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2018.05.15

南波志帆インタビュー——ベストアルバム『無色透明』から聴こえる10年の歩み

2008年、15歳だったデビュー当時から、ネオ渋谷系やテン年代のシティポップに先んじる音楽性でリスナーを魅了してきた南波志帆。多彩な作家陣とともに歩んできた10年を総括するベストアルバム『無色透明』と、同世代の若手アーティストとのコラボレーションから、新しい南波志帆像に迫る。

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——デビュー10周年イヤーの真っ只中ですが、10年を振り返ってみて、ターニングポイントとなった出来事ってなんだったと思いますか?

「そうですね……そもそも振り返ってみると自分の声もコンプレックスだったし、歌手をやりたいけれど、この声は無理なのかなっていうので、ふつふつとした思いを抱えてたんです。いちばんのターニングポイントは私が音楽の父として慕っている、プロデューサーの矢野博康さんに出会えたことかなあって思いますね。矢野さんと出会って音楽の面白さを知ったし、自分で表現するっていう楽しさを見つけられたし、この声を武器に生きていこうと思えた大切なきっかけだったので」

——ベストアルバム『無色透明』を聴くと、最初から音楽的に難しいことをやってらしたんだなと改めて感じました。

「確かにいろんなアーティストの方やリスナーの方によく“南波志帆の曲って歌うの難しいですよね”って言われたりしてたんですけど、もう始まりがそこだったので、難しいとかがわからなくて普通に歌ってたという。だから、いま考えると厳しく育ててもらってよかったなあと思いますね。普通だったらあんまり経験のない中学生にやさしい曲を歌わせようと、無難になるじゃないですか?でも最初から高いものを求めてきてくださっていたので、そのハードルを毎度毎度超えていくうちに、自然と力が付いていったじゃないですけど、一から育ててもらったなって感じはありますね」

——中学生の頃の音楽的志向というと?

「もともと、私、歌よりダンス始まりの人生だったんですよね。それこそ3歳のときからジャズダンスを始めて、そのダンスの先生が洋楽しか使わない先生だったので、タワー・オヴ・パワーとか(笑)。初めて見に行ったライブもタワー・オヴ・パワーだったり」

——ダンスきっかけで見に行ったんですか?

「そうですね。後はブリトニー・スピアーズとかマイケル・ジャクソンとかプリンス、アース・ウィンド&ファイアーとか、洋楽を満遍なく浴びていたって感じで。父が音楽好きで、キリンジ(KIRINJI)がおうちで流れてたりとか」

――運命ですね。

「キリンジは、お兄さん(堀込高樹)とも、弟さん(堀込泰行)ともごいっしょしているんですが、いちばん父がテンション上がってましたね(笑)」

——すごい親孝行じゃないですか(笑)。そういう環境だからソウルやファンクを自然に吸収していたのかもしれないですね。

「“リズム感いいね”って、NONA REEVESの西寺郷太さんにも言われたりするんですけど、無意識に浴びていた音楽のおかげだったのかなと思いますね」

——初期のころから“南波志帆の音楽がすごい”って評価されていたと思うんですよ。

「自分がデビューしてから、まわりの方々はどういう音楽やってきたんだろう?って、そこから触れて掘っていくうちに“ん?なんてすごい方々と私はごいっしょしてたんだ”という感じで。初期の頃に“ネオ渋谷系だね”とか言われていたのも、当時は渋谷系ってものをリアルタイムで知らなかったので、“なんだろう?それ”って感じで。“フリッパーズ・ギターってどんな形のギターなんですか?”って(笑)」

——(笑)。

「知らないことが恥ずかしくて、泣きながら本屋さんに走って『渋谷系ガイド』みたいな本を買ってそこから掘ってって、“ああ、あの時代の音楽、すごい素敵だな。ハイセンスだな”っていうのを知っていって。“あ、自分が言われてたものって、こういうことだったんだ”っていうのを後から知った感じでしたね」

——そうやって音楽の背景を知ろうとしたから南波志帆というアーティストの幅が広がったのかもしれないですね。

「確かに。知らなかったら消えてましたね(笑)。知らないって結構怖いことだなと思っちゃうんですよ。知らないっていうだけで拒否反応示しちゃったりとか、そういうのはよくないなと思って」

——いわゆるジャパニーズ・ロック/ポップシーンの中でも作詞作曲にこだわりのある作家さんとお仕事をされているじゃないですか。なので、歌っていく中で理解度が深まることが多いようにも思います。

「ああ、まさにそうですね。ベストアルバムのタイミングで初期の頃の楽曲たちを改めて聴き直してみて、いま歌っても違和感がないというか、全然曲が色あせてなくて、そこがすごいなと思いましたね。で、どうしても当時は人間としての深みみたいなものが(笑)……まだ中学生とかだったので、分からずに歌ってる感じが面白いねっていう解釈だったと思うんですけど、自分がいま、24歳になって、人生の経験を積んでいく中で、この歌詞ってこういうことだったんだとか、知れていくのがまた楽しくて。だから名曲なんだなって改めて思いましたね」

——このベストには矢野さん作の新曲「夢の続き」が入っていることもポイントですね。すごく王道な曲じゃないですか。

「どこかにいまの自分だったら矢野さんの曲をどんな風に表現できるんだろう?とか、矢野さんの曲をもっと素敵に歌えるかもしれないって思いがあって。節目のタイミングで新曲ってなった時に、私をいちばん見てきてくれた、何者でもなかった南波志帆に価値を与えてくださった矢野さんの曲が歌いたいと思って。“いまの私の夢は矢野さんの曲をもう一度歌うことです”ってことをお伝えして、返ってきたのがこの「夢の続き」って曲で。だから10年経たいまだから歌えた曲でもあるし、矢野さんがこういう距離感で見てくださってたんだなって、もう愛しかこもってない曲だから。それを知って、ほんとに愛されてるなって感じましたね」

——ご自身のレーベル「sparkjoy records」を22歳の時に立ち上げられてからは、作家陣も変化してきましたね。

「そうですね。いわゆる親離れといいますか。ほんとに自分の親ぐらいの世代の方々といっしょに音楽を作って行ってた中で、自分も二十歳を超えたし、世代の近い方と、同世代ならではのグルーヴ感といいますか、それもできたら面白いんじゃないかなと言うことで。ちょうどNHK-FMで「ミュージックライン」という音楽番組を持たせていただいていて、今年4年目に突入したんですが、500組以上のアーティストの方々にインタビューしてて」

——しかもすごくジャンルの幅がある顔ぶれがゲスト出演されていて。

「大御所の方から新人の方まで、ジャンルも幅広くて、私自身もすごく勉強になってます。シンガーっていう立場だからこそこういうことができてるのかなっていうのもあって。自分なりに楽曲たちと向き合って、予習をしてこういう感じでこういう思いで作ったのかなっていうのをご本人と直でお話しできて、答え合わせができて、その作品に対する思いを知れて……もうずっと脳がフル回転してます」

——凄まじいエネルギーだと想像します。

「いやいやいや(笑)。そんな中で、この音楽すごく好きだなとか、この人と南波志帆がコラボしたらめちゃくちゃ面白い化学反応が起きるんじゃないかなっていうのを、自分をある種のプロデューサー的な視点で見ていて。そこで出会って、その方がたまたま南波志帆を好いてくださっていて、曲提供のお話になったり。最近では、音楽業界のお友達とか仲間みたいなのもできてきて、“こういう感じの曲歌いたいんだけど”って直接伝えて、“この曲志帆ちゃんに合うと思う”って、若い世代の方と、よりクリエイティヴな音楽を作ってるって感じですね」

——早い段階で楽曲提供を受けた方というと?

「赤い公園の津野米咲ちゃんは2012年に2曲、歌詞を提供していただいて。当初のプロジェクトでは、敢えて提供いただく前に本人に会わないようにしてたんですよ。というのも、南波志帆の生身を知らないことで、より想像を膨らませて、理想の少女像だったりとか、面白いものが生まれていたりもしたので。それから対バンとかで仲良くなっていくうちに、生身も知ってもらって。米咲ちゃんはずっと会うたびに“南波志帆、曲、書かせろ”って言ってて(笑)。ほんと病める時も健やかなる時もずっと言ってくれてたのは米咲ちゃんだったから。曰く、いい意味で人間くさくあるいまの南波志帆にいいんじゃないかというので、「月曜9時のおままごと」っていう曲を書いてくれて」

——確かにリアルな女性像かもしれません。

「あと、番組で出会ったというと雨のパレード。ちょうど彼らが「Tokyo」をリリースした時だったんですけど、同じ九州出身同士で東京っていうものの捉え方とかギラつき具合が似てるなって思って。だから“東京をテーマにした曲を書いて欲しい”っていうことで「ドラマチックe.p.」に収録した「City Lights」って曲が生まれたり」

——ちなみにロック好きが南波さんを意識したタイミングは「こどなの階段」だったと思います。サカナクションの山口一郎さん、Base Ball Bearの小出祐介さんという組み合わせが新鮮でした。

「でもあれもラッキー!って感じで(笑)。サカナクションとBase Ball Bearが共演してるライブがあって、それをたまたま見に行っていて、楽屋挨拶をさせていただいた時に、一郎さんと話してたら、小出さんが“南波志帆ちゃんだよね。めちゃくちゃ聴いてて”って。それ以前にもSNSでもすごくいいって言ってくださってたんですが、そのとき“俺、歌詞書くから、山口くん、作曲していっしょにやろうよ”ってなって」

——すごい急展開(笑)。それはやはり矢野さんがプロデュースする作家陣が素晴らしかったから“俺も南波志帆に曲書きたい”みたいなことかと。

「当初、こんなに豪華になる予定じゃなかったんです(笑)。矢野さんのお友達とか近しいアーティストの方とやっていこうって。でも、音楽業界の中に南波志帆ファンの方がたくさんいてくださって。で、噂が噂を呼んで、提供したいって言ってくださる方が未だにいてくれて、そういう出会いが引き寄せてくれたんだろうなって」

——すごく俯瞰で自分を捉えてますね(笑)。

「いや(笑)、嬉しいですけど、私自身も南波志帆をプロデューサー視点で見ているので、“南波志帆って面白いな”って他人事のように思っちゃう節がありますね(笑)」

——そう思えるようになったのって割と最近ですか?

「うーん……早い段階から、南波志帆っていう名前をもらった時から、自分の中で、“この女の子はこういう感じかな”っていう視点はすでに持っていて。それこそMCの内容だとか、アプローチとか、10代ながらに考えながらやっていたところはあって。それで考えすぎてがんじがらめになって、何が正解かわからなくなってしまって、自由に歌えなくなっていた時期も正直あったんですけど、そういういろんなバランスが自分の中でうまく取れだしたのは二十歳を超えてからという感じですね」

——そしていま、同世代の方とコラボレーションをしていて、リアルなテン年代のシティポップ感が出ているように思います。

「ありがとうございます。デビュー当時はちょっと早かったですよね(笑)。なので、ほんとやりやすい環境にはなってきたかなというのは何年か前から思ってますね、時代の流れ的に」

——10周年にちなんでのトークイベント「南波志帆 10周年ファン感謝祭!ありが10トークショー」も楽しそうですね。

「へんてこりんな文化祭みたいなことをやってるので(笑)。これはファンの方に感謝を伝えつつ、お世話になってる方にも来ていただいてありがとうを伝えるということで。この前のゲストだったフレンズのおかもとえみちゃんは、お互いゾンビが好きで、「恐怖のゾンビナイト」にしようと。冒頭でいきなりサイレンが鳴って、“ゾンビが紛れ込んでました!”みたいなアナウンスが流れて二人ともゾンビメイクで出てくる演出を考えたりとか(笑)。毎回最後に「ありがとうの手紙コーナー」で、これまで言えなかったことを手紙にしたためて読むってコーナーもあったりして、毎回楽しみながらやってますね」

——才能豊かな同世代の女子がたくさんいらっしゃるのではないかと。

「そうですね。デビューした15歳の時ってまわりに同世代が全然いなくて、たぶんデビューが早かったんでしょうね。で、18ぐらいから同世代のミュージシャンが増えてきて、ごいっしょする機会も増えてきて、みんな面白い感性をしてて、ふつふつとしたものを抱えてて共鳴しあって、仲良くなってって感じで。尊敬できるところがあって、お互いこの人を知りたいってなるので、そういった感じで同世代の面白い子達とどんどん仲良くなる感じは楽しいなって思いますね。なんか大先輩方とごいっしょしてるのもすごく勉強になったし、でも、なんかもう圧倒的な差というか、圧倒的大先輩だから、なんか色々許されて甘えられる面もあるけど、同世代だとある意味でシビアな目で見ていたりもするので、お互いに刺激しあえるんですよね、対等に。だからいいなと思いますね」

——新曲や次のオリジナルアルバムも楽しみです。

「アルバムなんですけど、年内を予定しております。もう着手はしていて、また新しいプロデューサーの方を迎えることになるんですけど」

——曲を提供したいという方も多いでしょ?

「ありがたいことに。“高校生の頃に「こどなの階段」聴いてました”という方々が同世代というのがあって。たぶんみなさんの思う南波志帆像があって、もし提供するならこういうふうにしたいっていうのがあるみたいで。そういうクリエイティヴを刺激させる存在であり続けたい、素材として面白い人であり続けたいなっていうのはありますね」

——11月のアニバーサリーライブも楽しみですね。

「11月のライブでは、いままでのベスト的な意味合いもありつつ、新作の、11年目からの南波志帆も提示していきたいので、いままでとこれからがちゃんと見える、ただの節目じゃないライブにしたいなと思っています」


(おわり)

取材・文/石角友香



南波志帆『無色透明』
2018年3月14日(水)発売
PCCA-04631/2,778円(税別)
ポニーキャニオン


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