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SMART USENの「ジュルナルクボッチのファッショントークサロン」、第21回のゲストはナノ・ユニバースの濱田博人さん



――先ほど渋谷のナノ・ユニバースさんにお邪魔しましたが、いま店頭にあるもので“これ面白いでしょ”って濱田さん自身が思える企画は?

濱田博人「そうですね、先ほど東京店でご覧いただいたブリーフィングさんとのコラボはやはり面白いんじゃないかなと思いますね。いや、きっかけはブリーフィングの中川さん(株式会社ユニオンゲートグループCEOの中川有司氏)とゴルフでごいっしょして、何かいっしょにやりましょうよっていう話だったんですけど、最近ゴルフで繋がってる人とよく仕事をさせてもらいますね」

――えっ!ブリーフィングのウェア?ってなりますよね。すごくインパクトがある。

濱田「僕も使ってるいるんですが、ブリーフィングは、もともとゴルフバッグやゴルフウェアは自社で手掛けてらっしゃっていて、しっかりした顧客もついているすごくいいブランドだなと思っていたんですよ。で、ちょうど昨年から我々もウィルラウンジというラインを立ち上げました。これはラウンジにも着て行けるスポーツウェアというイメージなんですが、スポーツからトラベルまで対応できるようなセットアップも手掛けるようになってきて、すごく伸びているし、もっと伸ばしたい。だけど、そこに広告宣伝費をかけるよりも、本物と組んでブランドのステイタスをあげたいなと思っていたところだったんです。これだ!って思って、ほんの立ち話で中川さんに“どうですか?”ってお声がけしたんです。そしたら“面白そうだね”って言っていただいて。もう翌週には企画書を持って行きましたから(笑)」

――最近ではブリーフィング自体も直営店を展開していますし、ウィルラウンジも機能性の高い特徴的なコンセプトがあって、すごく勢いのあるコラボだなと思いました。

濱田「ウィルラウンジは、もともと大人向けに作ったんですが、今回のコラボのおかげもあって、40代、50代のお客様が反応してくれるようになりましたね。ナノ・ユニバース自体は比較的若いイメージだったと思いますが、元『メンズクラブ』編集長の戸賀敬城さんをメンズディレクターに起用して上の世代まで幅を広げることができました」

――ウィルラウンジの特徴は、スタイリッシュでありつつ機能性も高いという点でしょうか?

濱田「そうですね。我々は、ラグジュアリースポーツラインと呼んでいますが、たとえば空港のラウンジにも着て行けるスポーツウェアというイメージです。僕がいま穿いているパンツがそうなんですが、伸縮性がすごく高くてぜんぜんストレスがないんです。そのまま飛行機に乗っても寛げるし、もちろん到着してそのまま仕事に行っても大丈夫ですし」

――なるほどちゃんとストーリーがあるんですね。東京西川との西川ダウンも然りですが、コンセプトがすごく理性的ですよね。理性的でありつつもちゃんとドラマがある。

濱田「やはり本物と組むことで消費者に信用してもらえるということでしょうね。それがナノ・ユニバースというブランドの価値を高めてくれるんじゃないでしょうか」

――今日、お邪魔した東京店が象徴的だと思うんですが、取り扱ってらっしゃるブランドの数がすごいなという印象があります。それは意図的なものでしょうか?

濱田「ナノ・ユニバース全体で見るとたくさんのブランドを手掛けていますが、やはり店舗によって変化を付けていますね。たとえば今日お越しいただいた渋谷の東京店は意図的にインポートを厚くしていますが、それが船橋のららぽーとではほぼほぼオリジナルの品揃えになっていたりするんです。というのも、ナノ・ユニバースはセレクトショップとしてはめずらしく、ワンブランドで展開しているんですね。僕自身がセカンドブランド、サードブランドに否定的だということもあって、都心だろうが、郊外だろうが、ナノ・ユニバースというひとつのブランドで戦いたいんです。もちろんセレクトショップですから、ロケーションやお客様にあわせて品揃えを変えればいいわけで、渋谷のウィメンズでインポートのGrace&Milaが売れましたってなれば、じゃあ、船橋店にも出してみようかという展開もあります」

――それにしても、ホワイト・マウンテニアリングがあり、ジュンヤワタナベがあり、Y-3、ブリーフィング、西川ダウンもあってと、すごく賑やかです。

濱田「渋谷は特別ですよ。インバウンドの需要もありますし。やはり一店舗一店舗がしっかりと会社に貢献できるお店であって欲しいんです。僕としては、宣伝のための店舗をやりたくない。そこで働いているスタッフが収益をあげているんだという意識を持って欲しい。その集合体が会社なんだということですね。こっちのお店が儲かっているからこっちのお店は損をしてもいいというのはあまり健全な考え方じゃないような気がするんです。僕自身ももちろんそうなんですが、やはりファッションが好きだからこの業界に身を置いているということもありますし、そういうシンプルな思いを共有しようよということはスタッフにも伝えていますね。決してファッションだけである必要はないけれど、自分の好きな分野に対しては一歩踏み込んでゆく気持ちがあって欲しいんです。だってそういう人生のほうが楽しいじゃないですか」

――店舗のスタッフのかたとおしゃべりをしていると、そういうニュアンスが感じ取れますよ。すごく熱量が高いというか、単純に“すごくいい会社なんだろうな”っていう雰囲気があるんです。

濱田「まあ、会社の評価体系としては減点主義ではないですし、“ブランド愛”っていう評価項目があるくらいですから。それは仕事を一生懸命やっているかということは別に、文字どおりどれだけ自分たちのブランドが好きかということもちゃんと見ていますよ」

――番組本編で、商品に機能性を加えることで新しいベンチマークを作ったという点でユニクロを評価していましたね。

濱田「彼らが作り出しているのは、もはやファッションだけではないと思っているんです。むしろ需要を作り出している。今年のトレンドがどうかということではなく、“こんなのがあったらいいよね”というものをクリエイトしている。クリエイティブの質が違うんです。そこがすごいなと思いますね。たぶん根底にあるのはすごくシンプルな考え方で、“こんなものがあったら買うのにな”という消費者の需要を自分たちで創出しているということなんです。もちろんナノ・ユニバースはユニクロになりたいわけじゃないけれど、ナノ・ユニバースがユニクロさんと同じように機能性を追求した商品を提案してもいいんじゃないか?ってことです。“毛玉ができないニットがあったら欲しくなるよね?”という発想から毛玉レスニットみたいな商品が生まれましたし。最近では“こんなのどうですか?”っていう提案がどんどん出てるようになりましたね。別に僕がやれって言ったわけでもないのに(笑)」

久保雅裕「なるほど、すごくいい循環ができているんですね」

濱田「そうですね。春シーズンにはお見せできるはずなんですが、機能性とか新しい付加価値を加えて、海外の工場の閑散期に生産して、コンテナの空きスペースで運んできて……そんなふうに1年くらいじっくり時間をかけて準備してきた商品もありますし。トレンドを追った商品ではないので、コストも抑えて、結果、それは消費者にとっても有益ですし、5年、10年というスパンで考えると僕らにとっても有益な取り組みになるはずなんです」

久保「5年、10年というスパンで会社の舵取りをするって、いまのファッション業界ではなかなか難しいことですよね」

濱田「僕が外資出身だったり、会社を立て直すために違う業界からヘッドハンティングされてきた経営者だったらできていなかったかもしれないですよね。たぶん1、2年かけてリストラして、減収だけど増益って数字を作って……みたいなことをやっていたと思うんです。僕はサンエー・インターナショナル時代から30年以上も三宅さん(TSIホールディングス代表取締役会長 三宅正彦氏)といっしょにやってきたわけですが、三宅さんもそんなことを望んではいないだろうと思ったんです。たぶん僕をこの会社の社長に送り込んだ意図は別にあるだろうと」

久保「そこは汲み取ったわけですね。セレクトショップって、アパレル出自の会社と小売り出自の会社に大別できるんだけど、そういう意味ではナノ・ユニバースはもともと小売りだから。でも濱田さん自身はアパレル出身なので、ものづくりのセオリーがわかっているということも強みですよね。OEM、ODMに頼らないものづくりができる」

濱田「OEMに頼るとスケールメリットは出せますけど、利益をシェアしなければいけない相手が増えるわけじゃないですか。となると、搾取じゃないですけど、消費者にメリットが還元できないんですよね」

――こう言っては失礼ですが、入社当時の濱田さんのエピソードといまの仕事への取り組みようがすごいコントラストですね。

濱田「ははは!いや、30年いろいろなことをやってきて、やっといまのミニマルなスタイルに辿り着いたんですよ。入社当時は、本当にモテ服以外に興味なかったですし、“メンズブランドなんて絶対やりたくないです”って言ってたくらいですから(笑)」

久保「当時はサンエー・インターナショナルだったわけですが、三宅さんはボディドレッシングとかピンキー&ダイアンみたいな女性を綺麗に、セクシーに見せるブランドが上手だから。やはり、そのあたりは経営者のカラー、ひいては会社のカラーというかね」

濱田「ナノ・ユニバースはメンズがメインのブランドではありますが、ちゃんと女性からも支持されるようなブランドになって欲しいなと思いますよ。まあモテ服とまでは言わないですけど(笑)。EC比率も高まってきてコスパもよくなっていますし。実は、ナノ・ユニバースのアプリでウェブ専用品って書いてある商品は原価率45%のものもあったりして、すごくお得なんですよ」

久保「中間コストがないぶん、消費者は質のいいものが買えるようになっているんですね。まあ、とは言えね……」

濱田「そうなんですよ。ウェブ専用品は、接客がなくてもお買い求めいただけるだろうというものだけを選んでいますし。本来、商品のよさって、ちゃんとした接客があって、試着して、それこそ先ほど言っていただいたような、スタッフの熱量みたいなものがあって初めて伝わるものですから。ナノ・ユニバースというブランドのステイタスもそうやって少しずつ高めていきたいですね」

(おわり)

取材協力/ナノ・ユニバース東京店
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき



■濱田博人(はまだ ひろと)
株式会社ナノ・ユニバース代表取締役社長。1965年熊本生まれ。89年、サンエー・インターナショナル入社。事業部長、執行役員を経て、2013年TSIホールディングス取締役、2016年から現職。趣味はゴルフ。

■久保雅裕(くぼ まさひろ)
ウェブサイト「Journal Cubocci(ジュルナル・クボッチ)」編集長。杉野服飾大学特任教授。繊研新聞社在籍時にフリーペーパー「senken h(センケン アッシュ)」を創刊。同誌編集長、パリ支局長などを歴任し、現在はフリージャーナリスト。コンサルティング、マーケティングも手掛ける。







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