレンジをすることでいっぱい鍛えられたからこそ、今では私は歌手だと思えるところまでこられたって思っています」





――デビューから16年、毎年ツアーを行われているなかでどういったところがいちばん変わったと思いますか?

「最近思うのは、自分の今の状態の歌をいちばんいい形でみなさんにお届けしようという発想に切り替わったような気がします。今までは、練習して、練習して、自分が見せたいベストな歌を本番で出すことが目標だったように思うんですけど、そこからさらにステップアップするためには、今までのやり方も受け継いだ上で、さらに“今”を意識することが大切かなって……今日ここに来てくれたお客さんに、今日だけの歌を届けるっていう、そういう思考に切り替わってから、よりコンサートが楽しくなりました」

――今回、U-NEXTでは「平原綾香 CONCERT TOUR 2019 ~ 幸せのありか ~」のBunkamuraオーチャードホール公演を含む過去6年分のコンサート映像がラインナップされています。

「うれしいですね。なかなか6年分をまとめて観られる機会っていうのもないですから。私もDVDは持ってるけど、U-NEXTで一挙に観ようと思います(笑)。もちろんひとつひとつのツアーに見どころがあるんですけど、2014年から毎年毎年、そのときのベストな歌を歌ってきたと私自身は感じていますし――もちろん、今の私が観ると、昔の私はまだまだだなあって思うんですけど、それもなんか、かわいいなと思えるというか(笑)―――やっぱりその年の、その一瞬を、どんな体調であれ、どんな歌のスキルであれ、本当に命をかけて歌ってきたので。その心意気を聴いてほしいと思います」

――ある意味、平原綾香という歌い手の生き様でもありますね。

「そうですね。特に2014年からの6年間って、私の歌が変わっていった時代でもあるので。そういった歌の変化を聴いていただくのも面白いかもしれません」

――平原さんの挑戦はまだまだ続くと思いますが、最後に2020年の抱負を教えてください。

「来年は父、平原まこととのライブツアーや、キャロル・キングの半生を描いたミュージカル『ビューティフル』の再演もありますが、個人的な抱負としては、自分の部屋をとことんきれいにしようと思っています。やっぱり、自分の運気は部屋からなので。自分自身が“動く神社”じゃないですけど(笑)。そういう自分になれたらいいなって」

――なにかそう思うきっかけがあったんですか?

「きっかけは『メリー・ポピンズ』なんですよ。彼女がてきぱきと部屋を片付けるシーンがすごく好き。私は2013年に「平原綾香 Jupiter 基金」という活動を始めたんですが、自分のことがちゃんとできていないと人助けなんてできないなとも思ったんです。いざというときに、自分で決めて、自分で行動できるパワフルさがほしいなって。そのためにも、メリー・ポピンズのように、まずは自分の部屋を完璧にきれいにしたいと思います(笑)」

(おわり)

取材・文/片貝久美子
写真/岩田えり



平原綾香『はじめまして』
2019年8月21日(水)発売
UPCH-20529/3,000円(税別)
ユニバーサル ミュージック






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