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2018.03.02

松室政哉「きっと愛は不公平」インタビュー——日常の感情がうねる瞬間を切り取って

オフィスオーガスタに見出され、昨年11月にデビューを果たしたシンガー・ソングライター、松室政哉。デビュー以前からオーガスタキャンプなどでも注目を集めていた彼が、最新EP「きっと愛は不公平」から垣間見えるソングライターとしてのプライド、自身のルーツミュージックについて語ってくれた。

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——松室さんは「encore」初登場ということになりますので、ざっくり自己紹介をしていただければと思います。

「シンガー・ソングライターの松室政哉です。1990年生まれの28歳、大阪出身——って、何かお見合してるみたいですね(笑)——えーと、中3くらいからバンドをやりだして、高2くらいからシンガー・ソングライターとして活動し始めて。で、大阪でずっと活動してたんですが、2012年に上京してきまして、そのときいまの事務所にデモテープを送ったんです。狙い撃ちでオフィスオーガスタだけに。しばらく音沙汰がなかったのでダメかなと思ってたんですが……」

——ところが?

「そうなんですよ。2013年の終わりごろに突然連絡が来まして。それで少しずつオーガスタに出入りするようになって。で、翌年2014年にはオーガスタキャンプのオープニングアクトに出させてもらって、2016年からはメインステージにも立たせてもらって、2017年11月に「毎秒、君に恋してる」でメジャーデビューしました」

——デモテープを送ってからデビューまで激動の5年間という感じですね。

「本当にそうですね。2013年くらいからは、いろんな出来事がバン!バン!バン!ってやって来て。まわりの人には、2014年のオーガスタキャンプからデビューまでの3年間が長かったねって言われるんですけど、僕的には結構あっと言う間で。デビュー前のアーティストとしてはとても恵まれていたなと思ってます。CMの曲を書かせてもらったり、全国を周らせてもらったり、ふつうは経験できないようなことをいろいろやらせてもらっていたので」

——メジャーデビューは2017年11月のEP「毎秒、君に恋してる」ですが、それ以前にもATSUGUA RECORDSから「Theme」、「ラブソング。」「オレンジEP」をリリースしていますし、高校時代は閃光ライオットに出ていたり結構な場数を踏んでいるとも言えますね。

「閃光ライオットは2008年の第1回に出場しているんですが、そのときのグランプリはGalileo Galilei、準グランプリがBrian the Sun、ねごとも出てましたね」

——第1回の開催にして相当な兵揃いだったんですね。

「みんなもうメジャーデビューしてますからね。ファイナルの会場は東京ビッグサイトで、何万人ていうお客さんの前で演奏させてもらって、それはもうすごい経験になりましたね」

——そのときは弾き語りのソロとして?

「もうシンガー・ソングライターとしてやっていました。さらに遡ると14歳のとき、ヤマハ主催のTEENS’ MUSIC FESTIVALというコンテストがあって、そのときはインディカ29というバンドで出場しました。ファイナルは渋谷公会堂で、NICO Touches the Wallsもいたりして。だからライブ活動という意味ではもう14年くらいのキャリアがあることになります」

——僕が松室さんを知ったのは2016年、秦 基博さんプロデュースのオーガスタキャンプのときなんですが、秦さんが、松室さんと浜端ヨウヘイさんを“事務所で唯一先輩面できる後輩”って紹介していました。

「言ってましたね(笑)。2015年までオープニングアクトだったんですが、あの年のオーガスタキャンプで初めてメインアクトとして出させていただいて、秦さんの「虹が消えた日」を3人でやらせてもらって。僕にとってはとても大きな出来事でしたね」

——緊張しました?

「んー……緊張しましたよ。もちろん緊張はしたんですが、でもこの状況を楽しもうって気持ちの方が強かったですね。だって、秦さんなんて、僕が高校生のころ普通に聴いていたアーティストで、そんな人がとなりでいっしょに歌ってるんですよ。中盤のバンドセットでは秦さんといっしょに自分の「オレンジ」を歌って。あれ、当初は秦さんが歌うパートはなかったのに、リハのときに“ここだけ歌ってくれませんか?”って頼み込んで歌ってもらったんですよ。本当に感慨深いですし、なにより楽しかったですね」

——いまのオーガスタ内でいうと、松室さんがいちばん若手って感じですよね。

「そうですね。キャリアも年齢もいちばん下です(笑)。たとえば、さかいゆうさんは、秦さんより年齢が上だけど、キャリアでいうと秦さんが先輩なんですよ。そういう意味では僕は立ち位置に迷わないです。皆さん本当に可愛がってくれます」

——いちばん面倒見のいい先輩は誰でしょう?

「スキマスイッチのおふたりなんかは、最初にオーガスタキャンプのオープニングアクトをやらせてもらったころから気にかけてくれているし、インディーズ時代のCDを聴いていろいろアドバイスしてくれましたね。山さん(山崎まさよし)も、去年くらいまではなかなかお話しする機会がなかったんですが、福耳に参加させていただくようになってからはたくさんお話しするようになって、でもやっぱり、いまだに“えっ、山崎まさよしやん!”って気持ちになるじゃないですか」

——殿上人っていうか……

「そうそう(笑)。でもオーガスタのいいところって、特に福耳のレコーディングなんかのときに感じることなんですが、先輩方がみんな、同じミュージシャンとして後輩の僕に対等に接してくれるんですね。ちゃんとそういうプロフェッショナルな雰囲気がある。だからすごく恵まれているなって思います」

——松室さんにとってのルーツミュージックってどのあたりですか?たとえば、さかいゆうさんだと、ポップでありつつも芯の部分はR&Bとかゴスペルみたいなブラックミュージックの気配を感じるんです。同じように松室さんにはロックとかバンドサウンドの気配を感じるんですが、なかなかひとことでは言い表せないというか……

「僕が音楽をやり始めたきっかけは間違いなくサザンオールスターズなんですね。そこからいろんな音楽を聴くようになった。僕がサザンに魅かれるようになったのは、まさにその“ひとことでは言い表せない”部分で、音楽的にはバラードもあるし、アップテンポもあるし、ロックもソウルもあって、その全部がサザンオールスターズとしか言いようがない。僕もそんな風になれたらいいなって憧れていて。“細かいジャンルはわからんけど、結局、松室政哉やね!”というところを目指しているんで。もしかしたらそれはサウンド面じゃなくて、もっと核の部分にある歌のテーマかもしれないですし、どういうふうに松室政哉らしさを感じてもらえるかというのは自分では選べませんから。もっとリリースを重ねていくうちに、ぎゅーっと濃い部分が凝縮されて見えてくるのかなと思いますね」

——さて「きっと愛は不公平」について聞かせてください。「毎秒、君に恋してる」、「ラブソング。」、「オレンジ」といろいろある松室さんのラブソングのレパートリーのなかは歌詞もボーカルもいちばん力強いですよね。バラードではあるんですが、心情を吐露している感じ。

「そのとおりやと思います。いつもは曲から作り始めて、歌詞はぎりぎり最後に書くことが多いんですが、今回は仮歌の時点で、サビの“きっと愛は不公平だ”というフレーズが頭に浮かんできて。仮歌ででたらめに歌っていても、言葉としての音のよさを感じてはいたんですが、まだその時点ではどういう意味なのかは考えていなくって、“きっと愛は不公平だ”という言葉に引き寄せられるように前後のストーリーを考えたんですよ。どうやったらこの言葉に説得力を持たせられるかって。だから、いままで以上に心の奥の、奥の、ずーっと奥の方から抉り取るみたいな曲になりましたし、そういうアプローチで曲を作れたっていうのは僕にとっても新しい発見でしたね」

——ストリングスが入ってたり、サウンド面もスケールの大きさを感じさせられます。

「アレンジは「毎秒、君に恋してる」に続いて河野 圭さんにやっていただいたんですが、なんとなくきれいな美しいバラードじゃないよねって共通認識があって、どこかクセがあって、ちょっとヒリヒリした音にしたいなって話しましたね。ひとむかし前、オアシスあたりのUKロックのバンドがやっていたような、ストリングスが入ってるバラードのイメージなんですよ。歌詞の世界観とそういうサウンドが相俟って思ったとおりのものになりましたね」

——ちなみに「きっと愛は不公平」っていうタイトルにもどきっとさせられますが、この作品で描かれているシチュエーションって松室さんの実体験だったりしますか?

「そんなドラマチックなことってそうそう起こらないですよ(笑)。まあ、ああいうシチュエーションに置かれたときに、自分やったらどんなふうに思うんやろ?という正直な気持ちを書いてはいますけど」

——じゃあ、この曲のミュージックビデオを手掛けた松室政哉監督にお聞きします。“二人で選んだテーブル”が燃えてるシーンが衝撃的だったんですが……

「んー……でも、ひとり残された彼があのテーブルを燃やしてるって描写はありませんし、もちろん僕のなかではちゃんと答えはあるんですけど、見た人の捉え方で“えっ!これどうなってんねやろ?”って想像してもらえたらいいなと思ってます。たぶんそういうふうに見ている人にストーリーを委ねるほうが広がりが出るし、心に残るんじゃないかな」

——実際に撮影の現場に立ち会ってみてどうでしたか?

「僕はただただ映画好きなだけで、何の経験もないわけじゃないですか。だから、現場のスタッフさんや演者さんに“ここはこういうシーンで、こういう映像を撮りたいんです”って伝えるんです。スタッフさんはそれをちゃんと形にしてくれましたし、長村航希くんも、萩原みのりさんも、MVだからセリフなんかないのに、実際のシーンに合わせてちゃんとアドリブで会話をしてくれて。僕のこうなればいいなっていう思いを圧倒的に上回った演技をしてくれましたね。うれしかったし、すごいものを見てるんだなって思いましたね」

——冒頭で彼が広いテーブルにコンビニのビニール袋を広げてってシーンがもう……

「いたたまれなくなりますよね」

——たとえば「毎秒、君に恋してる」は切ないけどポジティブな感情が描かれているじゃないですか。個人的には、「きっと愛は不公平」みたいに男の女々しさとか、どろっとした情念が描かれているほうが感情移入できるような気がしますね。

「誰もがひとつくらいは痛みを抱えていると思うんですね。それは失恋ということに限らず、もっと魂レベルの痛みかもしれませんけど、そういう痛みを聴く人と共感できればいいなと。ときどき悲しい曲を歌うことの意味を考えることがあるんですが、痛みとか悲しみを分かち合うことができるのであれば、そこに答えがあるような気がするんです。何ていうか、日常の中で感情が大きくうねる瞬間があるじゃないですか——「毎秒、君に恋してる」は人を好きになった瞬間で、「きっと愛は不公平」はひとり残された瞬間——プラス側かマイナス側かの違いだけで、そのうねりの頂点を切り取ることが大事なのかなと思います」

——カップリングの「踊ろよ、アイロニー」。なんとなくですが、アイロニー、リアリティー、シンフォニー、ジャンボリーっていう言葉遊びのセンスにスキマスイッチのイズムを感じました。

「なるほどなるほど。そうかもしれません。スキマスイッチは、僕が中2、中3くらいのころにデビューして、以来ずっとリアルタイムで聴いていましたし、そういう影響を受けているかもしれませんよね」

——「Jungle Pop」はちょっとシニカルで毒のある感じの詞が桑田佳祐さんに通じるように思います。

「これは音的にも完全にサザンですよね(笑)。サザンがやる歌謡ロックが好きで、その影響をもろに受けた曲です。なんか、ダサかっこいい曲がやりたかったんですよ。ブラスのアレンジを武嶋 聡さんにやっていただいたんですが、開口一番“サザンぽい音でお願いします”って吹いてもらいました」

——<手垢のついた五線譜で>からの詞は、ある意味、松室政哉というアーティストのステートメントなのかなと思ったんですが?

「そうですね。精神論じゃないですけど、自分への戒めというか、曲作りという意味では、誰の真似でもない、誰の影響も受けていないものなんてなかなか出てこないと思うんですけど、それでも絶対に踏み外しちゃいけないラインはあるっていう気持ちを歌っています」

——そして「きっと愛は不公平」の初回盤には福耳「イッツ・オールライト・ママ」のレコーディング風景が入っているんですね。これは大抜擢だと思うんですが、福耳の新曲を手掛けるに至った経緯は?

「たぶんマ・マーさんのCMが先に決まってたんだと思うんですけど、ある日“松室が書いてみる?”って言われて。歌詞はCOILのサダさん(岡本定義)が書いてくれるからって聞いて、サダさんの歌詞、好きですし、それやったらやってみたいと思って。レコーディングも本当に楽しくて。シンタさん(常田真太郎)なんか、僕がこんな感じでシンセ弾いて欲しいんですってデモを渡したら、レコーディングのときにはもうフレーズを作ってくれていて。本当はみんなそれぞれにやり方も違うわけで、福耳としてそういうみんなのいい部分を持ち寄ってレコーディングできるって、こんな贅沢な話はないなと思いますね」

——奇しくも、「イッツ・オールライト・ママ」ではソングライター松室政哉として参加したわけですが、いま、第三者的な視点でご自身を俯瞰したときに、メロディメーカーとしての松室政哉、シンガーとしての松室政哉のどちらの存在感を強く感じますか?

「僕は、小学4年生のときにおもちゃのピアノを買ってもらって、見様見真似で曲作りを始めたんですが、そのときのとてつもない楽しさ、初期衝動みたいなものがいまでも同じレベルで続いているんですね。もちろん、そうやって作った曲をレコーディングして、ライブで演奏してってことも楽しいですけど、やっぱり僕のなかでは、曲を作るってことが音楽をやっている意味の大部分を占めているというか、重要なことではありますね。小4でサザンを聴いて……たぶん「TSUNAMI」とかやったと思うんですけど、そのときもこんな曲を作ってみたいって思ったのを憶えてますから」

——松室さんはオフィスオーガスタ25周年という節目にデビューしたわけですが、そういった意味では、期待されている部分も大きいのでは?

「それはめちゃくちゃ感じていますね。去年のオーガスタキャンプでは、先輩アーティスト全員がサポートしてくれる中で「毎秒、君に恋してる」を初披露して、そんなことってふつうじゃあり得ないことですし、それこそ秦さんとかスキマスイッチのおふたりが“俺らのときはこんなことしてもらえんかったのに!”って言ってましたから(笑)。デビュー当日には、森川欣信最高顧問から“オーガスタの25周年でデビューしたってことは、この先ずっとオーガスタのアニバーサリーが松室のアニバーサリーになるってことだから、50周年のときにはお前が先頭に立っていてくれよ”って熱いメッセージをもらったんですよ。すごくうれしいことやし、僕はそういうプレッシャーを前向きに捉えられる性格なので、その言葉をしっかり受けとめつつ、いまできることをひとつずつやって前に進んでいきたいなと思います」

(おわり)

取材・文/encore編集部



松室政哉「きっと愛は不公平」
2018年2月21日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)/UMCA-19055/1,852円(税別)
通常版(CD)/UMCA-10055/1,389円(税別)
ユニバーサルミュージック


「毎秒、君に恋してる」
2017年11月1日(水)発売
UMCA-10054/1,389円(税別)
ユニバーサルミュージック


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