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――Reolさんにとってのルーツミュージックは?

「私、3歳からピアノをやってたんですけど、小学校に入って吹奏楽部でトランペットを始めて。ずっとクラシックの系譜に乗ってたんですね。なので、能動的にオンボーカルの音楽を聴き始めたのが結構遅くって。それまでは“大会の課題曲だから聴く”って感じで、それこそポップスでも洋楽が多くて、ジャクソン5とかドアーズの曲を吹奏楽に落とし込んで吹くってことをやってました。みんなで「オペラ座の怪人」とかミュージカルを見に行ったりとか……。初めて自発的にJ-POPのCDを買いに行ったのは、YUKIさんの『joy』でしたね」

――それはいつごろ?

「たぶん小学4年生か5年生くらい。それまではTVから聴こえてきていた音楽でも、いいなと思ってCDのアートワークとかを見てみると、音とジャケがシンクロしてない感じがしちゃうことが多かったんですね。でもYUKIさんの場合は、ジャケにも惹かれたんですよ。最初は友だちが聴かせてくれて、“これ誰?”、“YUKIだよ”ってジャケットを見せてもらったときに、ミュージカルと同じような感銘を受けて、“これは総合芸術だ!”って思ったんです」

――すごい小学生ですね(笑)

「でもYUKIさんは本当に音も、ジャケも、MVもすべてがアーティストの手の届く範囲にあるように感じたんですよね。たぶんYUKIさんの場合は、“私はこの曲でこれがやりたい”という確固たる意思があるんだろうなって。“ああ、J-POPにもこんなアーティストがいるんだな”と。なのでYUKIさんから聴き始めてJUDY AND MARYまで掘り下げて聴くようになりました。そのあとは椎名林檎さん――というか、東京事変ですね。最初が「修羅場」だったので――にのめり込んで。林檎さんは、J-POPのフィールドではすごく高度なことをやってらっしゃるなと感じたんですね」

――ある意味シンパシーのような?

「なんだろう……すごく異色というか、私が知ってるJ-POP、J-ROCKじゃないなって。それこそ吹奏楽をやってたときの感覚がフラッシュバックして。音的にはジャズなどボーカルレスの音楽性も曲に落とし込んでいるし、そういう音楽理論をちゃんと知っている人なんだろうなと思って入り込んでいきましたね」

――実は、Reolさんて見た目とか楽曲から受ける印象よりもずっと健全な家庭で育ったんじゃないかなと思ってて。もっと不幸な生い立ちだったり、やさぐれたキャラを求められませんか?

「ははは!もっと“私ヤンキーだし!”みたいなことですよね?いや、よく言われるんですけど、全然不良とかじゃないんですよ(笑)」

――まあ、そうやって幼少期から音楽に触れられる家庭環境だったわけですからね。

「父が演劇をやっていたので地元に劇団やミュージカルの公演が来ると必ず見てましたね。幼少期からのそういう流れがあったので、音楽はあって当たり前で、自分にとっては能動的にやるものになっています。それはいまも同じです」

――で、2015年、れをる名義の『極彩色』をリリース、2016年、REOLとして『Σ』でメジャーデビューします。そして2017年解散、ビクターに移籍してReolとしてソロデビューするわけですが、この一連の流れを振り返ってみてどう思いますか?

「そもそも世に出てゆくなら、当時のタイミング的にもソロかユニットかどっちかしかないと思ってて。私、結構、白黒はっきり付けたいタイプなんで、ユニットとして世に出たら、死ぬまでそっちでって思ってたんですよ。だからREOLって自分の名前をユニット名に付けたし。ユニットとかグループって同じ目的に向かってがんばるわけじゃないですか。でもやっぱり脳みそが3つあるから考えることもそれぞれ違いますし、誰かがやめるっていうことを考えたとしてもそれはしょうがないなって。音楽以前に、ひとりの人間ですからね」

――なるほど。Reolとしてリスタートすることによって区切りを付けたということですね。そして2018年にミニアルバム『虚構集』を、10月にはアルバム『事実上』をリリースして、そこから半年もたたないうちに今回の「文明EP」と、すごいハイペースですね。

「自分でもそう思います(笑)。いや、2018年に関してはソロ活動を始動して1年目ということもあって、“とりあえず名刺を作らなきゃ!”って気持ちがあったのと、私的にはずっとユニットでやっていくつもりだったので“えーっ!いきなりソロ……”って。まあ、それはリスナーの人たちも同じ気持ちだったと思うんですけど。ただ、“ああ、これは作り続けないとやめちゃうわ”っていう恐怖心があったのは確かで。私の自信になってる部分って、それまで生み出してきた音楽なんですね。人の思惑は変わったとしても、自分のやってきたこと、残してきたものは裏切らないはずだし、だったらつらくても、それをエッセンスとして作り続けることが救いになると思ったんです。考える隙を作ると足が止まってしまうから……それが2018年という年だったんですよ」

――その判断は正しかった?

「はい。正しかったなっていまではそう思えるし、“REOLが解散して悲しい”だったり“Reolのソロが受け入れられない”とかっていう気持ちは時間が解決してくれるんですね。だとしたら、私は曲を作って、アルバムを出して、音楽で黙らせていくしかないわけじゃないですか。そうすることで、いまようやく、私も、まわりのスタッフも、リスナーも、みんながフラットな気持ちになれたと思うので、「文明EP」は、“これからReolの第二幕が始まります”みたいな意思表明なのかなって」

――今回の「文明EP」は文字どおりEPというフォーマットですが、アルバムとEPでは作品への向き合い方って変わるものですか?

「んー……そうですね、ミニアルバムだったらこう、アルバムだったらこう、EPだったらこの曲を入れたいなとか。精神的には『虚構集』のころがいちばんつらかったですけど」

――ソロになって1作目っていう見られ方をするわけですし。

「そう、やっぱりそこが難しくて。本当は私、「平面鏡」をリードにしたかったんですけど、編曲担当のGigaに断られてしまったり。まわりもみんなナーバスになっている時期ではあったので、そういう“やりたい”というエゴだけで突き進めなくって。まあ、『虚構集』は、そんな裏話もあったりして出来上がった作品なんですよ。特に「平面鏡」は配信シングルとしていちばん最初にリリースした曲なんで自分としても自信はあったんですよね。自分のソロとして作りたいもののかたちが作れたっていう実感もありますし」

――結果論ですが、そういう『虚構集』での試行錯誤が『事実上』を生み出すために必要なステップだったのかもしれませんね。『事実上』でいうと、「真空オールドローズ」なんかはこれまでとちょっと毛色が違うなって思わされたし、個人的には「秋映」がいちばんびっくりソングでした。こんなやさしい声で歌えるんだ!って。

「むかし作った『極彩色』というアルバムの最後に「染」という曲が入ってるんですけど、方向性としてはあれに近いですね。「秋映」は実際、ああいう位置取りの曲にしたいなと思って作ったので。『極彩色』当時は、バラードを歌い上げるスキルもなかったし、やっぱりバラードって怖いじゃないですか。アップテンポだったりハイトーンだったりは、誤魔化すのも容易いし。そういう意味ではスキルアップできたいまだから書けた曲だと思います。あとソロだからこそできた曲かなとも思いますね。Gigaが書くバラードってもっと違う感じ――「ミラージュ」をバラードとして捉えるならあんな感じ――なので、自分でバラードを書くならっていう引き出しですかね」



  

  



――Reolさんは、良くも悪くも、ネット出身、サブカル系みたいなニュアンスがあったと思うんですけど、『事実上』はメジャー感というか、もっと広義のJ-POPという捉え方になったような気がします。

「ソングライティングに関して言うと、すごくフラットな感覚だったように思います。『虚構集』を出して肩の荷も降りたっていう感じで。そうですね、メジャーというかもっと広い場所を見据えてという感覚は、それこそ『極彩色』くらいからありましたね。そもそもわたしの出身はニコ動だけど、精力的に活動していた期間は3年に満たないぐらいでまわりの人たちよりもずっと短いし。そのシーンで見出してもらったんだという自覚はありますけど、あまり当事者意識はないかもしれないですね」

――Reolというアーティストって類型化しずらいんですよね。ポップだし、ロックだし、ダンスミュージックの要素もあるし、インダストリアル、EDM、ミクスチャー、ラップとも言えるし……

「私自身、ジャンル分けしづらい音楽をやってるなって思いますよ(笑)」

――Reolさん自身は自分の音楽をどうカテゴライズしますか?

「強いて言うなら“デジタル歌謡曲”かな。えーと、私が林檎さんにシンパシーを感じたのは歌謡曲っぽさの部分なんですよ。実際、林檎さんは1980年代の歌謡曲に憧れがあるっていうことをインタビューでおっしゃっていて、宇崎竜童さん、阿木燿子さん夫妻のそれを自分ひとりで体現したいって。私は打ち込みとかDTM環境で作っていく音楽っていうものはボカロで経験しているので、その上で日本人になじみのある歌謡曲ベースに置きつつ、音はデジタルっていうことで」

――なるほど、デジタル歌謡曲っていい響きです。

「たとえば、Gigaの書いたトラックって洋楽のダンスミュージックっぽさがあると思うんですけど、だからってそのまま洋楽的なアプローチをするのはちょっと違うなって思うんですよ。最近の、J-POPのR&Bシンガーの人とかだと、ある意味、上手すぎて洋楽との違いがなくなっちゃってる気がするんですよね。結果的に個性が失われていたり。私はロック寄りの衝動的な歌い方をするほうなので、ダンサブルなトラックでそういう歌い方をしてるっていう部分は個性だと思ってますけど」

――ReolさんはMVとか、ライブでの佇まいとか見せ方、そうしたビジュアル面もアーティストとしてのストロングポイントになっていると思うんですが、Reolさん自身は、MVとかジャケットの自分の姿かたちは気に入っていますか?

「どうなんですかね(笑)。私、背が低いじゃないですか。単純に背が高いほうがステージ映えするのにって思いますけど。逆に、私って決して甘い顔だちではないので、鋭さとか攻撃的な感じっていう意味ではみんなが想像しているReolらしさは出せてるかなって。でも素の自分には全然自信がないですよ。アイコン的な魅力もないと思いますし。だから着飾ったりするわけで」

――いや、むしろめちゃくちゃアイコニックだと思いますけどね。キャラも立ってるし。だからみんなニコ動やらYouTubeでReolを見るし、ライブも盛り上がるんじゃないかな。

「うーん……正直、ある時点からみんなが求めているReol像に私が寄せていってるのか、そうじゃなくて自分の趣味でそういうReol像をリードしていっているのかわからなくなっちゃったんですよね。確かに最初のころは“私のなりたい姿はこれだから。そうじゃない方向性を求めてる人はごめんね”っていう意識があって、それは“素の自分”だったと思いますけど、いまは、なりたい姿/求めれている姿、の境目が曖昧になっちゃってますね」



  

  



――さて、最新作のタイトルは「文明EP」ですが、ずいぶん大きく構えましたね。

「私、数字に執着する傾向があるんですけど、今回のEPは4曲入りなので、4ていう数字でいろいろ考えてたんです。四大文明とか言うじゃないですか。この4月で元号が変わりますし、来年2020年だし、時代の変わり目なんだなって。私がそう感じてるだけかもしれませんけど、AIだ、VRだって文明の進むスピードが上がってるような気がして、“文明っていま書くべきテーマかも”って思ったんですね」

――4曲できあがった時点でタイトルを考えたんですか?

「いや、「文明EP」というタイトルありきで楽曲を作りましたね。ちょうど「ウテナ」のトラックができあがって、曲名も決まってないタイミングで「文明EP」というタイトルが出てきました」

――リード曲は「ウテナ」ですよね?ウテナという言葉は?

「塔とか高殿(たかどの)っていう意味があるみたいです。仮タイトルは「塔」だったんですけど、もっとキャッチーな言葉がないかなと思って、ウテナって言葉を見つけました」

――この楽曲で描かれている世界観って、Reolさんのなかに具体的なイメージがあったんですか?

「そうですね。現代のように発展した世界ではなくて、もしかしたらインダスとかメソポタミアみたいな河の畔で、日々の営みがあって、進化するために何かを作るっていう情景をイメージしていましたね。人って、欲の行き着く最後に高い場所を作るんですね。物見櫓とかビルだとか。そういう人間の見栄と進化を表現した曲です。この曲を1曲目に入れようって決めていたので、始まりとか創造を告げる曲とも言えます」

――個人的にはバベルの塔のような……ある種、RPG的な情景を思い浮かべたりしてました。

「あ、でも私のイメージでは、古代文明の風景のなかに現代人がぽんっ!て出現した感じなので、史実じゃなくてそういう架空の世界のつもりです。高い建物を作りたがるのは現代人も同じなので、現代人が古代の何もないところに行ってもきっと高い建物を建てるんじゃないかな」

――難しい言葉遣いをしますよね。僻事(ひがごと)、洒落頭と書いてしゃれこうべと読んだり。こういうフレーズってぱっと浮かぶものですか?

「中学生のころとか、図書館の本を片っ端から全部読んじゃって、読むものがなかったから国語辞典を読んでましたね。日本語特有の、ひとつの言葉にいろんな意味があったりとか、微妙なニュアンスを掘り下げるのが好きだったので、新しい言葉を探したり、あてはめたりする作業は全然苦にならなくて、わりとナチュラルにフレーズが浮かんできますね。あと「ウテナ」に関しては、ラテン音楽っぽい雰囲気を出したくて、“ラ・ステラ”みたいなラ行のフレーズを多く使いました。音的なギミックがない曲って意味がないと思うし。“だったら詩でいいじゃん”って」

――ギミックといえば、「たい」のラストで“いっしょ、いっしょ”あとの“ハッ!”っていうブレスはハプニングですか?

「あれわざとです。マスタリングが終わってスタッフに納品データを渡したときも同じこと言われました。“あれノイズですか?”って。“いや違います”って(笑)」

――そうなんだ。事故ったテイクをそのまま生かしたんだと思ってた。あれ、妙に生々しくて何回もリピートしちゃうんですよね。

「特にアルバムとかだと、流し聴きみたいになっちゃうじゃないですか。だからこう、はっとさせる音を入れようと思って」

――「たい」は90年代の、プロディジーとかケミカルあたりのハンマービートぽい感じがいいですよね。詞は無邪気というか、非常に正直だなと。“最後は愛かお金だし”、“結局顔は大事だし”、“褒められたい 愛されたい”って。

「Gigaもそうですし、仲間内のみんなが私の書く詞を賢いってよく言うんですよ。そのせいかわかりませんけど、“バカっぽい曲書ける?”って言われて。それでできたのがこの曲です。“たい”は英語で言うとWannaなんですけど、「ウテナ」は豊かになるための過程で、「たい」は豊かになって欲望に忠実に生きていけばいいっていう段階を描いてますね」

――Reolさんは硬派な女に憧れるんですか?

「まあ、そうですね(笑)。ストイックな人が好きです。何かに打ち込んでて――私だったら音楽ですけど――筋が通ってる人が好き。日和見な人はあんまり好きじゃないですね。突き抜けた八方美人は、それはそれでかっこいいと思いますけど(笑)」

――で、「シンカロン」は豊かになった次の段階ってことですか?

「人が神を作ったのか、神が人を作ったのか……神の怒りに触れるとアトランティスみたいに沈められちゃうじゃないですか。それ以上の進化ってどうなっちゃうんだろうっていう情景を描いてます」

――まさに現代の日本がそのタームにいるのかもしれませんね。中盤の“反時計回り”からのパートの譜割りがかっこいいですよね。

「ですよね。あそこでアレンジも変わりますし」

――ラストの「失楽園」はどろっとした情念が描かれていますが、あまり悲壮感がなくて、むしろドライブ感があります。

「登場人物に悲壮感がないのは、最初から終わるってわかってるからじゃないですか。悪いことをしてるっていう自覚があって悪いことをしてるんですよね。いちばん感情的っていうか、血の通った感じ。「シンカロン」は機械的で無機質しようという意図があったので、それと対になるように並べました」

――つまり4曲で文明が生まれて、発展して、進化して、衰退してゆくまでの過程を描き切ったわけですね。

「高い塔とかいろいろ作ったりしてみたけど、結局最後に残ったのは身ひとつと感情ってことですね。私は平成生まれでちょうど四半世紀生きてきて、平成しか体験していないので、元号が変わるってことにわくわくしているし、これから何してやろうかなって思ってます」

――Reolさんが、その新しい時代にどんなアーティスト像を描くのか楽しみです。

「私はライブでステージに向かうために音源づくりを含めてすべてのことをやっているっていう気持ちがありますし、ライブでの再現性を考えて手加減して楽曲を作るっていうスタンスもないんです。ブレスの場所がなかったら肺活量を増やせばいいじゃん!って思ってたり。やっぱりライブでの予定調和は面白くないから。“この曲はこういうノリ”って固定したくないし、“え、これって演出なの?”っていうぎりぎりのところを攻めていって、お客さんといっしょにいままでのReolを上書きできたらいいなと思ってます」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
写真/柴田ひろあき



■Reol「文明EP」インストアイベント
2019年3月21日(木)@タワーレコード渋谷店 5F
2019年3月24日(日)@タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース

  



Reol「文明EP」
2019年3月20日(水)発売
初回限定 CD+DVD盤/VIZL-1542/4,500円(税別)
初回限定 CD+Blu-ray盤/VIZL-1541/5,300円(税別)
CONNECTONE


Reol「文明EP」
2019年3月20日(水)発売
通常盤(CD)/VICL-65137/1,800円(税別)
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