世界を駆ける

かつて“世界に通用するロック・バンド”を目指しながら歩みを始めたLOUDNESS。その視野は、結成から満34年を経た現在でも世界をとらえている。この原稿を書いている現在も、ちょうど全米ツアーの真っ最中だが、日本が誇るべきこのバンドに対する国外での注目度は、今ふたたび上昇傾向にある。去る7月にはスペインのバルセロナでの巨大ロック・フェスに出演している彼らだが、その際のことを振り返りながら、二井原実は次のように語っている。

「7月に行われたのスペインのフェスでも、JUDAS PRIESTやSCORPIONSみたいな大御所がたくさん出ているなかで、ヘッドライナーに近いところに我々の出番が組まれていたりして、自分たちが求められてるんだな、という実感がありますね。めずらしいものとして注目されてるんじゃなく、LOUDNESSそのものが求められてるな、と」

この言葉を受け、高崎晃も次のように言葉を続けている。
「ずっと頑張ってきた成果がようやく出てる気がしていて。俺らはその日、JUDAS PRIESTと同じステージで、彼のひとつ前に出演したんですよ。もう少し頑張ったらヘッドライナーまで行けるんじゃないか、というところに来てるんです。日本国内だけで活動してた時期にしても、日本にだけ向けて作るわけじゃなしに、常に世界基準で作品を作り続けてきたつもりだから、それがだんだんと実ってきたというのはあると思うんです。今はインターネットのおかげで、YouTubeとかでも俺らの曲が聴けたりするわけで、それを通じて知ったという人たちもいるんだろうし」

それこそ『THUNDER IN THE EAST』が世に出る以前、欧米のヘヴィ・メタル・ファンは、いわゆるファンジンを読み漁りながら情報を手に入れ、彼らの音源についても日本から入荷する割高な輸入盤を購入したり、それをカセットテープにダビングして交換するなどしていたわけだが、それと同じような現象というのが、今は電子の網を通じて広がっているというわけだ。加えて、80年代に少年だった世代が大人になった今、あの頃のバンドがふたたび強く求められているという傾向がある。二井原はこんなふうに説明している。

「ここ数年、僕らの同世代のバンドたちの動きというのがすごく活発で、QUEENSRYCHEにしろ、CINDERELLAにしろ、TESLAにしろね。M?TLEY CR?Eは残念ながら年内をもって終わってしまうという話だけど(注:世界展開されてきたフェアウェル・ツアーを年内に終了するが、バンドが解散するわけではないとの説もある)、80年代に活躍したそういうバンドたちが、ものすごく精力的にツアーをしてたりするから。オリジナル・メンバーで復活してヘヴィな音でやってる同世代のバンドというのが、実はたくさんいるんですよ。それはやっぱり需要があるからこそなんだろうし、世界的にそういう傾向があるのかなと思わされるんですよね」

80年代、音楽のメインストリームを侵食したメタル・バンドたちの音楽は、いまやクラシック・ロックとして認識されているようなところもある。実際、彼らもそれは承知のうえだ。

高崎も「クラシック・ロックと言ったら、俺らからすれば60年代とか70年代中盤ぐらいまでのものというのを連想しがちだけど、こうして年月も流れてきて、いわゆる80年代メタルというのがもうクラシックになってきてるんだよね」と語っている。
二井原もまた「たとえばSLAYERとかも今や大御所じゃないですか。あそこまで極端な音楽でもそういう存在になり得る時代になってきている」と言う。
余談ながら、そのSLAYERは先頃行なわれた『LOUD PARK 15』でも堂々のヘッドライナーを務めているが、同バンドのフロントマンであるトム・アラヤは、彼ら自身がデビューする以前にはよくLOUDNESSのライヴにも現れ、二井原も当時から彼のことを知っているのだという。

当時から日本ではなく世界の音楽地図のなかにいたLOUDNESSは、今は世界を目指すのではなく、そこを当然の活動領域としながら闘い続けている。その動機について訊くと、高崎の口からは次のような答えが返ってきた。

「80年代の活動の結果というのが、俺らにとってはまだ不完全燃焼なんです。達成感がまだないんですよ。だからきっちり達成できるまで続けたいし、“もっとできるやろ?”という想いが自分らのなかにあるんで。だからやり続けてるんですよね。まあ、徐々に目指すべきものは見えてきてるんだけど、ここからはもう残された時間をほんまに大切にしながら、休まずにやれるところまでやるというか、どんどん突き進むだけという感じですよ」

ちなみに前出のSLAYERは、一昨年、ギタリストのジェフ・ハンネマンの他界という悲劇に襲われているが、存続の危機に瀕しながらもこの夏に新作を発表し、トム・アラヤはその動機について「ジェフをがっかりさせたくないという想いがあった」と述べている。LOUDNESSの場合も、やはりそこには2008年に他界した樋口宗孝への想いがある。高崎は語る。

「樋口さんとこのバンドの前にLAZYを一緒にやっていて。“世界的なロック・バンドを作ろうや”と言って始めたのがLOUDNESSなんですよね。だから彼の遺志を引き継いで、どんどん継承してやり遂げたいなというのはありますね。それは彼の音楽葬の時にも誓ったことだし」

さらに二井原も、「海外でやりたい気持ちは常にあったけど、今のようにちょこちょこ行けてない時期というのがあって。そんな頃に樋口さんは亡くなってしまったから、なんか志半ばという感覚があって……」と語っている。また、二井原は今後の活動のあり方についても、次のように述べている。
「いいコンサートをすると、かならず次に何かいいリアクションがある。そういう実感がすごくあるから、どんどん訪れてくるチャンスにちゃんと応えていきたいし、そこでいいライヴをやり続けていくことで面白いことになるんじゃないか、という気がしてるんです。しかもJUDAS PRIESTとかをはじめ、先輩バンドがまだまだ活躍してるわけですよ。僕らも頑張っていけば、いつかああいうところに行けるんじゃないかという想いもあるし」

LOUDNESSは現実をしっかりと見据えながら、しかも夢を捨てていない。さきほどの高崎の発言のなかには“残された時間”という言葉も出てきたが、それは終わりを意識しながら続けていくという意味ではなく、あくまで“行けるところまで行く”ということなのだ。彼はこんなふうにも語っている。

「仮にこの腕が言うことをきかなくなったりすれば、速い曲をやることには無理が出てくるかもしれないけども、LOUDNESSはスローな曲もやってきたしね。まあ将来的にサイドビジネスでお好み焼き屋とか出すことはあるかもしれないけど(笑)、音楽はやっぱりずっとやっていくと思う。もしも指が動けへんようになっても、ドラムやったらなんとかなるかもしれないし、歌うこともできるし、もちろん曲は作れるわけで」

こうした考えの持ち主である高崎だからこそ、同世代の音楽ファンたちに向けても厳しい言葉をくれた。
「50歳のやつが自分のことをジジイとかおっさんと思わんでええと思うよ。全然まだ50歳なんて若いんちゃう? だから“そんなに老け込まんと、もっと好きなこともドーンとやったらええんちゃうの?”というのはあるよね。スポーツ選手とかでも俺らより全然年下の選手が引退したりするじゃないですか。まあスポーツと音楽活動は違うかもしれないけど、俺らは結構しんどい音楽してるつもりだし(笑)、“みんな若いのに、もっとできるんちゃうの?”と思う時はある。だからもっと、同世代の人たちにも頑張って欲しいですよね」

ここで二井原が「今回の30周年記念盤とかについても、懐かしいと思う人もたくさんいるだろうけど、そう思う人たちにこそ今のLOUDNESSを観て欲しいというのがありますね。ずっと僕らは現役でやってますから」と話すと、高崎は力強く「しかも当時よりもパワーアップしてますから」と付け加えた。

実はこの先、結成35周年のアニヴァーサリー・イヤーにあたる来年にかけてもさまざまなビッグ・プランが用意されており、しかも次々と新たなオファーが各国から飛び込んできているというLOUDNESS。日本が誇るべきこのバンドは、世界を代表するバンドへの道を着実に歩んでいる。
(おわり)

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聞き手/増田勇一(ますだ・ゆういち)
音楽雑誌『BURRN!』副編集長、『MUSIC LIFE』編集長を経て、現在フリーライターとして活躍中。制作を手掛ける雑誌『MASSIVE』Vol.20(表紙巻頭特集=THE MORTAL)が10月13日に発売される。

“YOUNG

左:1982年8月号、中央:1984年6月号、右:1986年4月号

80年代の「YOUNG GUITER」誌の表紙から
協力:「YOUNG GUITER」編集部(シンコーミュージック)



 

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ISBN978-4-8456-2717-2
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http://www.rittor-music.co.jp/books/15313001.html

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