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特集
2017.11.01
特集 スピッツ30年のクロニクル

『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』アルバムレビュー
(後編)

シングルコレクションで知るスピッツの歩み

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スピッツのシングルコレクション『CYCLE HIT 1991-1997』、『CYCLE HIT 1997-2005』いよいよSMART USENに登場!



スピッツのシングルコレクション『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』アルバムレビュー。いよいよ最新の『CYCLE HIT 2006-2017』へとやって来た。この箱の中身に関しては、バンドが直面した危機を無視しては語れないだろう。

映画『ハチミツとクローバー』主題歌として青春の風景に寄り添った「魔法のコトバ」、メッセージ色を前面に押し出した「ルキンフォー」、スキマスイッチの大橋卓弥と植村花菜をコーラスに迎えた「群青」など冒頭は快調に楽曲が続く。しかし2011年、この国を東日本大震災が襲う。この未曽有の災害を前に多くの表現者は言葉を失くすことになる。自分たちは何のために音楽をやっているのか? 音楽に一体何ができるのか?……思い悩む雌伏の日々は、やがて新しい生命力を呼び覚ましていく。

震災後最初のリリースとなった「さらさら」は哀しみのトーンを引きずりながらも前を向こうとする清澄な一曲。「雪風」、「みなと」といった楽曲も淡々とした日常性の中にふっと裂け目を垣間見せる瞬間があり、草野の創作が新たなフェイズに到達したことを感じさせる。ちなみに原田真二の「タイム・トラベル」のカバーでは、草野のセクシーなヴォーカルを堪能することができる。「愛のことば -2014mix-」は1995年発表の『ハチミツ』収録曲の19年ぶりのニューミックスとなる。

そして本作最大の聴きどころとも言える3曲の新曲。結成30周年を迎えたスピッツが鳴らす最新の音、そして現時点での結論と呼べる言葉と歌がここには示されている。まず「ヘビーメロウ」。「チェリー」を思い出すイントロはまさに彼らの黄金律。ヘビーだけどメロウ、ヘビーかつメロウという形容もスピッツそのものを言い当てていて見事である。「歌ウサギ」は10月28日公開の映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』のための書き下ろし主題歌。主演の広瀬すずをフィーチャーしたショートムービーも公開されているが、永遠に色褪せない恋心の輝きを描かせたらやはり彼らの右に出る者はいない。そしてこの3枚組コンピレーションのラストを飾る「1987→」。1987とはバンドの結成年であり、当時のままのビートパンクに合わせて“それは今も続いてる/泥にまみれても”と30年後の衝動を歌う。過去を背負い、未来を見据えたスピッツとしての決意表明が締めに置かれているというのは非常に意義深いことだと思う。

それにしてもこのDISC 3を通して聴くと奇妙な感触に襲われる。というのも個人的には最近の楽曲に近づくにつれ、曲の味が強くなっていくような印象を受けるのだ。それはアレンジが濃厚になったという意味ではなく、スピッツ自体の持ち味に忠実になってきたというか、素材の風味をそのまま生かす方向に進んでいるというか。いわば“スピッツはスピッツだ”という覚悟と諦念と開き直り。そういう意味でこの盤に副題をつけるとしたら“覚醒篇”になるのかもしれない。

さて、3段お重に入った全45品の満貫全席、お楽しみいただけただろうか? 音楽のCD作品をお重に入ったおせち料理にたとえることに違和感を持たれた方もおられるかもしれないが、そこはスピッツだからという点をご考慮いただければと思う。四季折々の花鳥風月を美しい日本語と日本人の琴線に触れる旋律で編み上げたスピッツの音楽は、本作によって改めて“にほんのうた”の王道を歩んでいることがわかる。草野マサムネの立ち位置は、作曲家としては中村八大から山田耕筰や瀧 廉太郎などにつながる系譜の上にあり、詩人としては松本 隆から永 六輔、野口雨情や北原白秋、はては万葉集、古今和歌集あたりまでルーツを辿れるところがある。そして4人で鳴らす音は平成の風俗を反映してロックであるが、それは時代の歌=流行歌を体現しているということである。日本人のDNAを色濃く受け継ぐ彼らの音楽は、30年の歳月を経て色褪せるどころかクラシックとしての艶と光沢を纏いはじめている。

ちなみにCD3枚がセットになった『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』は2017年内限定出荷商品となっている。新年、晴れやかな気持ちでお重を開けるようにスピッツの音楽を楽しみたいという御仁はぜひお早めに入手されたい。

(おわり)

文/清水浩司



スピッツ『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』
2017年7月5日(水)発売
UPCH-7329〜7331/3,900円(税別)
ユニバーサル ミュージック


スピッツのシングルコレクション『CYCLE HIT 1991-1997』、『CYCLE HIT 1997-2005』いよいよSMART USENに登場!





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