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――さて、今日のインタビューテーマは『からくり時計とタングの街』ですが、その前にちょっとだけ9月にduo MUSIC EXCHANGEで行われたライブ「Singin' In The Moonlight vol.4」についてお話しようと思います。

「はい」

――あのときのeddaさんは、語り部というか、吟遊詩人のような雰囲気があってとても素敵でした。「フラワーステップ」のときのインタビューでは、ライブはあまり自信がないというニュアンスで語っておられましたが、全くそんな印象はなかったですよ。

「ありがとうございます。でも私、そもそも人前に出るのが苦手なんですよ。あと、ライブでCDの音源をそのまま再現するのは不可能に近いじゃないですか。duoのときはスリーピースのアコースティックセットでしたけど、たとえばフルバンドの編成で、さらに同期を使ってもやはり音源とまるまるいっしょにはなりませんよね。シングルやアルバムは、楽曲ごとの主人公なりの歌い方だったり、音の外し方とかいろんなことを意識して歌入れしているんです。ライブではそれを表現しきれないと思ってしまうので、それが苦手意識に繋がっているのかなって。でも最近は、物語を表現するっていうところとは離れて、CDでは楽曲を物語として見てもらって、ライブでは表現者としてのeddaを見てもらうという意識に変わってきていますね。CDとはちょっと違うけれども、ライブ映えするというか、そういう歌い方を意識するようにしています」

――以前も言っていましたが、楽曲制作の段階ではライブでの再現性は特に意識していない?

「あ、それは全然意識していませんね。だからなんの準備もなしにステージに立ったら、私、きっと歌えないんです。自分の曲なのに(笑)。レコーディングだからこそできる表現であったり、手法とかそういったことばかり考えているので。そもそも“あ、この曲はライブで歌うのは無理かも”っていう曲もありますし」

――じゃあ、ライブ用にリアレンジしたり?

「ふふふ……それがですね、私、全くそういう準備をしていなくてですね。制作のことしか頭になくて。レコーディングが終わってから“あ、これライブで歌わなくちゃいけないんだ!”ということがよくあるんですよ。ダメですよね、ライブ意識が低くくて(笑)」

――こういうことを言うと叱られそうですが、ステージで歌っているeddaさんを見て、やっぱり美しい女性なんだなって思いました。どうお伝えしたらいいのか…… すごく凛とした佇まいがあって、立ち振る舞いがとても美しかったんですね。ステージングという意味で、自分が客席からどう見えているか意識することはありますか?

「全然ないですね。身振り手振りという意味でのパフォーマンスも苦手ですし。意識し始めると恥ずかしくなっちゃうので(笑)。あえて何も考えずに、ただ小説を読むように、“私は自分の作った物語を読んでいるだけだ”って。“こうやってライブを始めて、ライブ中はこう振る舞って、こういうふうに終わろう”ということも全く考えていないので、MCもぐちゃぐちゃになっちゃうんですよね」

――でも先日のDuoは、まっすぐに前を見て、ちゃんとステージ上で自己完結しているように感じましたし、キーボードとギターのみのシンプルなバンド編成でしたが、すごく厚み、深みのあるサウンドも印象的でした。

「本当ですか?ありがとうございます」

――さて、そろそろアルバムの話をしましょうか。まずは『からくり時計とタングの街』というタイトルとそのコンセプトについて教えてください。

「これまでインディー時代に『さんかく扉のむこうがわ』、メジャーで「ねごとの森のキマイラ」というミニアルバムとEPをリリースしているんですけど、さんかく扉が不思議な世界の入り口、その向こう側にある世界でeddaが物語を集めているんだよっていうコンセプトで2作を作りました。そして今回、ねごとの森を越えた先にあるからくり時計とタングの街で見つけた音楽を詰め込みましたっていうイメージなんですね。アルバムのブックレットのいちばん最初のページに私が描いた地図を載せたんですけど、その地図にさんかく扉からねごとの森を抜けて、とある街に辿り着くまでを描いていて、その街が『からくり時計とタングの街』なんです。これからもその地図が広がっていくといいなって思っています」

――からくり時計は時計台に据え付けてあるような大きな時計?それもと家のなかにあるような掛け時計?

「時計台の時計ですね。歌詞にも時計台という言葉が出てくるんですが、アルバムの楽曲に登場する子たちはみんな同じ街に住んでいるんです。eddaが初めてその街を訪れたときに“ねえ、この街はなんていう名前の街なの?”って誰かに聞いたりしないだろうなって。たぶん“あそこに大きなからくり時計があるから、からくり時計の街でいいや”って思うはずなので、たぶんその街の象徴的な時計なんです。でもタイトルのなかにもうひとつ言葉が入っているといいなって考えて。私の家にはタングというテディベアがいるんですけど、収録曲にタングが登場する曲があるので、タングもきっとこの街にいるんだろうなと思って『からくり時計とタングの街』というタイトルになりました」

――でもタングという名前の曲はありませんし、歌詞にも登場しませんよね。

「そうなんですよ。タングのことを歌ったのは「merry」という曲です」

――なるほど。だから彼は――えーと、彼でいいんですよね?――ココロが欲しかったんですね。そして、最後にココロを手に入れた?

「性別は私もわかりません(笑)。本当はココロじゃなくて心臓にしたかったんですけど、ちょっと生々しいかなと思ってココロにしました。歌詞には<“ココロ”をもらえたんだ>って書きましたけど……今回、ブックレットに挿絵を何枚か描かせていただいていて、そのなかに「merry」の絵もあるんですが、そこでクマのタングがお月さまに願いごとをしているシーンを描いてあって、それを見ていただくと答えがわかります。廃遊園地に置いてあるレプリカの月があって、それをタングが……いや、やっぱりいまはまだ秘密にしておきますね(笑)」

――ははは!そうですね、ブックレットを読んでのお楽しみということで。そいういえば「merry」に<merry ××× end>という歌詞がありますが、あれはなんて歌っているんですか?

「聴いていただくとわかりますが、“merry bad end”です。本来は人によってバッドエンドだったり、ハッピーエンドだったりというときに使う言葉みたいなので、決して悪い意味ではないんですけど、歌詞カードにbadというワードを書きたくなかったので×××にしました。だからちょっとはっきりしない、ごにょごにょした歌いかたをしてるんです」

――この「merry」はビッケブランカさんが曲を提供していますが、これはどういった経緯で実現したんでしょうか?

「私はビッケさんのCDを聴いて、かっこいい!って思ってたんですよ。で、ビッケさんに楽曲を書いていただけることになって、初めてお会いして、どんな曲にしようかって打ち合わせをして、ちょうど1年前くらいに楽曲をいただいて。せっかくいい曲をいただけたので、この曲に相応しいタイミングを待っていたんですが、今回タイアップのお話があって、ウェディングブランドのCMだからぴったりだなと思って。ようやくリリースできました」

――この曲の、出だしに入ってるおもちゃのアヒルちゃんみたいな“キュー”っていう SEはなんですか?

「なんでしょうね?あのサンプリング、アレンジャーさんが入れてくださったんですけど、アレンジのイメージをお伝えするときに、ちょっと可愛らしい感じを出したいのでトイ系の楽器を使ってくださいってお願いしたんですよ。なんのサンプリングか知らないんですけど、いい味出してますよね」

――おもちゃ箱をひっくり返した感じです。この「merry」もそうですが、僕は、eddaさんの1stアルバムは、これまでにリリースされてきた音源をコンパイルしたベスト盤的な構成になるのかなと勝手に予想していたので、こんなに新曲が入っているなんて予想外でした。

「実は何も考えていなくって、漠然と12曲くらい入れなくちゃ!くらいのイメージで制作に入ったんですよ。確かに「半魚人」とか「不老不死」といった曲を好きって言ってくださるファンのかたも多いので、入れたいなっていう気持ちもあったんですけど、何て言うんでしょう……同じ色あいの曲を詰め込みたいなと思ったので、“きっとこの子たちは同じ街のご近所さんなんだろうな”っていう曲たちが集まった感じですね。結果的に過去曲を入れるスペースがなくなっちゃったんです。でも新曲が多いほうがうれしいですよね?」

――もちろんです。だからいい方に期待を裏切られました。なんとなくですが、迷うことなく、煮詰まることなく生み出されたアルバムのような気がしています。

「今回、煮詰まったりということは全然なかったですね。過去に作ってずっと温めていたストック曲も多かったですし、完全な新曲という意味では「merry」、「カイバノネイロ」、「ループ」の3曲はすごくアレンジをどうするか考えましたけど、特に煮詰まるということもなく」

――それは、eddaさんのなかで、『からくり時計とタングの街』というタイトルと世界観がはっきりとイメージできていたからじゃないですか。

「そうですね。最初に『からくり時計とタングの街』というアルバムの全体像があって、いちばんそのイメージが濃い楽曲が「トントン」、「リンドン」、「宇宙ロケット」で、その3曲は絶対入れようと思っていて、その子たちが住んでるような街に似合う曲を選んでいきましたね」

――確かに、「トントン」、「リンドン」といった前半部の2曲がアルバムの核になっているように感じました。特に「トントン」は深読みし過ぎて、主人公の“僕”が何を作ってるんだろうって考えていたら、ちょっと怖くなってしまって。

「私、皆さんが「トントン」をどう考察するのかすごく興味があるんです。何を作ってるんだと思いましたか?」

――えーと、すごく言いづらいんですが、死刑台じゃないですか?

「すごい!正解です。わたし、死刑台を作る人の歌を書こうって思ったんですよ。9 歳か10歳くらいの男の子で、代々それを作っている家系に生まれて……っていうイメージで。やっぱり子どもなので、最初は悪い奴らを懲らしめる立派な家柄なんだっていう考えかただったんですけど、捕えられた魔法使いを裁かなきゃいけなくなって、“これって本当に正義の味方?”って迷いを持つようになって、それでも誇りを持って腕を振るうというストーリーを描きたくて。怖がらせようというつもりもなかったので、死刑台ってはっきり書かずに、もっとフラットに聴いてもらえる詞を書きました」

――やはりそうでしたか。まさか!と思いつつ、でもeddaさんてこういう楽しげなメロで怖いことを歌う人なんだよなって。続く「リンドン」にも、<きみのパパが、怖い顔して駆けつけた>ってありますけど、そのあとほっこりするという……

「そうですね。こちらは楽しいクリスマスの曲を書こうと思って。主人公はサンタさんの子どもとその友だちなんですが、クリスマスで、家族揃ってみんな楽しそうに過ごしているのに、サンタさんは忙しいから、その子は寂しがっていて、“じゃあ、いっしょにクリスマスをつぶしちゃおうぜ!”っていうお話です」

――すごく子どもらしい、素直な感情表現というか、振る舞いを描いていますよね。

「なんとなくですが、子どもが素直に育っている街ってすごくいいところなんじゃないかなって思えるじゃないですか。だから死刑台があったり、フラワーステップみたいな病気があったり、ちょっと恐ろしい一面もあるんだけど、子どもたちは素直に育っているという「リンドン」の描写がこのアルバムの核になっていると思います。そういう意味でも「トントン」、「リンドン」、「宇宙ロケット」あたりがアルバムの色を決めていると思うし、もちろん「merry」も欠かせない存在ですね」

――ロケットが飛ぶんですね、この町から。

「そう、飛ぶんです。だけど、私たちが知っているような立派なロケットじゃなくて、主人公が手作りしたブリキのおもちゃみたいなイメージですね。実はこの「宇宙ロケット」は、「ねごとの森のキマイラ」の1曲目の「グールックとキオクのノロイ」と対を成す曲なんです。かぐや姫みたいに月に帰ってしまうグールックと、“じゃあ大人になったらロケットを作って君に会いに行くね”っていう約束を歌ったのが「宇宙ロケット」で、月に帰ってキオクを失くしたグールックが地球を見て心が疼くというお話が「グールック……」なんです」

――なるほど、歌詞を追ってみると確かに……

「「宇宙ロケット」のDメロに、<いつか読んだ本にはさ/悲しい結末/それでもいいやって思えたのは/君がくれた強さ>という一節があって、やはり「グールック……」のDメロに<知らない文字で綴られた/本には悲しい結末/「それでもいいや」って/聞こえた気がした>という一節があって、ちゃんとリンクしてるんです。そこを読み取ってもらえるとうれしいですね」

――これこそがedda作品の醍醐味というか……これに気付いた人は、きっとニヤっとしちゃいますね。

「“あれ?これってもしかして!”って(笑)」

――アルバムフォーマットならではの遊びもありますよね。個人的には、オートリピートでM12「導きの詩」からプレイして、M1「からくり時計」に戻って、そこからM2「フラワーステップ」でブレイクするっていう聴き方が気に入ってるんですが、これってアルバムならではの楽しさですよね。

「確かに。曲によって曲間を2秒にしたり、3秒にしたり、もっと短くしたり、もちろんループで聴いてもらえるように曲順を考えたり、アルバムとして聴かれることをすごく意識して作っていますけど、私は、ダウンロード版で好きな曲だけっていう聴かれかたにも全く抵抗がありませんし。それをきっかけにアルバムで聴いていただければ、ジャケットだったり、ミュージックビデオもひとつの世界を表現するためにすごくこだわって作っていますので、きっと気に入ってもらえるんじゃないかなって思ってます」

――ループといえば、「忘却のサチコ」EDでもある「ループ」がアルバムのリード曲ということですが、同じく「サチコ」のOPだった「リピート」とともに“忘れる” というキーワードが共通しています。この2曲は対になった作品と捉えてもいいんでしょうか?

「「リピート」はロボットが主人公で、小説のなかの世界に惹かれて、それを何回も楽しもうとして記憶を消去するストーリーなんですけど、「ループ」はそのロボットが読んでいる小説の主人公を描いています。忘却することをポジティブに捉えるというのが「リピート」のテーマだったので、「ループ」もそれに倣っているんですが、「ループ」の主人公はその小説のなかの登場人物なので、物語が終わると記憶を失って、物語の冒頭にループしてしまうんです。「リピート」も「ループ」も、どちらの登場人物も忘れるということをポジティブに捉えてはいるんですけど、歌っているeddaとしては、それって端から見てるとどうなのかしら?っていう客観的なニュアンスを含んでます」

――「エメラルド」は、歌詞を追ってみてもファンタジーの気配があまり前面に出ていないように思えますが……

「これは「オズの魔法使い」をモチーフにしていて、オズの魔法使いが住んでいる王国はどうしてエメラルド色になったのかっていうことを私なりに考えた物語なんです。オズが、“君”が好きだったエメラルド色に国中を染めちゃって、それが魔法使いって呼ばれる所以なんです。嘘をついてみんなを騙して、でもそれは“君”やその他のみんなを守るためなんですが、結局“君”はいなくなってしまって、空を仰いでいるってシーンから始まって、同じように空を仰いで終わる。最初と最後だけが現在で現実っていうイメージなんです」

――以前のインタビューで、アルバムはひとつの長編を紡ぐのではなく、短編集のような仕上がりになるんじゃないかって語ってらしたんですが、『からくり時計とタングの街』の出来映えはいかがですか?

「とても満足してます。作っていて楽しかったし、出来上がったアルバムを聴いていると、次の作品へのアイデアもどんどん湧いてきますね」

――そういえば、初回盤のDVDに収められているスタジオライブ映像には“@森の家”というサブタイが付いていますが、このアイデアは?

「ちょっと雰囲気のある小物だったり装飾がある“森の家”という場所で歌っている映像なんですが、ライブというよりもミュージックビデオのような空気感のなかで撮影していただけたので、ちゃんとそのイメージが伝わるタイトルにしたいなと思って「edda Studio Live@森の家」になりました」

――森の家っていうくらいですから、やっぱり森のなかにあるわけですよね?

「はい。ねごとの森の上の方にあるんです。さっきお話したブックレットの地図にもちゃんと森の家が記されていて、そこでeddaがライブをやっているイメージです」

――アルバム全体に謎解きのような楽しさがありますね。早くアルバムを、それも初回盤を手に入れて、ブックレットを読みながらCDを聴いて、DVDも見なくちゃですね。

「ふふふ、そうですね。ぜひ!」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore編集部)



■1st Album「からくり時計とタングの街」発売記念インストアイベント
11月27日(火) タワーレコード渋谷店 4Fイベントスペース
12月1日(土) タワーレコード梅田NU茶屋町店 6Fイベントスペース
12月2日(日) タワーレコード名古屋パルコ店 西館1Fイベントスペース

■edda 自主企画イベント「くものくろーる」
12月11日(火) SHIBUYA TAKE OFF 7(東京)

■edda ワンマンライブ「からくり時計とタングの街の音楽会」
2019年3月21日(木) ヒルズパン工場(大阪)



edda『からくり時計とタングの街』
2018年11月7日(水)発売
初回盤(CD+DVD)/VIZL-1463/3,900円(税別)
Colourful Records
edda『からくり時計とタングの街』
2018年11月7日(水)発売
通常盤(CD)/VICL-65069/2,900円(税別)
iTunes、レコチョク、mora他
Colourful Records


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