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2017.12.13

ACIDMANインタビュー——最新作『Λ』とSAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”

豪華なメンツが顔を揃えたACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」を大盛況のうちに終え、結成20周年のアニバーサリーイヤーを締めくくったACIDMAN。そして間髪入れずに届いた約3年ぶり11枚目となるオリジナルアルバム『Λ(ラムダ)』。21年目を迎えた彼らのいまを、フロントマンの大木伸夫に語ってもらった。

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——昨年秋からACIDMANは20周年イヤーとしていろんな活動をやってきました。たとえばファン投票によるベスト盤の選曲が象徴するように、ACIDMANというバンドの表現していることがブレなく、ちゃんと伝わっている感覚があったんですが。

「僕も全く同じ感想ですね。特にベスト盤でファンのみんなが選んでくれた曲に、自分の中でも大事な曲が多かったから、さらに勇気をもらえた1年だったと思います。今まで自分の世界を描き切ってるつもりだったけど、この1年でいろんな人が支えてくれてることがわかったし、ファンのみんなに自分の思想が勇気を与えているんだと知ったから。僕自身は、ファンの皆さんから力をもらって、胸を張ることができた1年でしたね」

——11月23日には20周年イヤーの集大成であり、初の主催フェスでもある「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」も開催されましたが、そのプランを立てたのは、数年前に遡るわけですよね。その時、アニバーサリーの後のことも同時に考えていましたか?

「そうですね。考えてました。次が大事だなって思っていたので。20周年というのは、お客さんに対しての感謝でもあるし、自分たちの音楽の再構築でもあったと思うんです。でもそこで終わりになるのは嫌だったので。結局、曲はずっと作っているし、やりたいことはまだ満たされてない。だとしたら20年の次のことが大事だと。そこに視野を置いてました」

——そういう意味では、今回のアルバム『Λ』はフェスから間を空けずにリリースすることを考えていた?

「それをまず最初に考えていましたね。とにかくフェスの後にすぐ出したいと。20周年で終わったんじゃなくて、すぐに次が始まっているということを見せたいという」

——ということは、アルバムにも“新しいはじまり”というモチーフがあったんじゃないかと思うんですが。

「そう意図してわけではないけど、確かに言われてみるとそう思いますね。リセットでもないし、20年というひとつの区切りを迎えた世界を、僕は、はじまりと考えていたのかもしれない」

——そのことは、大木さんがずっと追求してきた宇宙や生命」のような大きなテーマやモチーフと、どういう関わりがありましたか?

「今回のアプローチは、言葉がシンプルなんです。それは意識的でも、無意識的でもある。毎回そうなんですけれど“自分にはこういうことしか歌えない”って改めて思うんですよ。映画を観ても、本を読んでも、何に感動するかっていうと、圧倒的なリアリティで死がちゃんと描かれているもの。人が目を背けたくなるものをちゃんと描けているものに僕は感動してしまう。“これしかできない”ってことが再確認できた1年なので」

——この1年の間に「最後の星」、「愛を両手に」、「ミレニアム」と3枚のシングルがリリースされています。これらはアルバムにも収録されていますが、先に『Λ』の全体像があって、これらの曲を作っていったのか。もしくは曲が先にあったのか……

「完全に後者ですね。フェスの後にアルバムを出そうというのは決めてたんだけど、アルバムのために作った曲ではなくて。アニバーサリーの中でシングル三部作のことを考えていました。アルバムの全体像を考えたのはその後ですね。「ミレニアム」を録り終わったくらいからです」

——では、タイトル『Λ』の意味は?

「これは、前からアルバムのタイトルとしてたくさんストックしてある言葉のひとつで。シンプルに今回のアルバムが11枚目で、ギリシャ文字の11番目がΛであるというところですね。あとはACIDMANのAでもあるし、宇宙定数を現す記号という意味もある。ラッキーな言葉だから使おうかなって思ったけど、あまりにもストレートかなって思っていて。ちゃんと決めたのは数ヶ月前ですかね。アルバムに「Λ-CDM」という曲があるんですが、曲名はΛ cold dark matter(ラムダ・コールド・ダークマター・モデル)の略で、その言葉を発見して、僕がずっとテーマにしてきたダークマターにまつわる言葉なんだってリンクして。その瞬間にアルバムトイトルを『Λ』にしようって決めました」

——結果的にいろんな符号が合わさったんですね。ということは、「Λ-CDM」は表題曲ともいえる重要な曲であると?

「とても重要ですね。もとはインストゥルメンタルのストックが10曲くらいあって、その中のどれかをアルバムに入れよう?くらいだったのが、このタイトルになってから、これに合うものにしようって。宇宙のはじまりからダークマターをイメージして曲を作っていきました」

——Λ cold dark matterって、ビッグバンとか宇宙のはじまりを探求する中で発見された物質なんですね。で、前作の『有と無』には、死後の世界や、死を越えるというテーマがあった。終わりを描いたアルバムの次に、はじまりを象徴するタイトルがついている。そこにも符号があるんじゃないかと思ったんですが。

「ああ、そうかもしれないですね。でも、意図的にそうしたというよりは、むしろあまり意識はしてなかったけど。ただ、無意識には必ず何かの力が働いているので、そこで得られたものだったかもしれない。そういういろんなものが重なり合って、形になったんだと思います」

——「Λ-CDM」はインストゥルメンタルではあるけれど、決してインタールード的ではなく、とても存在感がある。個人的にはこのアルバムのベストトラックです。

「僕も大好きですね」

——この曲に歌を入れなかった理由というのは?

「まあでも、もともと「Λ-CDM」という言葉に出会ってから、インストにしようと決めて作り始めたので。歌が入る余地はなかったです。ダークマターという全く観測のできないものへ挑む曲になってるので。目にも見えないし、この地球上でいまだに誰も手を付けられない問題のタイトルなので。音でシンプルに表現するしかないと思いましたね」

——11曲目の「光になるまで」にも「Λ-CDM」に似たマインドを感じます。

「ああ、おっしゃるとおりですね。その2曲が、僕の中でいちばん自分のエゴを曝け出した曲です。それ以外は、聴きやすさとか、バランスとか、歌詞の言葉とか、いろんな脳を使ってるんですけど、その2曲は非常に感覚的に作りました。長過ぎちゃうから短くしようとかも、一切排除して。とことん満足するまでやった」

——「光になるまで」は、どういう風に作っていったんでしょう?

「実は今回のアルバムの中ではいちばん古い曲で。昔「廻る、巡る、その核へ」っていうすごく長い曲を出したんですけれど、そのパート2という意味の「2」という仮題で10年くらい前に作ったのがこの曲で。メロディーだけ僕の中にずっとあって、自信もあって。それは売れるとかみんなに響くぞっていう自信じゃなくて、とてもエモーショナルで個人的に好きだという意味で。「廻る、巡る、その核へ」に続く大事な曲だったので、ここぞというタイミングしかないと思って寝かせてて。で、今回の21年目に華々しくやるには相応しいと思って歌詞を書き始めたんです。最初は「廻る、巡る、その核へ」みたいなマニアックでストイックな歌詞を書いてたんだけど、これは違うなと思って。伝えたいものを真っ直ぐにそのまま書こうと。その歌詞が採用されてる感じです」

——あえて平易な言葉を選んでいる?

「選びましたね。それは全体的に意識しました。いままではアート的な感覚で言葉を選んでいたんだけど、今回は伝えたいものをむき出しにしていきたいなって。それが如実に出た曲ですね。アート性を消しちゃうかなという不安はあったんですけれど、客観的に聴いてみたら、むしろアート性が深まった感覚があった。それがすごく嬉しかったですね。アートって、ビジネスでもなければエンタテインメントでもない。人の生き様の表現だと思うので、それが描けてるような気がしてます」

——大木さんは常に「自分が表現してるものの核心はずっと変わらない」と言ってますが、この「廻る、巡る、その核に」と「光になるまで」はどうでしょうか?

「「廻る、巡る、その核に」に関しては、どこかしら自分の表現の中に“こう見せたい”と考える部分が強かった気がするんです。格好つけていた部分というか……それはそれで素晴らしいものができたと思うんですけれど、今回はそれを全く考えてない。本当に自分の思いそのままですね。なぜ自分は生まれたんだろう、何故死ぬんだろう、この後どうなっていくんだろう、永遠に続いたとしても永遠って何なんだろう、永遠に続かないとしたら、終わっていくだけの生命なのか、何なんだろうって。そういう心の嘆き、知りたい欲求、それをそのままストレートに描いているのが「光になるまで」なんですね」

——「Φ〜introduction〜」から「白い文明」というアルバムの始まり方にはどんなイメージがありましたか?

「最初は「白い文明」を1曲目にしようと思ってたんです。「φ〜intoroduction〜」はそのイントロダクションですね。この曲名はディレクターのアイデアで。Φ(ファイ)はギリシャ語のアルファベットの 21番目なんですけれど、ACIDMANの21年目というのもあるし。ゼロという意味もある。それをいただきました。「白い文明」は、白という言葉に昔から憧れがあったんです。真っ白な色は無垢の象徴であり、それは自分が汚れていくさまとの対比であって。それが宇宙のはじまりだと思うんです。そこから文明がはじまり、どんどん希望を歌ってって、でも終わっていくことを嘆いて、最後の「愛を両手に」で“真っ白に 染まれ”と歌って終わる。愛で包まれてることに気付いていくという。そんな全体像でまとまればいいと思いました」

——「愛を両手に」には、ある種、エンドロール的なイメージがありました。ここで現実に帰ってくるというか……

「そうですね。この曲は小林武史さんにプロデュースしてもらったんですけど、曲を作ってるときは、アルバムのどこに入れるかなんて考えてなかったんですけど、最後に入れたらすごくいいなって気付いて。まさにエンドロールというか、グーッと締め付けられたものが、一気に愛で包まれる。小林さんがそこまで予想していたとは思わないけど、人間離れしてる感覚の人だから、この曲をアルバムのラストに置いたことで、答え合わせはできたのかなとと思うくらいで。改めて聴いてみても、この曲のイントロが鳴った瞬間、このアルバムを素晴らしいものとして受け入れてもらえる、感じとってもらえるゴールになると思った。あれがあるのとないのでは全然違いますね」

——このアルバムって、ACIDMAN以外のバンドやアーティストだったたら“これをラストに置こう”というタイプの曲が5、6曲はあると思うんです。

「ああ、そうかもしれませんね」

——でも、この曲で終わることにちゃんと意味がある。

「「愛を両手に」以外はもはや考えられないですね。現実に帰ってきて抱きしめられる感じは、召される瞬間だなって。昇天しましたね。高次元と繋がるような感覚になったというか」

——アルバムの中では「ユートピア」もお洒落で洗練された曲調で、ACIDMANのセンスを示すと思ってるんですが、この曲はどういう位置付けでしょう?

「この曲もかなり前からありますね。最初の段階からあって、そこから漏れていった曲もあるけど、自分の中では好きな曲で。この曲も、これがあるのとないのとでは、違うアルバムになってしまうというか。僕としては、自分の言いたいことはひとつなんだけど、幅の広さは見せたい。こういうジャジーな音楽は大好きだし、充分濃くできたと思います。激しい曲も好きで、バラードも好きで、こういうジャジーでハイセンスなものも好きなんで。それを全て表現したいという」

——SuchmosがACIDMANの曲でコードを覚えたという話を聞いたんですが……

「彼らと対バンしたときに「プラタナス」って曲が好きですって言ってくれて。僕も意外でしたけど、それも嬉しかったんで、影響があるかもしれない。でも、自分はお洒落さよりも思想が大事で、その生きざまが格好いいって言ってほしいので、Suchmosはそういうことを感じてくれてると思うし、彼らもそういうバンドだと思っててるんですよね。たまたまお洒落なイメージがあるけれど、ほんとにロック魂のあるバンドなんで。本当、嬉しかったですね。だから勇気や自信を持てた気がします」

——アルバムを聴いて、大木さんの歌の表現力も印象に残ったんですけれども。大木さん自身は自分の声や歌についてどう捉えていますか?

「僕はもともと声にものすごくコンプレックスがある人間で。自分は歌が下手で恥ずかしくて、もともとヴォーカリストとは思っていなくて。でもいろんな人に褒めていただいて、支えられてるという気持ちが強いですね。それで自分が胸を張れてるというか……ただ、今回特に歌がよくなったっていろんな人に言われて。小林さんがヴォーカリストとして僕を呼んでくれたというのもあるかもしれない。2年前に六本木でやった「InterFM897開局記念〜 897 Sessions 〜」が小林さんとの初めての出会いなんですが、そこで小林さんは僕をヴォーカリストとして評価してくれた。その後に犬島(2016年10月に開催された「円都空間 in 犬島」」)に呼んでくれたときは、Salyuさん、Charaさん、安藤裕子さんという日本を代表するめちゃくちゃ歌が上手い人の中に、ハットのおじさんが選ばれた(笑)。勇気のあるキャスティングですよね。もちろん、彼女たちほどうまいとは思ってないけど、自分の声に自信持っていいんだなっていうのは最近思うようになりました」

——まさにSalyuさんと大木さんって、どこか対照的なところがあると思うんです。というのは、Salyuさんも超常的なもの、目に見えないものを表現する能力を持ち合わせてるし、大木さんの歌にも、そういう目に見えないものにアクセスするための響きみたいなものが備わっていったんじゃないかと……

「どうだろう。考えたことないなあ。ただ、おっしゃるとおり、僕は超常的なものを表現したい欲望はめちゃめちゃ強くて。あと、実感があるんですよね。明らかにこの世界と違う世界があるのがわかっている。だから僕の場合は曲でそれを表現しているんですよ。声だけで媒介になってるというより、メロディーと音の響きと共に歌でアクセスしている……目に見えない遠くの星のどこかに響いている。物質を超越している生命体にアクセスしてると思うんです。そのつま先くらいまでは手が届いている自信があって。その答え合わせの旅に出ている感じですね。だから、声に関しては、自覚的にやってるというより求道的な感覚が強いです」

——音楽を表現することで目に見えない世界にアクセスできている感覚は、バンドを続けていく中で強まっていますか?

「日に日に強まってますね。最初は趣味だったんですよ。小学校くらいからSFマニアでオカルトマニアだったんですけど、最初は音楽とリンクなんかしてなくて。ただ格好いいから、モテるから、気持ちいいからってバンドを始めたんですけど、どんどんそれが密接に繋がって混ざり合っている。目に見えない世界のアプローチするにあたって、音楽がいちばん大切なものになっていますね」

(おわり)

取材・文/柴 那典



ACIDMAN『Λ』
2017年12年13日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/TYCT-69126/3,500円(税別)
通常盤(CDD)/TYCT-60112/2,800円(税別)
Virgin Music


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