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2019.09.30

かしわ『3人でかしわ』インタビュー――“かしわでできるカテゴリー、こんだけありますよ!”ってアルバム

大阪は岸和田、ソウルフードはかしみん焼き……かつて高校生RAP選手権で脚光を浴びたラッパー、かしわがシンガーのマーリー、DJのトムとともにラップクルー“かしわ”としてアルバムデビュー。最高にポップで軽やかな“3人の”かしわを聴け!

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――今現在の活動拠点は大阪なんですよね?

「そうです。今日も新幹線で来ました。まあ、メンバー3人とも大阪なんで」

――えーと、かしわというのは、かしわさんの個人名義でありつつも、マーリーさん、トムさんを加えたユニット名でもあり。イントネーション的にはかしわの“わ”にアクセントを置くのが関西風ですかね?

「僕らはそう呼んでますけど、まあ好きなように呼んでもらえればええです(笑)。僕、岸和田なんですけど、高校生になるとだんじりの青年団に入るんですよ。で、そこの先輩に“なんやおまえの顔見てたらかしみん焼き食いたなってきたわ。今日からおまえ、かしわな!”ってあだ名を付けられて」

――かしみん焼きってのは、あれですね。鶏肉を使った岸和田名物の粉モノですね。

「そうですそうです。で、若手は、その青年団の寄り合いで芸をやらされるんですよ。そんときに、かしわって名前でラップをやってて。そしたらまあまあウケて、それからずっとかしわです。もう本名よりも、かしわって呼ばれる方が反応しやすいです」

――で、グループ名もかしわ。

「そうですねえ、全然違うグループ名じゃなくて、かしわでええかなって。まあ、ジョン・ボン・ジョヴィのボン・ジョヴィもおるし、それもなくはないやろって」

――高校生ラップ選手権に出場したりと、ラッパーのかしわとしてのキャリアがあって、その後マーリーさんと出会ったってことですよね?

「最初、マーリー君は上京して別のグループでやってたんですよ。3、4年前までは。で、それをやめて大阪帰ってきてて。マーリー君がおる同じ現場に僕の先輩もおって、その先輩からマーリー君のワンマンがあるから見に行こうぜって。そんときはちょろっとしゃべっただけなんですけど、マーリー君とその先輩がグループを組んで、大阪のクラブでちょこちょこやるようになって、会うようになったんですよ。でもそのグループもそっから半年くらいで解散して、“マーリー君、空いとるな。入れへん?”って誘ったら“あ、よくわからんけど、入るわ!”って(笑)」

――あのー、なんてんでしょう。別れるの見計らって先輩の元カノに告る的な?

「ははは!いや、まあそうっすね。そういうのちょっとめんどくさかったっすね。それが2018年の頭くらい。前々から誰かを入れたいなっていうのはずっと思ってて、僕から声掛けたんですよ。“マーリー君やったらええのになあ……よし、いまや!”って。そんとき、マーリー君はレゲエのオケで歌ってて」

――ああ、レゲエ的な言い方をするとディージェイかシンガーって感じですね。

「そうですね。ラバダブって言うんですかね。クラブイベントの最期らへんにセレクターが音を流してて、そこでマイクの取り合いみたいなことをやってるんですけど、マーリー君はよくそれをやってましたね」

――マーリーさんがジョインして以降、かしわさんの音楽的な立ち位置も少しレゲエに寄っていった?

「もともとちょっとレゲエっぽい音をやりたかったんですよ。でもひとりで完結できることではないなって思ってて。だからですよ。マーリー君がいてたらそれが完結させられるのになって」

――で、DJのトムさんも合流してと。

「トムは、マーリー君のグループでときどきDJをやっていて――レゲエでいうセレクターですね――僕もイベントとかいっしょにやることがあって、“擦れるんやったら欲しいなあ”と思って見てたんですけど、誘ってみたら案外すんなり入ってくれて。だから3人体制になってまだ1年経ってないっすね」

――じゃあ、実質の制作期間やレコーディングにかかった期間はもっと短いと思いますけど、そこから『3人でかしわ』の14曲が生まれたってことですか?

「それ以前から構想していた曲はあったんですよ。“もしマーリー君がいてたらこんな曲がやりたいなあ”っていうのが3曲くらい。んで、2曲ボツって」

――じゃあ、ほぼほぼ全曲書き下ろしじゃないですか(笑)。トラックもかしわさんが書いてるんですか?

「はい、自分で書きます」

――すごい!てっきりトラックは発注してると思い込んでました。曲づくりはパッドですか?

「いや、ギターですね。パッドは使わないです」

――でもライブではギターは弾かず?

「そうですね。まわりにマーリー君とトムがいてるし、やっぱ、ラッパーっぽくしたいんで(笑)」

――トラックが出来上がって、マーリーさんのボーカルパートって仮歌を入れて渡すんですか?

「モノによりますね。仮歌を入れて渡すこともあるんですけど、ほぼほぼマーリー君がサビを持ってきてくれて、“なんか後半思ってたんと違うわ!メロディ変えよう”ってもう一度練り直したり」

――アルバムを通して聴いてみて正直な感想なんですが、わりと真っ当なJ-POPだなと。

「J-POPですよ。HIP HOPにしようとは思ってなかったです。ポップなものを作りたいなと思っていたので。それがひとりのときにはできなかったっていうのもあり。正直メジャーの流通に乗るからとかそういう意識は全くしていなくて、たまたまそういうのが作りたい時期だっただけなんですけどね」

――M1「Cheepy」は80年代後期の日本語ラップのようなちょいダサ感が気持ちいいし、逆にM3「CLUB・DT」はグルーヴ感があって、リリックのモチーフもすごく“いま”っぽい。なんていうか、すごく引き出しが多ですね。

「いままでいろいろ聴いてきた音楽が結構アタマんなかのどっかに残ってて、それを思い出しながら“あんな感じのが作れたらなあ……”って。でも脱線したりもしますし、全然違う方向に行って、たまたまここに辿り着いたみたいな曲もありますし」

――アルバム全体の統一感みたいなものを追わず、いまあるものを全部出しちゃえ!みたいな感じですか?

「“かしわでできるカテゴリー、こんだけありますよ!”っていう紹介アルバムですかね」

――あと1ヵ月くらい早くリリースしてもよかったんじゃないですか?

「あー!「8月」があるから?」

――うん、M8「楽しいことしよう」とか夏っぽいトラックがたくさんあるし、アルバム全体が夏休みの気怠い感じがして、仕事したくなくなる(笑)。「8月」はいつごろ書いた曲ですか?

「これはね、7月でしたね。マーリー君と花火大会に行って。んで、“いまこんなオケがあって、それに合うかもしれないっすよ”って花火見ながら話してて、ばーっと歌詞書いて」

――そういう夏の気配がちゃんと封じ込められてる感じがしますよ。

「すごい切ない感じ出したいなと思ってて。逆に9月に聴いててもええかなって。“ああ!夏が行ってもうた……”みたいな(笑)」

――M10「I miss you」も歌詞を追ってるとバカっぽくて。大好きです。

「ネットで言う釣りってヤツですね。後半は相手のほうがめっちゃ食いついてて本気で好きになってるという」

――“どっちもバカだなあ”って(笑)。歌メロはラブコメっぽいですよね。

「言うたらこれもラブソングですよ。ラブソングで使われがちなタイトルにしたかったんすよ“I miss you”とか“I needs you”とか」

――順番がでたらめになっちゃって申し訳ないんですが、ハジユニさんとか、コペルさんは初仕事ですか?

「曲を作ったのは初めてですけど、イベントまわりはよくいっしょになるんで、落ち着く面子ですね。みんなで僕んちに集まったりして。「どうでもいいこと feat. HARZEY UNI, KOPERU」と「とりま行こう feat. HARZEY UNI」はがっつりラッパーさんに入ってもらったって曲ですね」

――確かにこの2曲はHIP HOPの文法どおりというか、わりとストレートなラップという感じがします。ところで「I miss you」の次に「みりん」ってリスキーな曲順は狙ってやってます?

「狙ってます(笑)」

――「みりん」は最初からリード曲として書いたんですか?

「僕はアルバム用やと思って書きました。でもエンジニアさんとかに、“これがリードじゃないかな……”って言われて。僕的にはすごい意外やったんですけど。作っているときの感覚は完全にアルバム曲のつもりで。だからこれひとりで歌ってるんですよ。“1曲くらいはひとりで歌ってるのもありかな”と思って」

――アルバムのなかではかなり異質というか、かしわさんのレパートリーとしてもめずらしいのでは?

「たまーにメンヘラになるときがあって、そういうときのばーっと書き溜めてる歌詞があるんですよ。そのなかのひとつです。いや、でも意外でしたね」

――聴き手の耳では、“これリードでしょう”感がありますけどね。

「いや作ってる側は、見えへんくなってくるんですよ。結構、素のまんまの切ない曲やし。特に笑わせるところもなく、トラックもギター、ドラム、ストリングスって音数も少ないし」

――まあ「みりん」ってタイトルとシングルのアートワークであの曲が聴こえてきたら二度見しちゃいますよね“あれっ!”って。

「ですよね」

――逆に「CLUB・DT」はトラックも歌詞もパーティーチューンといった趣きがあって。MVの撮影は大変そうですけど。

「あれ大変でしたね。写真撮ってちょっとだけ動いて“はい次!”って繰り返しで。1日に撮ってしまわなあかんやつやったんで“あかん!だんだん暗なってきた……”って」

――この曲はサラリーマン的な目線で描かれていますが、かしわさんはいま現在も会社員なんでしたっけ?

「ですね。いや、でもこの曲は完全に妄想です。よくマーリー君と“クラブの居場所って難しいよね”って話してて。HIP HOPのイベントって演者もいかつい人が多いじゃないですか(笑)。お客さんもギャルギャルした子らがおるし、僕もマーリー君も端のほうにおるんで」

――あー、僕も壁を探しちゃうタイプです。

「そうそうそう(笑)。なのに、たまにおるやないですか、めっちゃ踊ってるサラリーマンの人が。それを書こうと思って」

――とか言いつつ、かしわさんてラップバトルとか出ちゃうわけじゃないですか。そのギャップがすごい。

「あれはまた別です。てか、好きじゃないっすよ」

――T-Pablowさんとかめっちゃおっかないじゃないですか。なのにあの距離でやり合うわけでしょ?すげーな!と思って。

「あんなんめちゃめちゃ怖いですよ(笑)」

――今回のアルバムは特にですけど、リリックから受ける印象はまるっきりナード系なのに、高校生ラップ選手権とか出てるし、岸和田出身だし、どっちのキャラなんだろう?って。

「自分でもどっちがホンマの自分かいまだにわかってないですから」

――じゃあ、かしわさんのラッパーとしてのストロングポイントって何だと思います?

「うーん、ラップに関して言うと、韻に対するこだわりがゼロってところですかね。韻を踏むのがラップでもないような気がしてて。僕のなかでは、ラップって“歌のリズム重視バージョン”って考えてるんで。一文字だけでもリズムを作れるし。そんなにラップラップしてないように聴こえるのはそこでしょうね。人によってはラップじゃないって思う人もいるだろうし」

――でもラップをラップらしく聴かせるいちばんの近道ってやっぱり踏みにいくことじゃないですか。それをせずにラップできるって強みだし、個性だと思うんですよ。

「うん、韻にこだわり過ぎて、言いたいことじゃないことを歌うことになるくらいやったら踏んでなくてもいいやって思いますね。英語っぽい発音に崩したり、海外に影響受けてる感じも僕には向いてないだろうなって。こんな感じのヤツが変にそれっぽいラップをやってたら、そのほうがディスに捉えられるかもなって思ったり」

――では、そんなかしわさんのルーツミュージックってなんでしょう?

「SMAPですね。親がよく聴いてたんで、小学生くらいからずっと聴いてる気がします。なんせSMAPはアルバム曲が全部いいんすよね。いまでも聴いてます。バンドものだと、BUMP OF CHICKENとかくるり、アジカンですかね」

――こう言ってはあれですが、わりと健全な嗜好ですね。HIP HOP系の音に接近するのはその後ですか?

「はい。ケツメイシ、RIP SLYME、そこからちょっと掘ってキミドリとか、かせきさいだぁですね」

――おお!ぽくなってきましたね。ちょいレゲエのエッセンスも取り込みつつ。かせきさいだぁはリアルタイムじゃないですよね?

「かせきさいだぁは完全に後追いです。YouTubeとかで片っ端から聴いてて。ケツメからタサツに行って激ハマりして、関連でキミドリ、スチャダラ、かせきって感じです」

――なるほど、あまりゴリっとしたところには行かず、いい具合に日本語ラップのゆるいところををひと舐めした感じですね。『3人でかしわ』から聴こえるポップさってそのあたりの原体験から来てるんでしょうね。

「そうやと思います。でも最近ですよ。やっとその感じができるようになりました。ずっとやってみたかったことがあって、その周辺にいるのがマーリー君やったんで。そこまでHIP HOPを作りたいってのもなかったんで、たまたまこうなったっていうのはありますけど」

――じゃあ、次のアルバムを作るとして、それの音はもっとがらっと変わってるかもしれない?

「曲はちょいちょい書いてますけど、もっとアコギがジャカジャカ鳴ってるような気がしますね。最近、初期のU2とかアイリッシュぽいバンドを聴いてるんで。まだダンサブルじゃないストイックな音のやつですけど。今度はちゃんと雰囲気がまとまったアルバムを作りたいなとは思います。や、まだわかんないですね(笑)」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)



1人でかしわ

3人でかしわ。左からトム、マーリー、そしてかしわ



かしわ『3人でかしわ』
2019年9月18日(水)配信
AndRec




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