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2018.05.17

SPECIAL OTHERS ACOUSTIC『Telepathy』インタビュー——“いいもの見つけちゃったな!”って感じ

SPECIAL OTHERSのアコースティック楽器のみのプロジェクト、SPECIAL OTHERS ACOUSTICが、前作『LIGHT』から約3年半ぶりのニューアルバム『Telepathy』をリリース。生楽器ならではの楽しさにあふれたアルバムの、リリカルな表現とダイナミックなアンサンブルについて、そして彼らのミュージシャンとしてのあり方を訊く。

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——今回のSPECIAL OTHERS ACOUSTIC(S.O.A)までが、バンドとしての10周年くくりというか、線引きはないんですか?

芹澤“REMI”優真「線引きは特になくて。でも10周年あたりから、超マイペースにやるようになりました。自分たちのやりたいことをやって、今回のアコースティックもそうだし」

宮原“TOYIN”良太「そうですね。やりたくなったからやっちゃった感じですね。もうアコースティックで6曲ぐらい曲のストックがあったんで、あんまり狙った流れとか、もうどうでもいいから。ただアコースティック出したいなって会社に言ったら、まあいいか!みたいな感じで、アコースティック出すことになりましたね」

——初作のアコースティックを出した時、ちょっと面白い理由だったじゃないですか?機材が少ないからという。

芹澤「そこらへんは変わってないですね(笑)。機材少ないからリハでやる気に満ち溢れて、曲が増えるのは必然というか」

又吉“SEGUN”優也「準備が全然違うんですよね。エレクトリックの時って用意して、じゃあみんなで演奏しましょうって時にはスタジオ入ってから1時間ぐらい経ってたりするんですけど、アコースティックだと半分ぐらいなので、その差が積み重なってくると大きくなる。やっぱその手軽さっていうのは重要だと思いますね」

——確かにそれは大きいですよね、初めましての方に向けて、改めてS.O.Aを始めた元々の動機をお聞きしていいですか?

宮原「“アコースティックでやってくれ”っていうオファーが多くなってきたんですよ。でもその当時はアコースティックの曲を持ってなかったんで、結構苦労して、一晩でアレンジしてとかやってたんです。あとはマイス・パレードっていう外国のアーティストがいて、アコースティック編成で来日した時、普通、アコースティックって言ったらしんみりした感じなのかなとか思ってたら全然違う感じで。アコースティックでもこんな表現ができるんだ!みたいな経験もあったりして、そのふたつの出来事が大きな要因で、それで色々楽器を揃えてみたりしたら、なんかもう楽しくなってきて。アコースティックの楽器って強弱の振り幅が広いんで、表情とかもすごいつくんですよ。そういうところにはまっていっちゃって、どんどん曲を作ってっていうのが動機ですね」

——あと、8日間で30公演以上という強行軍で路上ライブも行った2012年の「ものすごい規模の全米ツアー !?」も、一部アコースティックでしたね。

宮原「前回のアメリカはめちゃめちゃ辛かったですね。今回、プラハに行ったんですけど、その落差がすごかったですね。プラハはめちゃめちゃ楽で楽しかったんですよ」

柳下“DAYO”武史「アメリカを車で移動してとかだったから、みんな疲弊して。あの時はまだアコースティックって名義はなかったけど」

宮原「それも結局、自分たちで持ち運びできていろんなところでストリートライブをするってことで、アコースティック楽器だったんで。やっぱ機動性っていうのはそういうところにも生きてくるなって思いましたけどね」

芹澤「手荷物で預けて、プラハにみんなでアコースティックの楽器を持って行ったのに、オーバーチャージなしで行けるぐらいの手軽さなんですよ」

——それはすごい!

芹澤「自分たちだけでできるから、それってすごい強みだと思うんですよね。本来そうじゃないですか?いろんなビジネスが絡んで、いろんな人が増えたり楽器が増えたり、ダイナミックな大きい場所でやるためにいろんな関わりが増えたりすると、これがないとできない、あれがないとできない、っていうのはリスクではあるから。ただ海外にオーバーチャージなしでみんなで持ってって、“はい、どん!”ってできるのって楽しいですよね、それだけで」

——セルフマネジメントで運搬も全部できるミュージシャン!それはすごい強みですね(笑)。

芹澤「今、若い子のバンドが減ってるじゃないですか。機材がたくさん用意できなかったりお金がなかったりとかで。この機材を1回用意しちゃえば自分たちで持って行けるし、車もいらないし、なんなら手持ちで全員持って行けるから、若い子らにも真似してほしいぐらいですね。すごく手軽なものなんで。HIP HOPとかはトラックだけでできるから、やる子が増えてるけど、バンドもその程度の労力でできることだから。それは声を大にして伝えたいですね」

——さて今回のアルバムも生楽器をどう使うかが聴きどころで。宮原さんもギターを弾いているし、パーカッションは柳下さん以外全員やっているし。

宮原「やっぱいろんな楽器やると勉強になりますね。他の楽器をやるとその経験が生きてきますね。例えばふだんはギターでレコーディングなんてしないですけど、ギター録ったあとにドラムやると、なんか違う感覚が身についてるような気がしますね」

——ちなみに1曲目の「WOLF」の右チャンネルのギターは宮原さんですよね?むっちゃ上手いじゃないですか!

宮原「ほんとですか?嬉しい!もともと高校の時にちょっとやってたんですけど、あまり披露するところはなかったんです。これもさっき言ったマイス・パレードのライブ見に行った時に、ガットギターが二人いたんですよ。で、その絡みがかっこよかったんで“俺もギターもう一回買おうかな”と。それでいいギター買って、楽器を買えば弾くようになるんで、それで色々曲も生まれてくるし、よかったですね」

——この曲はリズムの構築の仕方が素敵で。最初どこで乗ろうかな?みたいな感じじゃないですか。それがだんだん乗りやすくなってくる。

宮原「そうですね。最初ドラムレスで始まってて、それでギターの絡み方が面白くて」

柳下「グロッケンがBメロみたいなとこから入ってきて」

宮原「ヤギ(柳下)のギターも消音器って、あんまり響かないようにするものをつけてるんで、ちょっとパーカッシブなフレーズが弾けてるっていうのもありますね」

——アンサンブル的にも複雑だけど楽しいというか、そういう感じがすごくしました。

宮原「スペアザの曲だとメロディ楽器だけでアンサンブルしていくって曲がほとんどなかったんで、珍しくて面白かったですね。ほとんどのところがリズムなしで進むので」

柳下「で、後半には手拍子も入れてみたりして、ちょっとスティーヴ・ライヒへのオマージュ的な」

芹澤:「「クラッピン・ミュージック」への(笑)」

——だから拍の頭が揃ってる時はクラップに聴こえるけど、ずれてステレオアクションになるとクラップじゃない音のように聴こえたりして。

芹澤「面白いですよね。ああやってただ同じリズムが一拍ずれてるだけなのに、すごい複雑なポリリズムに聴こえるっていう」

——逆に2曲目ではストレートにビートが入ってきますね。アコースティックだからといって、スタイルが決まってるわけではないというか。

宮原「いつもそうなんですけど、あまりコンセプトを先に決めてないですね。だから多ジャンル感みたいなものを意識してるのかもしれないですね、逆に。いろんな曲調の曲が1枚に入ってるから楽しいみたいな」

——「My Home Town」の愛らしさとか単純に泣けてくるようなムードがあって。これは芹澤さんのグロッケンシュピーゲルの奏法がかなりぐっと来ます。

芹澤「“チャラララララ〜”ってやつですか?もともと良太が作ったメロディが生きるように俺がグロッケンを被せていった形なんですけど。エレクトリックの鍵盤ではエフェクターでトレモロをかけて、ちょっと叙情的な雰囲気にしたりするんだけど、グロッケンだとそれができないから」

——フィジカルでやるわけですね(笑)。

芹澤「フィジカルでトリルをしてみたり、すごーく弱く叩いてみたり、叩く場所を下めにしてみたり、そういうので四苦八苦しながらやるから人間味が出るんじゃないですかね。フィジカルは直接的なものだから、それはメロディアン(鍵盤ハーモニカ)にしても、自分が喋ったり歌ったりしてる時のテンションの推移と似てるんですよ、やり方が。息を強く吹けば、要は大きい声出すときは大きく出すから。だから自分の体と直結してるからこそ、すごく難しいし、逆にいうと感情を表現しやすい、ってのが現れたんで、そういう風に聴こえたんだと思います」

宮原「あと、遅ればせながらDTMを導入し始めて、例えばグロッケンのフレーズとかもちょっとできなさそうな、難しめのフレーズを入れておくと、練習するじゃないですか?で、ちょっと難しめにしてますね、DTMが入ってきたおかげで。それもスキルアップに繋がるかなと思って」

芹澤「自分が作ったフレーズって絶対、GarageBandの方がうまいんですよ(笑)。GarageBandを俺の師匠として、俺のフレーズを伸ばしていく。で、それができた上でちょっと後乗りにしてみるとかしてますね」

——DTM自体はスペアザとしてももう導入してたんですか?

宮原「そうですね。2015年の『WINDOW』あたりから導入してますね。やっぱ曲作りがすごい早くなります。伝える時間とかって、口で伝えてると時間かかっちゃうんですけど」

柳下「それまでは良くも悪くもなんですけど、だらだらと長〜い時間セッションをして、それを録っておいて後から“ここの部分かっこいい”とかっていう作業が必要だったんですけど、DTM始めてからは短いセッションでDTMに落とし込んである程度形にできちゃうから、ものすごく作業が効率よくなって。フレーズも思いついたものポンと入れておけば忘れないし。ものすごく効率は上がりましたね」

——打ち込むのはあくまでも自分だから、そこから面白いものが生まれるのかもしれないですね。

宮原「なんだろ?“すごいノート”って感じですね、DTMは(笑)。やっぱり発想自体は人間から出てくるものなので、センスみたいなのは絶対変わらないと思うんですけど、それを伝達する手段にもなるし、書き留めておけるノートにもなるし、ほんと便利だと思いますね。若い子はほんとこういうのをよく知ってたんだなと思って(笑)」

——でも若い人は元から資料的なものが多いからうまいってところもあると思うんですけど、そことまた違う作り方をしてるのかなと思います。

芹澤「俺らはちょっと勘違いしたDTMとの向き合い方だと思います。でもそれってすごい重要なことだと思ってて、もちろん使う世代によって個性が出るじゃないですか。元からiPadがあった子供たちがITに強くなるのは当たり前のことで、生まれた時からGarageBandがあったような子たちがいるわけじゃないですか。その子らが作る、当たり前のようにかっこいい洗練されたものって、俺らがもがき苦しんでGarageBandまでたどり着いて、この泥まみれの体で作ったものとは違うわけじゃないですか?でもその子たちは、もう泥まみれにもなれないんですよ。泥の中に転がったって、泥の中に転がる演技をしただけだから。逆に俺らは汚れたくないのに本当に泥まみれになって、もがいてきたから、出ちゃうんですよ、芋くさ〜い感じが(笑)。その芋くさい感じがすごい好きな自分もいて。魂のソウルミュージックが入ってるそのヴァイブスって超大事だと思うんですよね。だから同世代の人に愛されてるのかなっていうのもあるし」

——だから打ち込みにしても自分訛りが出るというか。

宮原「出ますね、うん」

芹澤「だって面白いじゃないですか?こんな時代なのに“ほんとにGarageBandめちゃめちゃ便利ですよね”ってインタビューで言ってるのがちょっと(笑)。若い子にしてみたら“えっ!いまさらガレバン?”っていうものが俺らにしたら宝物のようになってるという」

——でもナイン・インチ・ネイルズとかも、「あえてGarageBandで作ってみたぜ」って音源を公開してたりしましたよね。

宮原「石野卓球さんとかもGarageBandだけで作品作ったりとか。でも俺らは“逆にガレバンだよね”のレベルまで達してないので(笑)」

全員「ははは!」

芹澤「ど真ん中でガレバン(笑)。まだ一周めなんで、俺ら」

宮原「人間が演奏するっていうバンドだから、結局コンピューターって使わないんだよ」

芹澤「“コンピューター”って新しいな(笑)」

——(笑)そしてSPECIAL OTHERSのカバーである「IDOL」と「Birdie」と「CP」はS.O.Aの曲ではないですって、クレジットに書いてあるのが面白くて。

宮原「おお、書いてあるんですね、ちゃんと(笑)」

——それは名義が違うからきちんと書かないといけないのかもしれないですけど、ちょっと面白いなと。

芹澤「まあ、これは俺らの意思で書いたわけじゃないんだけど、もはや2枚目が出た瞬間に明確に違うバンドだなと思ってて。SPECIAL OTHERSのアコースティック・バージョンじゃなくて、SPECIAL OTHERSとSPECIAL OTHERS ACOUSTICっていうふたつのバンドが存在してるっていう認識に俺らもなってますね」

——なるほど。そのカバーですが、たとえば「IDOL」はどこから手をつけました?

宮原「ヤギがギター一本で弾いてる時があったんですよ。ベースラインを弾きながらメロディ弾いてたんで、“あ、これ作れるな”と思ったんですよね。オリジナルはエレクトリックな感じで音圧で攻めるような曲だったんで、それをアコースティック・アレンジにする時に苦労しましたね。アンサンブルでこの盛り上がり感を作ったんですけど、それができるまでは、これ盛り上がる曲になんのかな?と思いながら作ってたんですけど」

柳下「もともとライブでやったこともあったけど、その時はドラムセットじゃなくてパンデイロでやってたから」

宮原「そうだね、しんみりしてたから。もうちょっと原曲の高揚感みたいなのを出したいなと思ってて」

——イメージを変えるわけじゃないというのは逆に難易度は高いですね。

宮原「そういえばイメージ変えようとかも思ってなかったですね。なんかこう、このバンドだとどう表現できるか?って考え方でしょうね」

柳下「エレクトリックだと音圧で持っていってる感も多少あるんだけど、アコースティックだと、勢いでどうにかっていうのができないから、わりとアンサンブルをちゃんと聴かせようっていうのが前提にあって、曲を構成してった感じはあるかもしれないですね」

——ところで又吉さんの楽器は増えていないんですか?

又吉「そうですね」

——でもマンドリンの音が随所で聴こえます。

又吉「それはそういうアレンジを考えてって感じなので。でも前回より鳴らしてるかもしれないですね」

——そもそも1stの時にマンドリンをチョイスした理由ってなんだったんですか?

又吉「あんまり使ってる人がいないからとか、そういう理由だったかな?」

宮原「あと、やっぱり持ち運びですね(笑)。それで“これはいいぞ”と」

芹澤「マンドリンが入ってる、ジャズ・マンドリン・プロジェクトがみんな共通で好きだったりとかもある」

宮原「マンドリンは立ち位置の面でもちょうど良かったというか。ギターとマンドリンが相性いいっていうのもアメリカ人がブルーグラスで証明してるし。ベースとギターと相性がいいっていうのは本当なんだなと思いましたね」

——じゃあ楽器の種類はもう増やさずに?

柳下「ある程度制限っていうか、どっかでブレーキをかけないと増えてく一方になっちゃうんで」

宮原「音色が一本筋の通った個性になりますからね。“S.O.Aっぽい音って何か?”って言われたらこの楽器でやってるから“ぽい”と思うんですよね。結構いろんなジャンルをやってると自分たちでは思ってるんですけど、それでも俺らの曲だってすぐわかるよねっていうのは、音色のことをみんな言ってるのかなと思いますね」

——確かに。このアルバムを束ねる時に『Telepathy』ってタイトルがついてることにすごく納得して。音楽って根拠のあるテレパシーなんじゃないかなと思いました。

芹澤「そうですよね。目に見えないし、形もわからないけどみんなわかってること、それをテレパシーって呼ぶと思うんですよね」

——凄いタイトルがついちゃいましたね。

芹澤「名盤になっちゃいましたね、タイトルで(笑)」

——こういうアルバムが出るとまた終わりのない音楽の旅が続いていくんだなって感じがします。

宮原「アコースティックは続けていきたいですね。すごくハマってるし、全然違う楽しさがあるんで」

柳下「いいもの見つけちゃったなって感じですね。SPECIAL OTHERSがあって、SPECIAL OTHERS ACOUSTICがあって、この二足のわらじが今すごく心地よいというか、どっちにもいい影響しか与えないし」

——そしてツアーの会場も面白いところばかりじゃないですか?

又吉「美術館のエントランスとかもありますからね」

芹澤「俺らは一生、一見さん大歓迎の遊び場を提供し続けていって、みんなといっしょに楽しみたいと思ってて」

柳下「俺ら自身、初めて行く場所が多いので楽しみなんですよ」

(おわり)

取材・文/石角友香



SPECIAL OTHERS ACOUSTIC『Telepathy』
2018年5月16日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/VIZL-1367/3,500円(税別)
通常盤(CD)/VICL-64989 /2,800円(税別)
SPEEDSTAR




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