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特集
2015.09.11
『70年代シティ・ポップ・クロニクル』をめぐって

大滝詠一との出会い

“70年代シティ・ポップ”と当時の萩原さん自身の関わりが書かれた著書『70年代シティ・ポップ・クロニクル』。今回は萩原さんが現在に続く活動のきっかけとなった、大滝詠一さんとの出会いなどを語っています。お話の聞き手は田家秀樹さん。今回も音声版とともにお楽しみください。

“誰もやっていない音楽を日本に移植する”作業の中から
はっぴいえんどは出てきた

萩原健太、自著『70年代シテイ・ポップ・クロニクル』を語るの2回目である。
彼が洋楽ファンだった当時、胸をときめかせて聴いたアルバムを15枚選んで体験とともに紹介しているガイドエッセイ的評論。はっぴいえんどの『風街ろまん』に始まり、サザンオールスターズの『熱い胸さわぎ』まで各15枚についてのうんちくだけでなく、そのアルバムをより理解するための関連アルバムも紹介されている。合計100枚だ。
例えば、はっぴいえんどの『風街ろまん』の項には、高田渡の『ごあいさつ』や加川良の『教訓Ⅰ』も紹介されている。

「だって、当時は、高田渡もはっぴいえんども聴いてましたよね。今だと完全に分かれてる印象がありますけど、いわゆる細かいジャンル分けがない形で音楽に接してましたよね。あの頃は良かったなと、遠い目になりながら(笑)。アップル・ミュージックとか僕もよく聞くんですけど、ジャンル分けがものすごく細かいじゃないですか。“あれはどこにあるんだろう?”って、分からないものも多くて。最近はややこしいですよね。昔だったらランディ・ニューマンもトム・ウェイツも〈ロック〉だった。でも、ああいうのって今、ロックって言わないよね? なんか面倒くさいなって(笑)。それから、僕はいわゆる“狭間”にあるものが好きだったんだなっていうのは、書きながら確認したんです。60年代、歌謡曲みたいなものが幹としてドンとあって、それに対してサブストリームがあって――そこにも実はメインがあるんだけど――はっぴいえんどなんかは、そのまた狭間……脇というか、さらに、脇の脇(笑)。その辺りにいたんですよね。そういう所から出てくるもののほうが、面白かったのは確かですよね」

40年前の話である。今の音楽ファンには、分かりにくいこともあるのだと思う。誰もが“元祖”として評価するはっぴいえんども、当時は“脇の脇”にいた。そして、彼は、そういう音楽が好きだった。みんなが褒めるから、ではない。自分で探り当てた好きな音楽だった。それらは、今の時代に当てはめるとどんな存在だったことになるのだろう。

「答えづらいですよね……まあ、まだ日本で、定着してないサウンド・スタイルがあるとすれば、今、その辺にいるんじゃないですかね、そういう人たちは。あの頃、バッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプにしたって、日本でそういう音楽をやってる人はいなかった。はっぴいえんどは、そういう“誰もやっていないような音楽を日本に移植する”作業の中から出てきた感じはするので。もう少し前だったら、その感じはヒップホップ的なところにありましたし、今だったら、まあ、僕みたいなおじさんの目に留まらないところに新しい動きがあってくれれば……と思いますけど。と言いつつも、“ほんの2~3年単位で、何が新しいとか古いとか言ってる場合じゃない”って気持ちもあるんです。特に大滝詠一さんって人は、71年~72年くらいの段階でそういう境地に達していたんですよね。それは本当にすごい。今にして思えば大滝さんの音楽はたまたま聴いてたんですけど、それは、幸運なことだったんだなって思います」

音楽との出会いが人生を変えた。人生論雑誌風に言うとそうなるのだろう。ミステリーで知られる出版社の編集部員だった彼は、インタビューで会った大滝詠一と意気投合し、会社を辞めてこの仕事に入ったというエピソードは有名だ。

「大滝さんの70年代っていうのは、全然売れてなくてね……僕は売れてると思ってたんですけど(笑)。で、大変な思いをしている中で、自分が理想とする何かをつかむためには、全てを投げ打って、そのために集中するっていうような話を8時間くらいずっとインタビューで聞いた後、“やっぱり「好きなことをやる」のが大事なんだな”って思った。お金のためとかね、そんなこと言ってたらいけないなと思って、会社を辞めるんです。大滝さんのインタビュー終わって次の朝、辞表を出して」

第1回のインタビューで彼は“個人的な”という立場を何度か口にしていた。個人的な音楽との出会いや感動の記録。15枚の最後がサザンオールスターズの『熱い胸騒ぎ』で終わっているのもまさにそんな一例だろう。76年の夏、藤沢青少年会館で出会った“とてつもなく刺激的な音楽家との出会い”。それがサザンだった。彼はアマチュア時代のサザンの一員だったこともある。

「これは本にも書きましたけど、僕も“ミュージシャンやりたいな”くらいのことは思っていたんですが、桑田佳祐と会って “音楽家になるのはこういう奴だな”と。自分は聴くほうでいいや、と。評論家とかそういうことではなく、音楽は趣味にしようとその時は思った。で、桑田と会ったことで、僕は出版社に入って。その3年後くらいに、大滝さんに会うんです。でも、70年代っていうのは実際、ものすごいことが起こった時代で。学生として、僕はそこに接することができた。学生って暇じゃないですか(笑)。動ける範囲は狭かったですけど、テレビ見て、コンサート見てね、レコードは高かったので、あまり買えなかったですけど(笑)、いい時代を過ごせたなとは思うんです。それは絶対的なものではないと思うんですが……でも、この70年代前半、日本のこの時代の音楽には、やっぱり何かありますよ」

それが何なのか、話は来週に続いてゆく――。
(つづく)

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